シャドウーハウス   作:KyaNa

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シャドーハウスのアニメを見てハマった勢いで書いてしまったぜ。
後悔などとうに捨ててきた。
シャドーハウスの二次元小説が増えるのを願ってるぜ。
本音(とにかく作品同士をぶち込みたかった)



シャドウとシド

 目が覚めると知らない天井があった。

 はて、確か僕は魔力を求めて2つの光に飛び出したはずなのだが、一体ここは何処なのだろうか。辺りを見渡してみると煉瓦造りの西洋建築に似た家のように見える。

 

「おお、ようやく目を覚ましたか」

 

 考え事をしていると髭を生やした男が僕を見詰めてきた。誰だこのおっさんは。

 

「息子よ、お前が成長しシャドー家に選ばれるのを心から願っているぞ」

 

 おっさんの話を聞いてみると、どうやら僕は元いた世界ではない別の世界の住民に生まれ変わったようだ。道理で身体が赤ん坊のように小さいし、言葉も上手く喋れない。

 

 まあ、転生したのは些細な事だが、この世界に魔力なんて存在しているように見えないし、元いた世界よりも文化や技術が退化しているようにも見える。

 

 しかし今の僕は赤ん坊だ。悩んでいても意味がない。とにかくこの世界の情報を調べて、陰の実力者のような圧倒的な力を見つけなければ。

 

 そんな思案を巡らせていると、外からボォーと汽車の汽笛音が響いた。

 

「おお、シャドー家の方々が来られたか!」

 

 おっさんが意気揚々と奥さんを連れて、僕を抱き抱えた。そのまま汽車の前に訪れると辺りには大勢の村人が密集していた。その中でも貴族のような格好をした2人に目が付く。

 

「見るがいい息子よ、あれがシャドー家の方々だ。貴族でありながらも、我々村人に煤炭を分けてくださるとても感銘なお方達なのだ」

 

 へぇー、この村では煤炭を利用して生活しているんだ。で、シャドー家はその見返りに食料を村人から提供してもらう。よく出来たシステムだ。

 

 そのまま傍観していると4人の子供が列をなして汽車の中に入っていく。

 

「あれは館に仕事をしに行く子供達だ。あれはとても光栄な事なんだぞ、館に行けば此処よりも裕福な生活が出来るんだ。お前も早く館の仕事ができるよう頑張ってくれ」

 

 そう言うとおっさんは僕を抱えて帰路に着いていく。確かに煤炭で村は栄えるけど自分の幼い子供を易々と渡すほどかねぇ。それに空気だって煤の黒煙で汚れていくと思うけど……あ、やばい。オシッコ漏れそう。てか、漏れてる。

 

 空気が汚れる前に僕の急所が汚れてしまっている。赤ん坊の身体のコントロールーを手放していたのが仇になったようだ。僕は瞬時に身体の全身を身震いさせた。そうすれば、このおっさんだって気付いてくれるのだ。

 

「おおぉぉ!? おい待ってくれ! 今すぐおツムを変えるからぁぁ!!」

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 あれから10年が経ち、僕は10歳の歳を迎えた。その間この世界のことを独自に調べてみたけど、正直分からずじまいばかりだ。何故ならこの村、他の村とのコミニュケーションが限定的なのだ。

 

 しかしある情報を得ることも出来た。それは僕が陰の実力者になる為に必要な未知なる力の事だ。あれはシャドー家の館が何処にあるのか調べるため線路を辿っていた時だ。空を見上げてみると煤色の鳥を見つけたのだ。で、それを追いかけてみると大きな館を見つけて、窓辺の付近に黒い女性が煤鳥を手元で消し去ったのを目撃したのだ。

 

 館との距離がかなり離れてあったから見間違いかも知れないが、それをはい間違いでしたと、終わらせる僕ではない。どんなに小さな可能性だろうと僕は決して諦めないのだ。

 

 それに前々からシャドー家や館の事を不思議に思っていたのだ。連れて行かれた子供はこれまで誰一人として帰ってきていない。なのに村の人達は誰も気にも止めはしない。

 

 それにこの空に蔓延している煤が混じった空気もだ。正直、地球育ちだった僕には耐えられない環境だったので、自作でガスマスクを付けているけど、これは人体に影響が出ないのだろうか? 

 

 まあ、そんな不満が溜まっていたがそれも今日までだ。何故なら僕は10歳になりシャドー家に迎え入れられる年になったからだ。

 

 この日の為に肉体を鍛えて前世並に動けるようにはしている(別に筋肉モリモリではない)。必要な筋肉だけを詰め込んだ着痩せ型ボディなのだ。

 

「汽車だ! シャドー家の方々が来られたぞ!」

 

 僕は瞑想をやめて村の集会場へ集まった。そこで枠に入った子供たちが、直々にシャドー家の方々から選抜されていくらしい。

 

 集会場に入ると同い年や年上が10人ほど滞在していた。僕もこっそりと平凡モブ少年として列の端へと寄る。

 

 すると集会場の扉が開き、シャドー家の方々が入室してきた。今回は天然パーマが特徴な男と黒髪のロングヘアーの女だ。

 

 暫く2人は僕らを吟味するように視線を転じさせると周囲を歩き始める。

 

 さあ、ここからがターニングポイントだ。

 

 ここで僕は自身を最大限にアピールする事で、陰の実力者への道のりを早める事ができるのだ。僕は飽くまでも自然な平凡モブ少年として自身を演じるのみ。

 

 この日の為に今まで数千、数万のアピールパターンが潰えてきた。しかしその集大成が今この瞬間放たれるのだ。

 

 くくくっ、シャドー家の方々もきっと驚いてくれるに違いない。思わず笑みが零れそうだ。

 

 そして、ロングヘアーの女性が僕に視線を合わせて頭を撫でできた。

 

 今だ! 

 

 ここで徐々に空気の循環をフル活用させる。そうすることで、急激な酸素の取り込みによって自然に体温が上がらせる。そこに畳み掛けるように足を小刻みに震わせ斜め下に視線を落とす。

 

 他視点から見た今の僕は綺麗なお姉さんにキョドりまくる純粋な10歳男児そのもの。

 

「ァ、ァ、あにョ! は、ハ、ハヒ……!」

 

 ァ、ァ、で声帯を震わせ、あにョで滑るような滑舌。ハヒ! で陰キャ丸出しの声帯を披露。

 

 そして、

 

「は、セ、ア、ッ……ニョ……アニョハセヨ!!」

 

 完璧だ。

 

 これぞ正にキョドり韓□流式挨拶、こんにちは!! 

 

 くくくっ、どうですか? 僕の集大成を目にしたシャドー家の御二方。僕の完璧な挨拶術は。

 

「……え、ええ?? おっほん。こんにちは、なのかしら? そんなに緊張しなくても良いのよ?」

 

 あ、あれ? 予想よりも反応が薄いぞ。それに何故か生暖かい視線を感じるような。

 

「ライアン。今回は男子を多めにしましょう」

 

「あ、ああ、そうだな」

 

 そう言うと黒いベールを纏った付き人が白いテーブルを広げる。その上に黒い液体が入った小さいコップが僕を含めた6人の前に置かれていく。

 

「今回はこの6人に名誉ある仕事が与えられます。館に入る儀式よ。さあ、飲んで」

 

 取り敢えず掴み匂いを嗅いでみる。どうやら珈琲のようだ。それと少し……煤? が混じっているようだ。

 

「さあ……飲んで」

 

 他の皆も飲み始めている。流石に一人だけ飲まないのはモブとしてあってはならない事だ。だけどどう見ても異物混入の疑いがある。

 

 うーん、悩ましい。おっとこんな所に偶然小石が一つ。

 

 次の瞬間、ガシャンと音がして窓ガラスが割れる。

 

「っ、何!?」

 

「どうした!?」

 

 なんて事でしょう。おそろしく速い投擲。僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。この間に珈琲を少し飲んで後は全部外に捨てる。その間僅か2秒。

 

 場が一時的に騒然と化したが、直ぐに収まり始める。

 

「あら、全員もう飲んだのね。偉いわ」

 

「どうやら、強い風で小石がぶつかったようだね」

 

 どうやら誰も僕の行動に気付かなかったようだ。安心すると同時に少し、あの珈琲が勿体なかったと思ってしまった。案外美味しかったかも。

 

「おめでとう。シャドー家は貴方たちを受け入れます」

 

「君たちの親族も誇らしく思っているよ」

 

 その言葉を受けて5人全員が笑みを見せる。僕も倣って笑みを見せるが本心から嬉しかった。

 

 ……うん? なんで一瞬でも嬉しいって思ったんだろう? 

 

 

 

 その後は選ばれた6人で汽車に乗り、汽笛の音と共に村から出発した。蒸気の煙と駆動音を響かせながら、久しぶりに通った線路を眺めて丘へと登る。

 

 そして、30分ぐらい揺られているとようやく開けた場所に出た。

 

「あれがシャドー家が住む館。『シャドーハウス』」

 

 改めて見てみると相当な規模の館だ。僕は今新天地へと足を踏み入れたのだ。胸が高鳴り心が躍ってるのが分かる。

 

 これから新しい生活が始まるが、僕の目的は変わらない。ここで僕は未知なる力を見つけてみせる。そして、必ず『陰の実力者』になって見せるんだ。

 

 そう思うと突然眠気が襲ってきた。

 

 うん……何だか、眠いな。汽車に揺られていたせいかな? でも、嫌な感じは……しない、か、な……。

 

 そのまま僕はトンネルを潜った辺りで、暗闇の中に意識を落とした。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 大事なこと。

 

 シャドー家は素晴らしい貴族である。生き人形は、シャドー家に仕える事が幸せである。

 

 

 これは僕の意識が明確になった時に脳にこびりついていた言葉だ。そして、『生き人形はシャドー家に対して忠誠以外の心を持ってはいけない』『シャドー家のために働くことが幸せ』この2つの事をシャドー家の御二方に教わり、復唱していたのを覚えている。

 

 次に目が覚めると棺桶のようなベットの中に居た。蓋を開けると個室のようだ。取り敢えず何をすれば良いかは自然と分かっている。それがどうしてかは分からないが。

 

 先ずは身支度を始める。顔を洗浄して、部屋に添えてある服を着て、僕が仕えるお影様の絵を見ながら髪を整える。後はこの硬いパンを食べたらお影様の元へ向かう……くっ、やはり硬い。これじゃあ、前世の頃のパンの方が……前世……? あれ? 前世って、なんだっけ? 

 

 僕は確かこの館に来て、未知なる力を手に入れて『陰の実力者』になる為に訪れたはず。だけどなんで陰の実力者になろうとしてるんだ? 

 

 ……まあ、そのうち思い出すか。

 

 部屋の壁を見てみると幾枚もの用紙が張り出されていた。一応、全部の字は読めるけどこれを全部覚えなきゃ行けないのかな? 

 

「おっと、早く行かないと初日から遅刻する」

 

 パンを無理やり噛み切り、喉の奥に流し込む。地図を引き出しから取り出して、ランタンを持っていざ出発。

 

 薄暗い通路を進んで、鉄の扉を開く、これぐらい普段鍛えている僕には楽勝だ。そして、中にあるレバーを引く。

 

 ガタンと音と共に上からの強風で地面にへばり着いてしまう。この時は身体の力を脱力して風の力に身を任せた。どうやら『すす取りの間』と言われる部屋らしい。

 

「ふぅ、ようやく終わった」

 

 お影様のお部屋に着いたので、回転扉をゆっくり〜と開けて中を確認する。

 

「うぉっ、これは……すごいなぁ」

 

 そこには真っ黒な部屋が広がっていた。確かお影様は常に煤を放出している。それにしても特徴的な広がり方だな。天井の一箇所からさざ波のように広がっている。

 

 これは速く掃除しないと不味いな。お影様は一体何処に……

 

「……此処に居る」

 

「っ、そこにいらっしゃいましたか」

 

 声の主は窓辺の縁に座ってカーテンの奥を悠然と見詰めていた。その瞳に何が映っているか分からないが、とてもミステリアスな雰囲気を醸し出している。

 

 ……これが僕のお影様。なんだか胸が高まってきた。

 

「私は風呂に入る。後は頼んだ」

 

「はい。お任せ下さい」

 

 うーん。こういう主従関係の立場って何か……雰囲気が出てイイなぁ。それにアレがお影様の煤量かあ。かなりの量なのは分かったけど、これは掃除が大変だな。

 

 僕はお影様の煤量も確認しつつ、部屋の掃除を始めた。

 

 

 

 

 ……ふぅ、取り敢えず、全部終わったな。身体を鍛えていたせいか、よく動けて効率的に進められる。さて、予定よりも速く終わったし、今までの状況を纏めてみよう。

 

 汽車の中で寝ていた⇒目が覚めると変な呪文が頭にあり三階のお影様たち御二方から新たな呪文を復唱させられた⇒再び目が覚めると棺桶の中に居て、これからの動き方が脳内にインプットされていた⇒起きてから記憶があやふやな部分がある。纏めてみるとこれぐらいだろうか。

 

 おそらく、原因の根源はあの集会場で口にした珈琲だろう。かなり強力な催眠、今も脳裏にこびり付く『偉大なるおじい様』への忠誠心と崇拝や激しい中毒性等かな……とんでもないものを入れてやがったな。

 

 しかしこれで分かった事は数多い。一つはこのシャドー家には闇に覆われた秘密が隠されている。二つ目はシャドーと生き人形の関係。三つ目は『陰の実力者』に必要な未知の力。

 

 まあ、二と三の詳細は殆ど掴めていないけど、今分かることは僕が催眠状態にかかっていないと周囲に悟らせない事だ。

 

 勿論、幾らお影様であろうともボロを出さないようにしないといけない。今の僕の周りには敵しかいないのだから。

 

 あれ、これって考えてみれば……陰の実力者のような事をやっているのでは!?

 

「お──」

 

 この世界に転生してからは陰の実力者プレイがタンマリと不足していたし、今度こそは思う存分やってやろうじゃないか。

 

「おい、生き人形」

 

 そうだ、そうだ。珈琲の中にあんなおっかないものを入れてるぐらいなんだ。絶対にこの館の裏を突き止めて──

 

「おい貴様……きこえているのか?」

 

「っ! 申し訳ございません。深く考え事をしており、聞いておりませんでした」

 

 初日にやらかしてしまった焦りに包まれて、声の主に顔を向ける。そこには頭から煤を立ち昇らせているお影様の姿があった。

 

「考え事も良いが程々にしておけ。少し煤が出てしまったようだな……また掃除を頼む」

 

「はい、お任せ下さい」

 

 ふぅ……行けない行けない。考え事は個室でするようにしよう。それにしても今の圧は凄まじかったな。気配に気付かなかった自分もだけど鍛錬不足なのかもしれないな。

 

 

 

 

 再び汚れた場所を綺麗にして、辺りを見回してみる。それにしてもこの部屋には殆ど何も置かれていないな。ある物もオペラ座の怪人みたいな仮面と奇術師のような仮面だけだ。

 

「生き人形、掃除は終わったのか?」

 

「はい。ただいま終えました」

 

「そうか……」

 

 そのまま暫く沈黙が続くが空気が重い……何か話題を探さないと行けない。しかし僕には話題のワすら共感できることがないのだ。

 

 くくくっ、自分で言ってて穴が空くのは何故だろう。

 

「おい、生き人形」

 

「は、はい!」

 

「お前の名は、何と言うのだ?」

 

「私の、名前ですか?」

 

 僕の返事にお影様は頷く。

 生き人形には名前は無い。そもそもお影様が、名を与えるとしか知らないのだ……

 

「名がないのか?」

 

「はい……」

 

「そうか……では、私が付けるしかないのか」

 

 お影様は分厚い椅子に腰を預けて、足をクロスさせる。様になっており、とてもクールに見えて心が惹かれる。

 

 そして、足を3回クロスさせた後、立ち上がって、視線をこちらに転じさせる。

 

「お前の名はシド。単純だが私の名から二つ取った名だ」

 

 シド。単調で何の捻りもないがモブとして相応しい名だと思う。

 

 それにしても……

 

「お影様の二つ名から……では、お影様の名は何とお呼びすれば宜しいでしょうか?」

 

 雲が陽の光を覆い隠し、一時的に部屋が暗くなる。お影様は再び椅子に座ると不敵に微笑みながら……

 

「私の名はシャドウ。シャドー家に一番近しい名称だ」

 

 刹那、ゾクソグと僕の内に稲妻のような何かが駆けた。手先を見ると小刻みに震えている。汗が頬を伝い、心を削るように滴り落ちていく。

 

 僕はこの感覚を知っていた。

 

 それは忘れもしない。()()での『陰の実力者』に深い憧れを抱いた時と同じ現象に似ている。

 

「これからよろしく頼む。シドよ」

 

 そう言ってシャドウ様は優雅に紅茶を啜った。

 

 これが僕の仕えるお影様……ふふっ、イイ……実に良いじゃないか。顔のない僕の容姿を生き写したシャドウ様。それにお仕えする生き人形という僕らの存在。そして、その頂点に立つと言われる『偉大なるおじい様』とシャドー家の謎多き陰謀。

 

 正直、どれから情報を処理していけば良いか混乱してしまう。

 

 だけど……ああ、やって見せようじゃないか。

 

 この『シャドーハウス』という深淵に包まれた闇を僕が解き明かして見せよう。

 

「分かりました。シャドー家の為に。これからシャドウ様の顔になれるよう誠心誠意努力します。これからよろしくお願いします。シャドウ様」

 

 だって、僕は『陰の実力者』になるのだから。

 

 




アニメでここまで世界観に引き込まれるのはないぜぇ……。皆も書こうよ楽しいぞ(道連れ)!!
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