まだ敵は残っていた。
それぞれのライバルとの
戦いがついに始まる。
アザゼルがカテレアを倒した。
だが、テロリストはまだ残っている。
すると、夜空からヴァーリと東城が降りてくる。
「さすがアザゼル。でも、
鎧が解除されたな。
まだまだ人工神器は
研究が必要なわけか」
「この状態のアザゼルと戦っても
面白くなさそうだな」
ヴァーリと東城に向き直るアザゼル。
「さて、ヴァーリ、ユウスケ。どうする?
俺はまだやれるぞ?鎧が無くても
片手でも十分にお前らと戦える」
アザゼルは手に光の槍を出現させ、
刃を白龍皇とクウガに向ける。
そのケガでまだ戦えるのか?
なんという闘争心だ!
構えるアザゼルを一瞥し、ヴァーリは俺達に問いかける。
「しかし、運命ってのは残酷だと思わないか?」
突然こいつは何を言ってるんだ?
「俺のように魔王プラス伝説のドラゴンみたいな
思いつく限り最強の存在がいる反面、
そちらのようにただの人間に伝説のドラゴンが
憑く場合もある。
幾ら何でもこの偶然は残酷だと俺は思うな。
ライバル同士のドラゴン神器とはいえ、
所有者二名の間の溝はあまりに深すぎる」
俺のことかと自身を指差すイッセー。
それに対して、ヴァーリはおかしそうにうなずく。
「君達の事は少し調べた。
父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦で、
たまにパートに出ている。
両親の血統はまったくもって普通。
先祖に力を持った能力者、術者がいない。
君達の友人関係も特別な存在ではない。
君達自身も悪魔に転生するまで
極普通の男子高校生だった。
ブーステッド・ギアやアークル以外、何もない」
奴は哀れむような表情で、嘲笑う。
「つまらないな。あまりにつまらな過ぎて、
君達の事を知った時、落胆よりも笑いが出た。
『ああ、これが俺達のライバルなんだ。
まいったな』って。せめて親が魔術師ならば、
話は少しでも変わったかもしれないが…。
そうだ!こういう設定はどうだろうか?
君達は復讐者になるんだ!」
コイツの言っている意味がわからない。
いや、理解をしたくなかった。
こいつはギャスパーと違って、
自身の血筋が自慢なんだろう。
生まれに苦しむものがいれば、喜ぶものもいる。
だが次の言葉は嫌でも理解することができた。
「俺が君達の両親を殺そう。そして、
雄輔が君の兄を殺す。そうすれば、
君の身の上が少しは面白い物になる。
親を俺のような貴重な存在に殺されれば晴れて
重厚な運命に身を委ねられると思わないか?
うん、そうしよう。どうせ、
君の両親は今後も普通に暮らし普通に老いて、
普通に死んでいく。
そんなつまらない人生よりも
俺の話した設定の方が華やかだ!
君の兄も雄輔には勝てない。
いずれ殺される運命なら君の人生に彩りを
加える為に利用するのが一番だ!な?」
何言ってやがるんだこいつは…?
今誰を殺すって言ったんだ!
俺達の大事な家族をそんな理由で!
その時、俺のベルトから黒い靄が現れていた。
その宝玉も黒曜石の様に漆黒に染まっていた。
ふざけるな…ふざけるな…ふざけんな!
俺が怒りに飲まれそうになった時、
俺の傍で、俺以上の怒りを感じ、
ふと我に返った。
「殺すぞ、この野郎」
ぼそりとイッセーが呟く。
俺はイッセーから初めて殺意を感じた。
「…お前の言う通り、俺の父さんは朝から晩まで
家族の為に働く普通のサラリーマンだ。
俺の母さんは朝昼晩と俺達家族の為に
うまい飯を作ってくれる普通の主婦だ。
…でも、俺達をここまで育ててくれた。
俺にとってもユウスケにとっても最高の親なんだよ」
ああ、そうだなここまで大事に育ててくれた
最高の両親だ!
「ユウスケが負ける?殺される?
勝手に決めんな!
俺の兄弟だ!テメェらみたいな
クソ野郎に負けるかよ!
それに、…殺す?
俺達の父さんと母さんを?なんで、
てめぇなんかの都合に合わして
殺されなくちゃいけないんだよ。
貴重だとか、運命だとか、
そんなの知るかよッ!」
ああ、負けないさ。
俺達がどんだけ弱くても!
彼奴らがどれだけ強くても!
あいつ等だけは絶対に許すわけにはいかない!
「てめえなんぞに俺の家族を
殺されてたまるかよォォォォォォッッ!」
『
イッセーの怒りの咆哮に呼応したのか、
神器が真っ赤で強大なオーラを解き放ち始めた。
光が収まると、
イッセーは『
「っ。見ろ、アルビオン。
兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ。
怒りという単純明快な理由が引き金だが、
これは…ハハハハ、心地よい龍の波動だな」
『神器は単純で強い思いほど力の糧とする。
兵藤一誠の怒りは純粋なほど、
お前に向けられているのさ。
真っ直ぐな者、それこそドラゴンの
力を引き出せる真理のひとつ』
「そうか、そういう意味では俺よりも
彼の方がドラゴンと相性がいいわけだ」
イッセーが単純って言いたいのか。
「だが!頭が悪いのはどうだろうか!
兵藤一誠!君はドライグを使いこなすには
知恵が足りなすぎる。それは罪だよ」
「さっきからベラベラ俺が分からない
ことを言ってんじゃねぇぇぇっ!」
「そう!それこそ、
バカというやつなんだ!」
イッセーは背中の魔力噴出口からオーラを噴き出して、
ヴァーリへ向かって飛び出す。
そのまま、イッセーとヴァーリが
空中で戦いだす。
二天龍の戦いに誰も手を出す事も出来ず見守る
事しか出来ない。
だが、皆が二人の戦いを見入る中、
一人だけ俺を見ている者がいた。
東城だ、彼は俺の方をジッと見ていた。
「あの二人は戦い始めたぜ。
ならこっちも決着付けないか?」
東城は『
俺に聞いてくる。
「別に俺達はライバルでもなんでもないだろう
因縁があるわけでもないのに何の意味がある?」
俺の問いに嫌な笑みを浮かべながら奴は答える。
「意味ならあるさ、クウガと言う名は
ただ一人の為の名だ二人もクウガは要らないんだよ。
ましてや、君みたいな未完成の試作品ごときが、
俺と同じ名を使うのは我慢ならないんだ!」
コイツは何でここまでクウガにこだわるんだ?
「君はクウガがどのような存在か知ってるのか?
知らないだろう!今まで一般人として生きていた君では!
なのに、グロンギ族は君の方をクウガだと思っている。
何故だ!?俺の方が先にクウガに選ばれたのに、
何故君はゲゲルに挑戦できる!?
俺だって奴等との殺し合いをしたいって言うのに!」
こいつもいかれてやがる。
ただ戦うことだけを求める危険な男だ。
「何でそんなに戦う事にこだわる!
お前は何のために戦うんだ!」
「何の為?理由なんて無いさ!
只自分より強い者と戦うそれだけさ
それだけで十分だろう」
戦闘狂が!
俺は『
東城に向かい歩き出す。
「戦う事がお前達の全てかよ。
その為だけに平和を望む者が邪魔なのかよ。
戦いたいなら勝手に戦えよ
関係ない人を巻き込むんじゃねぇ!」
俺達は同時に駆け出し、
お互いに拳を振りかぶる。
ドゴッッ!
互いの顔面に拳を叩きこむ。
「グフッ!」
俺は衝撃で後ろに後ずさる。
「ハハハッ、いい拳じゃないか。
でもまだ軽い、
もっと怒りを拳に乗せろよ!
俺を殺す気で来い!」
これが経験の差か、同じ姿でここまで差が出るなんて!
「ならこれならどうだ!?」
俺は『
ダッ!
俺は拾ったガラスの破片を剣に変える。
東城は俺の位置を捉える事は出来ていない。
今なら!
ダァン!
「グッッ!」
俺は肩に痛みを感じ立ち止まってしまう。
東城は『
こちらにペガサスボウガンを向けていた。
「今の速度は大したものだな。
だが、この姿の聴力なら場所を捉えられる
まあ、経験の差だな。
で、これで終わりか?」
「まだだ!」
今度は『
「燃えろ!」
『Fire!』
ドカァァアアンッッ!
やったか!
放った炎が奴に当たり爆炎が奴を包む。
爆炎が晴れると、『
変身した東城の姿があった。
「魔法を使えるクウガか面白い
やっぱりお前は俺と違う成長をしているな
これは、各フォームが変異してるのか?
なら紫の力も見て見たいな。
やっぱりお前はもう少し放っておいた方が
面白そうだ」
東城は先ほどの攻撃も気にせず、
俺の姿を観察している。
「なっ、決着はついてないだろ!」
「まだわからないのか?
今のお前じゃ俺を倒せない
もう少し強くなってリベンジするんだな」
確かに奴にはなんのダメージも与えられなかった。
『騎士』の速度も『僧侶』の魔法も効かなかった。
「それにあっちは面白い事になってるぞ?」
東城が見る方に視線を向けると、
そこでは、二天龍の戦いに決着がつこうとしていた。
―〇●〇―
時はイッセーが空中に飛び出す時まで遡る。
イッセーside
「さっきからベラベラ俺がわからないことを
いってんじゃねぇぇぇぇぇっ!」
「そう!それこそ、バカと言う奴なんだ!」
背中の噴射口からオーラを噴き出して、
俺はヴァーリに向かって飛び出す!
ヴァーリが顔面をマスクで覆った。
戦闘態勢ってことか!
まだ二度目の
ライザーの時の様に攻撃の失敗は許されない!
しかし、ヴァーリは軽やかに避けて、
俺のタックルをかわした!
まだだ!
俺は体制を宙で立て直し、
避けた先のヴァーリに再度飛び込んでいく!
籠手からアスカロンを伸ばして、
下手な剣術で攻撃を繰り出す!
けど、ただ振り回すだけの斬撃では、
光の動きで避け回るヴァーリに
一太刀も浴びせる事が叶わない。
『ヴァーリ、その剣は
一太刀浴びれば大きなダメージは否めないぞ』
「そうか、アルビオン。
だが、当たらなければ意味無いさ!」
奴の言う通り、俺の腕前ではかする事すらできない。
クソ!こんなことなら、木場からもっと
剣術を習っておくべきだった。
今度マジで習おう!
この
一時的に使用可能だ。
『だが使うたびに体力か魔力を消耗する。
倍増する能力が高ければ比例して、
お前のスタミナを奪う。
それが本来の俺の
仮初状態の
たった一回で鎧を維持する力を消耗してしまう
愚行だけは犯してくれるなよ?
アザゼルから貰った腕輪でも限界があるぞ。
使うたびに
この状態を維持するだけでも体力使うってことか!
ヴァーリの方は余裕そうだ!
『相手のヴァーリは魔力が凄まじいようだ。
対の存在である白龍皇もまた能力を使うたびに
力を削るが、所有者のスタミナが
強大ならば使用できる時間も膨大だろうな』
チッ…!嫌な現実だ!
俺とヴァーリの力量差は決定的!
やっぱ、俺の方が遥かに弱い!
当たり前か。あっちは完全な
こっちはいろいろな手助けがあって。
制限が厳しい
いや、それ以前に俺と奴は基本スペックが違いすぎる!
ドンッ!
ぐはっ…!
一瞬、息が詰まった。
胸に重い拳の一撃を食らう!
重い!てか、速過ぎて見えなかったぞ。
なんて一発だ!
たったのこれで足がガクガクいってやがる!
よ、鎧にもヒビが!こんなのを何発も受けてたら、
ソッコーで終わりだ!
「これが俺のライバルか!ハハハハ!
困ったな!弱いよ!弱すぎるよ!」
俺の事を散々バカにするヴァーリ。
でも、そう感じているのは本当なんだろう。
「イッセー!」
部長が俺のことを心配そうに見守っている。
惚れた女の前で恰好悪い様を見せたくない!
俺は一般家庭の両親の間に生まれて、
悪魔に転生し、偶然ドラゴンの力も得ていた。
あいつは旧魔王の血筋で、
伝説のドラゴンの力を得て生まれてきた。
俺に才能なんてないだろう。
そして、あいつには溢れるほどの才能があるんだろうさ。
強力な神器を使いこなす、
強い所有者理想的な存在。
まさにヴァーリのことだ。
『
白龍皇の宝玉から音声が聞こえ、
俺の力が一気に消失する。
あいつが俺の力を半分にしたのか!?
発動の原因は先ほどの胸に受けた一撃!?
『
しかし、俺の神器も発動して、力はもとに戻る。
『奴は相手の力を半分にし、減らした分の力を
自分に加算するんだよ。つまり、
おまえの力を奪い、自分の力としている。
スタミナは回復できないがな。
あくまでパワーのみだ』
じゃ、じゃあ、俺はマイナスからもとに戻っても、
奴はプラスになっていくのか!?
『そうだ。だが、どんなに宿主が
スゴくても上限はある。
キャパシティを超える力は背中の
光の翼から吐き出す事で、
身を滅ぼすことなく力の上限を
維持し続けているのさ』
あいつは常に力をピーク状態にできて、
バーストし自爆することはないってことか…
「ほらほらほら!」
遊ぶようにヴァーリが撃ちだしてくる
無限にも等しい魔力の弾。
俺は逃げることも叶わなかった。
奴が軽く出しているであろう弾の一発一発は
重いダメージを残していく。
全身痣だらけになっているって容易に想像できる。
くっ…。
どうにかしてあいつに一撃浴びせたい。
じゃないと、この心中に生まれたドス黒いものを
抑える事なんてできない…ッ!
ヴァーリは攻撃を継続させながらも
ムカつく口調を繰り返す。
「攻撃も単調だ。ただ突っ込むだけ。
それでは意味がない。宝の持ち腐れ。
力の使い方も下手だ」
あー、そうかい。俺は下手かい。
だったら、わかったよ。
「これでは白龍皇と赤龍帝のライバル対決は」
ゴォオォォォォォオオンッッ!
奴が言い切る前に、
俺の背中の噴出口から魔力を一気に噴かせて
弾幕の中へ飛び込んでいく。
体の各所に魔力の弾がことごとく当たっていった。
痛い!けど、それがどうした!
たった一発。たった一発でいいッ!
左手を強く握る。力はここ一点で十分だ。
他に回すパワーなんていらないッ!
防御なんてものもこの際、捨ててやるッ!
鎧に魔力の弾が被弾して、
装甲が少しずつ破壊されていく。
顔面にも当たり、
マスク部分も壊れていった。
「突貫か。バカの一つ覚えだな。そんなもので」
ヴァーリが光の盾らしきものを前方に展開して、
防御しようとするが。
「ドライグゥゥゥゥッ!
収納しているアスカロンに力を譲渡だッッ!」
『承知ッ!』
『
ドクン!
俺の左手に強大な力の波が流れていく。
どうせ剣の心得はない。
なら、剣を籠手に収納したままの状態で
龍殺しの力だけを拳に宿らせるッ!
殴るだけなら俺でもできるからな!
ゴンッッ!
俺の拳は奴の光の盾をなんなく破壊し、
顔面へ鋭く打撃を食いこませていた。
「ッッ??????????」
思いがけない攻撃を受けたせいなのか、
奴の体勢がぐらりと歪む。
バキッ…。
白龍皇の兜はマスク周辺からヒビが広がり、
崩れた箇所からヴァーリの顔の一部を覗かせていた。
ここだ!
俺は白龍皇が余ったパワーを噴き出しているという
光の翼の付け根に手を回した。
「お前の神器の効果はここから
来ているそうだな。だったら!」
『
俺の力が過剰なまでに
刹那、俺は体から力が一気に抜かれる感覚に襲われた。
体力と魔力をかなり消耗したか!
だが、これでいい!
「吸いだす力と吐き出す力を一気に高める!
処理しきれなくなるほどな!」
「くっ!」
ビィィィィィィン!
白、赤、青、黄とハチャメチャな
点灯を繰り返すようになった。
途端に奴の体から凄まじいほどに感じた
ドラゴンの力が消失していく。
奴の神器の特性を利用させてもらった。
相手の力を奪い、自分の糧にしていく能力。
しかし、加算されていく力の上限は決まっていて、
宿主の力量しだい。
上限を超える力は光の翼から噴き出されて処理される。
なら、奪う力と噴き出す力を
同時に加速させたらどうなる?
処理しきれないほどの力を奪い、
同時に過剰なまでに力が吐き出される。
白龍皇の機能をオーバードライブさせた。
結果、
は機能を停止させたわけさ!
『ッ!なんてことだ…ッ!
ヴァーリ、一度体勢を立て直せ!』
ヴァーリがアルビオンの声に反応して、
両腕をクロスして防御しようとするが、
バガンッッ!
アスカロンの力がこもった左拳を打ち出すと、
ヴァーリの防御を両腕の籠手ごと難なく破壊し、
腹部に打撃が突き刺さる。
白く輝いていた白龍皇の鎧はあっけなく壊れていく。
これが龍殺しの威力か!?
相手の鎧がまるで紙のようじゃねぇか!
ゴボッ…。
ヴァーリの口から鮮血が飛び出す。
腹部を押えながらよろよろと後ろに下がっていった。
口の端から血を流しながら、
ヴァーリは楽しそうに笑う。
「…ハハハ、スゴいな!
俺の神器を吹っ飛ばした!
やればできるじゃないか!
それでこそ、ライバル」
ガンッ!
容赦ない俺のストレートが一撃奴の顔面に入っていった。
「…殴らせてもらったぜ。
お前だけは殴らないと気がすまなかった」
よし!とりあえず、
俺の家族をバカにした分は返した。
だが、ドライグが舌打ちする。
そうこうしているうちにヴァーリの鎧は
再び元の状態に戻ったからだ。
マジかよ。壊れた部分が直ってやがる!
まさか、何度も壊さないと倒せないのか!?
『所有者を戦闘不能にするまでッ高井は終わらんさ。
このままではいかんな。埒が明かない。
制御装置の限界時間内に奴を倒すのは至難の業だ。
逃げるのが一番の得策だが、
そういう訳にもいかないのだろう?』
当然だ!部長達を置いていくわけがない!
ていうか、この結界内でどこに逃げるってんだ!
向こうではユウスケだって戦ってんだ!
『では、どうする?
実力の差は大きく開いたままだ。
制御装置のお陰でなんとかできているが、
制限時間付きでは話にならん。
負けるぞ?』
……。どうしたものか。
そのとき、ふと俺の視界にとあるものが映り込んだ。
その瞬間、俺の脳内である考えが浮かぶ。
…試してみるか?いや、ものは試しだ。
どうせ、このままじゃ俺は時間が来て負ける!
その前に何とかしなきゃ!
「なあ、ドライグ。
神器は想いに応えて進化するんだよな?」
『ああ、そうだが…。どうした?』
俺は足元に転がっている『
先ほど、俺が奴を殴った時に
鎧が破損して飛び出した物だ。
奴本体の鎧は宝玉含め破損した部分を修復したようだけどな。
ヴァーリにとってみれば
この宝玉は時間が経てば塵に返る。
どうでもいいものだろう。
だが、これには少なくとも白龍皇の
力がわずかでも宿っているはずだ。
「俺のイメージをお前に伝える。
やってみてくれ!」
俺は脳内で思い描いたものを
内にいるドライグへ伝達させる!
強く思い描くんだ!
このイメージが可能ならば、俺は。
『ッ。…相棒、危険なイメージを
送り込んでくるものだな。だが、
おもしろい!死ぬかもしれないが、
その覚悟はあるか?』
「死ぬのはカンベンだな。
俺はまだ部長の処女をもらっていない。
痛みなら、我慢してやる!
それで目の前のクソ野郎を超えられるならなッ!」
『フハハハハハハハハッッ!いい覚悟だ!
ならば俺も覚悟を決めよう!
正気の沙汰ではないが
我は力の塊と称された赤き龍の帝王!
お互い、生きて超えてみせるぞ、
相棒!否ッ!兵藤一誠ッッ!』
「応ッ!」
「何をするつもりだ?」
ヴァーリが興味深そうに訊いてくる。
「『
もらうぜ、お前の力!」
俺は右手の甲に存在する赤龍帝の宝玉を叩き割り、
そこへ先程拾った『
お前の消失の力!俺の神器に移植してやる!
戦いの中、俺の脳裏にとある場面が思い出されたんだ。
それは先日のコカビエルとの一戦だ。
あの戦いで、不可能とされた
聖と魔の融合を木場は果たした。
右手から白銀のオーラが発生し、
俺の右半身を包み込む。
宝玉からの現象か?
ドクン。
俺の中で何かが脈打ち、
途端に形容しがたい激痛が宝玉を埋め込んだ
右手から全身に瞬時につたわっていく…ッ!
ぐっ…。あっ…。
「うがあああああああああああああああああッッ!」
痛ぇ!痛ぇ!痛ぇよ!
クソ!なんだ、こりゃ!?
「ぬがああああああああああああ!あ、あ、あ、
あああああああああああああああああああっっ!」
あまりの痛さに思考が飛ぶ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛いッッ!
以前食らった光の槍のダメージなんて、
これに比べたら…。
ぐっ、あっ、がああああああああっ!
「ッ!俺の力を取り込む気か?」
俺のやろうとしていることに気付き、
ヴァーリーが驚いた様子を見せる。
『無謀な事を。ドライグよ、
我らは相反する存在だ。
それは自滅行為にほかならない。
こんなことでお前は消滅するつもりなのか?』
淡々と話すアルビオン。
『ぐおおおおおおおおおおおっっ!』
ドライグも苦悶を漏らしていた。
神器に宿る龍帝も俺と同様に激痛を味わっているのか?
だが、ドライグは悲鳴を出しながらも、
笑いを含ませる。
『アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!
我らは長きに亘り、人に宿り、争い続けてきた!
毎回毎回同じことの繰り返しだった!』
『そうだ、ドライグ。それが我らの運命。
お互いの宿主が違ったとしても、
戦い方だけは同じだ。お前が力を上げ、私が力を奪う。
神器をうまく使いこなした方が
トドメをさして終わりとなる。
今までもこれからも』
アルビオンの言葉にドライグは不敵な笑いを向ける。
『俺はこの宿主、兵藤一誠と出会って一つ学んだ!
バカを貫き通せば可能になることがある、とな!』
バカで結構!どうせ才能で勝てないなら、
バカを通して勝ってやる!
「俺の想いに応えろォォォォォッッ!」
『
俺の右手が眩い白い光に包まれた!
真っ白なオーラが右腕を包む!
そして。
俺の右手には白き籠手が出現していた。
「…へへへ、『
赤い鎧の中で、右腕の肘から先だけが
白いんで不格好になっちまったけどな。
『有り得ん!こんなことはあり得ない!』
アルビオンが驚愕の声音を出していた。
「いや、可能性は少しだけあった。
俺の仲間が聖と魔の融合をして、
聖魔剣なんてものを創り出した。
それは神がいない為にバランスが崩れているから、
実現可能になったらしい。まあ、
お偉いさん方の言葉を借りるなら、
システムエラーとか、
プログラムバグとかいう状態か?
それをちょっと利用したのさ」
『…「神器プログラム」の不備について、
実現させたというのか?いや、しかし、こんなことは…。
思いついたとしても実際に行うのは愚かだ…。
相反する力の融合は、何が起こるか分からない。
それがドラゴンの関わるものだとしたら、
死ぬかもしれなかったのだぞ?
否、死ぬ方が自然だ』
未だに信じられない様子のアルビオン。
まあ、正直俺も破れかぶれだったけどさ。
「ああ、無謀だった。
だが、俺は生きている」
俺の言葉に嘆息するドライグ。
『だが、確実に寿命を縮ませたぞ。
いくら悪魔が永遠に近い時間を生きようとしても』
「一万年も生きるつもりはないさ。
だが、やりたいことが山ほどあるから、
最低でも千年は生きたいけどな」
パチパチパチ。
俺へ拍手を送るヴァーリ。
何のつもりだ?
「おもしろい。なら、俺も少し本気を出そう!
俺が勝ったら、君の全てと君の周りにある全ても
白龍皇の力で半分にしてみせよう!」
ヴァーリが空中に漂い、
腕を大きく広げる。光の翼も巨大に伸びていく。
「半分?俺の力ならともかく、
俺の周囲を半分にするってどういうことだ?」
俺の問いかけに奴は哄笑を上げた。
「無知は怖い!
知らずに死ぬのも悪くないかもしれないな!」
なんだかムカつく!
こいつ、散々俺をバカにしやがって!
『
宝玉の音声と共に眩いオーラに包まれた
ヴァーリが眼下に広がる木々へ手を向ける。
グバンッ!
木々が一瞬で半分の太さになってしまった!
おおっ!マジで半分になるのか!?
グバババババンッ!
さらに周囲の木々が圧縮される
かのように半分になっていく。
旧校舎の風景を壊すな!
「赤龍帝、兵藤一誠。
お前にも分かりやすく説明してやろう」
と、アザゼルが言う。
おおっ、総督。お願いします。
バカな俺にも分かるように一つ。
「あの能力は周囲の物を全て半分にしていく。
つまり白龍皇が本気になったら、
リアス・グレモリーのバストも半分になる」
…………。
——っ。
…………。
はい?
俺はかつてないほど思考が飛び、
脳内は疑問符だらけとなった。
理解できなかった。
俺の世界観を全て根底から崩すような話。
俺はそれを心底理解できなかった。
しかし、ふいに底から生じる並々ならぬ
激情が俺の全身を支配する。
おっぱい が 半分 に なる。
部長 の おっぱい が 半分 に なる。
ギギギとくびだけを動かして、
部長へ視線を向ける。
部長は俺の表情を見て、
少しだけ恐れおののいていた。
ああ、部長のおっぱい。素敵なおっぱい。
俺の大好きなおっぱい。
俺の全て。俺の世界。俺の。
半分になる…?
部長のおっぱいが?
………。
「ふ」
うん。決めた。
「ふざけんなァァァァァァァァァァァァッッッ!!」
ヴァーリを倒そう!絶対に倒そうッ!
「貴様ッッ!部長のォォォォォ!
俺の部長のおっぱいを半分の大きさに
するつもりかァァァァアアアアアアアアアアッッ!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!』
鎧の各所にある宝玉から音声が幾重にも鳴り響く。
「許さないッッ絶対にてめぇだけは許さないッッ!
ぶっ倒してやるッッ!ぶっ壊してやるッッ!
ヴァーリィィィィィィィィィッッ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!』
俺の周囲が弾け飛んだ!
俺の立っている地面も大きく抉れ、
クレーターと化していた。
旧校舎の窓が全部割れ、外壁が崩れていく。
俺の全身はかつてないほどの
質量のオーラに包み込まれていた。
「アッハッハッハッ!なんだそりゃ!?
マジかよ!主様の胸が小さくなるかもしれないって
理由でドラゴンの力が跳ね上がりやがった!」
ゲラゲラと爆笑しているアザゼル。
笑い事じゃねぇッ!
これは笑い事じゃねぇんだよッ!
俺にとっては天地が逆さま
になる以上に大変なことなんだ!
ああ、スクランブルさ!
これ以上にないほどの危機なんだ!
ああ、スクランブルさ!
これ以上にないほどの危機なんだ!
だからこそ、許せない!
俺の部長のおっぱいを半分にする?
それは許されないんだよッ!
あのおっぱいは俺のものだ!
小さくされてたまるか!
俺の夢を奪うな、このクソ野郎ォォォォォッッ!
改めて思い知った。こいつと俺は分かり合えない!
俺はヴァーリに指を突き付ける!
その指を突き付ける勢いの余波で
遥か後方の木々が吹き飛んだ。
「リアス・グレモリーに手を出してみろッ!
二度と転生できないぐらい
徹底的に破壊してやらぁぁぁぁぁっ!
この半分マニアがぁぁぁぁぁぁっっ!!」
俺の絶叫で夜空の雲が割れた。
隠れていた萬月が姿を現す。
「今日は驚く事ばかりだ。まさか、
女の乳でここまで力が爆発するとは。
しかし、おもしろい!」
白龍皇が俺へ向かって、飛び出してくる。
遅く感じるな。
バッ!
俺はその場から離れ、
飛び出してきたヴァーリを横合いから蹴り飛ばした。
「速いッ!スピードで俺を超えるのか!?」
知るかッ!勝手にビックリしやがれ!
許すか!こいつを許して堪るか!
こいつを野放しにしたら部長どころか、
朱乃さんのおっぱいまで半分にされるッッ!
くっ!
想像しただけでゾッっとするぜ!
あの素敵なおっぱいが半分になるなんて
神ですら許されない行為だッッ!
俺は光速で動き回るヴァーリを難なくつかまえると。
「これは部長のおっぱいの分!」
ヴァーリの腹部に右拳で一撃!
『
同時に移植したばかりの白龍皇の力が発動し、
ヴァーリを覆うオーラが激減したように感じた。
「ぐはっ!」
吐瀉物を口から吐き出すヴァーリ!
俺はそんなのお構いなしに攻撃を続ける!
「これは朱乃さんのおっぱいの分!」
顔面に一撃!
よし!兜が完全に壊れた!
「これはアーシアのおっぱいの分!」
光の翼を発生している背中の噴出口を破壊!
「これはゼノヴィアのおっぱいの分!」
勢いよく、空中高く蹴り上げるッ!
「最後だッ!これは半分にされたら丸っきり
無くなっちまう小猫ちゃんの
ロリおっぱいの分だぁぁぁぁああああッッ!」
猛スピードでタックルをかます!
「ガハッ!」
俺の猛タックルにヴァーリが吐血する。
よっしゃ、ざまーみろッ!
ダガンッ!
地面に叩きつけられるヴァーリ。
―〇●〇―
ユウスケside
イッセーの方は地面にヴァーリを叩きつけていた。
「あのヴァーリをここまで追い詰めるか」
東城はイッセーの突然の成長に驚いていた。
それは俺も同様だった。
白龍皇の力を取り込んで、パワーアップするなんてな。
憤怒するイッセーとは対照的に
ヴァーリは嬉々とした笑みを浮かべていた。
「…おもしろい。本当におもしろい」
『ヴァーリ、奴の半減の力に対する解析は済んだ。
こちらの力の制御方法と照らし合わせれば対処できる』
「そうか。これであれは怖くないな」
この短時間でもう対策をしたのか!?
「アルビオン、今の兵藤一誠ならば白龍皇の
『
価値があるんじゃないだろうか?」
『ヴァーリ、この場でそれは良い選択ではない。
無暗に「
ドライグの呪縛が解けるかもしれないのだ』
「おいおい、あれをやるつもりかよヴァーリ」
「願ったり叶ったりだ、アルビオン。
『我、目覚めるは、覇の理に』」
ヴァーリが何かを唱え始めた。
東城の反応からしてヤバそうだ。
『自重しろ、ヴァーリッ!
我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』
アルビオンが怒ってる?
すると、イッセーが何かされる前に動き出した。
イッセーがヴァーリにトドメと
ばかりに一撃を放とうとしたとき。
夜空に浮かぶ月をバックに人影が一つ、
イッセー達の元へ舞い降りた。
神速でイッセーとヴァーリの間に乗り込んでくる。
…三国志の武将がきているような
鎧を身に纏った男だ。
「ヴァーリ、ユウスケ、迎えに来たぜぃ」
爽やかそうな顔つきの若い男性だ。
そいつは気軽にヴァーリへ話しかける。
「美猴か。何をしに来た?」
ヴァーリは口元の血を拭いながら立ち上がった。
「それは酷いんだぜぃ?仲間がピンチだっつーから
遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ?
他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?
北の
任務に敗北したのなら、さっさと逃げ帰ってこいってよ?
カテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの
暗殺に失敗したんだろう?
なら観察役のお前らの役目も終わりだ。
俺っちと一緒に帰ろうや」
「…そうか、もう時間か」
「楽しい時間はあっという間だな」
いつの間にか東城がヴァーリの傍にいた。
「なんだ、お前は?」
イッセーが突然現れたそいつに指を指して訊く。
「闘戦勝仏の末裔だ」
答えたのはアザゼルだった。
その名には聞き覚えがあった。
その一方でイッセーはその名に覚えが無かったようで、
疑問符を浮かべていた。
「ソッコーで把握できる名前で言ってやる。
奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」
「そ、そ、孫、悟空ぅぅぅぅぅっ!?」
聞き覚えのある有名な名にイッセーが驚愕する。
「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。
しかし、まさか、おまえまで『
世も末だな。いや『
お似合いでもあるのかな」
アザゼルの言葉に美猴はケタケタと笑う。
「俺っちは仏になった初代と違うぜぃ。
自由気ままに生きるのさ。
俺っちは美猴。宜しくな、赤龍帝、試作クウガ」
気軽に挨拶されたな。
美猴は、棍を手元に出現させるとくるくると器用に回し、
地面に突き立てた。刹那、
地面に黒い闇が広がる。
それはヴァーリ達を捉えると、
ずぶずぶと沈ませていく。
逃げる気か!
「待て!逃がすか!」
捕まえようと走り出そうとした俺とイッセーだが、
カッ!
イッセーの神器が解除され、鎧が消えて、
アザゼルから貰った腕輪も崩れ去った。
俺も変身が解けて生身に戻ってしまう。
クソッ!
もう限界なのかよ!?
「アザゼル!あのリング、まだないのか!?
こいつを逃がすわけにはいかない!」
イッセーが叫ぶが、アザゼルは淡々と答える。
「あれは、精製に恐ろしいぐらいの時間がかかる。
量産もできん。それにあったとしても、
多用すれば完全な
可能性が薄れるんだよ。あくまで緊急処置用だ」
焦るイッセーだが、既に立っている事も出来ず、
地に膝を着いている。
俺も同じ状況だった。
初めて使う力を限界まで使ってしまった。
ボダウとの戦いでの消耗も激しかったが、
東城との戦いでのダメージが結構響いている。
もう拳だって握れそうにない。
「あれだけの力を一瞬とはいえ爆発的に発散すれば体力
やらも空っぽになる。いまの赤龍帝じゃ、
貯蔵できるものがかぎられていて長時間の戦闘は無理だ。
そっちのクウガも戦闘続きだ、
もう魔力だって空っぽだろ」
確かにまだ俺達は戦える体力があっても
戦う力なんて残ってない、悔しいがな。
「旧魔王の血族で白龍皇である俺は忙しいんだ。
敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。
いずれ、再び戦う事になるだろうけど、
そのときはさらに激しくやろう。
お互いにもっと強く…」
「そっちのクウガももっと強くなれよ。
そして俺に敗北ってものを教えてくれよ
楽しみにして…」
二人はそれだけ言いかけると、
美猴と共に闇の中へ消えていった。
テロリスト達が去り、
全てが終わったが、
俺達の日常が変わっていくようだ。
次回、第52話「駒王協定」
ぜひ、見てくれよな。
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