その女、歩く可燃物につき……   作:紙白898

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 まだ何も始まっていない物語に、早くもお気に入り登録していただき本当にありがとうございます。

今回からダクソに入りますが、主人公自身は知識ゼロです。


墓所にて爆ぜる

 鐘の音が聞こえる……

 

 どこかに無事な教会でもあっただろうか…

 

 あったとしても、堕鬼(ロスト)が彷徨く中、こんな馬鹿でかい鐘の音を響かせるのは度を越した愚者だ。

 まるで、襲ってくださいと遥か遠くの堕鬼にまでわざわざ宣伝している様なものだ。

 

 鐘を鳴らす大馬鹿者に文句の一つでも言ってやろうと、閉じていた目を開け寝ていた身体を起こし、"石の棺の縁へ手をかける"。

 

 

 ………ん?

 "石の棺"…??

 

 いや、何故に棺…?

 

 確かに、私達吸血鬼(レヴナント)の名前の由来的には、棺桶に入っているのは不思議では無いのかも知れないが、それはあくまで元ネタのヴァンパイアの話しであり、私達はわざわざ棺桶の中で寝たりはしない。

 

 

 ……思い出した。

 そもそも私は"死んだ筈だ"。

 

 私が隊長を務める小隊のメンバーと合流し、いざ本拠点たる臨時総督府へと帰投しようとした時……

 

 アイツが…

 クイーンの尖兵たる、騎士と呼ばれるあの堕鬼が!

 

 隊は散り散りになり……

 その場で、アイツの槍で、私の心臓は確かに貫かれ……

 二度と復活する事の無い、吸血鬼の真の意味での死。

 

 私は確かに、灰となって消え失せたんだ…

 

 

「なんで……」

 

 思わず声に出して呟いてしまう。

 

 パッと見、周囲には石の棺と墓しか無い。

 なんなら、崩れかけた石塀の上にすら無数の墓が無造作に乱立している。

 崩れかけている事から長い間放置された様にも、地震か何かで倒壊した様にも見える。

 

 少なくとも、私はこんな場所は知らない。

 

 「本当……どこなのここ…」

 

 吸血鬼は、死んで霧散した時にいくらかのヘイズを取りこぼしてしまう事がある。

 その際、多かれ少なかれ記憶も消失してしまうらしいが、直近の記憶すら消失するというのは聞いた事が無い。

 

 そもそも、私は灰となって完全に死んだんだ、全く記憶に無い場所で復活すると言うのはどうも腑に落ちない。

 

 

 当ても無く半ば水没した道らしき場所を進むと、割とすぐに人影が見えた。

 

 ボロ布の様な服を見に纏い、辛うじて袖口とフードの中から見える手と顔は、異様に白く干からびた様に萎びている。明らかに普通では無い。

 

 新手の堕鬼(ロスト)かと思いヘイズ化していた斧槍、"バルディッシュ"を実体化させる。

 

 ……おかしい、私が灰になった時には確かに手に持っていたし、灰になる直前に弾き飛ばされた筈だけど……

 

 深まる違和感を覚えつつ構えれば、案の定堕鬼らしき者が奇声を上げながら折れてボロボロになった剣を手に襲いかかってくる。

 

 

 …まって、なんかおかしい。

 

 ます服装、ボロ布のマントの様な物で全身を覆っているが足は裸足。

 萎びた肌も相まってハロウィンのゾンビの仮装としか思えない。

 

 でもって剣。

 見事にポッキリ逝ってる刃こぼれ満載の西洋剣らしき物を持っている。

 普通は今時こんな古臭い武器を、しかも最悪な状態で使うとか堕鬼でもしない。

 

「キェェェェェェエ!!!」

 

「うっさいわ!」

 

 とりあえず向かってくるので、ガラ空きの首に向かってバルディッシュを振るえば、あっさりと首が落ち血を撒き散らしながら斃れる。

 

「いや、なんなのコイツ…」

 

 最早本当に干からびた死体となったモノをバルディッシュで突いていると、死体から白いモヤの様な物が飛び出し私の顔へ向かってくる。

 

「え、何コレ…」

 

 瘴気の塊とかなら吸い込むと不味いが、今は浄化マスクを付けているため大丈夫だろう。

 

 私の顔を覆う様に飛んで来たモヤは、やがて右耳に息を吹きかけられる様な感覚と共に消失する。

 

「え!?ちょ、ま、み、耳から入った!?」

 

 不可解の連続でプチパニックに陥った私の中に、誰とも知れない声が響く。

 

 

【不死人はソウルを己の贄とする】

 

 

「は……?」

 

 いよいよもって訳がわからなくなって来た。

 

 さっきのモヤがソウルと言う名称なのは、何故か体感でわかったが、"不死人"と言うワードや"贄とする"と言う部分がわからない。

 

 確かにあのモヤが入って来た時、なんとなく先程から感じていた虚無感が僅かに満たされた様な気もしなくは無いが………

 

 

「え、マジで…??」

 

 ………つまり、不死人とは"私"を指す言葉であり、私はこの動くミイラの魂を吸収した……?

 

 確かに、私達吸血鬼(レヴナント)は霧散した堕鬼(ロスト)からヘイズを吸収できるが、あくまで肉体的な存在を削り取るのみであり、魂の様な抽象的な物までぶっこ抜ける筈がない………

 

 

「ええ………」

 

 思えば不自然な事ばかりだ。

 

 情報量が多いためあえて放置していたが、視界に入り込む暗い緑に染められていた筈の自分の髪が、今は何故か少し色味が薄くなりカーキグリーンとも呼べる様な色になっている。

 頭から灰でも被った気分だ…

 

 

 それに、先程から続く謎の虚無感……

 

 復活した直後の虚脱感だと思い無視していたが、どうにも違うらしい。

 

 突然自分の中に響く声をすんなり受け入れてしまっている事も、よくよく考えてみたらかなり薄ら寒い。

 

 

「アァ…」

 

 考え事をしている内に、先程のミイラマンの声に寄せられたのか新たなミイラマンが寄って来ていた。

 

 

「………決めた」

 

 わからない事だらけで無性にイライラする。

 

 何も知らされないまま見知らぬ場所に放り出されて、知らない事象と知識の暴力にタコ殴りにされてる気分だ。

 

「………一回スッキリする為にも……」

 

 溜め込んだモノは吐き出さないと……

 

「お前も道連れじゃぁぁぁあああ!!!」

 

 獲物の首元に掴みかかり、赤熱した血を纏う右手を叩き付ける。

 

 

 激しい爆発音と閃光と共に、全身に馴染み深い痛みが駆け巡る。

 

「快♡感♡」

 

 多幸感と共に吹き飛ぶ私に、またソウルが入り込む。

 

【呪いの印を受けた者は不死人となる】

 

 ……は?

 

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