ウマ娘 自作短編お話まとめ   作:ゆきたか

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悔類さん( https://www.pixiv.net/users/650159 )の #ウマ娘SS菊花賞 企画に参加いたしました。素敵な企画の立案、ありがとうございます。

※元々は2021年の10月15日に投稿しましたが、短編のお話を1つにまとめるために一度削除して新たに投稿いたしました。
※お話は基本的に、史実を元にしています
※京都新聞杯は5月開催ですが、当時(1994年)の史実に合わせ10月開催となっています


2.誰よりも光り輝く一等星ウマ娘、その名は……

【京都 芝 2200m(中距離) 右・外 秋 フルゲート 18人 クラシック級 10月】

 

 パドックを終え先ほど本バ場入場を終え……私はこれまでの事を振り返りながら集中力を高めていた。

 

 

 昨年のクラシック級レースでは皐月賞をナリタタイシンさん、日本ダービーをウイニングチケットさん、菊花賞をビワハヤヒデさんが勝利し、世間では『三強』『BNW』と呼ばれ大いに盛り上がった。

 

 そしてBNWの中でも一番の実力者と言われているビワハヤヒデさんの妹こそが、今日……京都新聞杯にて私が初対決するウマ娘……ナリタブライアンだ。

 

 

 ナリタブライアン……皐月賞とダービーを圧勝し、あのトウカイテイオーさんやミホノブルボンさんも成し遂げられなかった、シンボリルドルフ会長以来の三冠バ目前と言われている。

 ビワハヤヒデさんは非常に優れたウマ娘だ、恐らく今後のウマ娘界の歴史にも名を残す名バだろう。だがその妹はクラシック級にして早くも偉大なる姉を越えようと……いや、既に超えているのではないだろうか。

 

 

「昨年は三強で盛り上がったけど、今年は完全なブライアン一強だな」

「長距離もいけるし、怪我でも無い限り菊花賞もブライアンの圧勝だな」

「ティアラ戦線で活躍しているヒシアマゾンが出てくれれば、まだ可能性はあるのにな」

 

 

 世間ではその様な声が大多数を占めていた。なんでも今日のレースの彼女の支持率は77.8%だとか……これはレース史上において圧倒的上位の数字である。

 このような世間の声に対して……正直悔しいが否定は出来ない……それ程までに今年のクラシック級はナリタブライアン一強なのである。

 

 この事に関して、私は激しい怒りを覚えている。世間が一強と言っているのは全然気にしていない、現にそうなのだから仕方がない。

 私が許せないのは、同期のクラシック級ウマ娘達が揃いも揃ってハナから勝利を諦めている事だ。

 

 

 レース開始前の本バ場でもそんな空気が強く漂っている。中には

 

「一緒に走れるなんて嬉しい!」

 

 みたいな憧れの目でナリタブライアンを見ているウマ娘までいる始末だ。

 

 

 勝つ気は無いの? 一強と言われて悔しくないの? 昨年のBNWの気迫を見てないの? 

 ほら、ナリタブライアンを見てみなよ。凄いつまらなそうな顔をしてるよ。

「こんな雑魚達とではなく、早くシニア級のG1ウマ娘達と戦いたい」とでも言いたそうな顔してる。

 

 私は……悔しい! この状況が本当に悔しい!! 

 新バ戦こそは勝利したものの、そこから勝てず……皐月賞があった当日、ナリタブライアンが華々しい勝利を収めた裏で私は条件戦に出走してようやく2勝目を挙げた。

 

 勝てたのは嬉しかった。再びウイニングライブを行えたのも嬉しかった。でも、それ以上に悔しかった!! 

 

 小さい頃に見たシンボリルドルフ会長の三冠制覇は衝撃だった。三冠バまであと一歩だったトウカイテイオーさんとミホノブルボンさんのレースは凄かった。昨年のBNWの一進一退の攻防には血湧き肉躍った。

 

 昨年の今頃は「私が三冠バになって、歴史に残るウマ娘になる!」と意気込みながら毎日キラキラしていた。先輩のナイスネイチャさんが良く『キラキラウマ娘』と言う言葉を使っているが、あの頃の私は恐らくキラキラウマ娘だったのだろう。

 

 だが、2戦目3戦目4戦目と敗北を重ねるごとにそのキラキラした輝きは無くなり更にはどんどん黒く濁っていった。

「勝つ!」が「勝ちたい……!」に。更には「負けたくない……」になり、挙句の果てには「入着できれば」と。

 

 

「変わりたい! 変わらなきゃ!!」

 

 3度の敗北を経験して、私は意識をガラリと変えた。天才ではない、才能はない、何もない……そんな私が強くなる方法はただ1つ……努力。

 ただ練習量を増やすだけではない、体のケアにも気を使った。食べ物の好き嫌いは無くして、栄養を考えなんでも残さず食べるようにした。

 

 その甲斐あってか、ようやく皐月賞と同日に2勝目を挙げる事ができ6月には3勝目。9月には菊花賞のトライアルレースでもある神戸新聞杯に勝利して、待望のG2ウマ娘になる事が出来た。

 

 今日のレースは京都新聞杯、前走と同じG2レースだ。しかし、ただのG2レースでは無い……何故なら、ナリタブライアンが出るから。

 私は彼女になんとしても勝つために更に練習量を上げた。無理をしているのは分かっている……もしかしたらこれが影響して今後大きな怪我をしてしまうかもしれない。でも、かまわない。今日のレースはどうしても勝ちた……今日のレースは私が勝つから!

 

 勝つために私は体だけでなく頭も全力で使った。どこか付け入る隙は無いものか……

 

 

「ブライアンに勝つ秘訣? まさか姉である私にその質問をするとはな……」

 

「一番彼女の事を知っているあなただからこそ、お聞きしました」

 

「ふむ……その勝ちにとことん拘る姿勢、嫌いではないよ。そうだな……ブライアンは今、周りにライバルと言える存在がいないが故に非常に退屈している。その所為(せい)かあまり練習に身が入ってないように見える。付け入る隙があるとすればそこだろうね。……こんなもんでいいかい?」

 

「はい、ありがとうございます! まさかここまで話して頂けるとは思わなかったのでビックリしています」

 

「ブライアンが今よりも強くなるにはライバルが必要だ。君がライバルと言える存在になれる事を期待してるよ」

 

 勝つ秘訣を、姉であるビワハヤヒデさんに直接聞いたりもした。

 

 非常に退屈している……言い換えれば油断していると言う事だ。とても良いことを聞いた……私は必死に頭をフル回転して考えた。そして結論が出た。

 

 勝つ為には第4コーナーのタイミングで彼女より後ろにいる必要がある。前にいたら意識されてしまう、意識されたら……勝てない。

 

 隣にいても駄目だ。最後の直線、並んでの競り合いになると彼女の勝負根性が爆発してしまう。離れた位置にいる必要がある。恐らく外枠から突っ込んでくると思うから私は内枠を狙おう。

 

 つまり私が勝つには

 

 ──第4コーナーのタイミングで彼女より後ろにいて最後の直線では内枠から少しづつ上がっていき、油断している所を最後の100m切ったタイミングで末脚を爆発させて一気にかわす

 

 これしかない。

 

 この計画を聞いて机上の空論と言う人もいるだろう。「予想通りにいくほどレースは甘くない」と。

 そんなのは分かっている。それでも必要なのだ、計画を練ることは。

 無計画で走って勝てる相手では決して無い。勝てる確率を1%でも上げるために絶対に必要な事なんだ。

 

 

 〜〜〜〜〜♪♫♬

 

 

 おっと、気づけばレース開始のファンファーレが鳴り響いている。私は「パンッ!」と、両手で顔を強く叩いて気合いを入れた。

 

 

 ──────────

 

 

『各バ第4コーナーをカーブして最後の直線に入ってきた! 早くもナリタブライアンが先頭に立とうとしている! ……ナリタブライアン先頭に立った!! 各バ懸命に食い下がるが届かない! 残り200mを切ったが変わらずナリタブライアンが先頭だ!』

 

 

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「それが……それが両親が付けてくれた私の名前の由来だああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

『おや……? 内枠から1人ものすごい勢いで突っ込んできたぞ! スターマン! スターマンだ!! 残り100mを切った! スターマンの存在に気づいたナリタブライアンが加速す……かわした! かわした! ……スターマン!!』

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