身内が同じ学校の先輩のストーカーしてる。
そんなの我が家からしてみれば迷惑でしかない。
だから僕は、ヤンデレって概念が嫌いなんだ。

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ヤンデレが嫌い

時刻は24時。

夜更かしをする家庭でなければとっくに自室で眠りに就いている時間だ。

かくいう俺の家も11時30分辺りには家全体の電気が消灯して、眠りに就く。

 

両親は同じ部屋で一緒に寝ている。

もしかしたら寝ていない(意味深)のかもしれないが、それでも11時30分には建前上は寝るというポーズを取ることになっているのだ。

俺も、偶に就寝時間になっても自分の部屋でゲームをやっていたりする。

 

しかし、今日はゲームをやりたい気分ではない。

なんでもアプデの影響で一日サーバーがまともに動いてないのだという。

やることもないなら、早く寝るに限る。

だからこそ、俺はベッドの中で就寝していた。

 

....隣の部屋からなんか聞こえて眠れない。

2階のこの部屋と隣の部屋の間の壁は案外薄い。

こんな静かな夜更けではことさら響くものだ。

隣には姉が居るはずだ。

 

....俺が夜更かしする時は騒音に気を遣って壁に布掛けたりしているっていうのに....。

こんな夜更けに何をしているのだろう。

そう思いながらも、なんとか寝ようと毛布を被る。

 

....しかし、一度覚めた眠気は再び訪れるには時間がかかる。

まったく寝付けない。

...どうせ寝付けないならちょっと喉渇いたし、1階にお茶を飲みに行くか。

 

毛布を蹴ってどかすと、ゆっくりと起き上がる。

伸びをして、首を回す。

コキコキと身体から音が鳴る。

そして、俺は立ち上がって自室を出た。

 

 

「...た..ん....わ.....。」

 

「...開いてんじゃん。」

 

部屋を出ると、隣の部屋のドアが少し開いていて隙間から光が漏れていた。

....こんな夜更けに一体何してやがるんだ、姉さん。

姉さんの物音のせいで俺は今眠れないのだ。

何をしてやがるのか、それを知る権利はあるはずだ。

 

そう思って、姉の部屋の中を少し覗いた。

部屋の中は暗い中、机の明かりだけは作られている。

パソコンを前に座っている姉さん。

その肩は小刻みに震えていた。

....これは、笑っているのか?

それに、何かを言っているみたいだ。

 

少し隙間に耳を近づける。

すると、その内容が聞こえてきた。

 

「颯太君、可愛い....寝てる時は毛布を抱きしめて寝るんだね.....私も抱きしめて欲しい。守ってあげたくなるような寝顔してる.....赤ちゃんみたい....可愛い.....最近悪い虫が颯太君の周りでチョロチョロ飛んでるもん、この寝顔を守ると思うと苦労はあれど、喜びはひとしおだよ。あ、ど、どうしよう...濡れてきちゃった....アレないかな.......。」

 

その内容を聞いて、姉が何をしているのか理解できた。

颯太君...とやらはたまに姉の口から聞く名前だ。

どのくらい素敵な人かとか俺にも会わせてみたい人だったりと...それと姉の部屋で偶然目にしたスケジュール帳にも名前が一杯書かれている名前だ。

多分、姉の好きな人なのだろう。

 

こういう姉の姿は本人は隠しているつもりなのかもしれないが、俺はたまに目にする。

というか、家の中の掃除を俺がすることもあるので当然姉の部屋の掃除だって行ったりするのだ。

そんな時に写真が落ちていたり、壁に飾ってあったり、なんか明らかに俺達家族の髪色とは違う茶色の短い毛が落ちていたりと迷惑を掛けられていた。

だからこそ、今俺が姉のこういう行動で迷惑を掛けられるのは今回が初めてじゃない。

またか....とげんなりする気持ちだ。

 

というか、言葉的に手段はどうであれ姉さんは今その相手の寝顔見ながらブツブツブツブツ何かうわごとを呟いているのか。

そして挙句の果てにはそれを見ておっぱじめようとしている。

そもそも人のプライバシーを盗み見る時点で、犯罪者だし。

その光景に、俺は嫌悪感を感じた。

 

「....きっしょ。」

 

俺は扉から離れると、そのまま1階へと降りる。

音を鳴らさないように気遣うか迷ったか、相手側もその配慮がないし、そもそもこんな時間にプライバシー侵害しながら自慰なんかやってるような奴に気遣う必要もないと思い直す。

 

最近、俺の姉が所謂ヤンデレではないかと睨んでいる。

そして、だからこそ俺はヤンデレという概念自体が嫌いなのだ。

巷では可愛いだの愛が重いだのもてはやされているが、そんなキャラとかを見るとこうして身内のことを思い出させられるから。

 

 

 

 

 

「つーわけで、俺の姉ちゃんさ....俗に言うヤンデレって奴なんだよな。」

 

「ふ~ん、ヤンデレさん....へ~、相手への好意が強すぎて病的な精神状態になった人のことを言うんだねぇ。」

 

昼休み。

俺は、幼馴染の藤枝楓と共に昼食を食べている。

偶に向こうから誘われた時はこうして弁当を一緒に食べているのだ。

用事とか何やらで一緒に食べる友達の都合が付かなかったのだろう。

 

「それで、何か問題があるの?病的な精神っていうのはなんか怖い文字面だけど、それでも愛が深いっていうことは慈愛深いってことでしょ?」

 

不思議そうに首を傾げる楓。

まぁ、それだけ見ればそういう反応になるよな。

他人事ならそりゃそうだ。

 

「身内からしてみれば問題しかねぇよ。夜に寝ていたらぶつくさ呟いているあの人の物音で起こされるし、そもそも掃除の時はいちいちキャビネットを開けないで欲しいとか言いやがるし、家族団欒の時間に自室から降りてこない事だってある。そもそもニヤニヤしながら人のプライバシーを覗き見たりしているようなのが身内なんて考えるだけでも勘弁してほしいわ。」

 

そんでもって奴が触れないで欲しいという場所は大抵明らか隠し撮りの構図の男子高校生の写真とかが一杯貼られていたりするのだ。

俺の隣の部屋でそんなホラーな様相を成しているとか考えたくもない。

正直言って気持ち悪い。

ただのストーカーじゃねぇか。

 

「確かにそれは大変そうだねぇ....。それにしたって夜久先輩が阿久津先輩を好きだなんて....やっぱり同じ生徒会の仕事をしている間にそうなったのかな?」

 

「....信じるのか?俺の言葉。」

 

俺の姉ちゃんはこの学校の生徒会長。

それなりに人望がある。

そんな姉ちゃんがそんな犯罪者予備軍みたいなメンタリティしているなんて信じてもらえるかなって思ってたんだけど。

俺がそう言うと、楓は一瞬不思議そうな表情をした後に笑顔を見せる。

 

「うん!だって、私はユー君の幼馴染だもん。君の言うことなら、信じるよ。当然じゃない?」

 

「当然か....?まぁ、要するにお前が言っているのは今まで培ってきた信頼の裏付けってことか?」

 

「そういうこと!」

 

正直、臆面もなく信じるのが当然とまで言われて面喰らってしまった。

彼女は幼馴染だからと言っているが、俺はそこまで彼女を信じきれない。

純粋なのだろうか....大丈夫かコイツ?

将来、悪い男に騙されてそうだ。

 

唐揚げを口に放り込みながらも、目の前の少女が心配になる。

すると不意に、楓がスマホへと視線を戻す。

 

「それにしたってこういうジャンルがあるんだねぇ~。閲覧数とか関連作品数とか多いし、結構人気なんだねぇ~。」

 

「...まぁ、そうなんだろうな。」

 

俺は好きではない。

しかし、人気ジャンルであるのは確かだ。

それに、今はこういうジャンルが人気であるという事実についての話だ。

俺の主観などどうでもいい。

そんな俺を見て、おかしそうに笑う。

 

「..なんだよ?」

 

「ううん、ユー君は好きじゃないんだろうなって。」

 

彼女の言葉に驚く。

なんで分かったんだろう?

そんなに態度に出ていたか...俺?

 

「よく分かったな....俺、そんなに顔に出てたか?」

 

「私が何年ユー君の顔を見てきたと思ってるの?ユー君が嫌いな物を見た時の顔くらいなんとなく分かるよっ!」

 

確かに、幼い頃から...それこそ物心ついた時から気づけば隣に彼女が居た。

俺だってなんとなく彼女が好きそうなものは分かる。

それと同じなのだろう。

 

「でも可愛いイラストとかあるし、ユー君アニメとか好きでしょ?なんで嫌いなの?」

 

素朴な疑問といった様子で聞いてくる楓。

 

「一番はそういうの見ると姉ちゃんが頭の中で被るってことだな。それにさ、そういう連中って恋敵排除したり、法や倫理的に問題のある行動を取ったりするだろ?ただの危険人物じゃねぇか。」

 

創作などで表現されるヤンデレは包丁を持ったりなど攻撃的な側面がある。

好きな人を監禁したり、孤立に誘導したり、自分に依存させたりと相手の都合も考えない。

重すぎる愛だのなんだと言っているが、真に人を愛するということは相手を思いやることじゃないのかな?

そう俺は思うのだ。

 

「そもそも人を好きになった人が誰しもが必ずしも自分の思いのままに行動するわけじゃないだろ?だから愛が重いとか持て囃されていても、俺から見たら自分を自制することもできず、自分の思い通りに行かなかったら相手の都合も考えずに癇癪を起こすガキのように未発達な精神性の女の子にしか見えないんだよ。そんなヒロイン、どこに好きになる要素がある?」

 

「うーん、確かにそう言われてみるとそうだね。でも、分からないよ~?お姉さんがヤンデレだったとしたら、ユー君も誰かを好きになったら自分を抑えられないかも~?」

 

冗談めかしてそう聞いてくる彼女。

...確かに俺は恋愛なんてしたことない。

でもなんかお前恋なんかしたことないやろって感じで言われるのは少し癪だ。

誰かを好きになったことくらいは俺にだってある。

朧気ではあるが、その記憶はある。

 

「別に、誰かを好きになったことくらいはあるぞ。」

 

「...え?」

 

楓の箸が止まる。

あれ...?何その反応??

 

「え...?言ってなかったっけ....?小学生くらいの頃なんだけど。」

 

「う、うん...そんなこと、知らない....。」

 

あっれぇ~?言ったはず...っていうか誰か女の子に相談した気がするんだが。

俺が相談する相手なんて、ずっと一緒に居た楓以外に居るか....?

勘違いか....?

 

「だ、誰を好きになったの....?誰.....?」

 

楓はやけにこの話に食いついてくる。

過去の話なのだから別段そこまで面白い話ではないと俺自身は思うのだが。

誰.....えーと、結構記憶が朧げではある。

なんたってかなり昔の事だしなぁ。

 

「確か...笹上?か佐々木...だった気がする。うん、そんな感じの名前....。でも言うて、ガキの初恋だしな...成就してたら覚えているだろうし、フラれたかなんかしたんじゃないか?そんな気がする、あんま覚えていないし、忘れようとしたのかもな。昔の俺。」

 

今更そんな昔のこと思い出したからなんだと思うが。

下手に意地張るべき

 

「....そうなんだ。そんなこと、知らなかった。フラれたんだ...ふふふ....。」

 

「笑うなよ、こっちだってお前から俺が誰かを好きになったら~とか言われるまで忘却の彼方だったんだぞ?...まっ、なんにせよ俺は恋をしてフラれたというのにお前が気づかなかった。つまりは俺は姉ちゃんみたいにおかしくなっちゃいないってわけさ。つまり、その時点で俺が恋をしたとしても姉ちゃんのように病んだりはしないっていう結論が出てるってこと!はい、この話は終わり!!」

 

忘れていた失恋話で弄られること以上に堪えることはないだろう。

つーか失恋したかも分からないし、もしかしたら俺の中で自然消滅したのかもしれないし。

....なんにせよ、覚えてないことを言及されても困るからこの話は終わりにしたい。

 

「ふふ...はいはい、必死にならなくても大丈夫。早口で言わなくても分かってるから....。」

 

「なんで嗜めてる体で話してるんだよ。別に必死になんかなってねぇよ....。」

 

楓はニコニコと笑顔を浮かべたまま、俺を嗜める。

さっそく弄られてるじゃねぇか。

なんというかここで言い返してもムキになってる判定下されそうだ。

何だよ、俺の幼馴染無敵かよ...。

成すすべもない俺はただ彼女から視線を外して窓の外を見る。

そして弁当の最後の飯を口に放り込んだ。

 

「ごちそうさま。」

 

「あっ、ちょっと待ってね....はむっ...んぐっ....ごちそうさま。」

 

俺が最後の一口を食べきったのを見て、彼女も弁当を食べるペースを速めた。

別に、俺に合わせて食い終わる必要もないと思うんだが。

彼女は肉と野菜の比率が多めの弁当を平らげると、手を合わせる。

そして弁当を再度包みで包んでいた。

 

「それで、ユー君は今日の放課後、何か予定とかあるの?」

 

「別にないけど?」

 

楓は俺の顔を伺うようにして尋ねる。

そもそも必要に駆られない限りはあまり予定を入れることを俺はしない。

なんていうか、予定を入れるとそれをやらなければいけないという気になってしまう。

せっかく学校から解放された自由時間であるにも関わらず、行動を縛られてしまう。

それはなんというか窮屈で嫌だ。

 

すると、目の前の楓は前に身体を乗り出す。

 

「そ、そっか!それなら、その...昼休みに、バレー部の練習があるんだけど、見てくれないかなって...?」

 

「え?なんで??」

 

彼女の言葉に疑問符を浮かべる。

練習を見ること自体はやぶさかではない。

バレーというのは競技の性質上、頻繁にジャンプする必要がある。

そして彼女の所属は女子バレー部。

如何に普段いい子ぶっていたとしても心惹かれないわけがない。

目の保養になりそうだ。

 

でも純粋にそもそも俺はバレー部の関係者でもない。

そもそもバレーなんてやったことない。

そんな俺にバレー部の練習を見ることを頼む意味が分からない。

 

俺の質問を聞くと、楓は目に見えて動揺した様子を見せる。

 

「え...えっとぉ....なんでって言われたら....、そのっ...あっ!前にほら、どんな練習してるの?って聞いてきたことあったでしょ?だからって言うか.....。」

 

「実際に見た方が早いってことか?そりゃそっちの方が早いだろうけど....まぁ、それなら今日は見に行こうかな....。」

 

なんか前にそんなこと言った覚えがある。

別段、興味関心があったというよりはふと気になって聞いたことだったので言われるまで忘れてた。

 

「ホント!?」

 

「嘘つく必要ないだろ。どうせ、やることないしな。」

 

楓は俺の言葉を聞いて、嬉しそうに表情を綻ばせて立ち上がる。

そんな彼女に合わせて、俺も立ち上がる。

楓に見下ろされる形になる。

 

これでも俺の身長は175㎝くらいはある。

それでも俺の顔の位置には楓の胸から鎖骨に当たる部分が見えている。

同年代の女子どころか男子の中でもかなり高い部類だろう。

それこそ、バレーボールをやる為に生まれてきたんじゃねぇかと思う程だ。

まぁ昔から背は揶揄われる程に高かったのだから順調に成長したらこんなものなんだろう。

 

「そ、そっか...えへへ.....よーしっ!ユー君が見てるんだもん、いつも以上に頑張るよー!!」

 

「お~頑張れ~。」

 

拳を握ってやる気にあふれた様子を見せる彼女。

まぁ、うちの学校のエース様の練習風景なんて同じ部活か運動部じゃないとお目にかかれない物だろう。

それを見ておくのも悪くないのかもしれない。

 

そう思った矢先、そんな思考を断ち切るように背後から声が聞こえてきた。

 

「おー、夜久!今日もコンピューター研究部でボードゲームしようぜ~!」

 

振り返ると、そこには少し制服を着崩して散切り頭の同年代の男。

こちらに親し気な様子でゲームをしないかと誘ってきている。

俺の友人の一人である坂本である。

 

「...あのなぁ、コンピューター研にゲーム持ち込んでるなんて教師にバレたらまずいんだぞ?前回の特別棟の庭でみんなでこたつの骨組み作った時みたいにまた親御さん呼ばれても知らないぞ。」

 

「...あ~、確かにな。あの時みたいになるのは避けたいな....この年になっても俺、坊主にされたんだぞ。どうせ将来剃るんだから今の内から心構えを付けろ馬鹿者とか言われてさ....。そのせいでこんなダッセェ髪型になっちまって....」

 

「家から木材とトンカチ持ってきたのお前だろ。自業自得だわ。」

 

坂本は俯き、溜息を吐きながらもそう言ってくる。

コイツは寺の息子だからな。

それにしては人の模範とは到底言えない程に良い性格しているのだが。

端的にコイツを表現する言葉は何かと聞かれたら放蕩息子一択だろう。

 

「えーっと.....。」

 

視線を戻すと、楓は困った様子を見せている。

そら散切り頭が変なのがいきなり話に割って入ってこられると困るだろう。

そもそも楓は俺の友達とはあまり親しくないしな。

 

「あっ、藤枝さんどうも。ちょっと放課後コイツ借りていいっすか?」

 

「えっ!?そ、それは...困るっていうか.....。」

 

引きつった笑みを浮かべながら俺の背後に隠れるようにする楓。

....楓の方がデカいからまったく隠れられてないんだけどな。

 

「いや、俺...放課後はバレー部の練習を見に行くって決めたんだけど。」

 

俺がそう言うと、やれやれと坂本が手を広げる。

なんだその気取った仕草、ムカつくわ。

 

「おいおいおい、本当に良いのか?今回の面子は高城と木村だぞ?前回、木村に負けて苦渋を飲まされたことを忘れたのか?アイツ調子に乗って今日自分から1位の座から追い落した奴が居たらそいつが欲しい物なんでも買ってやるよとか言って笑ってたぜ。」

 

「....それは確かか?」

 

坂本はニヤリと笑いながら、頷く。

確かにこの前の会では最後の最後に奴が残していたとっておきをもろに受けて領土の大半を奪われていた。

このまま勝ち逃げさせたままなのは癪だ。

それに、最近ヘッドフォンが壊れたのだ。

せっかく買うんだったらもっと性能の良い物を買いたいんだが、結局そのヘッドフォンくらいの性能となるとお金が割とかかって懐事情に響くのだ。

参加してぇなぁ.....。

 

そして、坂本は続けて口を開く。

 

「そもそもさぁ、お前がバレー部の練習を見て何になるんだ?別段、アドバイスできるわけでもないんだろ?」

 

「いや、それは俺も思ってたけどさぁ....。」

 

正直、バレーの練習を見に行くよりもコイツらのゲームに参加した方が得ではある。

それに目の保養と言っても露骨すぎては嫌悪されかねないので、なんやかんや観客とはいえ女子だらけの環境では少なくとも気を遣う必要があるだろう。

そう考えると、男だけのそっちの方が何かと気が楽である。

 

「ユー君.....。」

 

そう考えていると、不意に背後から楓の声が聞こえてきた。

さっき話していた時とは違って、暗く沈んだ声。

その声を聞くと、心臓が跳ねた。

振り返ると、俯きながらも無理をしたような笑みを浮かべていた。

 

「行きたいなら...行っても良いんだよ...。うん、ユー君がやりたいことの邪魔になるなら..私は......。」

 

....さっきまで頑張るよーとか言っていた人物と同一とはとても思えないな。

嘘みたいに意気消沈しちゃってるじゃないか。

彼女は口では俺に好きにしろと言っている。

しかし、言葉通りの意味ではないことは聞いただけで分かった。

 

「あ...やべっ....空気、読めてなかったか....。」

 

坂本もすごく気まずそうにしている。

そりゃそうだ。

今、雰囲気終わってるもん。

 

楓は今では明るくよく笑う。

でも、それは昔からというわけではない。

昔は引っ込み思案で大人しく、常におどおどしているような子供だった。

そして、その本質は実のところ今でも変わっちゃいないのだろう。

 

今でも来て欲しいと言っていたことを引っ込めて、行っても良いと言っている。

俺に遠慮していた。

...それが分かってるなら、俺が取るべき行動はただ一つだろう。

 

「...悪いな、坂本。バレー部の練習を見に行くとするよ。」

 

「えっ...で、でもユー君....。」

 

坂本の誘いを断ると、楓は戸惑った様子を見せる。

そんな彼女を他所に、俺の言葉を聞いて坂本は笑みを浮かべる。

 

「おう、そうしろそうしろ。つーか考えてみたら、お前が居たら競争相手が一人増えちまうもんな。来んな来んな!」

 

「はっ、勝手に言ってろ。お前らが野郎同士で悲しくゲームしてる間、俺は女の子が飛んだり跳ねたりする様を見学させてもらう。どうだ?羨ましいか?」

 

「ぎぃぃぃぃい!!!羨ましいに決まってんだろ!!いいなぁ!!!くっそ!!覚えてろよ!!!!」

 

坂本は大仰にハンカチを噛むような様子を見せて、走り去っていく。

楓に気を遣わせまいと敢えてそう振舞ってくれたんだろう。

ありがたい。

そんな坂本の心遣いに感謝していると、裾を引かれる。

 

「ユー君、その良かったの....?その、私の頼みを優先して.....。」

 

上目遣いで俺を見て、尋ねる。

俺はそんな彼女にまるで当然のように答える。

 

「ん?当たり前だろ?せっかく女の子に誘われてるのに何が悲しくて侘しい男同士の付き合いなんて優先するかよ

。俺は友情よりも女を取るような人間なんだよ。」

 

「ユー君...そのっ、ごめんね。」

 

彼女は申し訳なさそうに謝る。

いい加減謝られ続けても困るなぁ。

俺はそんな彼女の額をデコピンすると、笑いかけた。

 

「そんなに謝るくらいなら練習の時に大きく一杯飛んでくれよな。そうしたら胸とか揺れるだろ?」

 

敢えて男として最悪な言葉を言う。

まぁ実際に眼福とか思ってたわけだから、まったく思ってない事でもないしな。

ほら、こんな奴に謝ったってしょうがないよ!!

すると、彼女は気落ちした表情から一変こちらを注意する時に見せる凛とした表情を見せる。

 

「も~!真面目にやるんだからそういうエッチなのはダメッ!」

 

「分かった分かった、冗談だから....。」

 

笑いながら弁当を直すことで彼女に背を向ける。

すると、彼女の言葉が背中に掛けられる。

 

「...ありがとうね。」

 

....聞こえなかったフリしておこう。

なんか全部バレているような、そんな気恥ずかしさを感じちゃうし。

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

体育館の上の席。

俺は、ベンチに腰掛けて女子バレー部の練習を見ていた。

 

バレー部のユニフォームってエッチだよなぁ。

汗とか掻いてると余計にそう思う。

スマッシュの時とか胸結構揺れてるし、実際ビーチバレーで水着とかになるのってそういう目的があるんじゃねぇの?

 

バレーについて詳しいわけでも関心があるわけでもない俺は彼女たちの練習風景を見てもそういう下卑た感想が浮かんでくる。

そんな俺を尻目に、楓は真面目な表情で先輩と練習に励んでいる。

同年代として恥ずかしくなるね、アイツの爪の垢でも煎じて飲んだら?

 

「ほらっ!見てください!!あそこの着地!!キュッキュッってなってますよね!!あの安定感!それが楓ちゃんの強さの秘訣だと思うんですよ!身長ばかり注目されがちですけど、体幹だって並大抵の物じゃありません!!どっしり構えるあの感じが....。」

 

隣ではポニーテールのジャージ少女が俺に熱心に楓のどこが凄いかとかを熱弁されている。

すっげぇ熱量。

正直、ついていけてはない。

でもまぁ、楓がこの部活で良く思われてはいないということは分かる。

 

...一年でエースなんだから嫉妬とかそういうのはあるだろうが、少なくとも見ている限りでは表立って出てきているわけではないしな。

すると、不意に隣のおしゃべりマシンガンが止まった。

見ると、少女が申し訳なさそうにしていた。

 

「その、す、すいません....私だけ熱くなっちゃって.....。そのっ、困りますよね....バレーのこと、分からないとおっしゃられていましたし.....。」

 

まぁ、確かに困りはした。

...でもまぁ、別に聞いていて面白くないといったわけでもない。

寧ろ、楓がどんなふうに思われているかとかそういうのが分かって面白かったものだ。

まぁ、目は目の前の練習風景及び肢体に向かっていたわけだが。

だからこそ、そう申し訳なさそうにされると却って心苦しい。

ただ困っていたというよりは下卑たこと考えていただけなんすよ!

そんな深刻にならないでもらっていいすか!?

 

「別に、構わないよ。なんていうか、楓が部活でどう思われているかとかなんで一目置かれてるかとか分かったし....それに、こんな風によく見てくれる人が居るってことが分かってちょっと安心したし。」

 

馬鹿正直に女の子の身体見ていたから気にしないでとは言えないので、なんかいい感じのことを言ってみる。

すると、彼女が恥ずかしそうに眼を伏せる。

 

「そ、そんな...私、楓ちゃんの友達だし...マネージャーだから当たり前っていうか....そ、そんな風に言われる程の事はしてないっていうか...えへへ.....。」

 

照れ笑いを浮かべながらやいのやいの言っている。

なんというか慌ただしい子である。

 

「楓、背が昔から高くてさ。それで揶揄われたりすることがよくあったし、...こういう生来の気質って奴?そういうの活かせる場所があってよかったなって思うしな。」

 

「...楓ちゃんのこと、よく考えているんですね。」

 

「別に幼馴染の心配するくらい普通でしょ。」

 

幼い頃から一緒に居る子の心配も出来ない人間は最早人の心を持っていないと思う。

普通、一緒に居たら多少仲が悪いとしても情はあるはずだ。

ましてや俺と楓の関係性は悪くないのでひとしおである。

 

「でも、意外だったな....。ぶっちゃけ夜久君ってもっと怖い人なのかなって思ってたけど案外気さくな人なんですね!」

 

「...え?怖い?なんで??」

 

彼女が安心した表情で告げた言葉。

それが引っかかって、俺は聞き返した。

俺....そんな風に思われるような振舞いしてないと思うんだけど....。

なんなら日がな年中男友達と一緒に居る時は馬鹿な事しかしてない気がする。

 

「あの...なんていうか目がその....。」

 

「えっ、俺目つき悪いかな....。」

 

悪くはないと思うんだけど...。

すると、彼女は首をしきりに横に振るって否定する。

 

「あっ..違う違う!その怖いとかじゃなくて死んで...るわけでもなくて...なんて言ったら良いんだろう....そのっ、ハイライトがないから!ちょっと話しかけづらかったなって言う....。」

 

ハイライトがないって何だろう?

偶に姉ちゃんが見せるあの目かな?

ああいう目をハイライトがないって言うのだと思ってたけど。

...えっ?俺あんな目してるの??

散々嫌悪を覚えていたあの時の姉ちゃんの目と平常時で同じなの?

それはなんていうか....凄い嫌だなぁ.....。

 

「そっか.....。」

 

「あっ、でもそのっ誤解っていうか!!それも私の主観での話だし!!」

 

彼女は慌てた様子を見せる。

気を遣わせているな....。

そこまで親しい間柄ではないがそれはありありと分かる。

すると、何を血迷ったのか彼女はこちらに手を差し出してきた。

握手か?

 

「それに!!今は良い人って分かったし!!同じ楓ちゃん大好き同盟として、友達になってください!!って感じです!!!」

 

「えぇ....。」

 

俺、確かに楓のことで安心したとかは言ったけど、君ほどの熱量で大好きとか言ってないよね?

それにそもそも....。

 

「友達になるのは別に、こちらだって構わないけど...俺、君の名前知らないしなぁ。」

 

「えっ!?...あっ!!そう言えば自己紹介忘れてましたね!私としたことが楓ちゃんの凄さを伝えようとして自分の事を忘れてしまって、すいません!私の名前は直江園子です!みんなにはそのちゃんって言われてるんです!!これからよろしくお願いします!!」

 

「はぁ...よろしく直江さん。」

 

友人からのニックネームを言っているが、友達とやらになってすぐにそれで呼ぶのは中々勇気が要る行動だ。

そして、俺にはそれが出来なかった。

彼女の差し出した手を取ろうと、手を伸ばす。

 

その瞬間、目の前の鉄柵にボールが激突する。

 

「キャッ....!!」

 

「おわっ......!」

 

意識外から急にボールが飛んできたのでびっくりした。

そしてその飛んできた方向を見るも、誰がやったのかは分からない。

 

「多分、レシーブの練習で間違って飛んできちゃったんですよ。あはは...びっくりしたぁ~。」

 

「俺もだよ。」

 

彼女は手を引っ込めて、笑いかけてくる。

俺はそんな彼女から目線を外して、返答する。

レシーブミスったにしてはやけに勢いが強かった気がしたが、まぁこのくらいは出るんだろうな。

 

自分の中で結論づけると、練習風景をまた眺め始める。

すると、ホイッスルが鳴って練習の終わりを告げる。

 

「それじゃ、私...行きますね!」

 

「うん、話ありがとう。」

 

俺が礼を告げると、彼女は手をヒラヒラと笑顔で振って、下の体育館へと向かう。

練習の終わった選手たちは更衣室に向かっている。

そこで着替えたりするんだろうな。

そんなところを見るわけにもいかないので、ベンチに座っている。

 

暫く携帯を見ながら待っていると、メッセージが入ってくる。

見ると坂本から勝利という文字と共に俺の友人たちの姿。

項垂れていたり、ガッツポーズしたりしている。

俺は『バレないように撤収しろよ』と釘を刺しておいた。

やってもないのに、教師に見つかってこれで終わりとかマジ勘弁だからな。

 

「ごめん、待たせちゃったね....!」

 

すると、近くで声を掛けられたので顔を上げる。

そこには、肩で息をしながた俺を見て笑っている制服姿の楓。

運動後の熱気はまだ冷めやらないのか首の襟元から蒸気のようなものが見える。

前髪も額に張り付いて乱れていた。

 

「...なぁ、前髪。」

 

いつもの癖で彼女の前髪を直そうと手を伸ばす。

背が高いから手を伸ばさないといけない。

すると、楓は急に俺から距離を取った。

....なぜ?

 

「どうした?」

 

「え!?え...えっとぉ....その今私汗掻いてあの....獣...臭いっていうか,,,,その、制汗剤振ったんだけど..アハハ.....。」

 

汗...あぁ、そういうことか。

確かに制服に着替えたにも関わらず、湯気みたいなのが見えるくらいだし結構汗搔いたのだろう。

でも、そんなの今更っていうかなんていうか....。

 

「いや、今更お前の汗がどうとかなんとも思わないから。つーか、幼馴染相手に何気にしてるんだよ。そもそも俺鼻炎だから鼻死んでるしな。」

 

「あっ...そうだよね。あ...ありがとう...。」

 

一歩踏み出して、前髪を直す。

鼻炎ではあるが、鼻が利かないというわけではない。

花粉の季節でなければ普通に匂いくらいは分かる。

目の前の少女だって。

しかし、それはそれで問題はない。

なんというか、ずっと一緒に居るからか俺はコイツの匂いとやらが嫌いではなかった。

....なに考えてんだ俺、気持ち悪っ。

 

「それにしたってお前、頑張ってたな。練習見てて改めて、思ったよ。」

 

「私、エースみたいだし....、それにバレーはユー君が私にやってみたらって言ってくれたスポーツだから。」

 

彼女は笑顔で俺にそう言ってくる。

 

「...俺、そんなこと言ってたか?」

 

「...言ったよ。背の事でコンプレックスがあるのならそれを活かせることをやればいいんだって。...ユー君は忘れても、私は忘れたことは一度もない..よ?」

 

「そうか、記憶力良いんだなぁ。」

 

俺が楓がバレーを始めたきっかけとは思わなかった。

すると、彼女は苦笑いを浮かべる。

 

「あはは....、そんなことよりほらっ!帰ろっ?」

 

「そうだな。」

 

楓の提案に乗る。

彼女の跡をついていき、体育館の外へと向かう。

 

空はすでに橙に紫が混じった夕焼け。

夜が既に近いことを示していた。

下駄箱へと歩みを進めていく。

すると、彼女がこちらを振り向くこともなく声を発する。

 

「...そう言えばさ、園子ちゃんと何を話していたの?」

 

彼女の顔は見えない。

だけど、多分自分の幼馴染と友人が初対面でどんな会話したのかが気になるのだろう。

 

「別に、お前がどんだけ凄いのかとかそういう話をしたよ。」

 

「ふ~ん....そうなんだ。」

 

....話が続かない。

なんだ?どうでもよかったのか?

そっちから振ってきたんだからもっとこう反応しても良いと思うんだけど。

暫しの沈黙。

既に下駄箱は目の前に見えてきている。

 

「あっ....!あれって....ユー君のお姉さんじゃない?」

 

「えっ...?うわっ...マジだ....何してんだあの人。」

 

2年の下駄箱の柱。

そこに身体を半分隠している。

目はどこか洞のように虚無であり、ブツブツと小さく口が動いている。

 

その様にはなんか見覚えがあった。

それは昨日の夜も見た病的な表情。

...学校でもとかいい加減嫌になるな。

 

「何してるんだろう....声を掛けて....」

 

「待って。そんなこと、しなくても良い。大方....。」

 

姉の視線の先を見やる。

そこには俺の予想通り、姉と同じ2年のネクタイを付けた男子生徒が一人の女子生徒と仲良さそうに話していた。

その人は、全校集会で見たことがある人。

生徒会長である姉の後ろに控えている生徒、つまりは副会長である。

副会長である阿久津先輩。

....姉が想いを寄せている相手だ。

 

「ど、どうしようか....。」

 

靴を履き替えながらも、楓が俺に伺いを立てる。

....俺達が同じ空間内に居ても、気づく素振りすら見せない。

あの人は、阿久津先輩しか見ていない。

家族に対してですらこれだ。

....そんな人に声を掛ける必要、あるか?

 

「いいよ。どうせあの人、俺達が居ることにすら気づいてないんだ。...ああしてる時に話しかけても却って迷惑に感じるだけさ。...本当、馬鹿らしい。」

 

俺はそう言い切ると、靴を履き替える。

さっさとこの場から離れようと身体が動いた。

身内のこんな姿は、見るに堪えなかった。

 

「ユー君がそう言うなら....。」

 

いまいち釈然としない様子で楓は靴を履き替える。

そして、革靴に履き替えると姉の横を通り過ぎる。

...やはり俺たちに対して反応はない。

横をちらっと見る。

病的な目でただただ独り言をつぶやいている。

阿久津先輩と一緒に居る女の子に嫉妬しているのか?

 

「...そんなことしてるくらいだったら、話しかけたら良いのに。」

 

アンタは生徒会であの人の上司にあたるんだろう?

だったら話しかける理由なんかいくらでも思いつくはずだ。

こんなところで、本当に何をしているのか。

そんなことしても、手に入るのは阿久津先輩ではなくストーカーであるという事実だけだというのに。

頭は良いのに、なんでそんなことも分からないんだよ。

 

どことなく姉に対してやるせなさと失望にも似たような気持ちを覚えつつ、その横を通り過ぎる。

さっきまでとは打って変わって、楓が後ろから付いてきている。

 

...どうせ、この後声掛けられなくて一日中家で沈んでいるか女にイライラしてるかくらいだろ?

....はぁ、同じ敷地内で生活する方の身になれよ、まったく。

 

「...ごめん、楓。途中で寄り道してもいいか?」

 

「えっ?別にいいけど...。どこ行くの?」

 

「阿仁屋でカスタードプリンを買う。」

 

ちょうど姉の好物でもあった気がするけど、別にあの人の為に買っていくつもりでは断じてない。

ただ俺が食べたくなっただけだ。

それでもまぁ、食べるんだったら勝手に食べろって感じだけど。

 

「...そっか、うん!分かった!!プリン、あると良いね!!」

 

楓はなぜか急に笑顔を見せる。

何急にそんな元気になってるんだ?

...変なの。

 

 

 

 

 

 

 

暗い部屋の中。

部屋の中では棚などが引き出されて床に置かれている。

そして書類や写真などがひっくり返したように氾濫していた。

 

「あった....卒業アルバム。」

 

楓はそこから一つの本を見つける。

そこには青色で百花繚乱とタイトルが付けられているサイズの大きな本。

一ページを開くと、楼蘭小学校上空写真が掲載されていた。

 

その卒業アルバムのページを手繰っていく。

教師の言葉を飛ばし、行事の様子を移した写真のページを飛ばし、保護者代表の顔写真も飛ばしていく。

そしてクラスごとの集合写真へとたどり着く。

 

「笹上...佐々木....佐々木は居る。でも笹上は居ない....漢字が違う?笹神....笹紙....佐々神.....。」

 

全てのクラスの名簿を行ったり来たりする。

条件に当てはまる生徒を何人かピックアップする。

そして、そのままアルバムを閉じた。

 

「ささがみ、ささかみは小学校に居なかった。佐々木で女性は3人。」

 

そう口にすると、アルバムを適当に棚の中に放り込む。

そして、歯噛みして苦々しい表情へと変わる。

 

「...なんで私、ユー君の初恋を知らなかったの...気づかなかったの....?私は...どうして......。っ...ずっと一緒に居たのにっ!」

 

頭を抱えるようにしてベッドに腰を掛ける。

しかし、顔を覆ったかと思えば口元に笑みを浮かべる。

 

「...いや、関係ないよ。あの様子じゃ、本当にユー君忘れてたみたいだし....それに、一番私がユー君と仲良しだもん。ユー君は私を優先してくれる。優しく話してくれるのは私だけ、そうでしょ?」

 

彼女は立ち上がる。

そして、カーテンを開いた。

向かいの家の2階。

そこの明かりが微かに点いていた。

そこを眺めながらも、窓に手を触れる。

 

「ねっ?ユー君。」

 

少女は光の向こうに居るであろう少年の姿を想起して、ただ恍惚とした表情で笑った。




身内の様子を見て、ヤンデレが嫌いになった主人公。
お姉ちゃんはヤンデレ状態の時に目からハイライトが消えるのに対して、主人公は常にハイライトが消えています。
まぁ、理由としては母親がヤンデレで父親を監禁して出来ちゃった婚したからっていう理由があります。
遺伝に出たんでしょうねぇ。

なお自分に矛先が向いたヤンデレには気づかない模様。
本当にヤンデレな子ってヤンデレが嫌いって聞いても自分がヤンデレであるって気づくわけないってそれ一番言われてるから。

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