【悲報】俺以外の魔法少女が全員ふたなりな件について【ぼすけて】 作:21号
先に言っておくが話数はミスじゃないぜ女児向けアニメオマージュだぜ
「ふぃー終わった終わった」
「はいお疲れさん楪」
ぽんぽんと膝を叩いてジャージに付いた土を払い、土いじりで凝った腰をほぐしながら立ち上がる。
突然だが俺、
特別なにかあったと言えば性別が前世と違う…いわゆるTSだったというだけ。最初こそ戸惑いが多かったが今じゃ立派な女の子である。むふん。
死因だのなんだの転生にまつわるアレコレは聞き飽きてるだろうし割愛。部活も終わったし顧問の先生に挨拶をして帰るとしよう。
「さいならー」
「あぁ、聞いてると思うが最近は不審者が目撃されてるから気をつけてな」
「うぃっーす」
畳んだ制服と筆記用具だけ入った軽いカバンを持って─教科書は全部教室に置いておく派だ─最後に鉢植えの苗の様子だけ確認してビニールハウスを出た。
うちの学校は生徒全員何かしらの部活に所属する義務がある。俺が選んだのは園芸部、運動系よりはマシだろうと思っての選択だ。思ってたより大変だったけど一年続けて少しは愛着も湧いていた。
『ファイトー!オー!』
『『オー!』』
「元気だなぁ」
運動部の掛け声が響いてくる中、校門をくぐる。
いつもと変わらない帰り道を夕飯の献立を考えながらぶらぶら歩いて行く。
(食材何残ってたっけ…うーん手間かかるやつはなー、麺類…楽だけど一昨日やったばっかだし…健康を考えると魚とか?…嫌がりそうだなぁ)
宿題はもう終わらせてある。まぁ時間はあるしちょっと手間かけて作ってもいいか─考えが纏まりかけたそんな時、唐突にとんとんと肩を叩かれた。
「んぁ?」
人の接近に気づかなかった。考え事をしていたせいだろうか。知り合いかと思い振り返れば──
「んばぁ」
化け物がいた。
後ろ足で立ち上がった大型犬の様な体から複数の動物の頭が無作為に生えている。各部がまるでゾンビの様に融けていた。
あ! やせいの
バケモンが とびだしてきた! ▼
「ばふっばふっ」
「ぴぃっ……!」
たたかう どうぐ
ポケモン ▶にげる
全力ダッシュ。
そりゃ逃げますよなんだアレ!?不審者ってレベルじゃねーぞ!!見えちゃいけない類の奴だろ!?
「んばぁあ!」
「ひぎゃぁああーーー!!追いかけてくるぅーー!!」
二足歩行のまま追いかけてくる犬の化け物。必死に走るが運動神経バツグンってわけでもなく、距離は付かず離れずで撒くことが出来ない。
「私がなにしたってんだよぉーーー!!!」
通行人に助けを求めようにも不自然なまでに人が居ない。いつも散歩してるおじいちゃんも視姦してくるおっさんも駄弁ってるおばさん達も居ない。
「げほっ…ゼェ…はぁ…!」
人間、全力ダッシュ出来る時間はそんなに長くない。息が切れてきた。苦しい。これ捕まったらどうなるんだ?死ぬんか?こんな唐突に?なんでこんな目に遭ってるんだ?…なんだかムカついてきた。カバンでぶっ叩いてやろうか。いや威力低いか。都合よく鉄パイプとか落ちてない?疲労でやけくそ気味になったその時。
「大丈夫ポン?!これを使うポン!」
と、細長い棒状の物が差し出された。
「おっ…?誰だかわからんけどサンキュー…!」
さぁぶん殴ってやる…!と棒を受け取った瞬間、棒が眩い緑色に光輝いた。
「なんの光!?」
「新たな魔法少女の誕生だポン!!」
光に包まれ服が無くなるような感覚の後、フリフリの新しい服と共にもの凄い力が湧いてきた。意味がわからんが都合がいい。緑色だしサイコフレーム製だったのだろう。
「プリキュアになったみてぇだぜ〜…テンションアガるなぁ…!」
「ぐるるぅ…」
急に姿が変わって警戒しているのか一定の距離を保って立ち止まる化け物。
そっちが来ないならこっちから行く!ムカついてんだよ
「グラァ!」
爪を振るって攻撃してきたのを体勢を低くして避ける。獣の癖に二足歩行してるから避けやすい。そのまま懐に潜り込んだ。
「そいつの弱点は真ん中の頭ポン!額の宝石を狙うポン!」
聞こえてきたアドバイスに従って、ドアタマをブン殴る!!
「オラァ!!」
「キャィン!?」
突き出した
すると化け物はポフンッと小気味良い音を立てて紫煙となって消えていった。
「ふぅ〜〜〜……スッキリした」
「すごいポン!一撃で倒すなんて才能あるポン!」
才能?なんの?殺戮?と思ったが助力してくれた人に毒を吐くほど恩知らずではない。
「これありがとね、返すわ」
「えっうん…えっ!?ちょっと待つポン!?」
めっちゃ走って無駄に疲れたわ、マジで。帰ろ帰ろ。
◇◆◇
翌日、放課後。
いや昨日のアレなにーーー!?!?
犬の化け物に追いかけ回されて変身して倒しました?頭おかしいね病院いこうね!
キレてて頭が茹だってたから気にしなかったけどよく考えたら棒貸してくれたの人じゃなかったし!変なナマモノだった!
白昼夢だろうか…そう考えたほうが納得がいく。翠香、あなた疲れてるのよ。
「ちょっと、いいかな?」
「ハッ…」
机に寝そべりうだうだしていると誰かに声をかけられた。
話しかけてきたのは赤い髪をツインテールにした元気そうな可愛い女の子。隣にロングヘアーの青髪美人さんもいる。たしかクラスメートだ。でも名前はわからん。
「どちらさま…?」
「
「私は
場所は変わって保健室。
「この時間なら先生いないよ!」
「へぇ、よく知ってるね」
「私ドジだからよくお世話になるんだ…あはは…」
「内緒話には持ってこい、でしょう?」
「そうだね。それで、なんの話?」
ここまで連れてくるとはよっぽど人に聞かれたくない話なのだろう。二人は目を合わせ、頷き合うと雨宮さんが話し始めた。
「貴女も察していると思うけど魔法少女の話よ」
うわーー!!夢じゃなかったーー!!
「ポンちゃんから聞いたの、昨日変身して戦ったって!」
「ポンちゃん?」
「あのマスコットよ」
「あぁ…」
そんな名前なのか…似合ってるけども。
「一人で一撃で倒したってほんと?すごいね!」
「ウッ、うん…ほんと…」
「へぇやるわね」
キレて突っ込んだだけだから手放しで褒められると気まずい。運が良かっただけのような気もする…というかそもそもの話。
「魔法少女?って、なんなの?昨日は急に襲われたから流れで変身しちゃったんだけど」
「それはミーが説明するポン!」
「わっ」
ポンっとケミカルな煙と共に一条のカバンからマスコットが現れた。出たわね。
「ポンちゃん!」
「ポンちゃんじゃないポン!」
「だって名前ないんでしょ?」
「そう、名前があるのは王様だけポン。一般精霊にあるのは階層だけポン。ミーの階層はイフリート!エリートだポン!」
「じゃあポンちゃんでいいじゃん」
「なんだかマヌケでイヤだポン!!」
ふわふわ浮いているモーグリとトンベリを足して2で割ったような謎生物。
「昨日はどうも」
「どういたしまして!ポン!」
その語尾は付けないと気が済まないのか?
「さっきの続きだけど!魔法少女は精霊の力を宿し、行使出来る特別な人間ポン!」
「精霊?」
「ミー達は精霊なんだポン!」
ほぇーなんだかすごそう(小並感
「そして精霊の力を使うには陰と陽、2つの要素を程よく併せ持つ必要があるポン!それを満たす人間しか魔法少女にはなれないポン」
「それが私達ってわけね」
「そういうことポン!」
陰と陽とか陰陽道みたいな話まで出てきた。魔法少女じゃなかったのかよ。おんみょーん。
そこからの話は纏めると大体こうだ。
精霊たちが暮らす世界、霊界。南の精霊境には精霊達が、北の邪霊仙には邪霊達がそれぞれ住んでいるらしい。彼らは長らく敵対関係でにらみ合いが続いているんだとか。
「なんで戦ってんの?」
「邪霊は精霊を襲って食べるポン…」
「はぇー生存競争」
思ったより重い設定やねんな…。いや設定とか言うのは可哀想か、実際に戦ってるわけだし。
「そして君を襲ったのは邪霊達が生み出した手先!イービルだポン!人間を怖がらせてエネルギーを集めるのが目的ポン」
なんでそこは英語なんだよ。謎だろ。統一しろ。
ていうか精霊は取って食うのに人類に対してはマイルドだな。
「そしてあの日…ある日突然、邪霊達が精霊境に戦いを仕掛けてきて…王様の命令で、皆バラバラに逃げたんだポン…」
…滅亡寸前では?
敗北からのスタートって言うと物語の始まりっぽいけど。
「何回聞いても現実味のない話ね…」
「まさか精霊の世界に魔法少女なんてねー」
「ボク達は今滅亡のピンチなんだポン…魔法少女になれる子は滅多にいないポン。楪翠香ちゃん!どうかミー達と一緒に戦ってほしいポン!」
「……むぅ」
うーんこの…自分側の要求だけ出してくる感じ…女児向けアニメっぽいと言えば仕方ないかもしれないけど…やられる側になるとたまったもんじゃない。
冷たいかもしれないが弱肉強食は世の理だ。他種族…それも他の世界の存在に助けて貰わないといけないようなら滅びるのは必定だと言える。
昨日は助かったとはいえ勝手に魔法少女にされてるしそもそも協力するメリットが一切ない。どころかデメリットばかり浮かんでくる。時間の浪費だとか危険性だとか。捻くれたオタクとしては素直に頷けない。
「…二人は協力してるの?」
「うん!」
「まぁ見殺しにするのも寝覚めが悪いから」
うわ眩しい……自分が、すごい穢れた存在に思えてくる……。
でも主張は曲げないぞい。いくぞ海馬!!
「考えさせてください」
マジックカード発動!日本人奥義、先送り!この呪文はお前の要望を前向きに検討するぜ!
「わかったポン。でもまた襲われないとも限らないから、このマジックリングは持っていて欲しいポン」
「指輪?」
「変身した時のステッキは覚えてるポン?あれの待機フォームだポン」
「なるほど、便利だね」
なんだかそのままズルズルと加入させられそうだが、一応筋が通ってるのでとりあえず受け取っておく。緑色と銀色のツートンカラーでデザインはシンプル。センスがいい。
(な、なんだかちょっと冷たい感じ…?)
(初対面だし、なんとも)
(で、でも怖い噂も聞いたよ?)
(噂は噂よ。自分で話して、確かめないと。これから仲間としてやって行く可能性が高いのだし)
(うぅ…そうだけど話題がないよぉ)
(魔法少女、ということはアレがあるでしょう?)
(あっ…!さっすがくーちゃん!)
一条と雨宮が小声で何か話している。おそらく俺の噂について尋ねるか躊躇している…って所か。やっぱり聞かれるよね。どこまで答えたもんかなぁ。
「楪さん!」
「はい」
「楪さんもふたなりだったんだね!!ちょっと意外かも!」
「????」
はい?????
一瞬で頭の中が疑問符で埋め尽くされた。
え?なん……?ふた?想定してた話題が掠りもしなかったんだけど。恥ずかし。てか何が生えてるって?そりゃナニよ。やかましいわ。混乱して思考がしっちゃかめっちゃかだ。
咄嗟に疑問を口に出さないという判断をとれた俺を誰か褒めてほしい。
「ちょっといいな〜って思ってたから複雑かも〜…」
「こら、いくらご同類でもほぼ初対面よ。自重しなさい」
「えへへごめんごめん」
聞き間違いかと思った…そうであって欲しかったが会話は『それ』を前提に進んでいく。
「まぁ確かに私も少し残念かな。実は狙ってたし」
「狙ってたって…くーちゃん童貞のくせに〜♪」
「どっ…!?それは貴女もでしょ!!」
なんか前世の自分を思い起こす様な猥談してる。女子中学生が。頭おかしくなりそう。
「楪さんは?他のクラスの娘と仲良いみたいだけど」
「も、もしかしてもう卒業してるの!?ど、どんな感じだった!!?」
「え、あー…いや、普通に友達」
ヤバい、なんだかよく分からないがヤバいと直感して誤魔化しにかかる。
「そっか〜見かけるといつも一緒だからてっきりそういうことかと…」
「奥手なのね、私なら我慢出来ないわ」
「とヘタレ童貞が申しております」
「そろそろ怒るわよ」
「ゴメンナサイ」
仲いいなこいつら。いやそれより黙りこくってるわけにもいかない、怪しまれる。なにか、ナニカ話題………っ!
「だっ、誰がオカズだったりするの?」
な に を 聞 い て る ん だ 俺 は
「…怒らないでね?実は楪さんで抜いたわ」
聞 き た く な か っ た
「アッ…そう…残念でした…?」
「えぇ…ちょっとしんどいわ」
ど…えぇ…?なんだこれ…?
こういう時どんな顔すればいいか、わからないの…。笑えばいいと思うよ(笑)わろとる場合か!!脳内の綾波がシンジくんを平手打ちした。
「むっ人が来そう、ポンちゃんカバン入って!」
「だからポンちゃんじゃな、むぐぐ…」
「そろそろ解散しましょうか」
助かった…。ありがとう名も知らぬ誰か…。
「バイバーイ!」
「それじゃ、また」
「あ、うん…さいなら…」
魔法少女関連がどうでもよくなる衝撃の展開について行けず、呆然と帰路についた。
◇◆◇
「ねーちゃんおかえりー」
「ただいま…」
「…?元気ねーな」
「今日はカレーね」
「マジ!?やったぜ」
先に帰っていた弟が迎えの挨拶をしてくれる。リビングでゲームしていたみたいだ。説明するわけにもいかないので適当にあしらう。ちょろい。
手を洗ったら階段を登って二階の自室へ直行し、ベッドでぽすんと横になる。ふぅ。
昨日今日と色々あったな。キモいバケモンに襲われるし、女児向けアニメのマスコットみたいな奴のせいで魔法少女になるし、危険度は低いっぽいけど代理戦争させられそうだし、頼りの仲間はふたなりだし。今後が不安だ。
そう、仲間はふたなりだし。
……いやどういうこと!!??!
ニチアサで放送できんわこんな内容!!フザけてんのか!?誰だよ企画通したやつ!!親から非難の電話が鳴り止まないだろこんなの!?
「意☆味☆不☆明……」
わけが分からないことばっかりだけど一つだけ確かな事実がある、それは──
どうやら俺以外の魔法少女は全員ふたなりらしい。
書いてて楽しかった