あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ   作:ガラクタ山のヌシ

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サブタイにしそこねたや〜つ。


ロードロイヤル…ボクっ娘だとぉ!?

ここはトレセン学園のトレーナー行きつけのバー。

オレはちょっとした贅沢のためにこうしてひとり、カウンター席でチビチビやっている。

思えば先輩と来ないのは自分でも珍しいと思う。

ちなみに既にちょっと呑んでいる。

「…マスター、ウチのウインディが可愛すぎてつらいです」

オレは常に考えている思いの丈をマスターにこぼすが…。

「はぁ…」

こんな感じで流されてしまう。解せぬ。

「ウインディはねぇ…ホントに良い子なんですよ」

オレはなかなか理解を示してくれないマスターに切々とウインディの可愛さを伝えようとした。その時だった。

「お前もホントすっかりトレバカに染まったなぁ」

いつの間にやって来たのか、沖野先輩が隣の席に座って来た。

どうやらたまたま居合わせたらしい。

「いくら先輩でも担当は変わってあげませんからね?」

「いや、別に変わんなくていいけどよ…」

「なんですかその反応?ウチのウインディが可愛くないって言うんですか?」

ジロリと先輩を見る。

もちろん声は荒げない。他にも客は居るし店に迷惑はかけられないからだ。

「いやいや、そうは言ってないだろー?」

そう言うと、先輩も適当に注文をする。

「でも意外ですね。仕事の調整するから一緒に飲むときは大抵三週間前には知らせてくれって言ってたじゃないですか?」

「まあ、こっちもちょっとは時間ができてな。今回は本当にたまたま居合わせたってだけさ」

「そうですかぁ。にしてもどうしたんです?そんな笑顔で…」

「いやぁ、後輩が立派なトレーナーになってくれて嬉しいなってな」

「そんなにご心配かけてましたか?」

「あぁいや、気を悪くしたなら謝るって」

「いや、別にそこまでは…」

そう言うと、バーカウンターにコトリと小さな音が響く。どうやら注文の品が出てきたようだ。

「どうぞ。ウイニングランです」

「あっ、いただきます…」

ウイニングラン。簡単に言えば桃の酒を使ったカクテルだ。

度数はカクテルの中でも比較的弱く、イメージの通り甘い酒だがそのネーミングから願掛けや、逆に担当ウマ娘の勝利へのささやかな祝杯の意味を込めて飲むトレーナーも少なく無いとか。

そして……オレもどうやらそのクチだったようだ。

「まぁ、お前も初のクラシック級は緊張するか」

藪から棒に、先輩は聞いて来る。

「そりゃあしますよ当たり前じゃないですか」

別にオレだってこれまでのトレーニングの仕上がりに不安がある訳では無い。

ウインディに合ったトレーニングの模索や、芝・ダート合わせて過去にトレセン学園に在籍していたウインディによく似たタイプのウマ娘のトレーニングデータやその傾向の観察、考察してヒントを得ようともした。

或いは先輩トレーナーに聞いた話をまとめたり、有力なウマ娘との並走に模擬レースもやったし、たまに他所のウマ娘の偵察など新人として思いつく限りのことはやった。つもりだ。

…やったからこそ怖いのかもしれないな。

クラシック級はウマ娘にとっては文字通り一生に一度の晴れの舞台。

中にはシニア級になっても走れるレースもあるにはあるが、それは裏を返せばクラシック級の段階から一つ上のシニア級のウマ娘とぶつかると言うことに他ならない。

だからこそのタイキシャトルへの警戒でもあったのだ。

『オレではウインディの素質をここまでしか伸ばしてやれなかった』

そう思うのが何より怖い。

そしてそれが、新米トレーナーにとって目の前に立ちはだかる大きな壁のひとつだというのも先輩方から(嫌味でなく)ありがたい話として散々に聞いてきた。

「オレも、ウインディと一緒に成長しなくっちゃなぁ……」

「まぁ、緊張感ってのはなにも悪いことばかりじゃねぇだろ?」

先輩が気落ちしそうな、というかしつつあったオレにそう言う。

「そんだけ真剣にトレーニングやってんだったら問題ねぇよ」

そう続けて言って、先輩は自身の頼んでいた酒を呷る。

「そういうもんですかねぇ…」

「…やっぱオマエ、根本的な真面目は変わんねぇなぁ」

「はい?」

「いや、なんでもねぇよ」

なにやらぼかされた気がしたが、まぁ気落ちは軽くなった。

「今回は、オレが持ちますよ」

日頃世話にもなってるし。

「いいのか?」

「少し遅いですがクリスマスですから」

「そうかい。そんじゃあお言葉に甘えるなー」

「どうぞ〜」

そうやって、ついつい先輩と話し込んでしまったのだった。

 

 

「ウインディ〜。可愛いぞ〜ウインディ〜zzzz」

「あらら、寝ちまった」

コイツがここまで深酒するとは珍しい。というか初めて見るな。

「きっと、真面目だからこそ担当になったウマ娘にあそこまで入れ込むんだろうなぁ。お前は」

ついでに明日はコイツが休みの日だ。

自分が深酒することも想定してたのか、それとも明日もたづなさんに隠れて仕事するつもりだったのか…。

いずれにせよ、このまま寝たらコイツを送り届けるのはオレの役目になるんだろうなぁ。

「ハァ………」

せめて会計までには起きててほしいもんだなぁ。

切実に。

 

 

ガブガブガブ〜♪

 

ウインディちゃんの手にぴったりなのだ〜♪

 

こんどこれでトレーナーをおどろかすのだ〜♪




ヤンジャンにシングレのオリジナルブックカバー付きってあったので衝動買いしてしまいました。
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