転生悪魔になったことを知る
ユウスケ達。
その驚愕の事実を知り
ユウスケ達は裏の世界へと
足を踏み入れたのである。
俺は深夜、チャリを全力で漕いでいた。理由は一つ。
簡易魔方陣のチラシ配りだ。欲のある人間がこの
チラシを手に取って願いを込めると、俺たち悪魔が
ババンと召喚される仕組みだ。
手に持った携帯機器を見る。モニターには
周囲のマップが表示され、赤い点が点滅している。
そこにチャリで向かう。
点滅していた場所、欲のある人間の家に着くと、
ポストへチラシを投函する。そして、再び近く
の点滅している箇所へ移動。これを繰り返す。
あの日俺達が悪魔だと認識した日に時は遡る。
イッセーがセイクリッド・ギア所有者であり、
夕麻が堕天使であり、リアス先輩が悪魔だと
わかった日だ。ちなみに悪魔の翼は、あのあと
すぐにしまった。日常生活では邪魔だからな。
慣れれば空も飛べるらしいが、まだ練習すら
してないや。
「私の元に来ればあなたの新たな生き方も
華やかになるかもしれないのよ?」
悪魔になったことで頭を抱えていたイッセーに、
リアス先輩はウインクしながら言ってきた。
どうにも俺たちは、リアス先輩に悪魔として
転生させられた代わりに、彼女の下僕として
生きていかないといけなくなったらしい。
人間から悪魔に生まれ変わった者は、必然的に
転生してくれた悪魔の下僕として生きねばなら
ない。という、悪魔のルールがあるらしい。
「でもね、悪魔には階級があるの。爵位って
いうのがね。私も持っているわ。これは生ま
れや育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔
だっている。最初は皆、素人だったわ」
「どこぞの学校のCMみたいなことを言わない
で下さい!つーか、本当ですか?いまいち
信用できない」
イッセーは信じられないと文句を垂れている。
まぁ俺も命を救われた身だが、下僕になれと
言われてはいそうですかと返事は出来ないな。
不機嫌なイッセーにリアス先輩が何か耳打ち
している。
「どうやってですか⁉︎」
だらしない顔をしているあたり
ハーレムが作れると言われたのだろう。
「純粋な悪魔は昔の戦争で多くがなくなって
しまったのよ。そのため、悪魔は必然的に下
僕を集めるようになったの。まあ、以前のよ
うな軍勢を率いる程の力も威厳も消失してし
まったけれど。それでも新しい悪魔を増やさ
ないといけなくなった。悪魔にも人間同様に
性別はあるから悪魔の男女の間に子供は生ま
れるわ。それでも自然出生で元の数に戻るに
は相当な時間がかかってしまうの。悪魔とい
う存在は極端に出産率が低いから。それでは
堕天使に対応できない。そこで素質のありそ
うな人間を悪魔に引き込むことにしたわけ。
下僕としてね」
「やっぱり下僕じゃないですか」
「話は最後まで聞けってイッセー」
「そう残念な顔しないで。話はここから。
ただそれでは下僕を増やすだけで力のありそ
うな悪魔を再び存在させることにはならない。
だから、悪魔は新しい制度を取り入れたわ。
力のある転生者つまり、人間から悪魔になった
者にもチャンスを与えるようになったのよ。
転生者でも爵位を授けようと。そのせいもあっ
て、世間には割と悪魔は多いわ。私達みたいに
人間社会に潜り込んで行動している悪魔も少な
くないしね。貴方達も知らず知らずのうちに
悪魔と町中ですれ違っていたと思うわ」
「それならこの学校に他にも悪魔がいるんですか」
「悪魔ってそんなに身近だったんすか!」
「ええ。もっとも、認知できる者とできない者
がいるわ。欲望が強い者や悪魔の手でも借りた
いほど困っている人間は悪魔を強く認識しやす
いわね。そういう人たちに魔方陣つきのチラシ
を配ると私達は召喚されやすいのよ。悪魔を認
知できても、先程のイッセーのように私達の存
在を信じない者も多いけれど、魔力を見せれば
大抵は信じるわ」
説明を聞いてようやく死に際のイッセーの欲望
が強かったのかわかるな。悪魔の世界も政治な
ど大変なんだな。
「じゃ、じゃあ!やり方次第では俺も爵位を⁉︎」
「ええ。不可能じゃないわ。もちろん、それ相
応の努力と年月がかかるんでしょうけど」
「うおおおおおおおおおおおおおッッ‼︎」
うるさ! 叫びすぎだ!そう簡単ではないだろ
う爵位持つには何かしらの成果を出さないとい
けないだろうし。何十年掛かるとおもってんだ
よ。
「マジか!俺が!俺がハーレムを作れる⁉︎
エ、エッチなことしていいんですよね⁉︎」
すぐにその発想に行き着くのは流石だな。
「そうね。あなたの下僕にならいいんじゃない
かしら」
「リアス先輩そこはせめて叱って下さい」
煩悩全開だな。
「あら、悪魔にとって欲望に忠実なのは大事なことよ」
そんなものか。イッセーには悪魔がお似合いなようで。
そういえば俺の欲望ってなんだろう。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお⁉︎
悪魔、最高じゃねぇか!何、これ!何、これ!
チョーテンション上がってきたよ!今なら秘蔵の
エロ本も捨てられ」
そこまで言って。イッセーが考え込んだ。
「いや、エロ本はダメだ。アレはダメだ。俺の宝だ。
お袋に見つかるまではやっていける!それとこれは
別だ。うん、別だ」
部屋のエロ本なら既に母さんに見つかってるがな。
「フフ。面白いわ、この子」
面白いか⁉︎この子。
「あらあら。部長が先程おっしゃっておられた通り
ですわね。『おバカな弟ができたかも』だなんて」
おバカな弟は同感ですね。
うふふと姫島先輩もにこやかに笑う。
「というわけで、イッセー、ユウスケ。私の下僕
ということでいいわね?大丈夫、実力があるなら
いずれ頭角を表すわ。そして、爵位も貰えるかも
しれないわ」
「「はいリアス先輩」」
「違うわ。私のことは『部長』と呼ぶこと」
「部長ですか?『お姉さま』じゃダメですか?」
リアス先輩は真剣に悩んだ後、首を横に振った。
「うーん。それも素敵だけれど、私はこの学校を
中心に活動しているから、やはり部長の方がしっ
くりくるわ。一応、オカルト研究部だから。その
呼び名でみんなも呼んでくれているしね」
「わかりました!では、部長!俺に『悪魔』を
教えて下さい!」
イッセーの言葉にリアス部長は小悪魔な笑みを
浮かべる。めっちゃ嬉しそうだ。
「自分は新聞部に所属しているので、ここには
イッセーの手伝いという形で来ます。なので呼
び名は今まで通りリアス先輩でお願いします」
俺にとっての部長は奈美先輩だしな。
「分かったわそれでも構わないけど、オカルト
研究部の活動にはキチンと出るのよ」
「わかりました!」
イッセーの方を見るとウズウズしていた。
「ハーレム王に俺はなる」
最低な宣言だな。どこぞの海賊のセリフ
をパクりおって。そして、悪魔としての人生?
悪魔生?を開始して数日。
俺とイッセーは夜中、チャリをひたすら漕いで
いた。あれから、俺はリアス先輩の下僕となり、
日々汗を流しています。ここだけ、聞いたら
運動部見たいだな。
まず、オカルト研究部の集まりは旧校舎の部室。
そして時間は深夜。これは夜の方が悪魔として
の力が発揮できるからだ。俺としても新聞部の
活動後に来るので、都合がいい。以前から俺の
体に訪れていた得体の知れない力は悪魔のもの
だった。悪魔は闇の世界において力が増大する
そうだ。だが、朝に弱くなったのも悪魔になっ
たせいらしい。悪魔にとって光は毒。光の力が
強ければ強いほど、体に悪いそうだ。
光を武器にする堕天使、天使は天敵であったら
逃げろと教えられた。逃げられる気はしないがな。
慣れれば太陽の日差しぐらいは平気になるらしい。
朝に弱いのも悪魔に転生して朝の光に体が慣れて
いないから。しばらくすれば、それにも慣れるら
しい。俺達が悪魔になって数日の間放置されてい
たのも、自分の変化に自分で気づいて欲しかった
らしい。頃合いを見て俺達を呼び寄せ、真相を話
す予定だったそうだ。それが俺と奈美先輩が夕麻
の調査をしていた日で、イッセーが襲われた日だ
ったから、幸いだった。何はともあれ、俺達は
悪魔になって日が浅いので悪魔社会の仕組みを
勉強する必要がある。まずは、下積として自転車
でのチラシ配りを夜中にやっているわけだ。
夜中に働くと両親が、心配する筈だが、リアス先
輩曰く、「あの日、貴方達のご両親にお会いした
ときにその辺のことは全てクリアしておいたわ」
と笑顔で返された。
チラシ配りが終わって帰宅しても
怒らないどころか。
「おー、ご苦労さん」と言われるだけだ。
悪魔の魔力は万能なんだな。リアス先輩との話で
一番驚いたのは学園に及ぼしている権力だ。
俺達が通っている。駒王学園は部長の領土らしく、
学園の裏の支配者だ。学園のお偉いさんも悪魔と
繋がりがありグレモリー家には頭が上がらないそ
うだ。あの学園はリアス先輩の私有物と言えるだ
ろう。だから夜中に学園内にフリーパスで入れる
のだけど。
さて話を仕事に戻すか。リアス・グレモリーの
眷属を呼び出す魔方陣が描かれたチラシを
リアス先輩から頂いたデバイスで選ばれた
家のポストに投函する毎日。このデバイスは悪魔
の科学が生んだ秘密道具らしい。まさか、未来で
はなく現代で秘密道具を手にする日がくるとは。
最近の携帯ゲーム機のような形だ。モニター、
ボタンがあり。タッチパネル形式で、タッチペン
もついている。頂いた説明書を読みながらでは
あるが、機器を操っていた。
モニターには駒王町が移っており、
リアス先輩の『縄張り』マップが表示される。
悪魔ごとに人間界で活動できる範囲が決まっており、
その領域内でしか仕事ができない。まるでヤクザだな。
仕事とはつまり、召喚され、契約を結んで、相手の
願いを叶えることだ。代償として、それ相応の代価
を頂く。代価はお金だったり、物だったり、時には
命を頂く。そこは人間がイメージする悪魔像そのも
のだった。最近は命を払ってまで強い願いを請う
契約者はいないようだけど。いたとしても代価が
願いと釣り合わず破断となる。リアス先輩も
「人間の価値は平等じゃないわ」と言っていた。
厳しいもんだ。破断となる例を聞いてみたが、
「お金持ちになりたい」という願いに対する代価が
『命』となり大量の金が天から降ってきたところで
死ぬ事になるらしい。
触れもせずに死ぬのは嫌だと破談になったそうだ。
他に「ハーレムを作りたい」という願いに対する
代価が『命』となり美女が視界に写った瞬間に死ぬ
という酷い結果だったそうだ。この例題が同一人物
の願いと聞いたときは本当に人の価値は平等でない
と感じたよ。で、モニターのマップで点滅している
場所が欲張りな人間が住む家だ。俺たちは手分けし
て家へ移動してチラシを配っている。点滅が消える
まで俺達のチャリ移動は終わらねぇ。悪魔となった
為、他の人間、特に警察にも認知されなくなった。
最初はビビったが、どういう原理かはわからんが、
仕事中は人間に存在を認識されないようだ。
だけど、毎日毎日チラシを配っているのに、モニター
の点滅は減ることが無い。たまには減ってもいいん
だぜ。それだけ人間が欲深いってことだな。
まぁ身内に性欲の権化と呼べる存在もいるしそんな
もんだろう。一度願えば、それが癖になり再び悪魔
を呼ぶそうだ、人間楽を覚えたらだめになっていく
一方だね。契約は基本夜間限定。悪魔が行動を許さ
れている時間は夜だけらしい。昼間は天使の時間帯
のようだ。この町に長く住んでいるが、そんなこと
があったとは驚きだ。
そのうち奈美先輩辺りが、興味を持って悪魔か天使
を召喚しようといわないか心配だよ。チラシは使い
捨てだから使用されたら、再びポストに投函しなけ
ればならない。つまり、この下積み作業には終わり
がない!契約時に新しいチラシを渡せばいいのにと
思うが。俺たちへの貴重な体験としてやらせてるの
だろうけど。
まあ、そのおかげでリアス先輩達は悪魔として活動
出来て仕事も尽きない。悪魔としてのポイントを高
めている。契約を取って願いを多く叶えれば、魔王
様から評価されるそうだ。仕事をこなせば、評価さ
れ魔王様から爵位が貰えるという事だ。
それを聞いたイッセーは雄たけびを上げながら。
チラシを配っているようだ、離れたこっちにまで、
微かに聞こえてくる。
認識阻害されていて良かったと思ったよ。
でないと、警察に職質されるところだ。
この下積みもいつまでやればいいのやら。
ー〇●〇ー
ある日の放課後俺はオカルト研究部の部室に向かっ
ていた。今日は珍しく新聞部の活動が休みだからだ、
何でも奈美先輩に用事があり。他の部員も都合が合
わないので、今日の活動は休むようだ。そういえば
あのチラシ配りは元々リアス先輩の使い魔が行って
いたそうだ。使役しているネズミやコウモリが人間
に化けて昼夜問わず行っていたそうだ。俺達にわざ
わざやらせていたのは悪魔の仕事を一から教え込む
ためだそうだ。
それと奈美先輩や親しい友人には俺の事は話してい
ない。話したら信じるだろうが、首を突っ込んで、
危険な目に会うのが眼に見えているからだ。俺だっ
て一度死んでいる。先輩を巻き込むわけにはいかない。
途中でイッセーと会い一緒に部室に向かう。
「失礼します」 「入りまーす」
俺達はそう言って部室に入ってみると、既に俺達
以外のメンバーがいた。俺達が最後か。室内は暗く
窓には暗幕がかけられており、完全に光をシャット
ダウンしている。明りは床に蝋燭が点々と置かれて
いるだけだった。いかにもな雰囲気だな。
「来たわね」
俺達を確認するとリアス先輩は朱乃さんに指示を送る。
「はい、部長。先ずはイッセーくん、魔方陣の中央へ
来て下さい」
イッセーが朱乃さんに手招きされ魔方陣の中央に立つ。
「イッセー、ユウスケ、貴方達のチラシ配りも終わりよ。
よく頑張ったわね」
リアス先輩が笑顔で褒めてくれた。 ようやく終わりか。
「改めて、貴方達にも悪魔としての仕事を本格的に始動
してもらうわ」
「俺達も契約取りを行うんですね」
「おお!俺も契約取りですか!」
「ええ、そうよ。もちろん、初めてだから、レベルの低い
契約内容からだけれど。小猫に予約契約が二件入ってし
まったの。両方行くのは難しいから、片方はイッセーに
任せるわ」
「…よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる小猫ちゃん。イッセーは小猫ちゃん
の代わりか、大丈夫かそれは。可愛い女の子を召喚した
つもりが変態が召喚されるのは色々問題があるような。
俺を含めた他の部員が魔方陣の外に出ている。
魔方陣の中央で朱乃さんが詠唱を始めた。すると、
魔方陣が青白く淡い光を発している。
「あ、あの…」
「黙っていて、イッセー。朱乃は、今貴方の刻印を魔方陣
に読み込ませているところなの」
とリアス先輩がイッセーに注意をした。
この部屋の床に書き込まれた魔方陣は「グレモリー」を表
すものらしい。俺達、リアス先輩の眷属悪魔にとってこの
魔方陣は家紋のようなものだと以前に教えられた。つまり
召喚する者、契約を結びたい者にとって俺達を表す記号と
なる。魔力の運用もこの魔方陣が関係してくるらしく。
木場達眷属悪魔の体にはこの魔方陣が大小各所に書き込ま
れており、魔力の発動と共に機能すると説明された。
なら、俺も魔方陣はを体に刻めば、魔法が使えるように
なるらしい。だが、悪魔のなりたての頃は先ずは魔力の
コントロールを学ばないといけないらしく、俺とイッセー
が魔方陣を絡めた魔法を使えるのは当分先になりそうだ。
「イッセー、手のひらをこちらに出してちょうだい」
リアス先輩に言われるまま、イッセーは左手の手のひらを
リアス先輩に向ける。すると、リアス先輩はイッセーの
手のひらに指先で何かをなぞっていた。すると、イッセー
の手のひらが光出した。よく見ると、イッセーの手に青白
く発光する円形の魔方陣が出現していた。
「これは転移用の魔方陣を通って依頼者の元へ瞬間移動す
る為の物よ。そして、契約が終わるとこの部屋に戻してく
れるわ」
なるほど。これでチャリ移動ともおさらばできるな。
「朱乃、準備はいい?」
「はい、部長」
朱乃さんが魔方陣から出てくる。
「さあ、中央に立って」
促されて、イッセーが魔方陣の中央に立った。
すると、いっそう魔方陣の光が増してくる。
「魔方陣が依頼者に反応しているわ。これからその場所に
飛ぶの。到着後のマニュアルも大丈夫よね?」
「はい!」
「いい返事ね。じゃあ、行ってきなさい!」
魔方陣の光が更に強まり。光がイッセーの体を包み込む。
俺はあまりの眩しさに目をつむった。光が収まったが、
何故かまだイッセーは魔方陣の上にいた。あれ?依頼者
の所へ転移するんじゃないのか?見れば、リアス先輩が
額に手をあて、困っていた。朱乃さんは「あらあら」と
残念そうな表情。木場もため息をついている。
もしかして?
「イッセー」
「はい」
「残念だけど、あなた、魔法陣を介して依頼者の元へ
転移できないみたいなの」
怪訝な表情を浮かべるイッセーにリアス先輩が説明する。
「魔方陣は一定の魔力が必要なわけだけど…。これはそん
なに高い魔力を有するものではないわ。いいえ、むしろ
悪魔なら誰でもできるはず。それこそ子供でもね。魔方陣
による転移は初歩の初歩だもの」
つまりイッセーは。
「つまり、イッセー、あなたの魔力が子供以下。いえ、
低レベルすぎて、魔方陣が反応しないのよ」
「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ⁉」
イッセーが絶句している。
「…無様」
小猫ちゃんが無表情でぼそりと呟く。
「あらあら。困りましたわねぇ。どうします、部長」
朱乃さんも困り顔で部長に訪ねている。
しばし考え込んだリアス先輩は、はっきりと言い渡す。
「依頼者がいる以上、待たせるわけにはいかないわ。
イッセー」
「はい!」
「前代未聞だけれど、足で直接現場へ向かってちょうだい」
「足⁉」
驚愕するイッセー。俺は先ほどから笑いをこらえるのに
精一杯だった。
「ええ、チラシ配りと同様に移動して、依頼者宅へ赴くの
よ。仕方ないわ。魔力がないんだもの。足りないものは他
の部分で補いなさい」
「チャリですか⁉ チャリでお宅訪問⁉ そんな悪魔が存在
するんですか⁉」
ビシッ。
無言で小猫ちゃんがイッセーを指差す。
「ほら、行きなさい!契約を取るのが悪魔のお仕事!
人間を待たせてはダメよ!」
急かすリアス先輩。その顔は真剣だ。
「うわぁぁぁん!がんばりますぅぅぅぅ!」
そう言ってイッセーは走って部室を出ていく。
「さあ次はユウスケね、貴方は魔力があるといいんだけど」
こればかりは願うしかない。悪魔だから神に頼むのは
おかしいが。
「さあ魔方陣の中央に立って手を向けなさい」
イッセーと同じ手順で魔方陣を手のひらに書き込んでいく。
「これで、準備は完了よ、あとは転移するだけ。
貴方の依頼人は新規の方だけどマニュアル通りに
進めれば問題ないわ。では行ってきなさい」」
「はい」
魔方陣の光が俺を包み込んだ、眩しさに目をつむり
恐る恐る目を開けると目の前には奈美先輩が立っていた。
「ユウスケ?」
マジかよ、神様
ー〇●〇ー
どうやら俺がチラシ配りをした家の中に奈美先輩の家があっ
たようでチラシを使って悪魔の召喚を試したようだ。
巻き込みたくないと思っていたが、まさか召喚されるとは。
「それで貴方が悪魔になったと」
奈美先輩には全てを白状した。夕麻が堕天使で、俺は一度
殺され悪魔に転生したこと。謎のベルトを身に着け戦士に
変身したこと。
「なるほどね、それでいくら調べてもわからなかったのね」
「すみません。黙っていて」
知られてしまったことは仕方ない。素直に謝ろう。
「別に気にしないわ。私を巻き込みたくなかったんでしょ
でも、一つだけ聞かせて悪魔になって後悔はしてないの?」
奈美先輩が優しい声で聞いてくる。
「悪魔になったことに後悔はありません、ただ、堕天使相手
に何もできずにイッセーを殺されたのは後悔しています」
「相手は人間ではなかったのよ。負けて当然じゃない」
相手が堕天使だったから負けて当然。俺はそう思わない。
「いえ、あの時、俺には対抗するための力がありました
戦士の姿に変身した時俺の体が白かったんです。でも俺が
イメージで見たのは赤だった」
「多分赤じゃないといけなかったんですそれならあいつ
にも勝てたはずなのに」
おれはずっと気にしていた。赤ではなく、白だったことに。
「そう、ずっと抱えていたのね。でもそれは過ぎたことよ。
今は悪魔なんだから。もしまたその堕天使と戦うことになっ
たら今度こそ思い切りぶん殴ってやりなさい」
どうやら奈美先輩なりに励ましてくれているようだ。
「ありがとうございます。なら先ずは先輩との契約を結びま
しょう。先輩の願いは何ですか。」
「そんな事決まっているじゃない。特ダネを探すのを手伝い
なさい。この町にこんな不可思議なことにあふれているのな
ら悪魔側からのネタの提供こそが私の願いよ」
「分かりました。なら代価はどうやらお金のようですね」
悪魔専用の携帯機器で調べた結果を先輩に伝える。
「いいわ、なら明日から放課後は私と一緒に街の探索よ
ユウスケと専属の契約を結ぶわユウスケのバイト代と
おもえば安いものよ」
こうしておれは奈美先輩との契約を無事に取ることに
成功した。
ー〇●〇ー
「………」
次の日の放課後。リアス先輩は怒っていた。眉を吊り
上げて、無言で黙り込む。イッセーはリアス先輩の前
に立ち、顔面蒼白となっていた。どうやらイッセーの
方は契約を取ってこれなかったどころか一晩遊んで終
えたらしい。
「前代未聞だよ」
そんなことを言って木場は苦笑していた。
「…イッセー」
低く怖い声音だ。
「はい!」
「依頼者と漫画の事を語って、それからどうしたの
かしら?契約は?」
「け、契約は破談です…。あ、朝まで依頼者の森沢さん
と、とある漫画のバトルごっこをして過ごしてました!」
「バトルごっこ?」
「は、はい!ま、漫画のキャラを演じて、互いに空想の
戦いを繰り広げる行為です!」
何を真面目に説明してんだか
「じ、自分でも高校生として恥ずかしい いえ、いち悪魔
としても恥ずかしいと思えてなりません!は、反省して
ます!すみませんでした!」
イッセーは謝罪と共に深く頭を下げる。
朝まで本当になにやってんだよ。
「…契約後、例のチラシにアンケートを書いてもらうこと
になっているの。依頼者の方に『悪魔との契約はいかがで
したか?』って。チラシに書かれたアンケートはこの紙に
表示されるわけだけど…」
リアス先輩は文面が見えるようにこちらに向けて見せた。
「…『楽しかった。こんなに楽しかったのは初めてです。
イッセーくんとはまた会いたいです。次はいい契約を
したいと思います』…。これ、依頼者からのアンケートよ」
めっさ誉められてるな。
「こんなアンケート、初めてだわ。ちょっと、私もどうして
いいか分からなかったの。だから、少し反応に困ってしかめ
っ面になってしまっていたでしょうね」
怒ってはいないようだが契約が取れなかったのは事実だ。
「悪魔にとって大切なことは召喚してくれた人間との確実な
契約よ。そして代価をもらう。そうやって悪魔は長い間存在
してきたの。…今回のことは、私も初めてでどうしたらいい
か分からないわ。悪魔としては失格なんでしょうけれど、
依頼者は喜んでくれた…」
困惑顔のリアス先輩だったが、ふっと笑みを漏らす。
「でも面白いわ。それだけは確実ね。イッセー、あなたは
前代未聞尽くめだけれど、とても面白い子ね。意外性ナン
バー1の悪魔なのかもしれないわ。けれど、基本のことは
守ってね。依頼者と契約を結び、願いを叶え、代価をもらう
いいわね?」
「はい!がんばります!」
許されてよかったなイッセー。
「ユウスケは無事に契約を取ってきたわねそれに専属契約
したから毎日同じ依頼者の願いを叶えることになったわ」
「いいなぁ ユウスケはもう契約取れたのかよ!
くっそー次は絶対契約取ってやる」
イッセーのやる気が上がったようだな。
ー◯●◯ー
イッセーside
気合いを入れた日の夜。再び俺の仕事が始まる。
ユウスケは先に依頼者の元へ向かった。
相手はあの奈美先輩らしい、毎日美女の家に行くなんて
なんて羨ましいんだ。俺は深夜にチャリを飛ばして依頼
者の元へ。随分飛ばしてきたもんだが、三十分もかかっ
てしまった。依頼者はキレてないよな?ドアの前に立ち、
呼び鈴を鳴らす悪魔ってのは本当に空しい。俺もユウス
ケみたいに魔方陣で召喚されたい。少ししてインターフ
ォンから反応がくる。
『開いてます。どうぞにょ』
と野太い声。男性か。ん?『にょ』っつったか?
いや俺の聞き違いだろう。俺も女性に召喚されたいぜ。
ドアを開け、玄関で靴を脱ぎ恐る恐る中を進む。
ガチャリと部屋の扉を開けた瞬間、俺は絶句した。
「いらっしゃいにょ」
それは圧倒的な巨体だった。そして、圧倒的な存在感
だった。鍛え抜かれた筋骨隆々な男が。ゴスロリ衣装
を着込んでいる。よくみれば、ボタンが引きちぎれそ
うだ。服の端々もいまにも破れそうに悲鳴をあげてい
る。何よりも双眸が凄まじい殺意を向けてきている。
にもかかわらず、瞳は純粋無垢な輝きを放っていた。
いや、何よりも頭部だ。ネコミミを付けている。
頬に一筋の汗が流れる。手は緊張から小刻みに震えて
いた。男ではない。漢字の漢と書いて漢だろう。
死地に足を突っ込んでいる危機感。なんとなく直感
だった。理不尽な死が自分を襲おうとしている。
「あ、あの…あ、悪魔を…グレモリーの眷属を召喚
しましたか?」
恐る恐る尋ねた。
カッ!
そんな効果音を立てるように漢の目が光る。
俺達の間の空間が闘気で歪んだような気がした。
殺されるッッ!
俺は咄嗟に身を守るような体勢になっていた。
「そうだにょ。お願いがあって、悪魔さんを呼んだにょ」
野太い声から不可解な言語が飛び出す。
語尾に「にょ」!
バカな…そんなことが許されるのか?
「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」
「異世界にでも転移してくれ」
俺は即答した。無理だって。そりゃ無理だって。
マジで。願いが規格外過ぎるぞ。
ミルたん!? ミルたんってなんだ!?
漢の言動が俺を混乱させる。そのからだなら異世界でも
生き抜けるよ!魔王だって倒せるよ!
「それはもう試したにょ」
「試したのかよ!」
どうやってだよ!
「でも無理だったにょ。ミルたんに魔法の力をくれる
ものはなかったにょ」
「いや、ある意味、今の状況が魔法的だけどさ…」
「もう、こうなったら宿敵の悪魔さんに頼み込むしか
ないにょ」
宿敵扱いされてる。願い叶えられてもそのあと殺され
るんじゃ。
「悪魔さんッッ!」
ミルたんが発する声量で部屋全体が震える。なにこれ!?
音魔法!?
「ミルたんにファンタジーなパワーをください
にょぉぉぉッ!」
泣きながら叫ぶ。
「いえ、もう既に俺よりファンタジーな存在ですよ!」
ちくしょう!
俺の依頼者は変態ばかりか!?どういうことだよ、
これ!?
「ミルたん!落ち着いて、俺で良かったら相談
乗るから!」
とりあえず、この漢を落ち着かせて話でも聞いてやら
ねばならない気がした。ミルたんは涙を拭うと強面に
満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、一緒に『魔法少女ミルキースパイラル7
オルタナティブ』をみるにょ。そこから始まる魔法
もあるにょ」
俺の長い夜が始まった。
次回はついにユウスケのヒロインが登場
奈美先輩はヒロインにするかは悩んでいます
癒しのあの少女の登場
次回第5話「聖女」
お楽しみに
感想、評価待ってます!
外伝でやってほしいコラボは?
-
仮面ライダークウガ(五代雄介)
-
仮面ライダーディケイド
-
忍者戦隊、忍風戦隊、手裏剣戦隊揃い踏み
-
その他(希望があれば感想へ)