不意に意思が浮上する。
胸の奥から次第に"生"の感覚を取り戻し、ぼやけた視界の中で火の粉の様な光が舞い無数の細い糸、自分の髪を構築していく。
「"戻って来たか"、隊長」
死の逆再生と形容したくなる様な、事実その通りの薄ら寒い感覚の中、声の方へと再生したばかりの右手を上げ答える。
「……辛そうだな、そんな酷え死に方したのか?」
なんとも暢気な男の声にイラッとし、声の主である無精髭のオッサンの顔をキッと睨む。
「酷いなんてもんじゃ無いっての!!全身滅多刺しの磔にされた上に顔面殴られて生首ホームランだよ!!??勿体ぶって悠々とドヤ顔で鈍器構えやがって、マジでムカつくあの
ドヤ顔堕鬼もムカつくが、問題なのは死に方だ。はっきり言って最悪に尽きる。
今尚覚えているのだ、全身を貫かれた痛み、顔面への強打によるショック、そんな最中でもハッキリと感じてしまった自分の首と胴が離れる感覚……。
人間は首が落ちても数瞬は意識があるとはどこかで聞いた事があるが、まさか自分が体験する事になるとは思わなかった。
そして何より………
「あんな状況なら自爆して纏めて吹き飛ばして死にたかった!!!」
コレに尽きる。
絶対気持ち良く死ねた。
「………結局それかよ…」
無駄にムカつく声色と仕草にため息まで添えて、「呆れてます」を体現したオッサンの爪先を踏み潰した後、近くの瓦礫に腰掛ける。
「イテテ……そもそもお前の
「アタシを置いて真っ先にくたばったオッサンには言われたく無いですぅ!お得意のデコイ召喚はどうしたんですかぁ?ベテラン兵士のイワンさん??」
「言ってろクソガキ。……ほれ、配給だ。少し前に補給班が来てな、いくつか消耗品も置いてった」
補給物資と共に投げ渡された血液パックを受け取り、軽くお礼を言ってからパックに口を付ける。
私、テルミ(ファミリーネームは覚えていない)とこのオッサン、イワン・ヘイガーは
人外の身体能力を持ち、心臓さえ無事ならばどれ程の傷を受けても再生し、再生力が尽きたとしても一時霧散するだけで時間が経てばまた復活する。
まさに不死身の兵士と呼べるが、定期的に人間の血を摂取しなければ自我を失い、
本来、吸血鬼はとあるバケモノ共を相手にする為に作られた存在だが、今や死んでも死なない自我を失った元同族を殺して回る日々だ。
「最近、ヤケに堕鬼の活動が活発になってるな」
「活発なのはいつもの事でしょ?」
「いつにも増してって事だ。"瘴気"とやらのせいで、こうも動き難くなるとはな……お陰でここ以外じゃコレが手放せねぇ…」
そう呟いて手元の特殊なガスマスク、"浄化マスク"の点検をするイワンを尻目に、私達を照らす"光る植物"を眺める。
「本当、"ヤドリギ"様々だよねー。こうして瘴気の無い安全地帯を作ってくれるし、前線に近い場所で復活させてくれるしさぁ〜」
"クイーン"と呼ばれる特別な
それ以外にも様々な理由から、私達はクイーンとクイーンに操られた堕鬼を討伐するために、日夜死に戻りながら戦いを続けている。
………まぁ、そんな私達を助ける武装や薬品、目の前のヤドリギと呼ばれる発光植物から浄化マスクに至るまで、全てクイーン計画の副産物らしいのが最高に皮肉が効いてるけど……。
「……さて、こっちは準備終わったが、隊長は?」
装備の点検が終わったらしいイワンが、愛用の大斧を担いで声をかけてくる。
「私も大丈夫、愛用の武器にガタが来てる以外問題無いよ」
そう言いながら、火の粉の様な光の粒子を手から放ち、武器を構築する。
私達
また、吸血鬼や堕鬼は再生力が限界に達すると、肉体をこのヘイズに変換して霧散、時間経過で再統合する事で復活する。
霧散した時に衣服なども一緒に霧散し、持ち物の喪失なく復活するのは、この物品のヘイズ化技術があるからだ。
……まぁ、復活時にいくらかヘイズを回収しきれないのは玉に瑕だけど……
「んじゃ、他の奴らと合流したら一旦戻るか……」
「だねぇ、ミリア達無事なら良いけど…」
構築が完了した斧槍を担いで歩き出す。
愛用の銃剣よりは頼りないけど、コレも吸血鬼用の頼れる武器だ。
「勝手に自爆して瀕死になるお前が居ない分だけ楽だろ」
「なにおぅ!?」
軽口を叩き合いながら、今日も私達は戦場へと舞い戻る。