今回から少々独自展開要素が強くなってまいります。
【火継ぎの祭祀場】
ソウルの記憶により、この建物の名称とここが重要な場所であるという事がなんとなくではあるが把握できた。
中に入れば、やはり目を引くのは正面に立ち並ぶ大小様々な5つの玉座。
入り口は高台になっているらしく、左右を見ればどちらにも登りと降りの階段がある。
暗くはあるが不思議と暗すぎる事無く、無数のロウソクの灯りにより神秘的にさえ感じる屋内を眺めながら階段を降り、中央の一番低い場所に足を向けると、上方から声がかかる。
「ああ、君が火の無き灰、王の探求者だね?」
声の主を探し上を見上げれば、玉座の左から二番目、中央の王座の左隣の玉座に人がいるのが見えた。
どうやら、その人物が玉座に対して小さかった為に、入った時には気づく事が出来なかった様だ。
てか、火の無き灰というのは辛うじて覚えがあるが、王の探求者とはなんぞや…?またしても新ワードで反応が遅れてしまう。
「おや、違ったかな?君、審判者を下してここに来たのだろう?」
黒い肌の痩せ細った男性の声に困惑が混じる。まだ距離があるためわからないが、おそらく表情にも困惑の色が現れているだろう。
「あ、えと、はい!確かに、グンダさん?を倒してここに来ました。でも、探求者?とかは分からなくて……」
私の返しに玉座の人物は「ふむ」と呟き考え込むと。
「君、一つ聞くが、審判者を殺した後身体に火が宿らなかったかい?炎から出したばかりの炭の様に、身体に火が燻る事がある筈なのだが…」
「いえ、何も……」
人に火が燻るとか何ソレ怖!!内側から焼けると?普通なら死ぬでしょ!?
少なくとも、今の私にそんな人体自然発火現象みたいな事は起きていない。起きていたら絶対狂喜乱舞している。
自爆とは別ベクトルの痛みと熱が味わえそうだ……。
「ふむ………もしや、君は急遽用意された後任なのかも知れないね。本来の探求者は、どうやらあの墓所で心折れてしまったらしい……しかし、完全には亡者となっていない様だ。現に、君に探求者たる力、"火を継ぐ力"が備わっていない。これでは火継ぎを任せる事が出来ないよ」
また出た新ワード。火継ぎとは何ぞや?
「えっと…火継ぎとは?」
私の問いに玉座の人物は首を横に振ると。
「君、先ずは先任の探求者を殺したまえよ。そうすれば、火継ぎの力は君に引き継がれ、君も自身の使命について知れるだろう。
私はクールラントのルドレス。かつて火を継いだ薪の王の一人だ。
後任たる灰よ、先任の探求者はまだあの墓所にいる筈。君が使命を知った時、私も火継ぎについて詳しく話そう。だからまず、火継ぎの使命を継ぎたまえよ」
どうやら、その"先任の探求者"とやらを探さないと話しにならないらしい。
ルドレスさんの話によれば、先任さんは私がいた墓所にいるらしいく、私があの墓所で行っていない所は一箇所しか無いためそこに行けば色々わかるのだろう。
亡者になりかけらしいし、先任とやらは正気では無いと見ていいだろう。ルドレスさんが殺し前提で話しを進めていた事からも察する事ができる。
「………わかりました。場所に心当たりがあるので行ってきます」
「君が使命を継いで戻る事を待っているよ」
踵を返し、最後の言葉を受け階段を登ろうとすると、目隠しをした金髪に黒衣の女性が歩み寄ってきた。
「挨拶が送れてしまい申し訳ありません、火の無き灰の方。私は"
「あ、うん、よろしく。火の無い灰?に、絶賛なり損ねてるテルミです。呼び方は好きに呼んでいいよ」
挨拶は大事。どっかの古い文献にも書かれているらしい。
ひもりめ?と名乗る女性は、金属製らしき目隠しで顔の半分が隠れているが、顎のラインや鼻の形から美人と見て間違い無い。
「てか、灰に仕えるって言うけど具体的には何するの?」
"篝火を保つ"という言葉にも疑問がある。
この場所に篝火は無く、あるのは中央にある半分埋没した器に盛られた灰くらいだ。これが篝火の残骸だとしても、肝心の火自体が鎮火してしまっている。
「はい、私は、貴女がソウルを己の力とする事をお手伝いすることができます。火の無い灰とはソウルの器。故に貴女は主無きソウルを力にできるのです。
灰の方、どうぞ主無きソウルをお持ちください」
主無きソウルとは、私が吸収したソウルでいいのだろうか?
だとしたら、ますますヘイズと似た様な扱い方だと思えてしまう。
ヘイズもまた、
これで、ソウルは通貨にもなり得るとかだともうドンピシャなんだけど……
「ああ、ですが。主無きソウルは売買や武器の強化にも必要になります。この祭祀場には、鍛治師のアンドレイ様や品物を用立ててくださる侍女様もおります。
一度、彼らともお話しになってはいかがでしょうか?」
うん、通貨にもなるんね……
と言うか、鍛治師がいるのはマジでありがたい。
祭祀場に入ったあたりから常に鉄を叩く様な音がしていたが、ソレが鍛冶場の音とは確証が持てなかった。
私は、とある吸血鬼用の武器を作る工房に入り浸る事があったのだが、吸血鬼用の武器は内部機構が複雑なだけに地味な組み立て作業が多く、錬鉄の音には馴染みが無かったからだ。
「とりあえず、そのアンドレイさん?の所に行ってみるよ。持ち武器にガタが来てるからね」
「では、あちらの通路をお進みください。通路の横に侍女様が、奥にアンドレイ様がいらっしゃいます」
火防女さんの案内する通りに高台になっている入り口の下、トンネルの様な通路へ進むとすぐに安楽椅子に腰掛けたお婆さんが通路の右端にいて、通路の奥にはめっちゃマッスルな白髪のおじ様が見えた。
おじ様の所に行く前にお婆さんへと声をかける。
「これはこれは、灰のお方。婆めは、この祭祀場の侍女。武器や防具、道具に魔法の類い……。貴女様の使命、そのために必要な諸々を、用立てますのじゃ。
もちろん、婆めも不死。ただでとは言わず、ソウルをいただきますがの……」
「へぇ、装備類も売ってくれるんだ…。手広くやってるのね。まぁ、武器とかになると値は張るんだろうけど……」
「それは致し方なき事。故に灰のお方、より多くのソウルを奪い、お持ちくださいませ。それが、貴方の生業ですじゃろ?」
「まぁ、そう言われちゃあ、はいそうですとしか言えないね…」
"生前から"、私の居場所は戦場で、私の生業は戦う事だった。どこに行ってもやる事が同じなのは、宿命と言うか因果と言うか……
何にせよ、やる事は変わらないという訳だ。
「あっと……とりあえず今は挨拶程度で。先に鍛冶屋さんに用があったから。今度は何か買いに来るね」
「またお立ち寄りくだされ。灰のお方……アハハ…ッ」
侍女さん前を通り過ぎると、トンネルの様な追路は橋へと変わる。高さはそこまででは無いが、そこそこ広い地下空間になっているらしい。
追路の最奥、小部屋になっている場所の入り口に目的の人物が鍛冶道具を広げていた。
「よお、新顔だな?俺はこの祭祀場の従僕、アンドレイだ。………にしてもあんた、ここらじゃ見ねぇ服装だな………ソイツは、並の旅装じゃあねえだろ?」