真紅の姿が強化される
新たな伝説の始まりを目撃せよ!
第121話「子供」
「さあ、皆!空我を応援するのよ!」
「「「「頑張れ!空我~!」」」」
ステージに立つ奈美の掛け声に、客席の
子供達も最高の笑顔で声援を送ってくれる。
学園祭を目前にして、俺達は冥界の
旧首都ルシファードにある大型コンサート
海上のステージ中央でショーを繰り広げていた。
もちろん「仮面ライダー空我」の
ヒーローショーだ。
通常のヒーローショーは代役の方が
専用のコスチュームを着ることで
ショーを執り行っているのだが、
サーゼクス様からのオファーで今日は
本物の俺が出演することとなった。
さすがに魔王様のオファーは断れないよな。
この後にはイッセーの『乳龍帝おっぱいドラゴン』
のステージもあり、俺同様、断れず出演する
ことになった。
「いくぞ、マイティキック!」
「「「「「キーーーーーックッ!」」」」
俺が適役の怪人に飛び蹴りのアクションをすると、
子供達も大きく反応してくれた。
…いやぁ、これは…恥ずかしいな。
今だに慣れないが、子供達の反応を見ていると
高揚感に襲われる。
会場は満席。お子様とお母さん達でいっぱい。
冥界中から集まっているらしい。
ステージにはド派手な舞台装置や演出が施され、
俺がアクションするたびに爆発が起こっていた。
いや、悪魔陣営、人間界の特撮技術を
研究しすぎだろ!まさか、東映と提携してるのか!?
ステージには俺の他にライバルである光の戦士ティガ
役のゼノヴィア、聖女の衣装のアーシアが立っている。
アーシアが手を振れば、子供達と一緒にアーシア
ファンの男性陣の野太い歓声が聞こえる。
ゼノヴィアが手を振れば、子供達と共に何故か女性
ファンの黄色い声援が飛んでくる。
最近だと、子供のお母さんやお姉さん等の女性ファン
が増えている模様、宝塚みたいなもんなのだろうか?
それにしても、
「「「「「「「空我ァァァッ!」」」」」」
俺を求める子供たちの声援には
嬉しい気持ちでいっぱいになるよな。
ー〇●〇ー
「「ふぅー」」
「いやぁ、疲れたな」
「まあ、慣れないことだからな。仕方ないだろ」
ヒーローショーでの大方の出番を終えた
俺とイッセーは舞台裏で一息ついていた。
このイベントが終わったら、次は人間界で
学園祭の準備再開だ。新聞部は大掛かりな
出し物になり男手の足りてないオカルト
研究部と協力することになったから、
イッセーや木場の二人と毎日突貫準備に
励んでいた。
「…では、おっぱいドラゴンと」
「仮面ライダー空我の」
「「クイズコーナーです」」
「「「「うおおおおおおおおっ!
ヘルキャットちゃぁぁぁぁぁん!」」」」
舞台でクイズコーナーの司会を担当する
小猫ちゃんとイリナの掛け声に。
小猫ちゃんのファンである。大きなお友達
の声援が向けられている様だ。
小猫ちゃんって、ロリ好きのお兄さん達に
大変な人気なんだよな。小猫ちゃん目当て
でここに来場している者も少なくないという…。
今回手伝いで参加してくれた、奈美やイリナも
ファンが着くのは時間の問題なんだろうな。
なんだか、俺達、違う方向で有名になって
ないか?まあ、ありがたいんだけどな。
グレモリー眷属としてではなく、
まさかここまで「仮面ライダー空我」と
「おっぱいドラゴン」が人気になるとはな…。
それだけ冥界には娯楽が少なくて、
こういうのが物珍しいのだろうな。
冥界の未来の為に悪魔達を盛り上げたいと
おっしゃっていたサーゼクス様の仕掛けは、
見事に大当たりといっていいだろうな。
冥界メディアでは、ロキ襲来や京都の事件
等のニュースを報じており、そこで作戦に
参加していた俺達グレモリー眷属の事を
大々的に報道してくれたようだ。
そのせいか、イベントで冥界に来た際に、
マスコミ関係の方に囲まれてフラッシュ
をたかれた。
目立った戦も無くなった悪魔業界にとって、
俺達が遭遇した事件は珍しいようで、
テロリストの存在や勢力間の同盟などで
目まぐるしく変化する情勢の中で吉報と
なっているとのことだ。
『おっぱいドラゴン!仮面ライダー空我!
またもお手柄!』という形で報じられており、
冥界の子供達にとってテレビの中の
「おっぱいドラゴン」と「仮面ライダー空我」
と実際の俺達の行動が混同されている。
つまり、子供達の中ではテレビのヒーロー達
がロキや『
しているってことになっているらしい。
ちなみに敵にもクウガが居るのだが、
番組の中にもクウガの姿をした敵役、
『アナザー空我』というキャラが存在
しているので、東城の存在がもしメディア
に伝わったとしても偽物だとごり押し
する方針だとアザゼル先生が教えてくれた。
…嬉しい反面、複雑だよな。
この間、メモリーにも言われたけど、
俺ってやっぱりトラブルメイカーなのか?
いや、俺だけじゃないなイッセーもか。
俺達だけ激しい戦闘に巻き込まれるからな。
敵は伝説の存在で、旧魔王や神様、
あげく英雄の子孫や別世界の秘密結社に
人間を狩る古代の戦士と来た。
俺が狙われてるってのもあるが、
結構な確率で遭遇してるよな。
やっぱり、平和が一番だよ。
そのためにも、決着つけないといけない
こともあるからな頑張らないとな。
子供達の声援もうれしかったしな。
今日のイベントも最高に楽しかった。
こんな非日常なら嬉しいんだけどな。
俺の日常は自分の手で守るしかない
俺自身だって死にたくないし、
仲間の誰かが死んだら、俺は立ち直れ
ないだろう。でも今までの戦いがあった
から今の仲間に出会えたんだよな。
俺達の絆も今までの試練を越えてきたから、
出来上がったんだと思うしな。
後はイッセーのというか、ドラゴンの特性
天龍だから力を呼び寄せてるのもあるんだろうな。
アザゼル先生もイレギュラーなことが
起こりすぎているって言ってたしな。
いや、考えるのは止めよう。
この手の話は考えるだけ無駄だ。
起きたことに立ち向かうしかないからな。
ふと、イッセーが立ち上がる。
「どうした、イッセー?」
「いや、ちょっとトイレで
顔でも洗おうかなと」
「なら、俺も行こうかな。
一緒に行こうぜ」
そうして、俺達二人は通路に出て
数分歩いたところで、何やら
騒がしい声が聞こえてくる。
何かトラブルか?
「「やだぁぁぁぁっ!」」
子供が大声で泣き叫んでいる様子だった。
通路の角から様子を見てみると、
裏口で子連れのお母さんスタッフと話している。
「おっぱいドラゴンにあいたいよ!」
「くうがにあいたい!」
二人の子供が地団駄をふんでぐずり、
お母さんもどうしていいかわからないようだ。
「すみません。握手とサイン会の整理券配布
は既に終わってまして…」
スタッフのお兄さんが謝りながらそう告げる。
ああ、なるほどな。握手サイン会の整理券
配布に間に合わなかったのか。
ショーが始まる前の配布だったからな。
人間界のイベント風景を真似して冥界でも
取り入れたわけだから、生活と文化の違う
悪魔達にとって握手サイン会の整理券配布
なんてなじみのない物だから分からないよな。
「そ、そうなんですか…。
もう終わっちゃったんだって」
お母さんが子供達にそう告げると、
子供はいっそう目に涙を溜めて泣き叫んだ。
手には変身した姿を模した俺達の人形を。
大事そうに抱えていた。
これは…無視できないよな。
「「やだぁぁぁぁぁぁっ!」」
俺達にチケットの手配なんて出来ない。
なら、出来ることは一つだよな。
イッセーも黙って鎧のカウントを始めていた。
「ふっ、…変身」
通路の隅で赤い閃光を放ちながら、
俺達は再び鎧姿に変身し、裏口の方へでていく。
「どうかしたんですか?」
マスクを収納しイッセーが声を掛けると
母子とスタッフが振り返った。
「おっぱいドラゴンだっ!」
「仮面ライダーくうがだ!」
子供達は一転して笑みを見せ。
スタッフが俺達に説明してくれる。
「あ、兵藤さん。いえ、こちらのお母さんと
お子さん達がサイン会の整理券配布に
間に合わなかったようでして…」
一応の確認を取り、俺達は子供達に
向き合う。
「君達、名前は?」
「…リレンクス」「レックス!」
「そうか、二人共俺達に会いに来てくれて
ありがとうな」
「ああ、俺もうれしいぜ、えっと、
何か書くものありますか?」
イッセーがスタッフさんに訊くと、
「あ、ありますが…」
スタッフさんはマジックペンを
取り出してくれた。
「リレンクスの帽子。俺のデザインが
入った帽子、これにサインいてもいいかな?」
「なら、俺はレックスが着てるクウガのマーク
が入ったこのTシャツにサインしようかな?」
子供達は俺達が訊くと何度も頷いた。
俺のへたくそな悪魔文字にこんだけ
喜んでくれるならもっとうまくならなきゃ
と思うよ。
サインが終わると二人は輝く笑顔で
サインを眺めている。
「ありがとうございます!」
お母さんがお礼を言ってくれた。
俺はレックスの頭を撫でて告げる。
「レックス、男の子がそんな簡単に
泣いちゃダメだ。困難にぶつかって
一度は倒れてもすぐに立ち上がって
次に生かすんだ。今回はダメだったなら
次は間に合うように来るんだぞ」
そう言い、俺はイッセーを連れて
スタッフさんと共にその場を後にする。
スタッフさんは困惑した表情をしながら、
苦言を口にした。
「お二人共。なるべくこういうのは
控えてください。すべての肩に応対
するのは無理なのですから…
特例を作ってしまうのはちょっと…」
そうだよな…。ちょっと軽率な事を
したかな。スタッフさんだって出来ることを
一生懸命やってるんだからな。
全ての人に平等に接しているのに
俺達が特例を作ったら意味ないよな。
頭ではわかってるんだけどな。
目の前で泣いている子が居たら
どうしても手を差し伸べたくなっちまう
「「すみませんでした。」」
俺達は申し訳ないと思いスタッフさんに謝った。
スタッフさんもそれをわかってくれてそれ以降
は何も言わず、持ち場に帰っていった。
本当に悪いとは思っているけど、それでも俺は。
「格好良かったわよ、さすがは私のイッセーね」
「そうね。私としては良かったわよユウスケ」
リアス先輩と奈美の声。
そちらへ視線を送れば二人の姿が。
二人が俺達の方へ歩み寄ってきて、
奈美はユウスケの肩に手を置く。
「いったん楽屋に戻りましょう。
アーシアやゼノヴィアが貴方を
探してたわよ」
奈美にそう言われ、俺達は通路を歩いていく。
「確かに少し軽率だったかもしれないけど、
それでも子供の夢を守った貴方は十分立派よ」
「ありがとう。奈美」
そうだな、うだうだ考えるのは俺らしくないか。
奈美先輩と話をしていると、
通路の奥から見知った女性が姿を現した。
「あら?ごきげんよう、祐介さん
奈美さん」
亜麻色の髪のリアス先輩にそっくりな女性。
それはリアス先輩のお母さまである。
ヴェネラナ・グレモリー様だった。
「お、お久しぶりです。ヴェネラナ様。
ミリキャス様もご一緒に見に来てくれて
いたのですね」
突然の出来事に緊張するユウスケだったが、
「ユウスケ兄さま、イベントとても
楽しかったです!」
小さな紅髪の少年、ミリキャス様
相変わらず元気一杯なご様子で、
俺達の事を兄さまって呼んでくれるのは
流石に恐縮してしますな。
ヴェネラナ様は微笑みながらおっしゃる。
「ええ、一度、グレモリーが主催する
イベントを直に見ておきたかったものですから。
ミリキャスも見たいと言っていたのです。
ユウスケさん。盛り上がっていましたわね。
良いショーだったと思いますわ」
おおっ、見られてたのか、なんか恥ずかしいな。
「あ、ありがとうございます!」
俺はお礼を口にする。
相手は俺より格上の悪魔でリアス先輩のお母さま
だってこともあるけど、この方には逆らえない
凄味を感じるんだよな。
ヴェネラナ様はヒールをコツコツと鳴らしながら、
こちらに歩み寄られる。
「一誠さんと祐介さんお二人を模した特撮番組は
我がグレモリー家の財政を担う大切な産業と
なることでしょう。そして、冥界の子供たちに
とっても大切なものになっていますわ。
これからもグレモリーの一員として、冥界の為、
我が家、我が娘のために奮闘してもらえると
助かります」
「もちろんです、ヴェネラナ様!
一生懸命がんばります!」
「『一生懸命』、日本の成句だったわね。
さすがグレモリー家の男子です。けれど」
ヴェネラナ様はやさしげな瞳をむけながら、
人差し指で俺の顎をさする。
「『ヴェネラナ様』というのは、いただけないわね。
私の事は、お義母様か、母上と呼ぶこと」
いや、さすがにそれはマズいんじゃ…。
「しかし、それは失礼なような…」
「何も失礼なことなどありませんわよ?
一誠さんとリアスが結ばれれば、家族になるの
ですから、何も可笑しなことは無いでしょう。
むしろ、共に社交界に出たとき、そのような
呼び方ではグレモリー家全体が恥をかきます」
ヴェネラナ様は一転して表情が厳しい物になる。
「これは一度リアスと話す必要があるわね
ところで、リアスがどこに居るか知って
いるかしら?」
「それでしたら、さっきまで一緒にいて
通路の先にいるはずですよ」
奈美がヴェネラナ様に説明する。
「教えてくれてありがとう。奈美さん、
でも以前の様にフランクに接して良いのですよ」
「いえ、以前はリアスのお姉さんだと思っていたので、
お母様だという事なら流石に以前の様な言葉遣いは…」
「フフフ、人間からしたら、そう思われても
仕方ないものね。じゃあ、私達はリアスに会いに行くわ。
二人共、また会いましょう」
「はい、またお屋敷に伺わせてもらいます」
俺達はヴェネラナ様を見送りほっと息を吐いた。
「とりあえず、戻りましょうか」
「ええ、そうね、あまり待たせると
アーシアがやきもち焼きそうだし」
意外な人物の来訪があったが、俺達は
楽屋への帰路についたのだった。
悪魔の世界で大人気の特撮文化
驚きの結果だったが、
子供達の夢を守るため
ユウスケ達は戦い続ける。
次回、第122話「下級生」
是非見てくれよな
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