三次創作 とある装蹄師に自覚と反省を促す取材記録   作:zenra

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File  3

 

 

 

 

あぁ、まさか貴女への取材が叶うとは…

というかあの装蹄師さんが中央へ赴任する前に卒業・引退されていたと思うのですが…

一体、どのような御縁が?

 

 

「えっと、その前に何故私を拝んでるんでしょうか…?」

 

 

私、貴女の大ファンなんです!

グッズも全部揃えてますよ!

なんせトゥインクルシリーズ成立後、平地競走最多連勝記録保持者ですよ!

確かに障害も含めれば11連勝された方もいらっしゃいましたが、クラシックの二冠までも含んでの平地競走のみでの大記録ですよ!?

かのシンボリルドルフやマルゼンスキーですら連勝は8!

これがどれほど偉大な記録なのか!

 

 

「わかった!わかりました!だから落ち着いてください!お願いしますからぁ!!」

 

 

…あー、大変申し訳有りませんでした

もうこの際なんで申し訳ついででサイン、お願いしても?

 

 

「あっ、はい、書きますから…だから落ち着いて、近いです!」

 

 

おっと…ええ、はい。

ありがとうございます、家宝にします(恭しくケースに保管)

いきなりの脱線、申し訳有りません

えー、ゴホン

 

それでは、装蹄師の彼とのエピソードをお聞かせ願えますか?

 

 

「はい。と言っても余りいい出会いではなかったような気もしますが…」

「当時の私は、学園を卒業して一人暮らしを始めたばかりだったんです」

「今でこそ落ち着いてますけど、あの頃はまだ対人恐怖症に近い感じだったんですよ」

 

 

引退後に、現役時代は対人恐怖症を患っていたと知った時は驚きました

貴女のデヴューからレースは観ていました、あれほどの走りで競い合っていたヒトが、まさか、と

 

 

「レースの時は特注のマスクで視界を制限していましたから、それでなんとか(苦笑」

「話を戻しますね? 一人暮らしを始めたと言っても、特段仕事を始めたとかじゃあ無かったんです」

「ただ、レースは思いっ切り走り切ったから、暫くのんびりしたいなって」

「それでも学園の近くに借家を見つけて借りていた辺り、心の何処かでレースに未練があったのかもしれませんね」

 

 

それは…もしかして、屈腱炎で回避した菊花賞、ですか?

 

 

「そうかも知れません、違うかもしれません。 わからないんですよ、今でも、私自身にも。」

「まぁ、そんなフワフワしたような心持ちで新生活の準備を整えていたんです」

「あのヒトと出会ったのは、借家に荷物を運び込んで、生活用品を買いに行ったときでした」

 

 

おお? こういっては何ですが、ベタな出会いだったのでは…?

 

 

「かもしれませんが、さっきも言ったようにあんまり良い出会いではなかったんです」

「私って小さいですけど、ウマ娘ですからね、相応に力はあるんですよ」

「ただまぁ、荷物を抱えすぎていて、ですね…少々ガラの悪い人達にぶつかってしまって」

「あ! でもその、見た目と口調がそうだっただけで、悪い人達じゃなかったんですよ!」

「ただその、ちょっぴり怖くてですね…ちょっぴり、ほんの少し、極々わずかにですけど涙ぐんだ感じになってしまったんですよ」

 

 

あー…

まぁ、未成年で女子校でもあるトレセン学園を卒業したばかりな上に対人恐怖症だったんでしょう?

仕方ないのでは?

 

 

「うぐぐ…コホン 兎も角、そんな場面にあのヒトは現れたんです、ひっどいセリフと共に」

 

 

えっ

 

 

「オウ、おめーら何子供泣かせてんだ。 あ?ぶつかってこられただけで何もしてねぇ? ばーか、子供が荷物ひっくり返して転んでるんだ、助けてやれよ」

「お嬢ちゃん、悪かったな。 コイツラも口とツラはワリィがあぶねー奴らじゃねえんだ、許してやってくれねーか?」

「なんて言いながらナチュラルに私を抱き起こして言うわけですよ」

「自慢になりますけど、当時の私ってマスク装着した見た目もあって、結構な知名度があったんですよね」

「当然、その時もマスクはつけてたんですけど、一切、微塵も、まっったく知らない感じで接して来てですね」

「しかも子供扱いですよ!? 確かに身長は143センチしか無かったですけど…自分だってヒトに言えないくらいには強面感あった癖に酷いですよね!」

 

 

あー、赴任するにあたって、教員としての勉強やらも覚え直してたそうですから、本当に忙しくて観ていなかったんでしょうね、レースを…

あと強面というか、まぁ、はい、笑うと野生動物みたいな顔になるヒトですよね

 

 

「気づかなかったのはまぁ、良いんです。 問題は私を小さい子供扱いしたことですよ!」

 

 

アッ、ハイ

 

 

「その時はなんてデリカシーの無い人なんだろう、って」

「強く思ってましたね、ええ」

 

 

ハハハ…それで、ファースト・コンタクトはそれで終わったわけですね

 

 

「ええ、まぁ。 次に出会ったのはちょっと意外な場所でしたね」

 

 

といいますと?

 

 

「薬局です」

「私は文化的に読書してたら、ちょーっとだけ目が辛くなったので目薬を買いに行ったんですが」

「あのヒトは仕事場で使う応急処置用の薬品や包帯なんかの補充だったらしいです」

「で、目があったら軽くしゃがんで目線を合わせて」

「今日は泣いてないんだなお嬢ちゃん」

「なんて言うんですよ?あのヒトの中の私のイメージってどんだけ小さな子供だったんですか!?」

 

 

Oh…

 

 

「正直、ほんっとにデリカシー無い人だなって思いながら、脛を蹴っ飛ばしてましたよ、軽くですけど」

「慌てて悪かった、冗談だよ冗談!って叫んでたのを見て、少し気が晴れたので許してあげましたが」

「それから雑談をして、別れて」

「落ち着いて考えたら、不思議だったんですよね」

 

 

不思議、ですか?

 

 

「ええ、私の対人恐怖症が出てなかったんです」

「家族や友人以外では、というか父以外の異性では初めて怖くないヒトだったと思いますよ」

 

 

えぇ…

あのヒトなんか妙なフェロモンでも出してるんじゃないですか…?

 

 

「あー、それはあるかもしれませんね、なんか落ち着くというか、安心?気楽? ううん、気が抜ける感じ? の匂いがしましたし」

「とと、脱線しましたね、戻しますよ」

「それからは生活圏が被ってるのもあって、週の半分くらいは出先で会って、少し立ち話をして別れる顔見知り、のような関係になりました」

「もしかしたら、あのヒトは年の離れた友達のように思ってくれていたかもしれませんね…」

 

 

なお実際にはほんの少し歳下なだけだった、と

 

 

「年のことは…ね?(威圧」

 

 

ハイ!

 

 

「兎も角、そんな日々を半年程過ごした辺りで、私の認識が変わる転機が訪れたんです」

 

 

と、言いますと?

 

 

 

「私のマスクは目の部分を覆う作りになっていて、視界を制限することで対人恐怖症を緩和してたんですが」

「視界を制限する、という事は死角も多くなるという事です」

「まぁ、その、お恥ずかしい話ですが、あのヒトとの話が愉しかったので、注意力がですね…」

 

 

あっ、なんとなくこの先が読めましたよ?

 

 

「はい、多分御想像の通りですね。 ちょっとしたトラブルでマスクが壊れてしまいまして…そうしたら途端にあのヒト以外が怖くなってしまって」

「涙目になりながらパニック寸前になっていたんだと思います」

 

 

(多分涙目どころか泣き出してパニックになったんだろうなぁ)

 

 

「あのヒトがギュッと手を握って、俺を見ろ、俺だけ見てりゃ怖いもんなんて見えねぇだろ、って」

「私が対人恐怖症だって、あの人には言ってなかったんですよ? それなのにサラッと助けてくれちゃって…」

「掌の暖かさを感じて、あの人の真剣な目を見て、少しずつ落ち着いて、でも動けなくて、どうしようって思ってたら」

「ちょっとだけ勘弁な、後で文句は受け付けるから良いぞって言うまで目ぇつぶってなって言い出して」

「返事をする前に私を抱き上げて、私はわけも分からずあのヒトにしがみついて、目をつぶってました」

「ほんの数分間あのヒトの腕の中で揺られて、案外がっしりしてるんだな、とか、落ち着く匂いだな、とか色々混乱してるうちに、良いぞと言われ」

「目を開けたらなんだか可愛いクルマが目の前にあったんです」

 

 

あ、一部で噂になってるサーキットでちょっと頭おかしいコーナリングを見せる例のクルマですね

 

 

「え、なにそれ私しらない」

 

 

ままままま、それはさておき続きをどうぞ

 

 

「えぇ…コホン ええと、そのクルマから少し古びたサングラスを取り出して、私に掛けながらこういったんです」

「俺のお気に入りで、お守り代わりに手元に残してたヤツなんだが…とりあえずチェーン使って掛けとくから、眼鏡屋でレンズとフレーム調整してもらいな。 マスクの代わりにゃちと頼りないかもしれんが、お守りとしちゃ俺のお墨付きだぜ、って」

 

 

それって、今かけてらっしゃるメガネの?

 

 

「ええ、このメガネがその時のモノです、流石に色々いじってますけどね?」

 

 

ははぁ、流石は男性観の破壊者ですね

 

 

「え、なにそれ私しらない」

 

 

あ、こちら今までのインタビュー原稿です

 

 

「」

 

 

あっ、表情が抜け落ちた…

 

 

「まっ、まぁ? 別に私は男性観破壊されてませんし?」

 

 

おっ、そうだな

 

 

「むぅ…まぁ、いいです(男性とお付き合いとか考えたことも無かったですし)」

「兎も角、先程述べた出来事が切っ掛けになったのか、私の対人恐怖症は改善していきました」

「それから暫くして、私の実年齢を教えたら顎が外れてるんじゃないかってくらい驚いてて笑いましたけどね」

「あのヒトは装蹄師として忙しく働き初めて、私も請われて中央・地方問わずに非常勤教官として飛び回り始めましたからね、今では偶に顔を合わせる程度ですけど、今も気安くやれてます」

「もっとも、あのヒトはデリカシーが致命的に足りてないと思いますが!」

「なぁ~にが、ちっとは肉付き良くなったじゃないか、成長してよかったなぁ?ですか!」

「まぁ、少し髪型変えたり、アクセサリー変えたりしたら必ず気付いてくれますけど…」

 

 

ハハハ…今日はお忙しい中、長い時間ありがとうございました

あとサインは末代まで伝えていきます(真顔

 

 

「えぇ…そんな大層なものでは…」

 

 

間違いなく大層な代物です(真顔

それでは、また機会が在れば宜しくおねがいします

是非とも、是非とも宜しくおねがいします

 

 

「アハハハハ…はい(腰が引けつつ苦笑)」

 

 

では、カブラヤオーさん、本当にありがとうございました

 

 

 

艷やかな黒鹿毛をなびかせ、畏怖をもって狂気の異名を通り名としたカブラヤオーさん

メイクデビューでは惜しくも2着と破れましたが、未勝利戦から連戦連勝

その勢いのままに皐月賞、日本ダービーのクラシック2冠を手にしましたが、屈腱炎を発症し、菊花賞を回避、3冠は幻と消えました…

ですが一年間の休養明けでオープンクラスとはいえ、1着、これをもって平地競走前人未到の9連勝を達成

クラシック期には年度代表にも選ばれるというまさに名バ、というべきウマ娘

総合戦績13戦11勝で、着外はただの一回だけ

屈腱炎の再発が無ければ、そう思わずには居られなかった凄まじい戦績です

 

さて、次のインタビューは…

次のインタビュー相手は

  • 90年代後半がモデル
  • 90年代前半がモデル
  • 80年代後半がモデル
  • 80年代前半がモデル
  • むしろ2000年以降がモデル
  • 私にいい考えがある(推薦したいウッマが
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