TS転生先がエロRPG世界っぽいので最高の敗北を味わうために全力処女プレイしてみせる! 作:北京院
幼馴染みの誕生日を祝いに来たら駆け落ちの誘いを受けた。
……と、思ったけれどどうやら違うらしい。
「その、大事な話があるんだ。だからちょっと付いてきてほしいっていう意味だったんだけど……」
なるほど駆け落ちではなく告白イベントね、なるほどなるほど。
……えっ。
抜きゲーだと弟みたいに思っていた相手に思われていたことを知って困惑から断ると逆上されて……みたいな話も結構あるなとは思ったけれどそれはだいたい現代モノだろう。
せっかくファンタジー世界なのにそんなシチュエーションにされても困る。
だいたいユートはそんなことしないだろうしそもそも手酷くふるなんてことをする気もないし……と情報を整理しているうちに手をひかれて村外れについてしまった。
うーん、ユートは優しいし鬼畜ゲーみたいなことはしてこなさそうだし告白を受けたら普通に幸せな家庭をつくれてしまいそうで困るぞ。
弟みたいなもので大切に思っているのは事実だけど性的な対象には思えないだろうし……
「サナ、信じられないかもしれないけれど聞いてほしい」
仕方ない、告白されたら断ろう。
そして気まずくなって俺一人で旅に出るのを見送りにすら来れずにめちゃくちゃ後悔するポジションになってもらおう。
心が壊れた
「僕、夢で女神様に会ったんだ」
「えっ?」
考えていたのとはまったく別の方向の話題が出て思わず聞き返してしまった。
女神様?
「それで、魔王が復活しそうだって話を聞いた。だから阻止するために戦ってほしいって」
魔王? おとぎ話になってる勇者を何度も殺したけど復活されて殺されたっていう魔王が復活? それを阻止?
……それってつまり、ユートが勇者になるってことか?
「突然すぎて驚いたと思うけど、本当なんだ。だから僕は旅に出ようと思う」
「ちょ、ちょっと待って!」
いきなりすぎる。ユートが勇者で女神様が神託を出してる?
旅に出て魔王の配下と戦う?
魔法も使えないし、剣だってがんばってはいるけど人間離れしているわけでもないユートが?
「そんなの危ないよ!」
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫」
何が大丈夫なものか。ひょっとして魔物娘が大量にいるおねショタとか女性上位モノなのか? だったら俺も男がよかった!
とにかく止めねば。明日は俺の誕生日、そこで旅に出る話をしようとしていたのに先にいかれては困る。
「一人で旅にでたら死んじゃうよ!? おばさんが泣いちゃう!」
ユートの家にはお父さんがいない。そのぶんお母さんががんばっていて、私もお世話になったことがある。
あんなにいい人を泣かせようなんて許せない。
「母さんとは話をした。がんばれって言ってくれたし、僕は死なないで帰ってくる」
むむ、了承済みか。というか女神様の加護があるなら死なないで蘇生できるのか……?
普通の人は生き返ることができないのは村で葬式に出席したことがあるので知っている。なんでもありではないのだな、と納得した。
「……でも。ユートじゃ無理だよ。私がやる」
それでも俺の知るユートが旅に出るのは無茶だと思う。
人間の範疇から出ていないのに人外の化け物と戦うのは無理だろう。
「……言ってもたぶん、信じられないよね。じゃあ試してみてよ」
ユートがゆっくり木剣を構える。試せって実力を?
……ケガさせたくはないんだけれど、仕方ない。
「……火球よ、我が敵を撃て。ファイアボール」
魔力をゆっくり放ち、熱量を持たせる。聞かん坊への少しの怒りを含ませた。
一度訓練に付き合ったことがある。その時は3発どうにか対処するのが精一杯な様子だった。
だから今回は8発。速度も前より速くする。
ちょっとケガするかもしれないけどあとで治してあげよう。
なんといっても俺は魔法の天才だから。
浮かべた火球を連続して放つ。ユートはかっこつけたままたっている。
流石にまずいのでは? このままでは全弾直撃する──
「ハァッ!」
しかし。動いたと思った瞬間にはすべて木剣で弾かれていた。
……えっ!? そんなことできるの!?
驚きに目を見開く。そりゃあ大ケガしないようにとは思っていたけれど避けようとしたりするそぶりなく対処されるとは思わなかった。
「……信じてくれた?」
真っ直ぐとこちらを見つめるユートと眼があった。
……ウソをついている眼じゃない。そんなことはわかっていた。
でもまさか幼馴染みが勇者になるとは思わなかった。ユートは弟みたいなものだと思っていた。
一人で旅に出ようとしていたけれど認識を改めなければならないかもしれない。
これはつまり世間知らずの勇者が幼馴染みと一緒に旅に出るタイプの話だ。
普通なら負けない山賊とかに不意打たれるタイプの。
ユートの前でめちゃくちゃにされる自分を想像してみた。
……うーん。ただの敗北よりも興奮するシチュエーションかもしれない。
「すごいね、ユート……女神様に選ばれたなんて」
「うん。サナみたいに自分だけの力じゃないけど……」
「選ばれるのも力だよ、運命力! でも一緒に旅に出るなら準備もいろいろしなきゃかな」
大人になったら旅に出る話を切り出すつもりではあったものの、きっかけがなかったのは確かだ。
しかしユートが勇者になったのならば話は早い。世界平和を願うなら大人顔負けな天才魔法使いを連れていかない理由はない。
「サナ……一緒に旅に来てくれるの?」
「えっ、私置いていかれるの?」
自分がすることになるかと思っていた魔王復活に勇者認定なイベントが頭の上を通り越して幼馴染にふりかかったのは予想外だけれど、概ね計画通りともいえる。
そこでなぜおいていくなんて発想が出てくるのか。ユートが強くなったのはわかったけれど一人で行っても碌なことはないだろうに。
「いや、一緒に来てくれるなら嬉しいけど……」
「じゃあ、一緒にいこう。世界が危ない! っていうのはユートを見てわかった。でも、一人じゃ心配なのは変わらないよ?」
これは本心だ。幼馴染が勇者になったと聞いて嫉妬よりも心配が先に来る。
当然、無垢な勇者として悪意に晒されるというシチュエーションはなくなってしまうけれど、例え俺が途中で倒れても
世界の危機の最中、お母さんや村のみんなまで巻き込んだ壮絶な自慰をして世界ごと逝くのは心残りになりかねなかった。
「……ありがとう。サナ」
「気にしなくていいよ、私もアテもなく空が暗くなったことを調べに旅に出ようとしてたし」
ノープランだった旅に目標ができた。
魔王の復活阻止と世界を救うこと。わかりやすくてちょうどいい。
世界を救う一員として身を粉にして働こう。明るいユートの裏で影を背負うような出来事が起こるのも魅力的だ。
悪い貴族とかに道を阻止されても、献身的な幼馴染が綺麗な英雄譚にしてみせるからね……
とりあえずお母さんたちに話をしなければ、と思って家に帰ったらなんだか既にいろいろユートのお母さんから話をされていた。
放って置いたら一人でも旅に出るだろうしユートに面倒を見てもらうようにとまで言い含められてしまった。
そんなに信用がないのかと抗議の声を上げてみたものの、むしろ信用しているとまで言われてしまっては仕方がない。
確かに天才魔法使いでお人よしのサナリアならこんな事態を知れば旅に出ようとするのは当たり前かもしれない。
ユートと、おばさんと、お母さんと、お父さん。
一緒に夕飯を食べていたらなんだか涙が出てきた。
これが最後になるかもしれない。明日は旅に出るのだから、いっぱい話をしよう。
「――えっ、死者蘇生って今はできないの?」
「少なくとも普通の人間には無理だと思う。僕も生き返られないんじゃないかな……」
ちなみに、ユートに『現代では死者蘇生は不可能』ということを教えてもらったのも話し合いの中でだった。
お父さんもお母さんもすさまじく不安そうな顔をしていた。
まぁ確かに「えっ!? 竹の中にはお姫様がいて桃の中には男の子がいるんじゃないの!?」って年頃の娘が言い出したようなものだからショックを受けるのも当然である。
死亡前提のデスポーンチャレンジは無しにせねば。
教会で生き返ること前提で複数回お楽しみプランも考えていたけれどこれで完全に崩壊した。
下手をすれば初体験がそのまま最後の体験になりそうだ。とっておきの一回、いつ味わうのかは考えなければ。
……もちろん、世界は救うつもりで。
ユートには強くなってもらわないといけないし「ここは任せて先に行け!」とかやろうかな。