その日、世界に衝撃が走った。
人々は自分の耳を疑った。それが、あまりに信じ難いものだった故に。
ポケモントレーナーと呼ばれる者達の多くは、各地のジムを巡ってバッジを集め、その地方の頂点たるチャンピオンを目指す。
勿論、トレーナーになるからと言って全員がそうである訳ではない。ブリーダーやコーディネーター、研究者等、皆様々な道を歩んでいる。だがその中の幾らかは、かつてはチャンピオンを目指した者達でもある。彼等は厳しい現実に挫折し、道の途中で膝を折った者達。
チャンピオンになる。口で言うのは簡単なそれが、どれだけ難しいことなのか、この世界の住人はよく知っている。
だからこそ、それを簡単に信じろというのは無理な話だ。
────手持ち6体をタマザラシだけで統一したトレーナーが、チャンピオンを破り殿堂入りを果たした。
詳細を知らなければ、荒唐無稽な世迷い言にしか聞こえない話だ。
そもそも、手持ちのポケモンのタイプはバランス良く揃えた方が良いと世間では言われている。それは何も不思議なことではなく、様々な相手に対応する為には、自然とそうあるべきだという結論に行き着く者が多い故にそう言われるのだ。
ジムリーダーや四天王はその多くが、1つのタイプを極めたスペシャリストであることが多い。逆説的に言えば、そのレベルにあって初めてタイプ統一パーティの強さを十全に引き出せるとも言える。
並大抵の苦境ならあっさりと覆してみせる、鍛え上げられたポケモン達。苦手なタイプへの対策は勿論、扱うタイプの強みを最大限に活かした戦術で挑戦者を迎え撃つ。
そんな彼等であっても、本当に一つのタイプしか扱わない訳ではない。何体かは別のタイプのポケモンを使う者もいるし、大抵はいずれかのタイプを合わせ持つ複合タイプのポケモンを使うことが多い。真の意味で単タイプのみで勝てる程、この世界は甘くはない。
そんな中で、タマザラシ統一パーティというのはどうだろうか。
タイプはみず、こおりのみ。いまひとつの相性で受けれる技は自身と同じみず、こおりタイプだけなのに対して、効果抜群を取られる技はくさ、でんき、かくとう、いわと幅広い。4倍弱点こそ持たないものの、技範囲もそう広いものではなく、進化前のポケモンであるだけに種族としての絶対値もそこまで高いものではない。
にも関わらず、その者は殿堂入りの偉業を成し遂げた。
曰く、あれはタマザラシであってタマザラシではない。
曰く、あれはタマザラシの皮を被った別のナニカである。
曰く、あれを扱うトレーナーはまともではない。
好きなポケモンで最強になる。誰もが1度は夢に見て、そして諦めるそれを、彼は成し遂げた。変幻自在のタマザラシ使い。人呼んで─────
────タマザラシマスター
これは1人の少年が、そう呼ばれるようになるまでの物語。
舞台はホウエン。
ラスボスは大誤算のメガメタグロスです。