その女、歩く可燃物につき……   作:紙白898

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錬鉄の音

「……にしてもあんた、ここらじゃ見ねぇ服装だな………ソイツは、並の旅装じゃあねえだろ?」

 

 や、やっとツッコミが入った〜!!!

 

 ようやくだよ!こんな世界観合わない服装してたら普通ツッコむよね!?

 今の私の服装は、カーキグリーンのノースリーブシャツにショートパンツ、膝上までの黒いソックスにアーミーブーツ。その上から、胸部を締め付けるタイプのガンベルト(実銃入り)、吸血牙装である帯が二本とフードの付いた丈の短い野戦迷彩の外套だ。ちなみに浄化マスクは付けていない。

 

 対してこの世界の服装はと言うと、外の亡者達はみんなボロ布のローブなので参考にはならないが、火防女(ひもりめ)さんの暗い色のドレス?や侍女のお婆さんの服、墓所にあった騎士の遺体から、コミックやノベルで良く目にする中世ヨーロッパ風?と呼ばれる文化圏だと思う。

 

 つまり、基本武装が剣や槍の時代であり、存在する火器は精々大砲が精一杯な世界で、私が身に纏うミリタリー系の装備は目立たない筈が無いのだ。

 

「だんまりか、言えねえ事情でもある様だな?」

 

 あ、考え事が先にきて黙り込んでたらしい。

 

「あ、ううん。明らかに目立つ格好してんのに今まで何も言われなかったから、驚いたと言うか、感動したと言うか……あ、私はテルミ!王の探求者?とかなんとかになり損ねてる灰?です」

 

「自覚はあったのか……って事は、持ってる装備はそれだけか?その緑のマダラ模様、草木に紛れるためのもんだろ。お前さん、野盗か刺客の類いか?」

 

 おお、一目で迷彩の用途を見抜くとは……

 勝手な想像ではあるが、おそらくこの世界にはこの様なきちんとした迷彩装備は無いと考えられるので、このおじ様の洞察力はかなり高いと思える。

 

 「ちがうちがう!確かにこの服は野戦迷彩って言って草木に隠れ易くする物だけど、私の役割は〜…なんて言うか…斥候?偵察兵?みたいな物だったから、自然とこういう装備になったんだよ」

 

「ほぅ……なるほどな…ヤセンメーサイか、覚えたぜ」

 

嘘です本当は突撃隊長でした…!

そもそも、元々はコンクリートジャングルだったあの街じゃ、"大崩壊"と呼ばれる大規模地形変化災害があったとはいえ隠れる草木が少な過ぎる。本気で隠れるなら都市迷彩をお勧めしたい。

 

「で?わざわざ鍛治仕事をしている奴の所に来たんだ。鍛えて欲しい武具でもあるのか?」

 

 ああっとそうだった!

 脱線し過ぎて忘れるところだったよ…

 

「あ、うん。鍛えて欲しいって言うか……私が元々持ってた武器にガタが来てさ、もし良かったら作業場を貸して欲しいんだけど……ダメっすか?」

 

「何?武器の修理は鍛冶屋の仕事だ。俺は見た目こそ老いぼれに見えるかも知れねぇが、鍛冶の腕だけは良いと自負してんだ。試しに見せてみろ」

 

 まぁそうなるよね…

 アンドレイさんが修理してくれるのであれば、専門の人に任せた方が一番だろう。

 でもそうはいかない。私達吸血鬼(レヴナント)の扱う武器はかなり特殊で、内部に無数の管が通されていて攻撃した対象の血液を吸収、内臓された血液タンクに貯蔵し装備者からも血液を供給される場合もある。

 

 そんな複雑な武器であるため、相応の知識がある者でしか修理どころか整備すら出来ないのだ。

 

「とりあえず出すけど、難しいよ?」

 

 出さない事には始まらないので、アンドレイさんの作業場の隣に先程の戦いで歪んでしまった斧槍"バルディッシュ"と私のメインウェポンである銃剣"ライオットチェイサー"を出す。

 この武器達、バルディッシュの方は臨時総督府の正規品であるが、ライオットチェイサーの方は"ライオットスマッシャー"と言う武器が原型の改造品でありその原型も廃材を組み合わせて作られたジャンクウェポンだ。ちなみに私が改造した。

 

 つまり、ただでさえ複雑な吸血武器であるにも関わらず、片方は改造した張本人で使い手である私が居なければ始まらない類いの物なのだ。

 

「ふむ……そっちのよく分からん形状の武器は難しいが、こっちの斧槍は修理できるな……待ってろ」

 

 そう言い残すとバルディッシュを手に作業場へ……ってちょっと待って!?

 

「お前さん、ソウルの業を知らねえみたいだな」

 

 一言呟くとバルディッシュを一旦置き、丁寧に説明してくれる。

 

「いいか?武具と言う物にはソウルが染み付いているもんだ。もしくは、誰かの記憶がソウルによって具現化場合もあるが…

 んで、そのソウルには記憶が宿っている。その武具を造った職人や使い手、ソイツに殺された奴らの記憶を含めたその武具自身の記憶だ」

 

 なるほど、確かに覚えがある。

 私が折れた剣を拾った時も、きちんとした剣の振り方、いわゆる剣術と呼ばれる知識が流れ込んできた。

 

「武具の修理だけだってんなら、ソウルを注いでソイツの記憶を引っ張り出してやれば良い。まあ、そっからが職人の腕次第だがな」

 

 それを最後にバルディッシュを金床に置き金槌を手に取る。

 

「お前さんのソウルをよこしな、それで修理してやる」

 

「よこせって言われても……どうやるの?」

 

「お前さんの武器に手を向けりゃあ良い。後はこっちで引っ張り出してやる」

 

 言われた通りに手を伸ばせば、私の中に貯まったソウルの一部が私の腕を経由してバルディッシュとアンドレイさんの金槌に流れて行く

 

「感覚は掴めたな?次からは自分でやってくれ」

 

「うん、わかった」

 

 ソウルを渡し終えたので、少し離れた場所からアンドレイさんの作業を眺める。

 アンドレイさんが金槌を打ち付ける度にバルディッシュはソウル化と実態化を繰り返し、本来の姿見へと修復されていく。

 

「……終わったぞ」

 

 10分程度で修理が終わり、新品同然になったバルディッシュを手渡される。

 

「早いね」

 

「まぁな、これくらいなら大した事じゃあねぇ。……だが、もう一本がなぁ…」

 

 先程の説明を聞いて何となくわかった。私の愛銃、ライオットチェイサーは複数のソウルと記憶が混在しているんだと思う。

 元々、廃材を集めて作られた粗製量産武器である上に、破損した側から同族の遺品で修理・改造を繰り返してきた物だ。

 

「ソウルを見てわかったが、これ程継ぎ接ぎな上に歴史も浅けりゃあソウルによる修理も出来やしねえ。部品毎にバラして打ち直す他ねえな……」

 

 なんとなく察していたので衝撃は少ない。いくつか強化用の素材は拾っていたので、打ち直せる所をやって貰おう。

 

「とりあえず強化用の楔石?っていうやつが少しあるから、刃の部分だけでも打ち直せない?」

 

「ああ、武器全体を打ち直すなら足りねえが、刃だけなら可能だな。作業場の隅を貸してやる。俺にはその武器は手に負えねえみたいだしな、お前さん用の工房にすると良い」

 

「え、マジ!?ありがとう!!さっさとバラしちゃうね!」

 

 作業場の隅に工具を広げ、ライオットチェイサーを分解。使えそうな部品をヘイズ化して回収し、いくつかの楔石とブレード部分をアンドレイさんに預ける。

 

「打ち直すには時間がかかる。武器一本じゃあ心許無いからな、そこの侍女から予備の武器を買うと良い」

 

「わかった!ありがとう!」

 

 一旦鍛冶場を離れ、侍女さんの所で武器を買おう。どんな武器があるだろうか…?

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