ラブライブリスタートシリーズ ラブライブカーニバル アフターメッセージ 作:しゅみタロス
カシャッ!! カシャ!!
無機質なシャッター音と共に様々なポーズの写真が写る。
今日はバラエティー番組の撮影を終えた後、依頼のあった音楽雑誌のインタビューとモデルの仕事をやっていた、深夜3時の撮影スタジオで一日の半分を恐らくこの仕事で持って行かれてるだろう。
撮影が終わり、更衣室で暑苦しい衣装を脱ぎ、鞄を手にスタジオを出ていく。
心咲「すっかり遅くなったな、この後は次のスクールアイドルの選抜資料を作らなきゃならないし、今日も事務所で寝泊まりか」
近くのコンビニに立ち寄り、俺はコーヒーとベーコンレタスサンドをビニール袋で引っ提げて事務所に戻った。
ラブライブ運営委員会 渋谷本社
誰もいない仕事部屋に明かりを付け、窓を見れば渋谷の街を一望出来るビルの15階。
一人その光景を見つめ、自分のデスクに着き、パソコンを起動させる。
心咲「今年の最終選考も苛烈を極める中、16人も残ったのか……50人参加した割には残ったメンバーは少ないな……」
俺のやるべきことはこの16人から今年俺の下で指導を受けるアイドルを数名選ぶ事、決して簡単には選ぶ事の出来ない重大な仕事だ。
ラブライブ運営委員会から俺が指導者となってトップアイドルを育成する仕事を頼まれている俺は毎年ミューズの枠に囚われない多くのアイドルグループを生み出し続けた。
心咲「正直言って、どれもスペックだけなら相当な物だが、一度この目で見ている以上はどれが本物とは言えないな」
時計の針が進み、俺は最終選考のビデオを見ながらひたすら考え続けた。
考えながらキーを打ち続け、コーヒーで必死に眠気に耐えながら無慈悲に時間は流れていった。
気が付けば渋谷の上空には光が差し、高層ビルから多くの人が目を覚ます頃。
心咲「出来た……」
資料が完成し、横の印刷機で資料を作っていく。
その資料をクリップで止めるとパソコンをシャットダウンした。
心咲「結局、朝になっちゃったな」
俺はそう呟くと備え付けの冷蔵庫からドリンクタイプのいちごヨーグルトを開封し、飲み干した。
心咲「よし、まだまだいけるな」
資料を手に俺は赤峰さんの元へ向かった。
赤峰「ご苦労だったね、よくここまで仕上げてくれたものだ」
心咲「結局朝までかかってしまいましたが、期日までには何とか間に合わせました」
赤峰さんは労いながらも俺の勤務履歴を見てため息をついていた。
赤峰「入社して一年、気が付けば君もトップスターになって誇らしいと思うが……」
心咲「この仕事には誠意を以ってやらせていただいてるので」
赤峰さんは苦笑いを零しながら俺に一つの書類を渡した。
心咲「これは……」
赤峰「見ての通りだ、君、労働基準法にスレスレの状態だったよ」
心咲「マジですか……」(汗)
赤峰「うん、マジ」
そこまで働いていたとは気が付かず、下手すれば法に触れるレベルだったんだな。
迂闊だった……
赤峰「私とてこれ以上君に仕事を与えるつもりは無い」
心咲「じゃあ、どうすれば……」
赤峰さんは一枚の届けを見せつけた。
赤峰「君には月曜の今日から木曜日までの4日間、特別休暇を与える。ロクに家に帰れていなかったんだ、家族サービスでもなんでも好きにしなさい」
こうして図らずも休暇を得てしまった俺は、渋谷の一角の店で蕎麦を啜っていた。
心咲「この店、長らく来ていなかったから懐かしさも感じるな……」
俺はその後、渋谷駅に向かい、電車に揺れながら新宿へと向かった。
新宿のとあるビル街の一角にあるマンション。
そのマンションの6階の一室が俺の家だ、帰るのは年末以来であり、俺にとっても何気に珍しい平日の帰宅である。
心咲「穂乃果ちゃん、驚くだろうなぁ」
そう俺は心を昂らせながら、部屋のカードキーを差し込んだ。
ガチャッ
心咲「ただいま」
穂乃果「護くーーーーん!!」
心咲「のわあっ!!」
突然猛ダッシュで走り、抱き着いてくる。
そう、俺の彼女で婚約者、元スクールアイドル、ミューズの高坂穂乃果ちゃんだ。
今は二人でこのマンションで暮らしている。
穂乃果「おかえりー、突然帰って来るなんて思って無かったよ~、しかもまた痩せたんじゃない?」
心咲「おいおい、こっちは一応芸能人だぞ。仕事で手一杯で食事なんていつもカップサラダ……」
???「その年になって未だに草食系ですか?」
心咲「うお!!園田さんいたのか?」
彼女は園田海未さん、元ミューズのメンバーで穂乃果ちゃんの幼馴染。
大学生で教員免許を取るために日夜勉強中、このマンションのお隣さん。
海未「仮にも、あなたと言う人がいつまでも野菜生活など余りにも変化がありません!!未だに牛肉も食べれないようですしそろそろその偏食を直してください!!いいですね!!」
心咲「はは……久々に園田さんの小言聞いてちょっと安心した、別に好き嫌い未だに引き摺ってる訳じゃ無いけど」
ピローン
穂乃果「あ、来たみたいだね」
???「こんばんは~って、心咲君!!」
心咲「ああ、今帰ってきたところだよ、久しぶりだね。南さん」
手にチーズケーキ(恐らく手作り)を抱えてきたのは同じくミューズの元メンバー、南ことりさん。
料理系の専門学校に通いながらパティシエを目指している、このマンションの3階に住んでいる。
心咲「近くに居るとは言え、少し印象変わったね。南さん」
ことり「そういう心咲君も、髪型変えたよね?前はシンプルな短髪だったのに」
心咲「それに気づいてくれるとはね、右の前髪、かき上げてみたんだ」
穂乃果「確か年末辺りのテレビ番組からその髪型だよね?綺麗~」
すると園田さんは俺たちの会話に斬って入った。
海未「お忘れかと思いますが、玄関前で話すのは迷惑なのですぐにリビングに戻りましょうか?心咲さんだって仕事帰りで疲れてるでしょうし」
3人「あ……」
心咲「あー、久々の自宅、久々のお風呂だなあ」
一人湯船に浸かり、疲れを癒す。
長らく帰っていなかった故に男性用のボディソープとシャンプーは未開封のままだった、入念に身体を洗い流し、青色の薄い服を身に纏うのだった。
穂乃果「お待たせ、ご飯できたよ!!」
心咲「久々の穂乃果ちゃんの手料理、良い匂いだ」
食卓に並べられたのはシャケのバター焼きにコンソメスープ、トマトとチーズのカプレーゼにハーブの香る炒めご飯。
心咲「園田さんと南さんも食べていけば良かったのにな」
穂乃果「明日外食に行く予定だからその時だよ、今は二人だけで居たいから」
なるほど、俺の事気遣ってくれたのか。それもそうか、俺も今は彼女との時間を楽しみたいと思っていた。
心咲「それじゃあ、いただきます」
今となってはナイフとフォークの食事も久々だ、東京の街を見つめながらの食事も悪くない。
穂乃果「どう?美味しい?」
心咲「久々だから凄く美味しいよ、いやー頑張ってよかった~」
穂乃果「ふふっ護君、相変わらず可愛い反応するよね、普段テレビじゃそういう所見せないでしょ?」
心咲「お互い普段見せないものがあっても良いだろう?」
食事を終えて、二人でチーズケーキと紅茶を嗜む中、穂乃果ちゃんは黒い箱を取り出す。
穂乃果「これ、今年渡し損ねたバースデープレゼント、受け取って♪」
心咲「ああ、そう言えば誕生日の事、すっかり忘れてたな。ありがとう」
小さな黒い箱を開けると入っていたのは……
心咲「おお、可愛いな」
シルバーカラーのハート、中心が更にハートでくりぬかれたイヤリングだ。
穂乃果「護君がテレビ番組でハートのアクセサリーが欲しいって言ってたから、どうかな?」
心咲「大切にするよ、ありがとう」
でも何よりのプレゼントは、穂乃果ちゃんの待つ家に、帰れた事だったりする。