あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
オレは今、保健室で謎の不審者とお見合い状態となっている。
目の前の不審者は長い金髪に白衣を纏い、謎のマスクを身につけて、「アンシーン!」などと言っている。
いや、全く安心できないんだが?
事態は少し前に遡る。
今日の授業が一通り終わり、いざトレーニングと思ったら廊下でたまたますれ違った同期に保健室への届け物を頼まれた。
急用が入ったとかで本当に急いでいるようだったので断るのも何だし、それほど遠くもなかったので了承して荷物を持ちつつ廊下を歩いていると、これまたたまたまウインディと遭遇。
「せっかくだし来るか?」と聞くと
「行くのだ〜!!」と元気よく返される。
放課後だから授業の心配もなかったし。
そうしてウインディとトレーニングのことやら授業のことなどの世間話をしつつ、たどり着いた保健室の扉を開けてみると
「いらっしゃ〜い☆」
不審者がそこにいた。
「お願い〜〜!!絶対役に立つから〜〜!!」
「いや、無理でしょ。たづなさんあたりに話を通してあるんならまだしも、完っ全なる侵入者の言うことなんて信じられるわけないでしょ!!」
昨今のハラスメント事情を鑑み、また学園の評判のためにも、そして他トレーナーが風評被害を被らないためにも、いきなり直接組み伏せたりは出来ないのでまずは話を聞いてみることにしたものの……。
彼女の話はなんというか要領を得ない。
彼女の名は安心沢刺々美と言い、伝説の笹針師とやらの弟子らしい。
何でも特殊な笹針でウマ娘特有のツボを刺激することによってその能力を引き出したり、疲労を回復させたり、レースで勝てるようになったり、魅力を引き出したり出来る……らしい。
いや、自分の知識にないことを全否定するつもりはないが、如何にも怪しいと言うか胡散臭い。
嘘か本当か、一時期謎の筋肉痛に悩まされたあの『皇帝』ことシンボリルドルフが一か八かで笹針治療を試み奇跡的に復活したとかなんとか。
少なくともウチのウインディはそこまで逼迫もしていないし、そもそもまともなトレーナーなら二つ返事で了承することも無いと思うんだが……。
「ホントにスッゴイんだから〜〜!!師匠は」
じゃあ師匠に来てもらうわ。
百歩譲っても、ずーーーーっとお茶汲みしてた人には任せらんないわ。
「うぅ〜、注射は嫌なのだぁ〜」
ウインディも嫌がっているし、かと言って素直に帰ってくれる雰囲気でも無い。
何より、他の手に握られた注射器のようにぶっとい針がウインディに刺されるところとか見たく無いし。
……仕方ない。騙し打ちするようで申し訳ないが、かと言って被害が出てからでは遅い。
「ハァ…じゃあちょっと待ってて下さい」
「え〜?なになに〜?」
「ちょっと貴女の治療を受けたい人を募集してくるので」
「オッケー!まっかせなさ〜い!!」
ウインディと一緒に廊下に出て保健室から少し離れて携帯を取り出す。
「あっ、もしもし?たづなさんですか?」
ピッ
よし。後はウインディだが……
「うぅ〜、こわかったのだぁ〜」ぷるぷる
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
なんとか落ち着けるためナデナデに勤しむ。
「トレーナー…」
「どうした?ウインディ?」
「今日、トレーナーのとこにお泊まりしてもいいのだ?」
いやぁー、それはさすがになぁ…。
「おねがいなのだぁ……」ウルウル
「よーし、ヒシアマゾンにはオレから言っておくからなぁ〜、よしよしよしよしよしよし」ナーデナデナデ
「エヘー、ありがとなのだ〜」
なお、その後たづなさんが駆けつけたであろう保健室方向から窓の割れるような音が聞こえて来たのは余談である。
◇
エヘー
よくわかんないけどラッキーだったのだ〜♪
スヤァ〜〜
キャルちゃんにウインディちゃんみを感じるのだ……。
ウマ娘じゃないからセーフよね?