「いくぜいくぜいくぜえ!」
「フン、オオッ!」
デンガッシャーを振り回してデスイマジンと斬り合う電王に続いて、Wも勢いよく駆け出すと電王に加勢する。力任せに剣を振るうモモタロスの攻撃に合わせて、Wも上手に立ち回りながらデスイマジンに拳を打ち込んでいく。
「そらっ!」
「むうっ!」
さすがに二人掛かりでは分が悪いと感じたのか、デスイマジンは一旦後ろに飛び退くと手にした鎌にエネルギーを込めた。すると、鎌は二倍以上に長く展開し槍のような形状になる。
「ハアッ!」
「どわっ!」
再び挑みかかってきたデスイマジンに対して電王も剣を振りかぶるが、如何せんリーチの差のせいで攻撃を加える前に槍状の鎌に吹き飛ばされた。
「くっそ卑怯だぞ!」
「さすがに長い獲物相手にこのメモリは分が悪いねえ、翔太郎、メモリチェンジだ」
「よし、お熱いのいっとくか」
こちらもデスイマジンの攻撃を何とか躱して後退したWが、電王の前に立つと両手にそれぞれ赤と銀のメモリを持った。
“ヒート!”“メタル!”
「いくぜ? 死神野郎」
メモリチェンジして鉄の棒を背中から抜いたWが、デスイマジンに向かって武器を振るう。
「ハアッ!」
「そらっ!」
目の前で火花を散らしてぶつかり合う鎌と鉄棒に、電王がもどかしそうにその場で地団駄を踏んだ。
「クソッ、あいつらホイホイ武器を変えやがって!」
『そんな時のための、僕だよね?』
すると、そこにウラタロスの声が響いてきた。
「あっ、バカ止めろ俺はまだ全然暴れて」
『ホラホラ、先輩は休んでて』
「あがっ!」
今度は青色の塊が電王の中に憑依すると、モモタロスは弾き出されるように電王の中から吹き飛ばされた。
“Rod(ロッド) form(フォーム)”
桃の形をしていた仮面が解除され、頭上から亀を象った青色の仮面が降りてくると、横に展開する。同時に
デンガッシャーを槍状に長く形成し、ウラタロスの憑依した電王は頬杖を付くように手を顔に当ててクスリと笑った。
「千の偽り万の嘘……お前、僕に釣られてみる?」
「おっ、あいつ形が変わったぞ!」
「どうやら彼らもメモリチェンジのように幾つかの能力を使用可能なようだねえ」
デスイマジンと打ち合いをしていたWが、視線だけを電王の方に移して驚く。
「それじゃあ、いきますかっ」
槍を構え駆け出した電王が、Wによって抑え付けられているデスイマジンにそのままの勢いで一撃を喰らわせた。
「グヌッ!」
「そら、もいっちょ!」
「グハアッ!」
更に追撃したWの一撃に怯んだデスイマジンに、二人の仮面ライダーは抜群のコンビネーションで攻撃を加えていく。
「よし、2人同時に突きで攻撃だ!」
「あん? よし、行くぜ!」
「クッ!」
電王がWに掛けた言葉に、デスイマジンが咄嗟に正面に鎌を構え防御の体勢を取る。
「クスッ、なんちゃって」
だが、電王は突きを繰り出したWとは対照的に、デスイマジンを横薙ぎに払って吹き飛ばした。
「グワッ!」
突きを空振りしたWは、少しばつの悪そうな素振りで電王を振り返る。
「あっ、お前味方ごと騙したな!」
「ごめんごめん、嘘も方便ってね」
「なるほど、翔太郎はこういう頭脳プレーも学んだ方がいいかも知れないねえ」
悪びれた様子も無い電王に、Wの中にいるフィリップが感心したように呟く。
「クッ!」
戦いを静観していたカイの近くに下がってきたデスイマジンを一瞥すると、カイはふうっと溜息をついた。
「ったくつまんねえなあ。ほら、お前もいけ」
カイがそう言ってニヤリと笑った瞬間、彼の体からもう一体のイマジンが現れる。
「ガアアアアアアアア!!」
「あん? 新手の奴か?」
「みたいだねえ」
固い鎧に身を包み、強靭な肉体に鋭い爪を持つ“レオイマジン”は雄叫びを上げながらWと電王に突進してくる。
「っと危ねえ!」
「おっと」
その攻撃を辛うじて躱したWと電王は、それぞれ手にした武器でレオイマジンを攻撃した。
「グルアアアア!」
しかし、その攻撃を喰らいながらもレオイマジンは両腕の爪で、それぞれWと電王を吹き飛ばす。
「何っ! ぐあっ!」
「ちょっと、嘘でしょ……うわあっ!」
弾き飛ばされたWと電王はよろめきながらも起き上がった。
「野郎、何てパワーだ」
「翔太郎、向こうが剛のパワーでくるなら、こっちはそれを制する力だ」
「なるほどな、剛には柔ってか」
Wはそう言うと今度は黒と黄色のメモリを取り出す。
“ルナ!”“ジョーカー!”
「ウオオオオオ!!」
「おっと、そらよっ!」
ルナジョーカーにフォームチェンジしたWは、伸縮自在の手足でレオイマジンの重い一撃を躱しながら捌いていく。
「うーん、ああいうド突き合いは僕のガラじゃないんだよなあ。こんな時力自慢の人がいれば……」
『ほんならワイの出番やな!』
「それじゃあ、よろしくね」
『まかしとき!』
ウラタロスがわざと呟いた言葉にまんまと反応したキンタロスが、黄色の光になって電王に憑依する。
“Axe(アックス) form(フォーム)”
斧のような形の仮面が展開すると、今度はデンガッシャーを斧に変えた黄色の電王がその場でしこを踏む。と同時に、どこからともなく大量の紙吹雪が舞い落ちる。
「俺の強さにお前が泣いた……涙はこれで拭いとき」
「っと、また変形か?」
「ゾクゾクするねえ」
レオイマジンの攻撃を躱しながら、Wがアックスフォームに変形した電王の姿を見る。
「グオオオオオオオ!」
「そらそらあ!」
中々攻撃の当たらないWにイライラした様子のレオイマジンが今度は電王目掛けて攻撃を仕掛ける。その一撃を斧で受け止めて、電王は斧による重い一撃を返した。
「グハアッ!」
「俺達もいくぜ?」
アックスフォームになって鈍重になった電王の動きをフォローしながら、手足を伸ばして戦うWの攻撃にレオイマジンもデスイマジン同様に吹き飛ばされた。
「ワイの剛と半分こ仮面の柔……これぞ、剛よく柔を制するや!」
「それ、何か色々と違わないかい?」
首をゴキリと鳴らして決め台詞を放ったキンタロスにフィリップがツッコミを入れる。カイは傍らに後退した二体のイマジンを見てチッと舌打ちをした。
「さあ、大人しくお縄についてもらうぜ、お兄さん?」
Wがカイを捕えようとゆっくりと近付いていく。
「危ない、避けてえ!」
その時、何かに気付いた様子の良太郎が叫ぶと、Wはハッとしてその場から後ろへと跳んだ。
「ハッハッハッハッ」
先程までWの立っていた場所にどす黒いオーラの渦が出現すると同時に、そこから高級そうな猫を抱えた初老の男性が現れた。
「園咲琉兵衛!」
「御機嫌よう、仮面ライダーの諸君」
琉兵衛は抱えた猫を撫でながら機嫌の良さそうな笑顔で片手を広げる。カイはその様子を無表情に眺めていた。
「てめえ、何だってここに!」
「このイマジンを統率する青年と話がしたくてね、悪いがここで失礼するよ」
琉兵衛はそう言うと金色に輝くメモリを取り出した。
“テラー!”
腰のドライバーにメモリを挿し込んだ琉兵衛が、“テラードーパント”へと姿を変える。
「っつ、何あの姿……」
「ハナさん、大丈夫?」
物陰からこちらを伺っていたハナが、テラードーパントを一目見た瞬間に震え出したので、良太郎が心配そうに駆け寄った。電王に憑依していない他のイマジンも、ハナと一緒に怯えた様子で柱に隠れている。
「ほう、私の姿を見ても恐怖を感じぬか……強い心の持ち主のようだねえ」
W以外で、唯一影響を受けていない電王、いや、野上良太郎の姿に少し感心したように呟くと、テラードーパントはワープエネルギーを展開する。
「さて、カイとかいったかね。私の屋敷でお茶でもいかがかな?」
「ふーん、まあいいや。面白そうだし」
カイがそう言うと、テラードーパントはカイごとエネルギーで包み込む。カイはゆっくりと渦に引きずられていく。
「待ちやがれ!」
「おっと、君は招いていないのでね。ここで遊んでいなさい」
“スミロドン!”
テラードーパントはもう一つゴールドメモリを取り出すとそれを抱えていた猫に巻き付けたドライバーに挿した。
「シャアアアアア!!」
「なっ、ぐあっ!」
突如として高速で攻撃してきた“スミロドンドーパント”の鉤爪の攻撃を胸に受けたWが電王の近くまで吹き飛ばされる。
「おっと、お前大丈夫か!」
「あ、ああ、サンキュー」
それを寸での所で受け止めた電王が、改めてスミロドンドーパントを見やる。先程の高級そうな猫の姿とはかけ離れた獰猛な様子に、電王も斧をゆっくりと構えた。
『あーっ、猫ちゃんだ!』
「なっ」
しかし、その緊張を破ったのはリュウタロスの声であった。
『ねえねえ、僕と変わってよ!』
「あっ、リュウタ止めとき……どわっ!」
今度は紫色の光が電王に取りつくと、仮面が龍のような造形に変形し、胸元にも龍の顔が象られた鎧が展開する。
“Gun(ガン) form(フォーム)”
「へへへ、猫ちゃん僕と遊ぶよね!」
「シャアアアアア!!」
「答えは聞いてないよっ! おいでおいでー」
右手を出してチョイチョイと手招きしてみせる電王だったが、スミロドンドーパントはこちらに敵意としか取れない声で威嚇してくる。
「っと、今度は銃か?」
「いや、でもあのタイプの敵には最適な攻撃法だ。翔太郎、僕達も」
「おう」
電王のフォームチェンジを見届けたWが、今度は青色のメモリを取り出す。
“ルナ!”“トリガー!”
青と黄色のフォームに変わったWは、右手に持ったトリガーマグナムをスミロドンドーパントに放っていく。
「シャアアアアアア!!」
しかし、スミロドンドーパントは目にも止まらぬ速さでその銃弾の雨を掻い潜り躱していった。
「野郎、何てスピー……どわっと!」
再び狙いを付けようとしたWだったが、その足元を突然撃たれ慌てて回避する。
「猫ちゃんいじめちゃダメ!!」
「ああん? お前何言ってやがる!」
「猫ちゃんいじめるお前悪い奴!」
電王はそう言いながら柱の陰に隠れるWに銃の形にしたデンガッシャーを乱射していく。
『リュウタロス、お願いだから止めてえ!』
良太郎も中で必死に止めるが、リュウタロスの強い自我に完全に体の動きを押さえられていた。
「ったく、こんな時に何言ってんだあいつは」
さすがに味方を撃つわけにはいかず、Wは柱の陰でやれやれと首を振る。そうしている間にも、スミロドンドーパントはゆっくりと鋭い爪を持つ両腕を広げてこちらににじり寄って来ている。
「翔太郎、僕にいい考えがある」
「おっ、本当かフィリップ」
ふと呟いたフィリップの言葉に、翔太郎が反応した。Wの中のフィリップはフフッと呟いて柱の陰から身を乗り出した。
「あっ、また猫ちゃんいじめる気だ!」
銃を向ける電王に両手を上げて見せながら、Wは電王に近付いて行った。
「少し待ってくれ、実はあのドーパン……猫は元々僕の友達でね……それが悲しい事にさっきの悪そうな奴に操られているんだ」
「えっ……そうなの?」
「ああ、君も猫が無理やり怪人にさせられるところを見ただろう……? 僕も友達を何とか取り戻したい……力を……貸してくれるかい?」
仮面越しに泣き真似をしながら、悲しげな声色で訴えかけてくるWに、電王はゆっくりと構えていた銃を降ろした。
「いいよ、僕も手伝ったげる! ただし、猫ちゃんいじめたら許さないよ!」
「ああ、もちろんさ」
作戦成功とばかりにWの中の翔太郎がよしっと小声で呟く。Wと電王は、改めてスミロドンドーパントを振り返った。
「グルルルルルル……」
「にしてもどうするフィリップ、あのスピードには付いていけねえぜ」
「任せてくれ翔太郎」
そう言うと、フィリップは電王に何かしら耳打ちした。
「ふんふん……分かった、任せて!」
Wの作戦を聞いた電王は、そう言うと懐から何かを取り出した。
「シャアアアアアアアッ!!」
その仕草を攻撃と感じ取ったのか、スミロドンドーパントは恐ろしい勢いで跳躍すると真っ直ぐに電王に突進してきた。
その鋭い爪先が、今まさに電王の鎧を切り裂こうとした瞬間。
「ニャッ!?」
「へへーん、ほらほら、こっちだよー」
電王は、手にした猫じゃらしでスミロドンドーパントをおちょくる。
「ニャッ、ニャニャッ」
スミロドンドーパントは攻撃の手を猫じゃらしに移すと、その場で必死に猫じゃらし目掛けて体を動かしていく。
「な、何がどうなってんだ?」
「リュウタロスは動物と心を通わせることができるみたいだからねえ、僕や翔太郎にはできない芸当さ」
Wの中のフィリップはそう解説しながら、トリガーマグナムにバットショットを装着した。
「君がリュウタロスの攻撃を防いでいる間にリュウタロスに関する検索は完了した。後は、彼の特殊能力を活用するだけさ」
“バット”
“サイクロン!”“トリガー!”
攻撃力の低いサイクロンメモリにメモリチェンジしながら、Wは準備を整え終わる。
「へへへ、こっちこっちー!」
電王と戯れているスミロドンドーパントのドライバーに向かって狙いを定めると、Wはゆっくり引き金を引いた。
「トリガー、バットシューティング」
「ニャッ!!」
軽い衝撃にドライバーのみを破壊されたスミロドンドーパント、もとい高級そうなシャムネコは、電王に抱えられると喉を撫でられる。
「やれやれ、これで一応は一件落着だねえ」
「にしても疲れたぜ……」
「へへへー! 猫ちゃーん」
嬉しそうに猫を撫でまわす電王を見やりながら、Wはふうっと息を吐いた。