あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
バァン!!
「トレーナー!しゅぎょーするのだー!」
トレーナー室の扉を最早恒例といわんばかりに勢いよく開けるのはご存知ウチの担当ウマ娘である。
「修行って言ったって、トレーニングはいつもしてるだろう?」
「ちーがーうーのーだ!トレーニングじゃなくってしゅぎょーがしたいのだー!」
修行って言ったってなぁ…
「あの漫画とかでよくある山籠りとか、滝に打たれるみたいなやつ?」
「そう!それなのだ!」
目をキラキラさせながらウインディは頷く。可愛い。
とはいえ、合宿場は基本夏に利用するもので、さらに今はシーズンでは無いため、空きはないだろう。
仮にあったとしても、学園の方針的にチーム持ちのトレーナーに優先してあてがわれるだろうことが想定できるため、近場だったりトレセン学園関係のところを使える可能性は非常に低い。
そのことを説明するとウインディは露骨に落ち込む。
「そもそも、どうしていきなり修行なんてしようと思ったんだ?」
そう聞くとウインディは思い出したように再び目をキラキラさせてとある本を見せつけて来る。
「コレに書いてあったのだーー!!」
ウインディが取り出したのはひと昔前の熱血スポ根マンガである。
あれだ。千本の矢を目にも止まらぬ動きでかわすとか、真剣白刃取りしたりとか、水中で休憩もなしに一時間泳ぎ回るとかそんなやつ。
「普通に危ないわ。修行の名を借りた拷問だよそれ。」とは流石に言えないためオレは可愛いウインディを傷つけないよう出来る限り慎重に言葉を選ぶ。
「あの〜ウインディさんや?どうしてそんなマンガを?」
「トレーニングのヒントになると思って図書室で色々探し回ったのだ!」
偉いのだ〜?と聞いて来るウインディは正しくエンジェルである。可愛い。
まぁ、確かにまだ体が出来上がったばかりのジュニア級のトレーニングは場合によっては退屈に感じるかもしれない。
基礎の繰り返しなど、大切だと頭では分かってもいざやってみると地味な割になかなか苦痛だったりする。
だからこそ、時たま手の空いたダートウマ娘に並走を頼んだりしているのだがなかなか相手が見つからないのが現状だ。
かと言って、ヘンに同期に頼んだりして手の内がバレるのも避けたいためその相手も必然的に限定されてしまう。
ならばここは気分を変える意味でも座学を教えるか?
いや、多分開幕五分で寝る!
そもそもウインディは直感でレースを運ぶタイプ、言うなれば本能型のウマ娘だ。
有名どころを例に挙げるなら、ナリタブライアンや、ウイニングチケットなどがそれに当たるだろうか。
無論、彼女らも全くの無勉強ではないだろうが、傾向としては似ている。
そして、そう言ったウマ娘は往々にして不器用な子が多い。説明が下手だったり、どうしても感覚的に伝えようとして上手くいかないパターンが多く見られる。
名選手が名監督になるとは限らないというアレだ。
無論、だからといって彼女らが決しておバカな訳ではないのは結果が物語っている。
片や三冠ウマ娘、片やダービーウマ娘という、トレセン学園の長い歴史にその名を刻んだ偉大なるウマ娘であることは疑いようもない。
それにヘンに知識を与えてそれにばかり固執するようになったり、あれもこれもとなって混乱を招くことになっては元も子もない。
無論、先行抜け出し一本でいく手がない訳ではないが、その場合露骨に対策、マークされるのは目に見えて明らか。使える武器は多いに越したことはないが、邪魔になる程抱えるのは悪手も悪手だろう。悩ましいことだ。
ここは一つ、模擬レースをやってみるのも手か……。
だがまぁ、モチベーションが高いのは良いことだ。修行のことだって彼女にやる気が満ち満ちているからこそやってみたいと言い出したのだろう。
とりあえず授業の時間が迫っているのでウインディに教室へ向かうよう促しオレはオレの仕事を始める。
「フフッ、面白そうなモルモットが転がっているじゃないか」
そんな謎の声が廊下に響いたことにも気付かずに。
◇
う〜、トレーナーと山ごもり……
ピクニックみたいで楽しそうだと思ったのだぁ……
しゅん……。
いったい何ネスタキオンなんだ………?