あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
『ジャパンダートダービー』もいよいよ佳境だ。
最終コーナーを越え、ウマ娘達は最後の直線に入る。
そして、その目には当然諦めなど微塵も浮かんではいない。
皆が皆、最後の一瞬まで己の勝利を見据えている。
そして、その中でも特に鮮烈に映る二つの影があった。
「さぁぁ!!激しく競り合う二人!!勝つのはシンコウウインディか!!ミニロータスか!!」
「熾烈な先頭争い、凄まじい闘志と闘志のぶつかり合いから
「ミニロータス!!詰める詰める詰める!!見ていて恐ろしくなるほどの末脚!!その冴えだ!!」
ウインディ…負けるな…!!
カメラを握る手に、思わず力がこもる。
「残り200を切った!!」
「シンコウウインディ!!まだ先頭を譲らない!!しかしミニロータスはもう二バ身ほど後ろにつけている!!」
レース前はあれほどまでの沈黙を保っていた周囲は、それぞれの想いを託すウマ娘達への声援が続く。
そして、その中には…。
「差し切れ〜!!ミニロータス〜!!」
「いや!!まだやれる!!まだ行ける!!負けるなぁ〜!!シンコウウインディ〜!!」
ウチのウインディを応援する声も多くある。
そして、その声援を耳にした時、オレはカメラから手を離し…。
□
よし!!よし!!よし!!
もう射程圏だ!!距離はあと150を切った!!
十分だ!!十分差し切れる!!
「…………!!」
言葉なんて出ない。こっちだっていっぱいいっぱいなんだ。
あとはタイミングを測るだけ。
焦るな…しかし、瞬時に差せ…。
そうすれば勝てると、お前が今年のダートG1初の一着だと、そう自分に言い聞かせていた時だった。
「ウインディ〜〜!!」
声だ。ウマ娘の間でもあのトレバカで有名な、シンコウウインディのトレーナーの。
「一緒にお祭り行くんだろ〜!?オレは待ってるぞ〜!!」
なにを…っ!?
「トレーナー…」
ゾワッ…
前をゆくウマ娘の…気配が変わった。
ただがむしゃらに抜かせるものかと、そう息を切らしていた標的が、ガチリ…とスイッチが切り替わったように研ぎ澄まされるのを肌で感じた。
しかし…それでもわたしのすることは変わらない。変わっちゃいけない。
残り距離は…100を切ろうとしている。
ここだ。ここが仕掛け時だ。
残った脚を…そのありったけ溜め、炸裂させる。
最後の加速。アイツを追い抜くその時のために。
…勝負だ。シンコウウインディ!!
□
「ウインディ〜!!負けるなぁ〜!!」
気がつけば、席を立って声を張り上げ、ウインディに声援を向けていた。
「さぁぁ!!ミニロータス、今!!今仕掛けました!!差せるか!!差せるか!!」
「差し切っ…いや!!シンコウウインディ!!負けじと抜き返す!!」
迫るミニロータス。離すウインディ。
そして、ゴールまでの距離があと20メートルを切った頃…その均衡は崩れた。
「シンコウウインディ!!突き放した!!ミニロータス!!最後の力を振り絞るも届かない!!」
「シンコウウインディ!!1バ身ほどの差をつけ今!!今ゴールイン!!」
「クラシック級ダート王の称号は今!!彼女のものとなりました!!」
着順が確定してから、オレはウインディを労おうとターフに駆け寄る。
「ウインディ〜〜!!」
「のだっ♪トレーナ〜〜!!」
先ほどまでの戦士の顔は何処へやら。
いつもの調子で駆け寄って来るウインディ。可愛い。
「勝ったのだ〜♪」
「うぉっ…」
急にこっちに飛びついて来るウインディ。
オレは怪我をさせまいと、何とかバランスをとって持ち堪える。
そのまま後ろに回ると…
「ガブガブガブ〜っ♪」
おお。いつもの一発では無く何度も噛みついてくるパターンだ。可愛い。
今日、はじめて袖を通したウインディの勝負服は、ちょっと砂で埃っぽいが、全く気にならない。
むしろあの頑張りを目にした後だからか勲章のようにさえ感じられ、むしろとても誇らしかった。
「ほらほらウインディ〜、今日はウイニングライブが…」
「のだ〜♪も〜ちょっと降りたくないのだ〜」
いつになく甘えて来るウインディ。可愛い。
まぁ、あの激戦を制したわけだし、疲れているのは本当だろう。
結局オレはそのままウインディを連れてステージの準備が整うまで控え室へ。
脚をアイシングしつつ、ウイニングライブでの曲と振り付けを、PCで最終確認しつつ、頭の中で繰り返してもらう。
曲名は…『UNLIMITED IMPACT』
ドロップ狙い…しんどい…。