「混沌トリガー…」
黒木からの言葉で修は呟く様に繰り返した。
「まあ、気にすることでもないさ。ただ黒トリガーとは違う何かだと思えばいい。」
黒木は口調を変えずに、ただ淡々と告げた。
「そんなことよりもだ…修君」
これから君はどうすると聞かれ、修はハッとして少し考える。
(出来れば黒木さんと行動したい。でも…)
修は自身の左手にあるキューブを見る。
「黒木さん。僕はこの
「そういえばだが、そのキューブはなんなんだい。」
黒木はまるで親の形見のように大事に手に持つ修のキューブを見る。
「これは敵の能力で変えられた僕の仲間です。」
それを聞き黒木は納得がいった顔して同時に驚いていた。
(相手そのものをキューブに変えるか…厄介極まりない能力だな。十中八九黒トリガーだろうな…)
「一応ボーダー本部で他の隊員の解析が進んでいるので、僕は本部に向かいます。」
「まあ、だろうな。よし、それなら…」
「待ってください。」
付いていこうと黒木は言おうとしたがその前に修から止められた。
「黒木さんは付いてこなくて大丈夫です。」
修は黒木の眼を見て言った。
どういう事だいと黒木は修の眼を見返して問うた。
「僕も出来るなら一緒に守ってほしい。」
それなら…と黒木は言葉を返すが、
「けど、あなたは僕と居るには強すぎる。」
「だから、この戦場で他の隊員を助けて下さい。」
(成る程ね…多分、修君が原因で
黒木は修の言葉にある種の覚悟と悔しさ、情けなさを感じてそう思考した。
「分かったよ、修君。そういうことならそうしよう。」
修は安堵した。これで救えるものがあると思った。
「ただし、条件がある。」
その一言で修は一抹の不安を覚えた。
(な、なんだ条件って…僕に満たせるものなのか)
「敵の情報教えてくれ。」
至極当然の要求だった。
「それじゃあ修君、また会おう。」
「はい!」
少しの間敵の情報を聞き、黒木と修は別れた。
(さてと、此処からどうするかな…)
崩れた建物と建物を経由してパルクールのように移動し、目につく
(一応、修君にはカモフラージュもどきでマーカーとか外しといたが…)
どうなるかなと思考し、時折磁力で引っ張られる左手を鬱陶しく思っていた。
「
「おっとっと、やっぱり見ずらいなー。」
薄暗い地下の中で二人の男が戦闘を行っていた。
片や自身のトリガーの名を叫び目の前の敵を倒さんとする気迫を見せる者。
片やその攻撃をまるで分かっているかのように回避し、受け流す余裕を見せる者。
まるで剛と柔。そのぶつかり合い。
どちらも見るからに正反対。然れど油断はせず、戦いの中で相手の隙をまだかまだかと狙っていた。
状況はこの地下に落ちた時から何も変わっていなかった。だが…
「あー、やっぱりか。」
「お前、なんで此処で捨てられるんだ。」
「ッッッ!」
その均衡は迅悠一のその一言で呆気なく崩れた。
「貴様っ!」
迅の言葉で激昂したランビリスの使い手ヒュースは、なんの対策も無しにただ特攻をする。しかし…
「エスクード。」
迅の放つ防御壁トリガーであるエスクードに挟まれ、動けなくされてしまった。
その瞬間、勝負は決した。地下での激闘はヒュースの感情を利用した迅悠一の技あり勝ちであった。
さてとと、悠一は捕らえたヒュースの方に向かう。
(ん?これは…)
その途中で彼は事前のものとは大きく異なる未来を観測した。
(あらら、何がどうなったらこんなに変わるのかな)
表情を一切変えず何事も無かった様にヒュースの前に立つ。
「取り敢えず、君は捕虜だね。」
ヒュースは迅を親の敵のように激しくそして冷たい眼差しで見つめる。
「そんな顔しないで。それに、こっちに居る方が多分君にとっても都合が良いよ。」
目の前の猛獣のようなヒュースに飄々として向き合う。
(さてと、こっちは一応大丈夫だ。それに、この未来の流れは最高の流れだ)
「修は死ぬ可能性は消えたな。」
珍しく独り言を呟く。しかしそれには確かに喜びが含まれていた。
「ミラ、金の雛鳥はここか。」
「はい。…あら、マーカーを追って来てみたけれどあなたは誰なの。」
「あーあ、もう来ちゃったのか。」
修と離れて十分程が経過したころ黒木は二人の
「というか、本当にワープのトリガーなんだな…」
(ああいうの苦手なんだよなあ)
黒木は修から情報を教えて貰った段階でワープの使い手に注意を向けていた。
(だがしかし、こっちに来たって事はカモフラージュは成功しているようだな…)
トリオン滅茶苦茶使ったけどと黒木は内心で安堵と焦りを感じる。
「ん?…ッ!、隊長。」
「なんだ、ミラ。」
(お、気づいたか)
「金の雛鳥の反応が別の場所であります。」
「何…?」
目の前の二人は少し困惑していた。
「それなら俺が細工したからね。」
黒木は二人を挑発するかのように気の抜けた声を発した。
「そうか…一つ喰わされたようだ。」
だが、ハイレインはそれがどうしたかの様に落ち着いた様相と声で黒木を見下ろす。
「
「ミラ。」
「はい。」
ハイレインに呼ばれた彼女はすぐさま自身のトリガーである
「まあ、ちょっと待ちなよ。」
ることは出来ず、代わりに二人はいきなり
「俺とも少し遊んでくれ。」
終始変わらない態度で吹っ飛んだミラとハイレインを冷たい眼で見つめる。
「成る程…金の雛鳥の元に行くにはお前を倒す必要があるらしい。」
先の攻撃でなにもなく立ち上がったハイレインだが、彼…いや、彼らが黒木に向ける目の色は非常に警戒していた。
「ミラ。早く終わらせて回収に向かう。出し惜しみはしなくていい。」
「分かりました。」
自分たちが勝つことを疑っていないような言葉だが、そこには慢心や怠慢はなく、あるのはただ敵を潰すという殺しの意志だった。
「さあて、しっかり時間は稼がなきゃな。」
自然な体勢で黒木は
(にしても、
使えそうだなと内心思い、黒木は二人に向かい走り出した。
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