愛され過ぎて夜も眠れない炭治郎   作:紫煙隊

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判断が早すぎて死にかける天狗

 

 

懐も温かくなった竈門兄妹は楽しみながら旅をしていた

禰豆子が鬼と化してしまっているために

共に行動できる時間や場所こそは限られているが

不自由なのと不幸なのは違うのだ

正月が過ぎ、雪解けも近くなる頃

炭治郎は奇妙な噂話を聞いた

 

曰く、刀を持った老人である

曰く、人間と思えない速度で走る

曰く、天狗の面を被っている

曰く、いい歳なのに波文様に瑞雲柄の派手な服を着ている

 

炭治郎は思った

妖怪の類いに違いないと

実の妹が鬼になったのだ

鬼が存在する以上、妖怪だっていても不思議ではない

 

 

補足するならば

大正時代に自動車はあったし飛行機も発明された後だ

銃も火縄銃ではなく機関銃が存在したし

ローラースケートだって流行して

ローラースケート場だって造られた時代だが

妖怪や幽霊の存在は密やかに信じられていた

現代人が聞いたならば馬鹿馬鹿しいと思うやもしれないが

昭和から平成にかけても“口裂け女”や“人面犬”など

都市伝説として聞いた者は多いだろう

令和の世となってもテレビでは心霊番組はやるし

ネットで調べれば心霊スポットもいくらでもある

街が灯りで溢れ明るくなっていっても

いつの世も”闇に潜む者達”は信じられてきたのだ

そして信じる者も信じない者も

“ソレ”に実際に会うなどとは考えてはいない

 

 

炭治郎は人気の無い夜道を歩いていた

普通ならば出歩くような時間ではない

布団に入り眠りにつく時間だ

なぜそんな時間に外を歩いていたのか

禰豆子の為である

日中、出歩くことの出来ない禰豆子の為に

深夜に二人で散歩をするのが日課になっていた

そして街中だと夜回りの警察官に見つかると

物取りと疑われるため、人気の無い道を選んでいた

そして、出会ってしまった

 

 

「お前が連れているのは鬼だろう」

 

 

炭治郎が聞いた噂話通りの風貌

“ソレ”は急に現れた

風下から気配を消して近づいてきたのだろう

声を掛けられるまで炭治郎は気付けなかった

 

 

 

竈門家流 炭焼術

 

投石

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

炭治郎は思い切り石を投げつけた

しかし、驚かせはしたものの

余裕をもって避けられてしまった

 

投石 投石 投石 投石 投石 投石

投石 投石 投石 投石 投石 投石

投石投石投石投石投石投石投石投石…

 

「なっ、ぬぅ、ちょ、ちょっと待てい!!」

 

「黙れ!!不審者!禰豆子には指一本触らせない!!」

 

 

よく考えてもらいたい

兄妹で仲良く夜道を歩いていたら

天狗の面を被ったジジイが声を掛けてきたらどう思うか

百歩譲って妖怪か何か

普通に考えれば不審者でしかないだろう

 

「儂は鱗滝 左

竈門家流 炭焼術

戦斧 熊殺し

 待てと言っとるだろうに!!」

 

「くそっ仕留めきれなかった!禰豆子!!

 急いでお巡りさんを呼んで来てくれ!!

 こいつ、動ける不審者だ!!」

 

ネズダッシュε=┏(´・ω・)┛

 

「待てい!!本当に待てい!!

 儂、死んじゃうから!!社会的に死んじゃうから!!」

 

「よし頼んだぞ禰豆子!!地獄(監獄)に落ちろ不審者!!」

 

 

何か言いたそうにしつつも不審者は逃げだした

万が一本当に捕まったら一大事である

まず腰の刀について咎められるだろう

逃げようと抵抗をすれば公務執行妨害で手配されるだろう

警察が駆けつけた時点で詰んでしまうのだ

主に人生が

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

かつて継子であった冨岡から手紙が届いた時には

鱗滝はいつもの近況報告だと思っていた

しかし、手紙を読み進めるうちに表情が険しくなっていく

 

 

「鬼と化した妹を連れた少年を見つけ匿って欲しい、

 そして“件の件(くだんのけん)”について内密にするよう

 よく言い聞かせて必要なら催眠術を掛けて欲しい…か 

 義勇…もう、お前の脱糞の件なら皆知っとるからな…」

 

 

秘密にしているつもりでも

周囲は既に知っているということは多々ある

天狗の面の下に光る物が流れる

涙ではない

鬼狩りは泣かないのだ

鬼を全て狩りきるその日まで…!!

しかし、あまりにも憐れ

あまりにも不憫

 

鱗滝は思った

昔から妙なところで鈍い子だった

梅干の種を蒔けば梅干の木になると冗談で言ったら

種を蒔いて毎日水を掛けに行っていたな…

(ふんどし)に唐辛子を塗るのが強さの秘訣だと言った時は

勝手に錆兎の褌にも塗りたくって儂が見つけた時には

二人して泡を噴いて倒れていたこともあったな…

 

 

「せめて義勇の中だけではバレてないことにしてやろう」

 

 

鱗滝なりの優しさである

真実を話すのはあまりにも酷な話だ

もっとも勘違いしたまま放っておくのは

優しさと言っていいのか迷うところであるが

…兎も角、鱗滝は件の鬼を連れた少年を探すことにした

 

手紙によると日輪刀まで盗んでいったそうだ

ならばある程度なら匂いで追えると

街や村を訪ね歩いた

そして、嗅ぎ憶えのある匂いに気付いたが

ソレは質屋で売られている日輪刀だった

金を払い日輪刀を買い戻し、

質屋の店主に売った者について確認をする

どうやら先日に売りにきたばかりのようだ

ならば遠くには行っていないだろう

 

数日後、それらしき二人組を見つけた

まず間違いないとは思うが念のため声を掛ける

 

(出会い頭に投石だと!?判断が早すぎる!?

迷わずにいきなり殺しにきよった!?)

 

返事変わりに投石が返ってきた

それも連続でだ

落ち着くように声を掛けるが

返事変わりに斧が返ってきた

 

(流れるような連撃…!!隙生まない立ち回り…!!

仮に呼吸法を修め鬼殺隊の戦士となれば…!!)

 

 

 

「くそっ仕留めきれなかった!禰豆子!!

 急いでお巡りさんを呼んで来てくれ!!

 こいつ、動ける不審者だ!!」

 

 

(っ!?待て、それはいかん!!

というか鬼の癖にお巡りさんは駄目だろう!?)

 

「待てい!!本当に待てい!!

 儂、死んじゃうから!!社会的に死んじゃうから!!」

 

鱗滝としては誤解を解いて、話をしたいのだが

状況が許してはくれなかった

逃げながらも鱗滝は思った

これからは冷静によく考えて判断をするように教えよう

 




※竈門 炭治郎の設定

竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽
…それと竈門家流 炭焼術の後継者
呼吸法無しで現役の柱を追い込む程度には強い
不審者の撃退に成功した

※竈門 禰豆子の設定

ポリスメンを呼びに行ったが
よくよく考えれば自分達もヤバくねと気付き
引き返してきた
斧を持ち歩く子供なら補導されても仕方ない

※謎の天狗仮面の設定

目撃情報が相次ぐ妖怪…もとい不審者
いつも派手な格好をしているのに
何故か捕まらない
その正体はいったい…

※竈門家流 炭焼術の設定

斧、鉈、鎌、鍬、鶴嘴、火箸等の道具や
自然物を利用した戦法と体術のハイブリッド
極めれば斧一つで熊を狩ったり頭突きで猪に勝てる
想定相手が自然環境そのものなので殺意高めの技が多い
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