あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
ある夜中、とは言ってもついさっき日が暮れたばかりくらいだが、オレがトレーナー寮に戻ろうとトレセン学園の廊下を歩いていると
「やぁやぁ、シンコウウインディのトレーナーくん」
とアグネスタキオンに声をかけられる。
「おう、アグネスタキオン。なにやら久しぶりだな」
「まぁね。こちらも最近はそれなりに忙しかったしねぇ」
三冠ウマ娘へのインタビューやら年末に開催される有マに向けての調整やら色々あるだろうしなぁ。
「それで、なんの用かな?」
「まぁそう身構えないでおくれよ。モルモットは今のところ我がトレーナーくんだけで事足りているしね。今回は少しばかりお礼を言いたかっただけさ」
「お礼?」
って言われても何かしたっけ?
「デジタルくんとは一応寮の同室でね。研究対象としてもかなり興味深いから彼女を保健室まで連れて行ってもらえて助かったよ休まれると観察も何もできないからねぇ」
と、いつもの調子だ。結構仲間思いなんだなぁと思ったオレがバカなのだろうか。
それとも単純に照れ隠しなのか。気になるところだが、深くツッコむとなにやらよからぬものまで出てきそうなので追求はしない。
にしても研究かぁ…。
「前々から気になってたんだが…」
「うん?」
「その研究って具体的にどんなもんなんだ?」
可能性だとかなんとか漠然としたことはよく言うが、思い返せば詳しくは聞いたことがない。
学園側からある程度の規制はあっても完全にストップがかけられていないことからある程度節度は守っているのだろうが。
なんとなしにそう気になったことを聞く。
「ほう!気になるのかな!?」
アグネスタキオンは急に元気になり
「良ければ書き上がった論文をいくらでも読ませてあげるし、研究成果があればいくらでも聞かせてあげるとも。なに遠慮することは無いよ」
アグネスタキオンは興味を示されたのが嬉しいのかちょっとしたバーサク状態になっている。
やべー、まずったか。
逃げようにもウマ娘の膂力で引きずられると流石にまずい。
まぁ言い出しっぺはオレだし、これ以上ズズイと迫って来られる前に勘弁してついていこうかと思ったその時だった。
「…何をしているんです?」
オレの後ろから静かな、落ち着きのある声が聞こえた。
「おやカフェじゃないか」
気になって後ろを振り返るとそこにはミステリアスな雰囲気を醸し出す黒髪ロングのウマ娘、マンハッタンカフェがいた。
「…その人迷惑そうにしてますよ?」
「おや?そう見えるかな?」
「ええ」
マンハッタンカフェは短くしかし即座にそう返すとこちらに向き直り
「大丈夫ですか?」
とオレに訊ねてくる。
「あぁ、助かったよ」
アグネスタキオンは残念そうにしているが。まぁできる範囲での埋め合わせは後でするか。
しかしマンハッタンカフェか…。
「そう言えばキミのことは噂で聞いたことあるよ」
「おや?君もそう言うのを信じるタチかい?」
アグネスタキオンはイタズラっぽく聞いてくるが信じるってなんだ?
「……」
マンハッタンカフェは沈黙しているし。
「信じる?オレが聞いたのは彼女が非常に優れたステイヤーだってことだが」
「……ああなんだそっちか」
今度は一転して「何を当たり前のことを」とでも言いたそうな声色でそう言う。
「そっち?」
そうオレが聞き返すと、アグネスタキオンは意味深に笑う。しかし肝心のマンハッタンカフェは用が済んだと言わんばかりに踵を返して
「では、わたしはこれで」
とスタスタと立ち去って行った。
「フフッ、まあその内紹介して貰えばいいさ。彼女のお友達をね」
そう愉快そうに言うと、アグネスタキオンも「研究に戻るとするよ」
と言って立ち去って行った。
それにしてもお友達かぁ……。
人見知りする子なのかな?
…去り際にちょっとオレから視線ズラしてたのは気のせいダヨネ?
◇
ホラー、ホラー……。
これとか面白いのだ?
え?けっこうえぐいやつなのだ?
スコーピオ杯むじゅい……。