ここ日本の東京に、1頭のお馬さんがいました。
そのお馬さんは全身白毛で、サラブレッドにも関わらず体重が100キロ代しかないという、まさに『白い珍獣』でしたが、現役時代に大活躍をして名馬と呼ばれていました。
そして引退後は余生をまったりと過ごし、その生涯を全うしましたとさ……
めでたしめでたし──
「(んあ……そういえば昔まさるくんが、生き物は亡くなったら生まれ変わるって言ってたのね。もしボクが生まれ変わったら……その時はまた…………馬として走りたいのね……………………) 」
「…………………………」
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舞台は変わり、ここは日本の東京のとある病院の一室
部屋の中にはベッドに横たわるウマ娘が1人、そして椅子に座っている人間の男性が1人、そして……
「良く頑張ったな! お前に似て玉のように可愛い子だぞ」
「やめーや、照れるやんか。それに玉の様に可愛いってダジャレのつもりか? そんなんで笑うんはダジャレ大好きな生徒会長くらいや」
「ハハッ、確かにな。それにしても……実に綺麗な白髪だな」
「まさか我が子が白髪とはビックリやけど……こいつは将来大物になりそうな匂いがプンプンするで」
先ほど生まれたばかりの赤ん坊を見つめながら、お父さんとお母さんはとても嬉しそうです。
なんとそのウマ娘の髪の毛は白! 世にも珍しい白髪のウマ娘だったのです。それだけでもビックリ仰天、でもこの赤ちゃんウマ娘には更なる驚きがあったのです。
「どうも、初めましてなのね」
「……喋ったああああぁぁぁぁぁ!!!」
「……喋ったでえええぇぇぇぇぇ!!!」
なんと生まれたばかりの赤ちゃんウマ娘が喋り始めたではありませんか。この様な事は長い長いウマ娘史において例がありません。2人が驚くのも無理ないでしょう。
「あれ? 2人とも凄いビックリしてるのね……と、お腹が……! ちょっと失礼します……(ブリブリブリブリブリブリ!!)」
「そしてうんこしたああああぁぁぁぁぁ!!!」
「そしてうんこしたでえええぇぇぇぇぇ!!!」
「んあ! 紙が無いのね!! ちゃんと後で綺麗に拭くのね……」
「礼儀正しいいいいいぃぃぃぃ!!!」
「礼儀正しいいいいいぃぃぃぃ!!!」
生まれたばかりの我が子がいきなり喋りだし、うんこ……うんちをしてご丁寧に自分で拭こうとするなんて。三女神様が見たら驚きの余り卒倒してしまうのではないでしょうか。しかしお父さんとお母さんは、どちらも驚くくらいに肝っ玉が座っていました、肝っ玉父ちゃんと肝っ玉母ちゃんでした。気づけば生まれたばかりの我が子と、仲良く雑談をしていました。
「あぁ、その通りや! にしても生まれていきなり喋るわ大をするわ、我が子ながらほんま大物やな」
「ああ、将来が楽しみだ!」
「んあ、理解したのね! 2人がボクのおとーちゃんとおかーちゃんなのね」
亡くなった自分は新たに生まれ変わった、赤ちゃんウマ娘はすぐにそう理解しました。これも前世のまさるくんのおかげです。
「ホンマ理解早いな!! ところで自分、言葉は一体、どこで覚えたんや……?」
「んあ〜、言葉ならぜん……」
「んっ? どしたん?」
さっきまで饒舌に喋っていた赤ちゃんウマ娘の喋りがピタッと止まりました。
「(前に若ぞうくんが言ってたのね……もし生まれ変わった世界で前世の記憶を持っていることが偉い人にバレたら、実験のために怪しい機関に連れて行かれて薬漬けにされて最終的には脳みそだけになっちゃうと……!! んあ……怖くてちょっともらしちゃったのね……おしっこジョバー)」
「どうした? 具合悪いんか?」
「お、お、お……おかーちゃんのお腹の中で言葉を聞いてて覚えたのね」
「マジでか!! 胎教が赤ん坊には良いって聞いたから腹ん中にいる時から色々な言葉を投げかけてたけど、まさかこんなに効果あるとはほんまビックリや!」
「俺が毎朝欠かさずタマの頭と腹を撫でながら色々語ってたおかげかな、ハッハッハッ!」
2人とも、とても仲が良いですね。この赤ちゃんウマ娘、前世ではお父さんとは顔を合わせる事無く別れお母さんとは、とある事情ですぐに引き離されてしまったので、こうして父母と共に一緒にいられる今この時間をとても幸せに感じていました。
「そうそう我が子よ! お前の名前だが、凄い良い名前を考えてるぞ!!」
「そうなのね? それはとても嬉しいのね!」
「……なあアンタ、まさかあの名前や──
「とても良い名前だぞ! 聞いて驚け! お前の名前は キンタマ だ!!」
「……このアホが……その名前は絶対に止めろってあれ程言うたやろうがあああああぁぁぁぁぁ!」
「ぶぼぼぼぼぼぼ! ぶほぇあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
お母さんの必殺技の手刀がお父さんに炸裂しました。それはそれは見事な
「いたたた……なんでそんなに否定するんだよ。俺の名前から『キン』を、お前の名前から『タマ』を取ってくっつけてキンタマ、良い名前だと思わないか?」
「……お互いの名前からと言うのはええと思うけど、それならタマタとかとかゴールドクロスとか他にあるやろ!! キンタマは無い! キンタマは絶対にありえへんで!!」
「こらこら、花の乙女がキンタマなんて連呼するな」
「連呼しちゃいけないような名前を実の娘に付けようとしてるのは……どこのどいつやああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「痛えええええぇぇぇぇぇ!!
確かにキンタマと言う名前はちょっと個性的すぎますね。
ちなみにお父さんの名前は金太と言います。
ちなみに前世のお父さんの名前はタマーキンと言います。
「これならやっぱりウチが考えた──
「んあ! 名前だけどいくつか候補があるのね」
「まさか自分で名前考えたんか!? どんな名前や」
「うんこたれ蔵」
「キンタマよりひどいやないかーーーーい!!!!!」
再びお母さんの鋭いツッコミが病室に響き渡ります。あらあら、病室で何度も大声出してはいけませんよ。
「もう1つは、ミドリマキバオーなのね」
「それもキンタマよりひど……くない! と言うかミドリマキバオー、ええ名前やん!」
「キンタマの方が良いと思うが……我が子が自ら考えたと言うのは素晴らしいな! よし、お前は今からミドリマキバオーだ! 俺たちがお前の父さんと母さんだ、これからよろしくな」
「ウチも旦那もしっかりした教育とか受けてへんし子育ては色々不安あるんやけど……ミドリマキバオーが笑顔になれるような家庭作っていきたいと強く思っているから、よろしゅーな!」
「よろしくなのね! おとーちゃん!! おかーちゃん!!」
その後お話をしていく中で、ミドリマキバオーは自分がウマ娘と言う、人間とは違う生き物と言う事を知りました。ちなみにお母さんもウマ娘で、お父さんは職業がトレーナーの人間でした。
前世でお馬さんだった時と同じ様に、ウマ娘の世界でも様々なレースがあって沢山のウマ娘たちが切磋琢磨していると言う事も知りました。
「ボクもおかーちゃんのようにトレセン学園に入って、沢山レースに出たいのね!!」
その後ミドリマキバオーは成長し、母親譲り? 前世譲り? の才能を見事に開花。本人の『走ることが好き』と言うのも相まってみるみる内にスピード・スタミナ・パワー・根性を伸ばし見事トレセン学園に入学。そして時は現在に……
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『とうとうやって参りました、日本ダービー。本日の一番人気はカスケード、二番人気はミドリマキバオーとなっております』
『皐月賞ではわずか首差でカスケードの勝利でしたが、2人の実力はほぼ互角! 今回も白熱した勝負になる事でしょう。それにしても……いつ見てもミドリマキバオーは見事な白髪、カスケードは見事な黒髪ですね』
「オイカイセツイキナリドウシター?」「カミフェチカー」「マタカミノハナシシテル……」
そう、これから競馬の祭典『日本ダービー』が始まるんです。実況さん解説さん共にいつもより心なしかテンションが高いような気がします。そして観覧スペースの最前列にいるのは?
「皐月賞じゃあ苦汁をなめたけど、ダービーではウチの子! ミドリマキバオーが絶対勝つに決まっとる! 覚悟しとけや、フジ」
「タマには悪いが、今回も我が子カスケードが勝利……目指すは3冠さ」
「くぅ〜〜! 皐月賞はあとちょっと距離あればマキバオーが差し切ったのにな〜! ……にしても、ホンマ不思議やな」
「ああ……まさか私とタマの子供がこうして大レースで一緒に走るなんてね。聞けばタマの所も、私の所と同じ様に生まれた時から喋り始めたんだろ?」
観覧スペースにいるのは、かつて『トゥインクル・シリーズ』『ドリーム・シリーズ』で活躍したタマモクロスとフジキセキでした。そして、本馬場にいるのは?
「んあ〜。今回はボク1人が勝つのね!」
「フッ……
本馬場にいるのはタマモクロスの子供のミドリマキバオーと、フジキセキの子供のカスケードでした。
さて、2人にとっては
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました……』
ガタンッ!
『さあゲートが開いた。各ウマ娘綺麗なスタートを切りました。最初に飛び出したのは──』
お話を書くにあたり久しぶりに『みどりのマキバオー』を全巻読み返しましたが、特にサトミアマゾンがカッコ良いです。4歳(現3歳)クラシック戦線は3強ではなくアマゾンも加えての4強!