三次創作 とある装蹄師に自覚と反省を促す取材記録 作:zenra
なお、中央競馬の重賞史上、最も高い払い戻し…つまり、最高倍率からの勝利を収めた事で、ある意味名前を刻んだ子です
「自分は交通機動隊所属、警視庁騎バ隊隊員、警部補の新志と申します」
はい、ご丁寧にありがとうございます
私はこういうもので…(名刺差し出し
「ははぁ、記者さんでありますか…」
えぇ、フリー何で色々と自分でやる必要がありましてねぇ
今、少々お時間よろしいですか?
「えぇ、まぁ。本日は半休でして。これから着替えて帰宅するところであります」
「自分に何か御用が?」
はい、元競争バとしての貴女に、是非
そこの喫茶店で良ければ昼食も御馳走しますよ?
「ハァ…わかりました。自分で良ければお話させていただきます」
「報酬を頂く事は服務規程に反します」
「昼食を摂るにあたって、貴方にナンパされ、相席した際の雑談という事で良しとするのなら、受けましょう」
あ、ハイ
ではお待ちしてますねー
「先輩に聞いていた通りの人物のようですね…では、後ほど」
(おや、私の話が流れている、と…まぁ、隠してはいませんし不思議では無いですが…)
「おまたせしました、記者殿」
いえいえ、珈琲一杯を堪能している最中ですので問題ありませんよ
「そうですか、で、何が聞きたいのでしょうか?」
そうですね、手始めにお名前が変わっているようですが?
「あぁ、それですか。我々騎バ隊は慣例として、着任時に警バ名を授かるのです」
「確か…皇居警護任務等を受けた際に、御褒めの御言葉を賜った者が居たのですが」
「己の経歴を示す名を、名乗るのが辛かったのか、名を告げることが出来なかったそうです」
「普通ならば、不敬であるとされるところですが、当時の陛下が、今の貴方に名を贈らせていただけませんか? と」
「そうして名を賜り、それを誉れとして伝え、我等もそのような存在にならんとする決意と覚悟として、着任時に名を授かるようになった、と先輩から聞きました」
おおぅ、それはまた…
随分と由緒あるものなんですね
「いえ、現在に至るまでに数々の変遷があったそうで、今では形式的なモノでしか無いそうです」
「ですが、我々隊員にとっては大きな儀式であり、護る側になるという踏ん切りでもあります」
「やはり、大事なものなんですよ…」
ははぁ、歴史あり、と云うことですね
という事は、プライベートでは以前の名前を?
「えぇ、そうなります」
「警察手帳には警バ名で登録されておりますが、戸籍等は変わりませんので」
「退職の際に返納するのは装備や備品だけではなく、警バ名もなのですよ…」
成程、在る種独特な世界なんですね
では、現在の主な御仕事などを聞いても?
「構いませんよ。 主に近隣の学校施設での交通安全指導、通学路での警邏活動、楽隊やパレード等にも参加することが多いですね」
「後は、緊急展開が必要な場合は応援要請が来ることもありますね、車や二輪では難しい場所でも、我々ならば走っていけますので」
「そして、皇居の警護も我々が参加する仕事でありますな」
意外と言っては何ですが、多岐にわたる御仕事ですね?
「えぇ、確かにそうですね」
「ですが、我々を見て、小さな子供がうまのおまわりさん、と言って手を振ってくれるのは嬉しいものです」
「楽隊やパレードの参加も、ウマ娘としても嬉しいものです」
あぁ、ウィニングライブ的な?
「近しいモノがありますね」
成程…
「勿論、そういった露出が増えれば、取材などに応じるのも仕事としてありますが」
「普通は、事前に、許可をとって、スケジュールを調整し、その上で問題が無いと判断されて行われるものです」
アッ、ハイ
「今後は常識的な判断の基、行動をしていただけると信じて、この場を設けました」
「其処はしっかりと認識していただきたい」
フム…
可能な限り善処することを検討したいと思います
「そうですか、では期待しましょう」
おや、真面目な貴女からすれば怒られるかとも思ったのですが
ああいや、怒らせる意図があったわけではないですがね?
「いえ、出来ない・やらないことははぐらかすと聞いています」
「曲がりなりにも返答を頂けたので良しとしました」
ぐっ、そうですか(誰ですかねぇ…)
それでは、次の質問に移っても?
「構いませんよ」
それでは、現役時代のお話をお願いします
「現役時代、ですか」
「特筆するような事は無かったような気がしますが…」
御冗談を
クラシック期では準OP競争でのコースレコード勝利を始めとして
芝・ダート・障害競走で勝利した、となると珍しいにも程がありますよ?
「あぁ、確かにそれは珍しいかもしれませんね」
「ですが、何れも重賞では有りませんし…」
いや、普通は芝からダート、ダートから芝、芝から障害、障害から芝なんて転戦繰り返しませんからね?
「そういうものですか」
えぇ、勝利を収めて転戦というケースはかなりレアです
それに、重賞といえば日経賞
通算で三度の参戦、そして三度目での劇的な勝利は語り草ですよ
「支持率0.2%で勝利したのは私が初めてだそうですね」
障害重賞で活躍したアワパラゴンさん、重賞レースでは掲示板の常連だったローゼンカバリーさん
そして前を行くシグナスヒーローさんを躱して先頭を奪った切れ味鋭い末脚
後に海外でも結果を叩き出す事になるスt…いえ、キンイロリョテイさんをも抑えきった見事な勝利でした
「当時所属していたチームのトレーナーの悲願でしたからね、重賞での勝利は」
「私を含めて、中々勝てない…勿論OP競争等では結果を出していましたが」
「それでも、重賞に勝てないという事は、トレーナーが侮られるには十分な理由でした」
「先輩から続く、トレーナーに勝利を届けたいという思いは、チーム全員が持っていた願いと言ってもいいでしょう」
その先輩とは、もしや…
「今、ここでその話はゆるしません」
…わかりました
「私達のトレーナーは、良く言えば中堅、悪く言えば勝ちきれないトレーナーだと言われていました」
「勝ちきれないのは、私達ウマ娘だというのに…」
苦しい時期だったんですね…
「ええ、ですがチームの共通認識として、共通目標として、重賞勝利を掲げていましたからね」
「それに、先生からも助言を頂きましたので、焦り等は抱えずにすみましたよ」
助言、ですか?
「ええ、私達は自分がやらねば、自分が、自分がと考えていました」
「ですが、先生は自分だけで抱え込まずに考えたらどうだ、と」
「折角チームなんだ、お互い協力出来るところはすりゃあいい」
「幸い、後輩も居てくれるんだろう? なら、継いでいけばいい」
「そういう強みも在るんだ、忘れてちゃもったいないぞ、と」
それはまた、随分無茶苦茶な…
今まで取材した中で思ったのは、皆さん一着を目指して走ります
その思いを抱えたまま、他の誰かに託す事を考えろとか…
「そうですよね、普通の子ならそう思ったと思います」
「でも、私達は先輩から既に託されていたんです」
「引退を余儀なくされ、泣いていた先輩に」
「だからこそ、私達はチームとして強くなりたい、なろうと思えたんだと思いますよ」
そうですか…
良いお話をありがとうございました
「いえいえ、私も…自分も学生の頃を思い出して、懐かしかったです」
「ですから、この話はこれで良いのです」
はい…
それでは、私はこれで失礼します
新志警部補…いえ、テンジンショウグンさん、また何かの機会があれば、宜しくおねがいします
「ええ、まぁ、御仕事でお会いしなければ良いですね?」
ゼンショシマス
額の部分に星のような一房の白毛と、豊かな黒鹿毛を靡かせ走り抜けたテンジンショウグンさん
彼女はデビュー当時、未来のダービーバも夢ではない、素質がある、そう言われ、期待されていました
しかし、チームに所属してレースを繰り返すも、思うようには勝てない日々
芝からダートへの転向、勝利を収めるも重賞への夢を諦めずに再び芝へ
条件戦では勝利を収めるも、やはり重賞では勝てない日々
そして障害レースへの転向
グレードレースこそ落としたものの、確たる結果を掴む
だが、それでも、諦められない、諦めたくない、掴み取ると決めた勝利を目指し、再び芝へ
三度目の日経賞、G2競争であるそのレースで彼女は念願の勝利を掴んだ
だが、次走の天皇賞春以降は二桁順位が続き、その年のアルゼンチン共和国杯を最後に引退
その後は教師の勧めもあって、警視庁騎バ隊に入隊(通常の警官枠とは別で、試験も厳しい)
現在は叩き上げで警部補まで昇進、何れは騎バ隊の隊長になるのでは、と周囲は期待しているそうです
彼女は何度も挫折した
彼女は何度も諦めた
それでも、と立ち上がる事を
走るのを辞めることを
全部を諦めることを
諦めることを諦めた彼女は、何度も挑んだ
芝で
ダートで
障害で
それでも伸ばす手は阻まれた
それでも、諦めを踏み潰し、挫折を蹴り飛ばし
応援する声も殆どない、そんな場所でも
彼女は、ただ前を睨んで走り抜けた
バ群を切り裂いて飛び出したその姿は
日経賞 制覇 テンジンショウグン
誰が疑っても、自分だけは勝利を疑うな
ほほう…タレコミですか
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膝の上が指定席だった…?
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添い寝までした…?
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襲い掛かって正座させられて叱られた…?
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一緒に御風呂…?(戦慄
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全部乗せ…?あっ(察し
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ほほう、あーんと食べさせた…ねぇ
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弟子入り懇願して却下された…?
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父親になって欲しいと土下座していた…?