黄添宗太郎は、数多のウマ娘を知っている。夢という空想の中で彼は多くのウマ娘と触れ合ったからだ。
あくまでも夢の中だが、宗太郎にはとても夢とは思えなかった。
彼女たちと何かの面影がどうしても重なってしまうのだ。しかしその何かが記憶になく、まったく思い出せない。
少しでも手がかりを得ようと、宗太郎はウマ娘たちの名を訊ねる。
だが残念なことに、最初の夢に出てきた男性の名のようにノイズがかかって不明瞭なまま。宗太郎の胸中にはもどかしさが積もっていくばかりだった。
そして現在――そのもどかしさという暗闇に一筋の光が射した。
「改めて名乗っておく。オレはイージーゴア、だ。これから貴様が担当するウマ娘だ」
威圧的な口調とは裏腹に、イージーゴアは脚を閉じて行儀よくソファに座っている。
「あっ、ああ……! よ、よろしく……!」
相対する彼女の鋭い眼光に思わずしどろもどろになってしまう宗太郎。身体は産まれたての仔鹿のように震えている。
「……もしかして恐ろしいか? 夢の中で邂逅しているというのに」
ビクリ、と宗太郎の肩が大きく跳ねた。
「クッ、ハハハハハ! 安心しろ。噛みつこうなどとは微塵も思っていない。ただ少ししっかりしてくれ」
「アッ、ハイ」
「…………」
「ええと……と、とりあえず、今後の話でもしようか」
宗太郎は恐る恐る話題を提示する。
スッと一枚の紙を取り出すと、雰囲気が一変した。
「まずイージーゴア、キミの適性だが、距離はマイルから中距離だ。バ場適性は芝も走れるがダートが大得意といったところだな」
「……ほう?」
「それから脚質は差し、追い込みで後方、さらにいえば最後方からバ群をぶち抜く競バが得意。どんな展開に陥っても構わず末脚で撫で切れるタイプと見る」
「よく観察している。そんなにオレに釘付けだったのか?」
「……まあ、そうだね」
照れるような仕草を見せる宗太郎にイージーゴアが微笑を浮かべる。
すぐさま表情を整えると、宗太郎は改めて切り出す。
「――で? キミはどの路線を進みたい?」
「答えなどとうに出ているだろう? 貴様ならわかるはずだ」
「……日本のダート路線、ではないな」
「そのとおり。さあ、答えを言え」
顎に手を置き、宗太郎は一呼吸し、そして――。
「
その言葉を、紡いだ。
クッ、とイージーゴアは口角を上げ、牙を剥く。
「ああ。
悔しさを滲ませるように顔を強張らせるイージーゴア。その目には、闘志が反映されたかの如く紅蓮の炎が燃え盛っている。
「……言っとくけど、俺、新人トレーナーだぞ? 実家がかなりの富豪だから海外には余裕で飛べるけれど」
「ならばいい」
「強引だなぁ……」
宗太郎は思わず頭を抱えてしまう。どこまで行動力がありそうなんだこのウマ娘は、と内心で振り回される未来を描いていた。
「ともかく、まずはメイクデビューからだ。調整を頼むぞ、トレーナー?」
目を細めて、イージーゴアは言う。
「まずはオレが貴様を勝ち星に導いてやる。だから貴様は、オレから目を離すなよ?」
その言葉を以て、時計の針は今、再び動きだした。
――伝説の再臨。その幕開けである。
――データがアンロックされました。
――イージーゴアの適性が開示されました。以下に表示します。
バ場適性
芝:B ダート:A
距離適性
短距離:E マイル:A 中距離:S 長距離:D
脚質適性
逃げ:G 先行:G 差し:B 追い込み:S