あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ 作:ガラクタ山のヌシ
昔の夢を見ていた。
昔とは言っても何も幼い頃のことだとか、学生時代のあれこれを思い出してたりとか、そういうものでは無い。
これはオレが、ウインディのトレーナーになるまでの思い出だ。
「ふっ、ふん!どーじょーされてたんとーしてもらおーなんて、ウインディちゃんはそこまでおちぶれてないのだ〜!!」
そう言うとウインディはぷんすかと言った様子でサッサと行ってしまった。
トレーナー人生での初勧誘を断られた時は正直な話、なかなかガックリきたものだ。
しかしまぁ、後になってそれもそうかとも思った。
ついさっき会ったばかりのトレーナーということしか分かっていない人間。
それもなんの実績も無いペーペーの新人トレーナーが、いきなり勧誘して来たのだ。
不審に思うなと言う方が無理な話だ。
だからオレは、オレ自身の誠意をもってウインディの信頼を得るしかなかった。
そしてそれは何人かの先輩方に相談して、一番いいと思った方法。
まぁ言ってしまえば、とにかく当たって砕けろというものだった。
方針が定まったなら、そのための機会は逃すわけにはいかない。
例えば休み時間や放課後。
「シンコウウインディ!勧誘の件、考えてくれたか!?」
「しつっこいのだー!!ガブー!!」
「あ痛ーーっっ!?」
例えばイタズラを仕掛けようとしたのを見かけた時。
「話だけでも聞いてくれ〜!!」
「のだ〜!?ばかばか、ばれるのだ〜!!」
流石に寮内までは入れないので、そんな時は…、
「コレをウインディのヤツに届ければいいのかい?」
「ああ、よろしく頼むよ」
誠心誠意を込めた手紙をヒシアマゾンに届けてもらっていた。
「しっかしアンタも折れないねぇ」
「ああ。あの子は絶対に強くなる!!というかして見せる!!」
あの反骨精神、それに剥き出しの闘志は絶対に武器になる。
オレは初めて見た時からそう思ったし、その素養も折り紙付きだと新人トレーナーながら思ったものだ。そしてそれは今も変わらない。
「まさかウインディにそこまで惚れ込むヤツが現れるとはねぇ…」
ヒシアマゾンは呆れたように、と言うか実際呆れながらそう言う。
「迷惑をかけるなぁ…」
申し訳なくなって頭を下げる。
実際、頼まれた側はいい迷惑だろうしなぁ。
「いいや構わないさ。ウインディのヤツに関しちゃそもそも、今までなかなかデビューしなかったツケが回って来たってだけさね。良い機会だよ」
どうやら彼女も彼女で、ウインディの背中を押してやりたかったらしい。
「それに、アンタくらいの構いたがりの方がアイツには合ってるだろ」
「その分相手を選びそうだけどね〜」とも言われた。苦笑いで。
まぁそんなこんな、ヒシアマゾンの手助けもあってやっとのことでウインディと話し合いの席を設けてもらうことに成功したわけだ。
「えぇと…待ち合わせ場所は…結構人通りがないなぁ…おわぁっ!?」
オレは夕暮れ時の暗がりもあってか足元に設置された落とし穴に気づかず落下してしまう。
「ニシシ〜!!引っかかったのだ〜!!」
声がした方向を見上げると、そこにはウインディの姿が。
「オマエのせいで最近ヒシアマがうるさいのだ〜!!ガブ〜〜ッッッ!!」
飛び降りながら頭にかじりついてくる。
「あいたたたたたたたた〜っっ!?」
「ほはぁ〜っ!!はひはへふほはぁ〜っ!!」
「ゴメン何言ってるか分かんない〜っっっ!!」
そう言うとウインディは地面に着地する。
「プハッ…ここから出たくば、ウインディちゃんのかんゆーはあきらめるのだ〜っ!!」
ウインディはフシャーッと威嚇するようにそう言う。
「嫌だねっ!!」
「なんでなのだ!!デビューしたがってるウマ娘なら他にもいるのだ!!ソイツらならすぐにオッケー出すのだ〜!!」
「いいや!オレが惚れ込んだのは他ならぬシンコウウインディ、キミだけだ!!誰でも良いって訳じゃない!!」
そりゃあ、担当ウマ娘を決めかねて資料を前にうんうん唸ってたヤツに言われても説得力は無いだろう。
しかし今の言葉に嘘偽りはない。
「のだっ!?」
驚きの表情を浮かべるウインディ。
「なんならお試し契約からでもいい!!キミが本心から嫌だと言うなら無理強いもしないし、望むなら今後出来る限りキミに近寄ることもしない!!」
実際、ウインディから勧誘を断る旨の言葉はあっても、明確な拒絶の言葉はこれまで受けてはいなかった。
理由を聞いても答えを聞く前に逃げ出してしまっていたし。
「うぅ〜…」
「だから、オレにチャンスをくれないか!?」
正直都合のいい話だとは思う。ムシのいい勝手な話だとも。
しかし、ここでそのチャンスすら掴めなかったらきっとオレはこの先ずっと後悔し続ける。
「……………」
「……………」
しばしの沈黙。それを破ったのはウインディの方だった。
「…わかったのだ」
「ホントか!?」
ウインディから了承の言葉を受けオレは嬉しくなる。
「ただし!!ウインディちゃんがダメって言ったらその時点でけーやくはかいしょーなのだ!!」
ビシッとこっちを指差して言うウインディ。可愛い。
「おう!!それでいい!!」
もちろんオレも即答した。
「それで…なのだ」
「うん?」
なにやら真剣めいた表情を浮かべるウインディ。
「このじょーきょー、どうしようなのだ…」
そう言われ、途方に暮れるウインディに倣って上を見る。
結構な高さだ。たぶん深さ二メートルちょいはあるかなぁ…。
幅は…まあ太ってもない限り大の大人が四、五人は入れそうなくらいか。
「随分と気合を入れて掘ったなぁ」
いやほんと、この深さと大きさは結構前から用意してないとできないぞコレ。
人通りのほとんどないこんな場所だからできたことか。
「のだぁ〜…」
すっかり意気消沈するウインディ。
まさか自分も飛び込むことは想定していなかったようだ。可愛い。
まぁ出るアテはあるんだが。
「ど…どうやって出るのだ…?」
さっきとは打って変わって不安そうな表情を浮かべる。
辺りも徐々に暗くなってきているし、気持ち的にも沈んでいるんだろう。
「ヘーキヘーキ。多分そろそろ…」
「おーい。大丈夫かい?」
ヒシアマゾンの声と足音が近付いて来る。
途端にウインディがビクッと反応する。可愛い。
「お〜い!!こっちだ〜!!」
オレの声が聞こえたのだろう。その足取りは確かなものとしてこちらに向かってくる。
「お〜いたいた。まぁこんな事だろうと思ったよ」
落とし穴を発見したヒシアマゾンが懐中電灯を片手にひょこっと顔を覗かせる。
なお、若干呆れた表情をしてもいた。
「ちょっと待ってておくれよ〜…。よいしょっと!!」
「よーし。シンコウウインディ、オレに捕まれ!!」
「わ、わかったのだ…」
彼女が縄梯子を降ろしてくれて、それを使って何とか脱出するのに成功したオレとウインディ。
「で、契約は成功したのかい?」
「なんとかね。まぁまだ仮だけどな」
「のだ〜」
「そうかい、そりゃあよかった」
「ありがとうな」
色々と気を回してくれた彼女には頭が上がらないなぁ。
「それで…だ」
「うん?」
「のだ?」
オレとウインディは揃って首を傾げる。
「アンタら、ちゃんとその穴埋めときなよ」
笑顔でそう言うとヒシアマゾンは二本のスコップを置いて帰って行ってしまった。
「………」
「………」
何やら気まずい空気が流れる。
オレとウインディは目が合い、そしてオレが一言。
「やろうか?」
「のだ〜…」
その後ウインディは選抜レースに参加し、無事オレはトレーナー人生初の担当ウマ娘を持つに至った訳だ。
…………。
チュンチュン…。
チチチチ……。
う〜ん。何やら懐かしい夢を見たような気がする。
よ〜し。
今日はウインディをいつもの三倍くらい構うとしようかな!!
◇
のだぁ〜!!
ジタバタジタバタ
うぅ〜、ヤなゆめをみたのだぁ〜。
トレーナーにきらわれないのだ〜?
これからも読んでもらえると嬉しいです。
(*´ω`*)