TS転生先がエロRPG世界っぽいので最高の敗北を味わうために全力処女プレイしてみせる! 作:北京院
構成を少し考え直したため今話はサナリア視点、次話はユート視点のみです。
季節が過ぎるのは早い。
子供が大人になるのはもっと早い。
俺が記憶を思い出してから5年がたとうとしていた。
魔法の練習をしたり、ユートの剣術にしたり顔でアドバイスをしてみたり、洗濯機もどきを魔法で再現してみたり。
生活を豊かにするのに魔法を使うのは本来難しいけれど、イメージでもって魔法を使うこの世界で日本の家電もどきを再現するのは思ったよりも簡単だった。
「もっとお母さんたちを楽にしたいから」と『新しい魔法』を考えたことにしたのは訓練したいという気持ちもあるし、家族への感謝の気持ちももちろんある。
一応詠唱と呪文が必要ということになっているので『水流よ、穢れを払いし渦となれ。アクアスピン!』とそれっぽく……そのまんまを唱えることにしている。
怪しまれるかとも思ったけれど何度か使っているところを見せたり効果を説明していると俺以外の人も『洗濯魔法アクアスピン』を使えるようになっていった。
桶に水を貯めておいて準備さえしておけばそれを回転させることで汚れを落とす結果を産み出すことは効果の大小こそあれ魔法が使える人にはそれほど難しくはないようでもあった。
つまりは『共通認識による魔法効果』が誰でもイメージできるものになったということだと思う。
すごいすごいと褒めてもらって何度も見せてしまったからでもあるけれど生活が便利になったのでよしとする。
おかげさまで俺は天才魔法使いのタマゴとして村のみんなに人気だ。えっへん。
将来が楽しみだと言われると誇らしくなる。小さな村に収まらない器だと言われる俺をお母さんは嬉しそうに、でも少しだけ寂しそうに見つめていた。
魔物についても調べようと思ったけれど、お母さんもお父さんもあんまり教えてはくれなかった。
乳首ねぶりスライムの実在性は証明できずじまいだ。ねぶられる予定もないけれど。
危険から遠ざけようとしてくれているのはよくわかるので強くは言えないけれど、天才魔法使いのタマゴを信じてくれてもよいのではないだろうか。
幼馴染みのユートはというと、今でも毎日剣を振っている。
上達自体はしていると思うけど、少なくとも人外の動きとかはしていなかった。
魔法を避けたり受けても無傷! とはいかなさそうなので心配だ。
身長が伸びたようで、並んで立てば美少女な俺は見下ろされる立場になってしまったが、それでも弟みたいなものだと思っている。
もしもケンカになっても俺の方が強いだろうし守ってあげなければならないかもしれない。
将来的に守りきれずにユートを人質に取られてしまい仕方なく……ということもあるかもしれないという想像をしてみた。
すごく胸が高鳴る。悪くない。ドキドキした。
ともあれここまでは順調だ。魔法を鍛え、自分を磨き日々を過ごしていた。
もうすぐ俺の15歳の誕生日だ。村の人たちにも才能を認められている俺が『一人前』と言われる年齢になればある程度の自由が認められる。
すぐに旅に出る予定というわけでもないけれど、みんなに認められる一人前の魔法使いともなれば、世界を知る旅に出ることになっても強く止められはしまい。
世間知らずの田舎者ながら見目麗しい娘の一人旅……どんなトラブルが起きるのかわくわくしてしまう。
悪い大人に騙されそうになっても人の善性を信じよう。
強い敵に襲われようともあきらめることなく人々を守ろう。
だってそのほうがダメだった時に興奮するから。
そんな決意も新たに空を見上げていたら雲ひとつなかったはずなのに真っ暗になっていた。
夜になるほどの時間がいつの間にかたっていたわけではない、だって村の人たちはいつも通りの日常の一幕のまま何が起きたかわからない様子で困惑しなから空を見上げている。
皆既日食か何かか? 太陽だけではなく青空が黒に侵食されたように消えている。
自然に起きたとは思えない現象に次第に混乱が広がっていく。
夜ならば見えるはずの星もない。
暗いというよりも、黒い。
いったいどうしたことか、どうすればよいのだと考えているうちに空の青さが山の向こう側から帰ってきた。
まるでカーテンを開けるように黒は消えていきよく知る青空が戻ってくる。
村のみんなが困惑を口にする。
それでも生活を止めることはできずに少しずつ普段のように動き始めた。
不吉な兆候か、何かの知らせか、当たり前の日常の崩壊の始まりか。
何が起きたかはわからないが、何かが起きたことは確かだ。
これまでは変わらずに流れていた『普通』が崩れるのはまもなくに違いない。
それはつまり──
「旅に出るきっかけができたな」
物語の始まりを意味しているということだろう。
大人になった『私』サナリアが、世界を救ったり力及ばず倒れたりする話の始まりの鐘。
空が暗くなった理由は知らないが、きっと数日中にその影響がわかったりして俺は旅に出ることになるのだ。
ひょっとしたら魔王の復活と勇者認定みたいなベタな話があるかもしれない。
人間同士内輪揉めしている場合か!? みたいな利権とか名前だけ勇者でうんたらかんたらっていうのもいいシチュエーションだ。
ともあれここまで磨いた超うぶな誰にでも優しく天才魔法使いな美少女を世間にお披露目する機会だ。
少なくとも表面上は俺はえっちなことをぜんぜん知らない美少女だ。
子供を作るのは夫婦になってからで、それは神聖な儀式にも似たものだとぼんやり思っているぐらいに。
そりゃあもう、えっちな美少女になりたい気持ちも山々だったが俺は耐えた。
だから性欲は無視した。幸いにしてむず痒いような衝動がわくことはあまりなかった。
自分の身体には興奮しなかったので風呂なども問題はなかった。
村のおじさんたちはロリコンではなかったのでそういう対象に見られなかったのもあり、ねっとりした視線を感じるなんてこともこれまで経験できていない。
ああ、楽しみだ。女性はそういう視線に敏いと聞くが自分はどうなのだろう。
ドキドキと高鳴る胸に、旅に出るきっかけをどう切り出したものかと頭を悩ませること3日。
ユートの誕生日を祝おうと家に行くと、ユートが何か思いつめた表情をしていた。
いったいどうしたことかと思いつつも、誕生日を祝う言葉を投げると改めて決心したようにユートが俺の手を取った。
幼馴染として家族以外の誰よりも長く顔を見てきたはずのユートがこれまでに見たことがないぐらい真剣な表情をしている。
「サナ、僕と一緒に来て欲しい」
……か、駆け落ちスタートはちょっと予想外だぞ!?