(これは……?)
ましろは浜辺に横たわる胴体に日の丸をつけた錆びた鉄くずを見つける。近くによってよく調べてみようとすると背後から声が聞こえた。
「これは日本の零戦だ……」
(ゼロセン……?)
聞きなれない単語にましろは首をかしげる。
「昔、日本人はこんな南の島でも戦争をしていたんだ……」
(日本が戦争を?何を言っているのだ?)
ましろが振り向くとそこには見たことがない男性が立っていた。胸のプレートには「角松洋介」とある。
「あなたは何を……?」
「日本は昭和20年8月15日ポツダム宣言を受諾し無条件降伏をした。この戦争で民間人を含めた約200万人が死亡した……」
淡々と語り続ける男にましろはついていくことができず頭を抱えてしまう。
「あなたはいったい何を言っているんだ!日本が戦争をするなんて歴史はない!ブルーマーメイドは何のために作られているんだ!」
そしてましろは突然目の前が真っ白になった。目が覚めるとそこには
「な、なんだ!」
「大丈夫でしたか?とてもうなされていましたが……」
幸子がましろにタオルを手渡す。ましろは汗でびしょ濡れという事に気が付いた。
「ありがとう……。ところで今何時だ?」
「0730ですが……」
完全に遅刻である。
「納沙さん、西崎さんは?」
「もう江田島に……」
「なんで起こしてくれなかったんだぁ!!」
ましろは幸子に責任転嫁しながら制服に着替え、宿舎を飛び出る。
広島県安芸郡江田島町呉女子海洋学校 講堂
「我々ブルーマーメイド日本支部の主な役割は海賊から我が国のシーレーン防衛に主眼が置かれていた。しかし、ブルーマーメイド体制を取っていない隣国の台頭で今までの体制では対処できない可能性がでてきた。そこで現在、急ピッチで進められているのが『記念艦超甲巡あづま』の再就役である。」
ましろが講堂のステージでマイクを握りながら熱演する。これは3年生となった学生が入学航海を終え、帰投した1年生に海洋学校とブルーマーメイドがどのようなものであるか学生の立場から説明することによって、相互理解を深めるというのが趣旨となっている。今年は晴風に白羽の矢が立ったわけだ。しかし、ましろは何やら勘違いしているのかもしれない。
「『あづま』では大和型と同等の攻撃力と防御力を備え、なおかつRATt事件で脆弱性が指摘された電子機器を極力使用しないでいる。このことによってECMなどの……」
ステージの袖では幸子と芽依が熱演するましろを見ている。
「副長、なかなか様になってるじゃん」
「そうですかねぇ。私は何か勘違いしているようにも見えますけど……」
ましろがステージ袖の目隠しを開け、幸子に合図を出す。
「一度舐められたら終生取り返しがつかんのがこの世間や……。時には命張ってでも……」
幸子は1年生の前でお得意の任侠の真似をしている。
「あのバカは何を……」
ましろは赤面しながら頭を抱えた。
「ズバリ!私たちに必要なのは撃て撃て魂!撃たれる前に撃つ!危険と判断したら……」
芽依の発表の際もましろは赤面した。
「アイツは何が言いたいんだ……」
1年生の中にトリガーハッピーが生まれないことを祈るばかりである。
講堂での講義を終えた3人はすぐに荷物をまとめて帰りの船に乗った。そして翌日の05:30に横須賀フロート艦に帰投した。
三人が晴風の停泊している埠頭に行くと、艦首で晴風を見つめる明乃を見つけた。
「岬艦長!ただいま帰投いたしました」
ましろが声をかけると、晴風を見つめる明乃が振り向いて敬礼する。それに続いて三人も敬礼する。
「お帰りなさい!シロちゃん!メイちゃん!ココちゃん!」
「晴風に何かありましたか?」
「いや、ただ見ていただけだよ……出航前での癖で……」
頭の後ろを書きながら少し照れたようにする明乃。
「そ、そうだ!思い出した。シロちゃん、ちょっと頼まれてくれない?」
「なんでしょう?」
「記者さんが晴風のことを取材したいって。それでシロちゃんにインタビューしていって……」
「確かに、ブルーマーメイドを牛耳る宗谷家のご令嬢に取材できる機会なんてそうそうありませんからね」
幸子のからかいをましろは無視して晴風の舷側から手を振る長身の女性を見る。
「フリージャーナリストの片桐と言います!宗谷さん!待っていたんですよ。お話うかがっても?」
「出港前で多忙なので、夜まで待っていただければ!」
「了解です!艦内のスナップなどいただきながら時間を潰してますよ!」
ましろたちが晴風に乗艦すると、丁度6時の起床ラッパと共に夜が明けた。
横須賀港第一
旗艦の金剛型大型直接教育艦比叡が出港の出航を伝える汽笛を鳴らす。各艦で出港のラッパを鳴らす。
晴風でも万里小路が艦首の海軍旗の前でラッパを吹く。2年間あまり成長していないようだ。
もやい作業が終わり、仕事のない砲雷科と主計科の面々が舷側にズラリと並ぶと艦が動き出す。
「両舷前進微速。赤黒なし」
明乃の号令を航海長のリンが復唱し、舵輪をまわす。晴風が徐々に岸壁を離れていく。
舷側に並んだ面々は港に並ぶギャラリーに手を振ったりして盛り上げる。
「両舷前進半速」
晴風がある程度港から離れると舷側に並んでいた面々も艦内に戻っていく。
その夜、食堂
「成程。代々一族がブルーマーメイドで自分も憧れて……それだけですか?」
「他に何か必要ですか?」
「いやぁ……例えば国防意識に燃えてとか、ブルーマーメイドの現在の状況を憂いてとか……」
「私にわかることは艦のことだけなので……」
ましろがのらりくらりと質問を回避していると片桐がいやらしい顔をしてこう問いかけた。
「今後、隣国との関係悪化が予想されていますが……もし戦うことになったらブルーマーメイドは戦えると思いますか?」
ましろは少し間をおいて答えた。
「片桐さん、あなたは人を殺したおことがありますか?」
「え?……」
「私たちもあなたと同じように人を殺したことは無い。でも、この服を着ているという事は命令があればヤルというのが私たちだ。人を殺す武器を持つことができるのはその武器で殺される覚悟があるもののみだけ。私たちはその覚悟で日々を過ごしている……」
「………」
「時間ですね。失礼します」
ましろは食堂を出た。
出港4日目 東経153度、北緯25度
最上部の見張り台で遠くを眺めてぼんやりしていたマチコが眼鏡をはずし、見張り台を出る。
(この空……妙だな……)
そして伝声管に向かって報告した。
「艦橋、進路方向に積乱雲と思わしき雲を発見。気象班に問い合わせを!」
「こちら艦橋了解した」
ましろが返答をするとすぐに電信室の鶫に海洋学校本部の気象班に問い合わせるように命令した。
30分後、気象班からの返答があったと告げる。
「ミッドウェー島北西に低気圧あり。気圧965hp、風速40メートル。なおも勢力を増しているとの事です」
「予報にはなかったな……」
「そうだね。……シロちゃん、時化に備えて総員配置に。荒天準備となせ!」
「了解しました!」
ましろが艦内に伝えると一気にあわただしくなる。艦橋にも幸子と芽依、志摩が駆け込んでくる。
「こんなの予報に無かったのにぃ!」
「Oui」
遅れてリンが艦橋に駆け込んできた。そして総舵輪を聡子から受けようとした……その時だった。
晴風を謎の光が雷鳴と共に包み込んだ。
「きゃあ!」
頭を抱えてしゃがみ込む明乃。恐怖のあまり泣き出すリン。
「各部、損害を報告せよ!」
ましろが咄嗟に伝声管に怒鳴ると、各所から次々に返答が返ってくる……一室を除いて……。
「電測室!電測室!」
ましろが連呼するとようやく返答があった。
「れ、レーダーに……
レーダーに僚艦を捕えられません!!!」
「レーダーが利かないなんてことがあるか!通信は!?」
電信室で鶫が機械をいじくるもどの艦とも連絡を取ることができない。
同時刻、機関室から計器の針がグルグルと回り続けている事が報告された。
「一体……一体何が起きているんだぁ!!」
とりあえずここまで書きましたが疲れました。
もっとスピード上げないと……!