夜、俺は日課となっている。
トレーニングの為、アマダムの中へと
やってきた。
「今日は俺が相手する」
そう言い、ユウスケの前に立つのは
カブトムシのグロンギ
ゴ・ガドル・バだった。
「ガドル師匠、よろしくお願いします!」
ユウスケの言葉に
ガドルは少し戸惑った様子で
話しを続ける。
「俺は、弟子を取らん主義だと
言っただろう、まあ、お前の好きにしろ…
前は死を経験し、危機感知を高めたが、
今回から、お前には、俺の戦い方を
見せてやろう。構えろユウスケ!」
ガドルはそう言い拳を構える。
対してユウスケは腰に手をかざし、
構えを取る
「変身!」
『
拳を構える!
ダッ!
ガドルが即座に駆け出し、ユウスケへと
拳を叩きこむ!
ガッ!
ユウスケは腕でその拳を防ぐが、眼前には
逆の拳での一撃が迫っていた!
ドカァッ!
その拳を寸前で受け止める事で
防ぐことが出来た。
「ヘヘ、この程度じゃ負けませんよ」
相手の一撃を防ぎ喜ぶユウスケだったが、
「喜ぶのはまだ早いぞ」
『ラドム!』
ドカァン!
突如、受け止めた拳が爆発する!
「な、なにが!?」
煙が立ち上る拳を構え直し
ガドルは攻撃の手を緩めず
追撃を開始する。
「くっ!」
すかさず距離を取るユウスケだったが、
ガドルはそれに対し手をユウスケへと
翳すと。
『ロンド・ラドム』
爆炎のムチがユウスケへと迫りくる!
「そいつは二度と食らうかよ!
超変身!」
ユウスケは『
更に距離を取る。
「良い判断だ、ならこいつはどうかな」
ガドルが胸の装飾品をむしり取ると、
その目の色が緑色へと変わり
装飾品もボウガンへと形を変える。
「な、装飾品を武器に!?」
「驚くのはまだ早いぞ」
ガドルはそう言いユウスケへと狙いを定めると。
『ゾニス!』
竜巻状の光線がボウガンより放たれた!
ドカァァァンッ!
次の瞬間、ユウスケのすぐそばを
光線が床を削りながら通過していく!
「惚けるな!これは真剣な戦いだぞ!
次は当てる!」
「くっ!超変身!」
ユウスケは即座に『
へと変身し、レイピアを構える!
それに対し、ガドルもボウガンを構えると、
ボウガンの矢先に光が集まる。
『ゾニス‼』
『ラシルド‼』
ドズァガァアッ!
ラシルドにより跳ね返された、
光線はガドルに向かって飛んでいくが、
バキィィィッ
ガドルによって容易に弾かれる!
「この戦いは只の修行ではない!
常に俺を超えるつもりの覚悟で来い!」
「超える覚悟…」
そう呟く俺にガドルは真っ直ぐ
見つめ話を続ける。
「貴様が俺の術を得るというのなら!
俺を師匠と呼ぶのなら!超えて見せろ!
俺は俺を越えて行く覚悟のある者だけだ!」
そうか、それがこの人の望む形か!
なら俺もそれに応えないとな!
「行くぞ!ガドル師匠ぉ!!」
「こぉおい!ユウスケ!」
『ザケルガ‼』
ドガァァァァアアアアアアアン!
ユウスケの放った螺旋の雷撃が!
『ガルゾニス‼』
ギャルルルルルルルルルルルル!
ガドルの放った回転の突進が!
衝突する!!
バギャラララララッ!バキィィィィン!
均衡していた攻撃が突如、強力な衝撃波を
生み。お互い後方へと飛ばされる!
ズサササッ!
「ほう、よくぞこの技を防いだな!
良い術に育っているじゃないか。
なら続けていくぞ!」
『ゾニス‼』
『ラシルド‼』
ドゴンッ!
ガドルの放った光線を盾で防ぎ
先ほどと同様に弾こうとした
ユウスケだったが、
ダッ!
それよりも先にガドルが駆け出しており、
彼の接近を許していた。
「こんな盾は!」
『ドルゾニス‼』
ギュララララ!
ガドルの手刀に螺旋状の光線がまるで
ドリルの様に纏う。
「オラァアアアア!」
バガァァァアアアア!
光線のドリルにより、容易にユウスケの盾
を打ち砕いてしまう!
俺のラシルドをこんなに簡単に!?
だがまだだ!
『ザケルガ‼』
ドオンッ!
ユウスケは雷撃で即座に迎撃を行うのだが、
バキィィィィン!
「な…に!?ザケルガを拳で弾くだと‼」
ブンッ!
遠距離主体の姿で殴りかかってくるかよ!?
ガシィイッ!
咄嗟の事ではあったが、ユウスケは何とか
掴んで防ぐことが出来たが、
このままじゃ、また爆破される!?
『ザケルガ‼』
ユウスケは距離を取ろうと、咄嗟に雷撃を放つが、
ほぼゼロ距離であったにも関わらず、ガドルは
僅かに顔をずらすだけで避けてしまう!
なっ!この距離で避けるのか!?
「馬鹿が!敵の体勢も崩さず、そんな攻撃が
当たるかぁ!」
ドカァ!
ガドルの鉄拳を食らい吹き飛ばされるユウスケ!
マズイ直ぐに迎撃を!
『ゾニス‼』
ドカァァァンッ!
くっ足元を!
ガドルの放った光線により、
ユウスケの足元が抉られ、体勢を大きく崩される!
「攻撃のチャンスってのは…こうやって
作るんだ!」
『ギガノ・ゾニス‼』
ズドォォン!
ユウスケの眼前に竜巻の様な光線が迫ってくる!
避けられない!?なら直撃だけでも!
『ザケルガ‼』
ボシュウウッ!
ユウスケの放った雷撃が光線に当たるが
僅かに弱らせることしか出来なかった。
ドガァァァァアアアアアアアン!
「ふ、流石に消し飛んだか…」
光線の竜巻により辺りは瓦礫が
散乱し、ユウスケの姿は何処にも
無く、それを見るガドルの顔は
何処か寂しい様子であった。
ゾクッ!
「ははっ!まだだったか」
ガラガラッ!
瓦礫の中からユウスケが立ち上がる!
「俺は!勝つんだぁ!」
『バオウ・ザケルガァァ‼』
BAOOOOOOOOOOOOOOOh!!!
迫りくるバオウに両手をかざす!
『ゾルシルド!』
ガドルは現れた盾でバオウのキバを受け止めた!
ガキィィィン!
「うおおおおおおおお」
その腕力により押さえていたガドルだったが、
ゴシャァァァアアアア!
次の瞬間、バオウが直撃し土煙が舞う。
「はは、やってやったぜ!」
今のはモロに食らった!ダメージを
与えられた筈だ!
「ハッハッハッ!良い目をするじゃないか!
強き男の眼だ!」
土煙が晴れると体に微かなヒビが入った
ガドルが現れた。
「嘘だろ!?バオウが直撃してこれだけかよ…」
ガドルのダメージの少なさに愕然とするユウスケ。
「誇れユウスケ、僅かにでも俺の身体に傷
を付けたのだ、出来る者はゴの者でも
限られたものだぞ」
「なら次はヒビだけじゃなく
しっかりした一撃をお見舞いしますよ!」
そのユウスケの言葉に喜ぶガドル。
「ならば、さらに強くなれよユウスケ!
何時かは俺を越えて見せろ!」
そのガドルの言葉を最後に俺の
意識は薄れていった。
「おっと、これは…ずいな
おい……!……してやれ!」
『サイフォジオ‼』
ー〇●〇ー
明くる日の事。
俺はイッセーとリアス先輩の三人のみで
冥界のシトリー領に来ていた。
自然豊かな林道を豪華なリムジンが走っていく。
俺達はリムジンの後部座席に座っていた。
イッセーの手には花束。先輩が持っていくもの
だとイッセーに渡したんだ。
「今回のこの件はお母さま経由なの」
と、車中で先輩が言った。なんでもサイラオーグさん
の所の執事さんが折り入って話があると、
グレモリー家に伝えてきたそうで、
それを先輩のお母さんが了承したという。
先輩のお母さんはバアル家の出だ。その縁で、
執事さんからの話を受諾したのだろう。
「何の用で呼び出されたのかはともかく、
シトリー領に初めて入りましたけど、自然豊かですね」
「ええシトリー領は数ある上級悪魔の領土の中
でも自然保護区が多い所ですもの。美しい景観
の場所がたくさんあるわ。今度、皆で来ましょう」
なるほど、自然に恵まれた領土なのか、
確かに行く先に広がる山々は様々な色の
木々に囲まれて見事の一言だった。
車窓から外を眺める俺達に先輩は続ける。
「そして、医療機関が充実している
領土のひとつでもあるわ」
「医療ですか」
「ええ、これから向かう先も冥界でも
名だたる病院のひとつよ」
「びょ、病院ですか…。俺達病院に
向かっているんですか?」
先輩の説明にイッセーはそう返す。
これはまた予想外だったな。病院?
それにサイラオーグさんのそれも、
先輩の身内と関連しているって事か、
誰かが入院している?サイラオーグさん
ではないことは確かだな。
この話題はこれ以上追及できそうに無いな。
イッセーも俺と同じ様で無言を貫いている。
しばらくすると、リムジンは拓けた場所に
出ていく。人の手が入った広大な敷地。
ポツポツと建物が建っていて、視界の向こう
側に大きな建造物を捉えた。おそらくあれが
病院だろう。
リムジンが進むこと、十数分。巨大な建造物
の送迎用入り口にリムジンが止まり、俺達は
車から降りた。
「お待ちしておりました」
俺達を迎え入れてくれたのは執事服の中年男性。
ピッチリとした会釈だ。
なんでもそつなくこなせそうな雰囲気を
全身からかもし出している。
「ええ、案内してちょうだい」
先輩がそれだけ言うと、中年男性は、
「どうぞ、こちらに」と歩き出していく。
そのあとを俺達はついていく。
広い院内を進んでいき、エレベータに乗り込む
ことに。そこで先輩が静かに口を開いた。
「二人共、私の母がバアル家の出であることは
知っているわよね?」
「は、はい。」
「ですから、サイラオーグさんと部長
はいとこになるんですよね?」
「ええ、そうよ。うちの母はサイラオーグの
お父様、バアル家現当主の姉だから。腹違い
なのだけれどね。サイラオーグのお父様が
本妻の息子、私の母が第二夫人の娘」
バアル家現当主と先輩のお母さんはご兄弟。
しかし、母親が本妻、第二夫人と複雑だな。
「そして、おばさま。サイラオーグの
お母さまは元七十二柱であり、
上級悪魔の一族、ウァブラ家の出なの。
獅子を司る、偉大な名家よ」
「ウァブラですか…。獅子…」
「ライオン…。サイラオーグさんには
納得の血筋ですね」
俺達がそんな会話をしているうちに
エレベータが上階に止まる。
扉を抜けるとそこは病室のフロアだった。
さらに進むこと数分。執事さんに連れられ、
俺達はとある一室の前に辿り着く。
「ここでございます、リアス様」
入っていく先輩と執事さん。
俺達もあとから付いていくと
個室のベッドに綺麗な女性が
眠りについていた。
「…ごきげんよう、おばさま」
先輩は眠る女性に悲哀に満ちた
眼差しを向けていた。
おばさま?ならこの人が…。
イッセーから花束を受け取りながら、
執事さんが言う。
「…この方はミスラ・バアルさま。
サイラオーグさんの母君でございます」
やはりか、呼吸器をつけたまま寝ている…。
ベッド横の機器は初めて見るが、生命維持装置
だと思うが、人間界の物とは若干違うな。
執事さんは花束を持ったまま、
涙を流していた。
「…今日、ここへお呼びしたのは他でも
ありません。リアス様、赤龍帝殿、空我殿、
どうか、この方を…ミスラ様を目覚めさせる
ためにご助力願えないでしょうか…?」
突然、執事さんが泣きだし、当惑する俺達に
先輩は語り始める。
「二人にもわかるよう、少しだけ話すわ」
先輩が語ってくれたそれは一組の母子が
たどった、激動の運命だった。
サイラオーグさんは、バアル当主のお父さん
と獅子を司る名家ウァブラのお母さまの間に
生まれた。
次期当主が生まれたと、周囲は大変喜んだそうだ。
しかし、生まれてすぐサイラオーグさんに
辛いものが突きつけられる。
魔力が無いに等しく、バアルの特色である
『消滅』の力を持っていなかった。
代々当主は魔力に恵まれ、『消滅』の力を
持つことが当然とされていたが、
サイラオーグさんはそれを持たずに
生まれて来てしまった。
失意にくれるサイラオーグさんのお父さん
は、怒りを妻に向けた。
『我が一族が持つ滅びの力をどこにおいて、
こんな欠陥品を産んだのだ!?』
魔力と滅びを持たずに生まれただけで、
サイラオーグさんは父親に見捨てられた。
同様にその子を産んだ母親であるお母さん
も蔑まされるようになる。
欠陥品を産んだバアル家の面汚し、と。
「…あまりに酷いものでした。当時の
バアル家の者は、私を含めたウァブラ家
からの従者達を除き、殆どの者が
サイラオーグ様とミスラ様を侮蔑し、
差別したのです」
うっすらと目に涙を浮かべながら先輩も言う。
「当時のグレモリー家もその噂を聞いて、
母がおばさまとサイラオーグをグレモリー
の領土に保護しようとしたのだけれど、
あちらに強く拒否されてしまったらしいわ」
本筋の者でもなく、嫁に行った者がバアル
本家のことに口を出すな、と。
グレモリーには滅びの力を色濃く受け継ぎ、
冥界で活躍されていたサーゼクス様の存在が、
バアル家的にはおもしろくなかったそうだ。
そりゃそうだ、本家の子が特色を受け継がないで、
嫁に行った者の子だけが遺伝したんだもんな。
バアル家にとってこれほどの皮肉はない。
「大王であるバアル家は、世襲ではない現魔王
を除けば、家柄的にはトップに君臨する上級悪魔。
なかなか、他の御家でも口出しが難しいわ。
そして、プライドが何よりも高く、周囲の目を
気にする。おばさまとサイラオーグは厄介者
でしかなかったのよ」
その後、ウァブラ家がサイラオーグさんの
お母さんとサイラオーグさんの帰還を求めたが、
バアル家からの返事は残酷なものだった。
「サイラオーグさまだけは渡すわけにはいかないと、
ご当主さまはおっしゃったのです。家の恥を外に出す
わけにはいかないと。そのような提案をミスラ様が
飲めるわけがございません。ミスラ様の保護が
なければ幼いサイラオーグ様は幽閉され、
ひとり蔑まれて生きていかねばならなかったからです」
執事さんは続ける。
「ミスラ様は故郷の助力を断り、サイラオーグ
様と私達一部の従者のみを連れてバアル領の
辺境へと移り住むことになったのです」
バアル領の辺境ならば、バアル家にとっても
目の届く位置にあり、何よりも外部にサイラオーグ
さんを晒す事もない。
バアル家はバアル領の奥地に母子が移り住む事を
認めた。 家の援助がほぼないなかで、サイラオーグ
さんは片田舎でお母さんと暮らし始めた。
「上流階級育ちのミスラ様にとって、助力なしで
の田舎暮らしはお辛いものだったでしょう。
それでも立派にサイラオーグ様を育て上げました。
それは、とても厳しく、ときにやさしく、
サイラオーグ様を教育なされたのです」
魔力が無いに等しい悪魔は、どこにいても
いい待遇は受けない。田舎に移り住んでも
サイラオーグさんは差別の対象になった。
同世代の下級、中級悪魔の子供達よりも
魔力が劣っていたため、その者達に
いじめられたという。
「それでもミスラ様は泣いて帰ってくる
サイラオーグ様に強く言い聞かせておいで
でした」
魔力がなくとも、貴方には立派な体があります。
足りないと思うのなら、その足りないものを
何かで補いなさい!腕力でもいい、知力でもいい、
速力でもいい、補ってみなさい!あなたは誰が
なんと言おうとバアル家の子。たとえ、魔力が
なかろうと、滅びの力がなかろうと
「諦めなければいつか必ず勝てるから。以前、
サイラオーグから聞いた言葉よ。母から
教わった大事な言葉だって、言ってたわ」
先輩はそう言う。
…諦めなければいつか必ず勝てる、か
その言葉は俺にも来るものがあるな。
執事さんが言う。
「裏では、何度も謝り続けていたのです。
滅びの力を持たさずに産んでごめんなさいと。
ミスラ様は眠りにつくサイラオーグ様の横で
何度も何度も泣き続けられておられました…。
サイラオーグ様はそれを察しておられても
いたのでしょう。ある日突然、泣くのを
お止めになられたのです。そして、何事にも
真正面から立ち向かっていったのです」
自分をバカにした者に、自分が足りない
ものに、サイラオーグさんは正面から
立ち向かい、何度も倒れ続けながらも
立ち上がり続けた。
そしてサイラオーグさんはそこで夢を掲げた。
実力があればどんな身の上の悪魔でも夢を
叶える事のできる冥界を作りたい、と
実力社会の悪魔業界だけど、その実は
上流階級とそれ以外で世界がまるで違う。
たとえ力を持っていても出自が下級
ならば望める生き方をできる者は少ない。
その辺りのことはソーナ会長も同じ様
な野望を掲げていたな。
俺達は…恵まれているほうだ。
階級は下級悪魔だけど、グレモリー眷属だし、
主である先輩はとてもやさしい。
それでも古い家柄を持つ上級悪魔からの
下級、中級悪魔への差別はいまだに残る。
家柄トップのバアル家で、サイラオーグさんが
受けた差別は俺の想像を超えるものだろう。
サイラオーグさんが中級悪魔とまともに
勝負ができるようになってきた頃、
サイラオーグさんのお母さんの体に異変が起こる。
「…悪魔が掛かる病のひとつなのよ。
症例はすくないけれど、その病気にかかると
深い眠りに陥り目を覚まさなくなってしまう。
そして、徐々に体が衰弱していき、死に至る。
だから、こうやって医療機関で人工的に生命を
維持しなければならないの」
と、先輩が寂し気に言った。
…サイラオーグさんのお母さんは
そんな難病にかかっていたのか。
あらゆる方法を模索したが、治療方法は
見つからず。それでもサイラオーグさんは
突き進んだ。
「その後、体を鍛え上げたサイラオーグ様は
満を持してバアル家に帰還し、旦那様と
後妻様の間に生まれた弟君を実力でくだして、
次期当主の座を得られたのです」
…その弟さんはきっと滅びの力を持っていたん
だろうな。そんな弟を倒して、今の地位を得た。
複雑な身の上なんだな…。
「サイラオーグさんは弟さんを倒してバアル家
に帰還したんですよね?ならサイラオーグさん
の母さんはどうしてここに?ここのほうが
バアル領の病院よりも医療環境が良いって
ことですか?」
そんなことをイッセーが訊く。
「それもあるけれど…バアル領とおばさま
を狙う者がいるでしょうから」
そう先輩が答えてくれる。
「次期当主の座を奪われたサイラオーグの
弟をはじめ、滅びの力を持たずに次期当主
になったサイラオーグを疎む輩はバアル家
周辺に多いわ。病気のおばさまは良い的に
なってしまう。だから、ソーナのつてを
頼ってサイラオーグはシトリー領におばさま
を移したの」
なるほど、次期当主の権力争いは未だに
続いているのか、怖ろしいな。
大王家か…。いや、グレモリー領が、
裏表のない平和なだけで、貴族というのは
本来こういう裏があるのが当然なのか。
執事さんが涙をハンカチで拭いながら言う。
「皆さまをお呼びしたのは他でもありません。
ミスラ様のご病気の治療にご助力願えない
でしょうか?なんでも空我殿は我々とは
違う魔術を扱うことが出来るとお聞きしました。
そして、赤龍帝殿は女性の胸に秘められた声
を聞く技をお持ちになられているとのこと、。
乳力なる魔力とは違うパワーが奇跡を呼び込む
と聞きましたもので。ぜひ、深い眠りにつく
ミスラ様のお声を聞けるか試して欲しいのです。
担当医の了解は取っております。有害ではない
魔力ならばだいじょうぶだと…」
乳力!?アザゼル先生の命名がまた独り歩き
したか!こんな真面目な展開であれを
やるのかよ!
「まあ、話は分かりました。なら、俺から
試さしてください」
ユウスケがサイラオーグさんの
お母さんに手を翳し、
『サイフォジオ‼』
呪文を唱えると、水晶に小さな翼が生えた、
聖剣のようなものが現れた。
「せぇぇぇぇい!」
ユウスケがサイラオーグさんのお母さんに
手を振り落とすと、剣は彼女に突き刺さる!
「なっ、何を!」
「落ち着きなさい。確かに驚くことだけれど、
これはれっきとした回復呪文よ」
その状況に執事さんは驚くが、
即座に先輩が落ち着かせる。
そう、この呪文は回復呪文だが、聖剣を相手に
突きさすことで対象を癒す事ができる。
ただし、これは自分に使うことは出来ないがな。
以前、師匠との修行後に突然使うことが出来る
ようになった。恐らく、あの意識が薄れていく
時に誰かが何かを叫んでいた気がするが、
この呪文を使用していたのだろう。
パァァァアアアアッ!
この呪文は傷だけでなく僅かに体力や魔力を
僅かだが、回復することが出来る。
頼むこれで目覚めてくれ!
聖剣が消えるとサイラオーグさんのお母さん
に僅かだが変化が生じていた。
「おお、ミスラ様の顔色が!」
回復呪文を受けた彼女の顔色が良くなり、
執事さんがその変化に驚いていた。
だが、彼女が目覚めることは無かった。
「目は覚まさないか…」
「いえ、衰弱していたお身体を回復して
いただいただけでも。大変うれしいです」
執事さんは涙を拭きながらそう答える。
「俺じゃあだめだったか、
ならイッセー、次はお前の番だぜ」
俺じゃあ、ダメだった。
最後の希望はイッセーだ。
「そうね、…つ、通じるか分からないけれど、
医師の了解が取られているのなら、ものは試し
ね。イッセーの技は何度も奇跡を起こしているし、
もしかしたらということもあるわ。おばさまに
技をかけてみてちょうだい。イッセー」
執事さんも「どうか、お願いします!」
と頭を深く下げて懇願している。
「分かりました。どこまでやれるかわかり
ませんが、やってみましょう!」
イッセーは素早く籠手を出現させる。
『Boost!』
ある程度で倍化を止め、技の発動にかかる!
『
イッセーを中心にして謎の魔力空間が
広がっていく!発動と同時にイッセーは
サイラオーグさんのお母さんに語り掛けた。
「サイラオーグさんのお母さん、俺にだけ
聞こえる声で答えてください!げ、元気
ですかーっ!」
と訊いてみるが、どうやら反応は
無かったようだ。
「今度は鎧になって、訊いてみます!」
すぐさま鎧を発現するイッセー。
俺達が見守る中、イッセーは魔力を高める!
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼』
「今度こそ!サイラオーグさんのお母さん
のおっぱい!どうぞ、俺に話しかけてみて
ください!」
サイラオーグさんのお母さんが赤龍帝
の赤いオーラに包みこまれていく。
だが、それ以上の変化は起こらず、
只々沈黙が続いた。
「…何をしているんだ、お前達は」
突然の第三者の声。
俺達が振り返れば、そこには短い黒髪、
紫色の瞳を持つ体格の良い男性、
サイラオーグだった!
「そうか、すまないな」
事の顛末を知ったサイラオーグさんは
小さく微笑みながら、俺達に礼を言った。
病室で話すのも何なので、
俺達は休憩フロアに移動していた。
「ごめんなさい、二人に貴方の事を
話したわ。ゲーム前だというのに…。
それに今日は何も役に立てなかったわね」
申し訳なさそうに謝る先輩。きっと余計な
感情を俺達に持たせてしまったかもしれ
ないと思ってるのだろう。
ゲーム前にサイラオーグさんの過去を
聞いたことで、ゲーム中にやりづらく
なるのではないか?と。
「かまわんさ。来てくれただけで
十分だ。母も喜ぶだろう。それに
七十二柱に連なる家では珍しくない
ことではないか、次期当主を巡る
権力争いなんてものはな。それが
たまたま現代の大王家で起こった
だけのことだ」
サイラオーグさんは自分の過去を
まるで大したことがなかったよう
に言う。
…このヒトの過去も凄まじいと
思ったけど、それを一蹴して
しまうサイラオーグさんの方
がすごいって思ってしまった。
そんな一言で済まない事を
体験しただろうに。
「シトリー家とグレモリー家には
世話になっている。それに関して
は感謝の念がつきない」
「いいのよ、それぐらい
させてもらうわ」
いとこ同士の何気ない会話。
こんな何気ない会話ができるのも
サイラオーグさんが次期当主の
座を得ているからなのかな。
ふとそんなことを思ってしまった。
サイラオーグさんの表情が一転して
厳しい物になる。
「だが、ゲームは別だ次のレーティング
ゲーム、勝つのは俺のチームだ。余計な
感情は捨ててくれ。俺が欲しいのは
同情でも手加減でもない、本気の
グレモリー眷属だ」
堂々と不敵に宣言してくれる!
サイラオーグさんは自身の拳に
視線を落とす。
「俺には
負ければ全部失う。ここまで積み上げてきた
ものが崩れるだろう。家が持つ『消滅』の
魔力を受け継げなかった俺にとって、
勝ち続ける事こそが唯一の道だった。
から俺は拳で勝つしかない」
そして俺達に戦意に満ちた顔が向けられた。
「格好は悪いが、それが不器用な俺の
お前達との戦い方だ」
俺とイッセーはそんなサイラオーグさん
に真っ向から向かい合い言った。
「俺は手加減なんていませんよ。
サイラオーグさんが過去にどんなこと
を体験してきたとしても、ゲームには
関係ないですよ」
「俺とユウスケで貴方に勝ちます!
最初から手加減や同情だけで貴方に
かてるだなんて思っちゃいません。
全力で倒しに行きます!」
サイラオーグさんがこの試合に何を
賭けられているかなんて関係ない。
どんな人生を駆け抜けたかなんて
今は関係ない。グレモリー眷属にも
辛い過去を持った奴は何人もいる。
それに…。
「大事なのは過去ではなく未来だ!
俺は、いや俺達は自分の野望の為に
貴方を超える!」
俺の宣言にイッセーが続く。
「おれだって、最強の『兵士』になりたい!
そして上級悪魔になるのが夢です!
俺は俺の野望の為にサイラオーグさん
と戦います!」
俺達の言葉を聞いて、サイラオーグさん
が満足そうに笑った。
「それでいい、ああ、それで十分だ。
そして、やはり京都で何かを得たな?
瞳から自信と強さを見て取れる。
だがな、何も強くなったのはお前達
だけではないさ。二人掛かり?大いに結構!
俺も最初からそのつもりだ、そのための力も
手に入れた」
やばいなこの人は。この人と話をしている
と自然と高揚しちまうな。ゲーム前に余計な
事は知られたくないのだが、この人には
つい応えたくなっちまう。
「リアス、祐介、一誠、俺も夢の為、
野望の為、ゲームに臨もう」
「ええ、私は負けないわ」
サイラオーグさんの一言に先輩も
大胆に応えた。
その後、サイラオーグさんと執事さんに
お別れの挨拶をして、俺達は帰路に就いた。
今回の試合は負けられない。
俺は今までのゲームでは最後まで戦って
居られなかった。フェニックス戦では
奈美を助けに行き不参加、
シトリー戦ではルークの力を
制御できずに反動で倒れた。
ゲゲルでは数多の強敵に勝ってきたが、
仲間との闘いはいつも負けてしまってる。
今度こそ、今度こそだ!
俺は、いや、俺達が勝利するんだ!
ユウスケはそう心に堅く誓うのだった。
サイラオーグの母と出会い
彼の過去を知ったユウスケ達だったが、
そんな彼らにサイラオーグが
臨むのは本気の戦いだった!
その彼の気持ちに応える為
ユウスケはイッセーと共に
超えて見せると宣言する!
彼らの勝負の行方は!
次回、第125話「会見」
是非、見てくれよな!
外伝でやってほしいコラボは?
-
仮面ライダークウガ(五代雄介)
-
仮面ライダーディケイド
-
忍者戦隊、忍風戦隊、手裏剣戦隊揃い踏み
-
その他(希望があれば感想へ)