愛され過ぎて夜も眠れない炭治郎   作:紫煙隊

6 / 14
落ち過ぎて明日が見えない水柱

 

パチリパチリ

 

焚き火が音を立てる

火の粉が飛んでは燃え尽き消え、また飛ぶ

乾かしたわけでもない枝の先から

残った水気がシュワシュワと泡として出て煙と化す

音を立てる焚き火と対称に

焚き火を囲む三人は無言であった

 

 

花札のような耳飾りをした少年 竈門 炭治郎

炭治郎は長男として弟妹達の世話をしてきた

食事や風呂は勿論、寝付かせたり遊んであげたりと

だから御襁褓(おむつ)の交換…下の世話もしたことがある

 

 

俺は長男だから我慢できたけど

次男だったら我慢できなかった

 

 

雪の積もる山中、それも深夜ならば相応に冷え込む

濡れてなさそうな枯れ枝を探し焚き火にした

寒さで手が悴む(かじかむ)中、

近くの沢で汚れてしまった男の衣類を洗い

焚き火の近くに拡げて干す

衣類を洗っても本人が汚れたままでは意味が無いので

呆然としたままの男もついでに沢に投げ込み清める

ガクガクと震えているが炭治郎の知ったことではない

初対面の相手に下の世話をさせるような男だ

いっそのこと、そのまま沢を流れていってしまえばいい

 

 

 

桃色の着物に市松模様の帯の少女 竈門 禰豆子

禰豆子は長女として弟妹達の世話をしてきた

そして炭焼という大して稼げない仕事をする兄に代わり

母と共に書き物(ウ=ス異本)を内職としていた

 

 

精一杯頑張っても駄目だったんだから仕方ないじゃない

人間なんだから誰でも…

何でも思い通りにはいかないわ

 

 

何事も限度というものがある

生理現象ならば尚更だとも理解している

されど兄が大の大人の尻を洗っているのは度しがたかった

沢に叩き込まれ寒さからか辣韮(らっきょう)の様になっている

全くもって度しがたい

禰豆子の限度は限界を迎えそうであった

弐、参、伍、漆、拾壱……

素数は壱と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字

私に勇気を与えてくれる…拾参、拾漆、拾玖…よし処そう

…じゃなかった、落ち着かないと……

何かを察したのか男はビクビクと震えているが

初対面の兄に下の世話をされるような男だ

いっそのこと、六太のペットにどうだろうか

 

 

 

全裸に黒い詰襟を羽織り膝を抱えた青年 冨岡 義勇

冨岡は……腹を切りたいくらいに落ち込んでいた

年下の少年少女の前で粗相を不様を晒し

その処理までされてしまったのだ

 

 

俺は柱じゃない

 

 

少年少女の内、少女の方は鬼だろう

だが、この状態で切りかかったなら外道に落ちるだろう

鬼を目の前にしてなにもできない

かといってこの二人を見逃せば

この件を風潮され鬼殺隊の名を貶めるだろう

いったいどうすればいいのか

錆兎、お前ならどうした

蔦子姉さん、俺はどうすればいい

そう思い干された羽織を見つめる冨岡だが

羽織は何も応えない

ただ、新しく茶色い染みが増えていた

 

 

 

焚き火の中でパチンと何かが爆ぜた

終始無言のまま気不味い時間が

ただただ続くことに耐えられなかったのか

炭治郎が声を掛けた

 

「あ、あの!」

 

膝を抱えたまま冨岡は顔を向ける

光の消えた目(ハイライトのない目)で炭治郎を見据える

 

 

「その格好で膝を抱えられると…その、

 一物がまろび出ていて目のやり場が…!」

 

 

現代風に説明するならば

裸パーカーで体操座りしているようなものである

そりゃあ色々まろび出ても可笑しくないだろう

かといって胡座(あぐら)を掛けば

それこそ色々と御開帳されてしまう

正座でも同じことである

冨岡は詰襟を羽織るべきではなかった

腰に巻き尊厳を守るべきだったのだ

 

炭治郎の言葉を聞いて冨岡は泣いた

疼くまり亀のように身体を丸め泣いた

真実だったとしても言わないほうが良いこともある

言うべき時に言うべきことを言ったのだとしても

真実は人を傷つける場合があるのだ

通称としてそれは死体蹴りとも言う

 

泣いて泣いて泣き疲れ

いつの間にか冨岡は寝てしまっていた

冨岡が目を覚ますと周囲は明るくなっていた

焚き火の日も小さくなって燻っている

そして少年少女はいなかった

 

 

 

 

ついでに冨岡の財布も日輪刀も手荷物もなくなっていた

残っているのは染み付きの羽織と詰襟だけである

 

 

 

 




※竈門 炭治郎の設定(実行犯)

鼻が利く彼にとっては辛かったかもしれない
そうでなくとも真冬の洗濯は辛い
辛いことも多かったけど
臨時収入も手に入ったのでよし!

※竈門 禰豆子の設定(計画犯)

夜、炭治郎が寝ている隙に
鳴女さんルートで一時帰宅していたりする
家族に報告、連絡、相談をしているので色々と筒抜け
その後、冨岡を題材にした春画を制作し販売したった

※鬼舞辻 無惨の設定(確信犯)

義理娘の報告によって水柱の残念さを知る
十二鬼月経由で一般鬼にまで知れ渡った
某宗教団体や某遊郭でも知れ渡った
逃げ場を与えない鬼手である

※冨岡 義勇の設定(被害者)

鎹烏を通じて隠を呼んで着替えを貰った
…後日、隊員からの視線の変化に戸惑う
軽蔑した目で見られるのはまだいいのだが、
妙に熱の籠った視線を向けてくる男性隊士が怖い

※冨岡の鎹烏の設定(戦犯)

ちょっとボケてきている老烏
ある意味で冨岡の危機だったために
鎹烏ネットワークで実況しつつ救援を求めた
結果、悲劇は柱を含む全隊士に知れ渡った

※某炎柱の設定

鎹烏からの連絡にビックリ
まさに“よもや、よもや”である
今度会った時に渡そうと
懐にセンブリを忍ばしておくことにした

※某蟲柱の設定

鎹烏からの連絡に大爆笑
あやうく呼吸困難で死にかけるところだった
後日、行きつけの書店で陰間本を買ったら
某水柱そっくりな絵でまた大爆笑した

※某蛇柱の設定

鎹烏からの連絡に耳を疑った
もしや血鬼術の影響なのではと疑う
そうだとしたらなんて恐ろしい血鬼術だと
出くわしたらどうしようと怯える

※某恋柱の設定

鎹烏からの連絡に胸がドキドキ
新しい扉が開いた……かもしれない
後日、蝶屋敷にてシリンジとグリセリンを受け取る
いったいナニに…そして誰に使うのか…

※某音柱の設定

鎹烏からの連絡に派手に噎せた
地味ではないが派手と言うにはあんまりな行動に
なんと評価するべきか悩んでいる
嫁達がコソコソ相談しているのが怖い

※某霞柱の設定

鎹烏からの連絡に唯一動じなかった
後日、柱会議中に布オムツを差し入れた
心遣いができる優しい子、
時と場所を選べていればなお良かった

※某風柱の設定

鎹烏からの連絡が鬼狩り中に届いて死にかけた
その後、藤の家での休息時に
流行りの洋食として“カレーライス”が出て来て
複雑な心境に陥った……美味しくいただきました

※某岩柱の設定

鎹烏からの連絡に感心した
まさか脱糞してまで鬼と戦っていたとは…
鬼殺隊の鑑だと思っていたのだが
その後、真実を知り号泣した
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。