あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
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ありがとうございます。
レース開始時、正確にはゲートイン時にウインディが豹変したのを両脇のウマ娘、四番ミニロータスと、六番リボンバラードは気づいていた様子だった。
と言うのも、ウインディはゲートに入るとほぼ必ずと言って良いほどやらかす。
つまり、ウインディはジュニア級ダートウマ娘の間でも有名なゲート難だった。
それが今は不気味なほどに落ち着いている。警戒するには十分な理由だろう。
何かある。そう思った時には周りは走り始めていた。
ミニロータスはまだ良かったろう。脚質的には差しであるし、序盤に於いて後ろにつくのは許容範囲。しかしリボンバラードはそうはいかない。なぜなら彼女の脚質は逃げであるからだ。
逃げウマ娘にとって最初に先頭に立てないのは死活問題といっても過言では無い。
何故なら逃げウマ娘は、基本的にレースのペースを自分自身で作ってナンボだからだ。
裏を返せば他の誰かの先頭を許せば、それだけで相手のペースに巻き込まれることを意味する。そうなれば先頭の奪い合いで消耗することは避けられない。
まして今回はマイルという長いとは言えない距離の中で、なんとか先頭に立たねばならないのだ。
「おーっと、二人ほど出遅れたようですねーオグリさん!」
「焦って怪我をしなければ良いが」
無事之名ウマ娘という言葉も指すように、大事無く走り切るのもまた才能である。
それに今回はあくまでも模擬レース。ムキになって故障でも発生すれば目も当てられない。
だが走っている当のウマ娘達、そして周囲のトレーナー達の目はいずれも真剣そのものだ。
抑え目に走らせあくまで他の出走ウマ娘の情報収集に勤しむ者、逆にウマ娘のしたいようにさせ、現時点での担当ウマ娘の周囲との成長の速度と照らし合わせ、今後のトレーニングの組み直しを図る者、方針によってどうさせるかは様々だが、その思いの根本は皆共通している。
勝たせてやりたいという、その一心だ。
ウチのウインディは現在四番手から五番手、やや後ろ気味だが問題はない。
まだ500メートルを通過したところだ。勝負どころではない。
「さぁー!先頭は八番ハートシーザーさん!やや遅れて九番サニーウェザーさん!その後ろに食いついているのは六番リボンバラードさん!三人の逃げウマ娘が火花を散らしていますよーー!!」
「ああ、それと五番のシンコウウインディは良い位置に着けている。逃げ切るならもう少し離しておきたいかもな」
□
(くっ、なんで?なんで離せないの?)
先頭を走るハートシーザーは、しかし全く安心出来ていない。
先頭集団が鎬を削る中、シンコウウインディは逃げウマ娘達から一定の距離を保ったままだからだ。
加速すれば同時に加速し、減速すれば同時に減速する。喉元に食らいついた獲物を逃さない、リカオンやライオンのように。
小技が効かない。罠も踏み抜かれる。
無論、自分たちがまだまだジュニア級で拙いのは分かっている。
しかし、相手もまたジュニア級のハズだろう!?
(最終直線まで、このまま疲弊させるつもりか?それが最適だと直感しているとでも?)
一瞬振り返ると紫色の瞳が細められるのがわかる。勝負どころを見計らっているのだろう。
地点は1000メートルを通過し、いよいよ最終直線に迫ろうと言うところ。その時
「ウインディーーー!!ブッちぎれーー!!」
その一言で気配が、爆発した。
□
「ぜーーーったい、勝つのだーーー!!」
ウインディの剛脚が炸裂する。
逃げウマ娘達の間をスルスルと抜け出し、一気に先頭に躍り出た。
「おーーっと!シンコウウインディさん、最終直線で一気に勝負に出ましたねぇ!」
「模擬レースでも手を抜かないのは見ていて清々しいな」
「後続も続きますが、グングン突き放されるばかり!!これは決まったかーー!」
そのまま後ろに三バ身 四バ身 五バ身と、最終的にウインディは後ろに大差をつけ勝利した。何気にミニロータスはまた二着だった。
「いやぁー!すごかったですねぇ!オグリさん!」
「うん。これからも頑張ってほしい子達ばかりだった」
実況の二人がそう言っている間に、ウインディはこちらに駆け寄り腕をガジガジして来る。
「楽しかったか?」
オレがそう聞くとウインディは腕から口を離し
「楽しかったのだ〜」
と笑顔で言う。すると
「ムキィー!悔しいーー!!」
と後ろから聞こえたので何事かと振り返るとミニロータスが地団駄を踏み、彼女のトレーナーがそれを宥めていた。
ウマ娘というのは走るのが好きだ。
そして、トレセン学園に入るような競争ウマ娘は大抵負けず嫌いなところがある。
模擬レースとは言え勝負は勝負。負けて気分が良くなるものではないだろう。
ミニロータスはウインディに気づくと、あちらに歩いて行ってしまった。
彼女のトレーナーがこちらに歩み寄って来て言う。
「次は負けねーぞ」
「ミニロータスも同じことを?」
「いや、アイツは勝ってから言うってさ」
「そうか」
「じゃ、言いたいことは言わせてもらったからな」
そう言うと、ミニロータスのトレーナーも彼女の後を追うように歩いて行った。
幸い、と言うべきか他ウマ娘達のデータは粗方取れた。
誰が注意すべき相手か、逆に誰が与し易いか、作戦の傾向や勝負を仕掛けるタイミング、ジュニア級出走レースでのそれらと比べ、どの程度精度が上昇しているか、それを元にしたこれからの伸び代等、判断材料は山とある。
本当に色々と今後が楽しみである。
そう思いながらオレは目をキラキラさせているウインディの頭を撫でた。
「のだ〜♪」
「フフッ、実に興味深いなぁ」
あっ、いたのね君。
◇
ふっふ〜ん ラクショーだったのだ〜
油断はしないようにトレーナーに言われたけど
トレーナーの言うことなら間違いないのだ〜♪
スペちゃん可愛い。
でもウインディちゃんの方が可愛い。
(個人の感想)