レーティングゲームがついに始まる。
新たに明かされる情報で
戦いは不利に進んでいく
この試合どちらが勝つのか!
決戦日。
グレモリーの居城地下にゲーム場へ
移動する専用の巨大な魔方陣が存在する。
俺達眷属はその魔方陣に集まり、
もうすぐ始まるゲーム場への
移動に備えていた。
アーシアとゼノヴィア以外、
駒王学園の夏の制服だ。
アーシアはシスター服、
ゼノヴィアは出会った当初の頃に
着ていた戦闘服だ。
二人共そちらのほうが
気合が入るらしい。
転移直前、
リアス先輩のご両親、
ミリキャス様、奈美先輩、
ロビン先生、アザゼル先生、が魔方陣の
外から声を掛けてくれる。
「リアス、一度負けているのだ。
勝ちなさい」
「次期当主として恥じぬ戦いを
しなさい。眷属の皆さんもですよ?」
「頑張って、リアス姉さま!」
「リアス、ユウスケ、頑張りなさい!」
「頑張ってね、皆」
「まあ、今回教えられることは教えた。
あとは気張れ」
この場に居ないのはサーゼクス様と
グレイフィアさんだけど、
すでに要人専用の観戦会場へ
移動されているようだ。
そこには三大勢力のお偉いさんだけでなく、
他の勢力からのVIPも招待されているという。
先生達もこのあとその会場に移動するらしい。
この試合は俺達が思っている以上に
注目されているようだ。
緊張感が漂う中、魔方陣が輝きだした。
ついに初のゲームが始まる!
魔方陣でジャンプして到着したのは
テーブルだらけの場所だった。
…ここはレストランか?
と思い周囲を見渡してみれば、
ここはどうやら飲食フロアらしく、
テーブル周囲にはファーストフード
の店が連なっていた。
これが全部専用空間に用意された
本物そっくりレプリカか。
これが悪魔の技術力か。
うん、俺は此処を知ってるな…。
俺はフロアから出て見渡すと、
そこは、広大なショッピングモールだった。
見知った店が奥までずらりと続き、
天井は吹き抜けアトリウム。
硝子から光が零れていた。
やっぱり、ここは。
「駒王学園近くのデパートが
舞台とは、予想してなかったわ」
リアス先輩が言う。
今回のゲームの舞台は俺達駒王学園
の生徒ならよく通うデパートだった!
そのとき店内アナウンスが聞こえてくる!
『皆さま、この度はグレモリー家、
シトリー家の「レーティングゲーム」
の審判役を担うこととなりました、
ルシファー眷属『女王』の
グレイフィアでございます』
グレモリー家の使用人である。
グレイフィアさんが
ルシファー眷属と名乗ったのは、
ゲームの公平性の為なのかな?
『我が主、サーゼクス・ルシファーの
名のもと、ご両家の戦いを見守らせて
いただきます。どうぞ、よろしく
お願い致します。早速ですが、
今回のバトルフィールドは
リアス様とソーナ様の通われる学舎
「駒王学園」の近隣に存在するデパートを
ゲームのフィールドとして
異空間にご用意いたっしました』
ゲーム会場が見知った場所なら
やりやすいと思うが、
それは相手も同じことか、
あちらもこのデパートには
何度も来てるだろうしな。
舞台となっているこのデパートは
二階建てだ。高さ的にはそこまででもない。
しかし、一階二階ち吹き抜けの長い
ショッピングモールとなっており、
横面積がかなり大きい。屋上には駐車場もあり。
その他にも立体駐車場も存在している。
『両陣営、転移された先が「本陣」で
ございます。リアス様の本陣が
二階の東側、ソーナ様の「本陣」は
一階西側でございます。
「兵士」の方は「プロモーション」
をする際、相手の「本陣」まで
赴いて下さい』
俺達と敵の陣地はデパートの端だ
俺達は二階の一番東側。
相手は一階の一番西側だ。
俺達の陣地の周りには、
ペットショップ、ゲーセン、
飲食フロア、本屋、ドラッグストアが
存在している。本陣下の一階には
大手古本屋の支店とスポーツ用品店。
相手側にあるのは食材品売り場と、
電気屋、ジャンクフード店、
雑貨品売り場だ。
戦いが始まれば、お互いデパートの
端を目指すことになるだろうが、
そう簡単には行かないだろうな。
『今回、特別なルールがございます。
陣営に資料が送られていますので、
ご確認下さい。回復品である
「フェニックスの涙」は今回両チームに
ひとつずつ支給されます。
なお、作戦を練る時間は三十分です。
この時間内での相手との接触は
禁じられております。
ゲーム開始は三十分後に予定
しております。それでは、作戦時間です』
アナウンス後、すぐに皆で集まる。
「バトルフィールドは駒王学園近くの
デパートを模したもの。屋内戦ね」
リアス先輩が飲食フロアの壁に
描かれたデパート内の案内図
を見ながら言った。
リアス先輩の手元にはチェスのマス目
に区切られた専用の図面も存在する。
先程の飲食フロアで俺達は
陣取って作戦を練っている。
しかし、屋内戦か!
俺はてっきりチェスの盤を
そのまま広くしたフィールドで
戦うものだと思ったよ。
リアス先輩が送られてきた
ルールの紙に目を通す。
「今回のルール、
『バトルフィールドとなる
デパートを破壊し尽くさないこと』
つまり、ド派手な戦闘はおこなう
なって意味ね」
リアス先輩は目を細め、
このルールをどうしたものかと
考えている様子だった。
「…なるほど、私や副部長、
イッセーにとっては
不利な戦場だな。効果範囲の
広い攻撃ができない」
ゼノヴィアの言う通りだ。
屋内戦、しかも建物を
あまり破壊するなということは、
イッセーのドラゴンショット、
朱乃さんの雷攻撃も屋上でしか
使えないだろうしな。
ゼノヴィアもデュランダルからの
聖なる斬撃波動も発生出来ないだろう。
ただでさえ、抜き身状態でも
聖なるオーラが迸る剣だ、
ルール上無暗矢鱈に振り回せないな。
それに、俺の『深碧のクウガ』も
魔法攻撃がメインだからな
外せば建物に被害が出るから。
「困りましたわね。大質量による攻撃戦は
ほぼ封じられたようなものですわ」
朱乃さんが困り顔で頬に手を当てていた。
木場は息を吐きながら意見を口にする。
「ギャスパー君の眼も効果を望めませんね。
店内では隠れる場所が多すぎる。
商品もそのまま模されるでしょうし、
視線を遮る物が溢れてます。
闇討ちされる可能性もありますし
…困りましたね。これは僕らの特性上、
不利な戦場です。派手な戦いが出来るのが
リアス・グレモリー眷属の強みですから、
丸々封じられる」
リアス先輩は二人の言葉に
首を横に振った。
「いえ、ギャスパーの眼は最初から
使えないわ。こちらに規制が入ったの。
『ギャスパー・ヴラディの神器使用
を禁ずる』だそうよ。理由は単純明快。
まだ完全に使いこなせないからね。
眼による暴走でゲームの全てが台無し
になったら困るという判断でしょう。
イッセーの血を与えるのも禁止。
アザゼル開発の神器封印メガネを
装着とのことよ。
『ギャスパー専用に作ってあるため、
体への悪影響は特になし』と。
本当、用意がいいわね」
ルールに加えて、
ギャスパーの神器まで制限かよ
こっちに不利過ぎないか?
「では、ギャスパーは魔力と
ヴァンパイアの能力で戦えと?」
俺の問いにリアス先輩は頷く。
「そういうことね。
もともと時間停止はリスクが
大きかったわ。例のカウンター
タイプの存在だけでなく、
能力を吸収する神器を持つ
匙くんが相手側にいるのだもの、
どんな返し技をされるかわからないのよ。
幻術で封殺。他にも視界を奪う術はある。
そんなことを言っていたらゲームや
戦闘なんて出来やしないのだけれど。
細心の注意を払うのは当然ね」
たしかに、この間の黒歌のような
霧だって十分視界を奪う事だってできる。
さっそくギャスパーが眼鏡を掛けている。
「…レーティングゲームは、
単純にパワーが大きい方が勝てるわけでもない。
バトルフィールド、ルールによって
戦局は一変するわ。力が足りない
悪魔でも知恵次第で上にも上がれる
土壌があるからこそ、ここまで冥界や
他の勢力の間で流行ったのよ。
今回は私達にとって不利なルール
かもしれないわ。けれど、
これをこなせなければこれからの
ゲームに勝ち残ることなんてできない。
『「兵士」でも「王」を取れる』
これはチェスの基本ルールでもあり、
レーティングゲームの格言よ。
つまり、『やり方次第では
誰でも勝てる可能性がある』という
ことを示唆しているわ」
朱乃さんもリアス先輩の意見に
賛同し、うなずいた。
「そうですわね。実際の戦場でも、
このような屋内戦が今後あるかも
しれません。そうなった場合、
今日この日のように力が
完全に発揮できないこともあるでしょうし。
良い機会かもしれませんわね。
チームバトルの屋内戦に
慣れておくのに今回の戦闘は最適ですわ」
そんな中、イッセーが恐る恐る手を挙げる。
「あ、あの、部長。俺、禁手に
なることやパワーを上げる修行に必死で、
力を抑えて戦う練習なんてしてませんけど…」
「分かっているわ。今回、完全に裏目に出たのよ。
戦場とルールはランダムで決まるとはいえ、
今度のゲームはイッセーにとっては
最悪に近いかもしれないわ。
貴方のパワーは絶大すぎる。
ルール上、建物を破壊したらアウト。
でも、必ずどこかで禁手になること。
けれど、できるだけパワーを抑えて
戦ってちょうだい。ドラゴンショットも
できるだけ撃たない事。
デパートが吹き飛ぶかもしれないわ。
格闘戦でなんとか凌いでちょうだいね。
…難しいことばかりでゴメンなさい」
「…は、はい。って、
正直、不安すぎますけど…」
まあ、パワータイプは
状況によっては不利になってしまう
いい勉強になるな。
さらにリアス先輩の作戦案は続く。
「攻めるにしてもこの吹き抜けの
ショッピングモールが問題ね。
一階からでも二階からでも
進行する姿が見て取られるわ。
あちら側も同じでしょうけど」
リアス先輩が店内の様子を見ながら言った。
朱乃さんも意見を述べる。
「保管委は立体駐車場からの
攻めも考えられますけれど、
それはあちらも警戒するでしょうね」
「ええ、同様に屋上からの行動もね。
どちらにしても、中央突破、屋上から、
立体駐車場から、このルートで進まないといけないわ。
デパートの外には出られないのですものね」
「立体駐車場に車も存在するのでしょうか。
見た感じ、商品や商品棚まで
再現されていますし。
もしかしたら、駐車されている車まで
コピーされているかもしれませんわ」
リアス先輩と『女王』朱乃さんの
話し合っていると、
木場が手を挙げて進言する。
「部長、屋上と立体駐車場を
見て来ます。近くに階段が
ありますから、確認してきます」
リアス先輩もうなずいた。
「お願い、祐斗」
直ぐに木場はその場を
速足に後にする。
「車が何か大変なんですか?」
イッセーがリアス先輩に訊ねる。
「車で店内に突っ込んできたら大変でしょう?
それに車単体を爆弾に見立てて使ってくる
可能性も視野に入れておかないといけないのよ。
さすがに店内を暴走運転なんて行為を
ソーナがやるとは思えないのだけどね」
と、リアス先輩が言う。
「慎重ですわ」
「当然よ。まだ足りないと感じるぐらいだわ。
車の中で休むことや隠れることもできるわね。
そういえばスタッフルームの中は
見た事が無いわ。チェックして
おくべきかしら…。イッセーの『洋服崩壊』
があっても、モール何に服のブランド店なら
たくさんあるわ…。デパートだもの、
考えたらキリがないわね」
リアス先輩は細かいところまで考えているんだな。
リアス先輩は次にギャスパーに指示を送る。
「ギャスパーはコウモリに変化して、
デパートの各所に飛んでちょうだい。
序盤、貴方にはデパート内の様子を
逐一知らせてもらうわよ」
「りょ、了解です!」
ギャスパーも気合が入ってるな。
彼奴にとっても初めてのゲームだからな。
その後も作戦会議は続き、
細かい戦術まで決まっていった。
そして作戦会議が始まって
半分が過ぎた頃、ある程度のプランは固まった。
リアス先輩は俺達を見渡して言う。
「ゲーム開始は十五分後ね。
十分後にここに集合。各自、
それまでそれぞれのリラックス方法で
待機していてちょうだい」
リアス先輩の言葉により、皆、一度解散する。
イッセーはリアス先輩に呼び止められている。
ギャスパーはドーナツ店へ入っていき。
アーシアとゼノヴィアは
ハンバーガー屋へ向かう。
木場はドラッグストアに行き
商品を物色するようだな。
試合中に何か使えるか調べてるのか。
木場も真面目だな。
皆、それぞれのリラックス方法があるだろうし
邪魔はしない方が良いだろう。
俺はと言うと、飲食フロア近くの
本屋へとやってきた。
ずっと修行で冥界に居たからな。
娯楽に飢えていた。
おっ、目的の物を見つけた!
「やっぱり新刊が出てたか!」
夏休みに出る予定だったマンガの新刊
をずっと楽しみにしてたが、
冥界に来ることになったから
結局、見れずじまいだったんだよな…。
俺はその場に座り込み
読書に集中する。
俺がもう少しで本を読み終わるという
タイミングで後ろから声が掛かる。
「…ユウスケ先輩、そろそろ集合です」
声を掛けてきたのは小猫ちゃんだった。
俺を探していたのかな。
「もう時間かゴメンね
読むのに夢中で時間忘れてたよ」
「…いえ、まだ少し余裕はありますし、
まだイッセー先輩と朱乃先輩も
来ていないので」
「じゃあ、俺も探すの手伝うよ」
「…二人ならこの先に一緒に居ますよ」
「この先って…、
彼奴もマンガかと思ったら
目的はエロ本かい。
小猫ちゃん俺が、彼奴呼んでくるから
先戻ってていいよ」
小猫ちゃんが指さした先は
エロ本コーナーだったので、
流石に俺一人で呼びに行こうと
そう言ったのだが、
「…私も行きます。
ただ呼びに行くだけですから」
そう言って小猫ちゃんは
スタスタと歩いて行ってしまう。
俺は急いで本を片して後を追う。
追いつくとちょうど入れ違いで、
朱乃さんがやってくるところだった。
「先に行ってますわね」
朱乃さんはそれだけ言うと
その場を去っていった。
棚の向こう側にはイッセーが
エロ本を拡げながらうんうん頷いていた。
「イッセー、バカやってないで、
さっさと行くぞ、俺達が最後みたいだからな」
「おお、直ぐ行くよ」
イッセーが立ち上がり共に皆の
所に行こうとしたところ、
俺とイッセーの手を小猫ちゃんが握ってきた。
「こ、小猫ちゃん?」
「どうかしたのか?」
突然の小猫ちゃんの行動に驚く俺達。
小猫ちゃんは頬を赤く染めながら言う。
「…私に勇気を下さい」
っ!
そうだったこの子はついこの間まで
自身の力を恐れていた。
封じていた力を使うのが怖いんだ。
彼女の手は震えていた。
よほど怖いんだな。自分も力に
吞まれるんじゃないかと。
「うん、俺達でよかったら」
「大した勇気じゃないけどな」
俺に勇気なんてない
ただ無我夢中にやるだけ
後先を考えない考えなしなだけだからな。
だけど、そんな俺でも
彼女に少しでも力になるのなら。
俺達は笑顔で握り返した。
「…先輩達は私が、猫又が怖くないのですか?」
不安げな表情で小猫ちゃんが訊ねてくる。
「いや、全然」
「小猫ちゃんは小猫ちゃんだろ」
俺達は平然と答えた。
小猫ちゃんは猫又だろうが
可愛い後輩には変わりない。
それを聞いて、小猫ちゃんは心底
驚いた様子だった。
でも、顔が俯いてしまう。
「…修行が始まる前、イッセー先輩に
酷い事言いました」
イッセーに小猫ちゃんが怒ったあれか。
「気にしなくていいよ。俺も悪かった。
事情を知らなかったとはいえ、俺は
気の利かない先輩だったよ」
「そんなことありません」
「小猫ちゃんも当人が気にしてないんだから
この話はここまでだ、それに今の小猫ちゃんは
その時とは違うんだろ」
「はい」
小猫ちゃんはいっそう強く
握ってくると」
「…猫又の力を使ってみようと思います」
「っ!」
小猫ちゃんの一言にイッセーは驚いていた。
だが俺はそうじゃないかと思っていた
…やっぱり小猫ちゃんは強い子だ。
「…姉さまのようになるのは嫌です。
けど、このままでは皆さんのお役に
立てないかもしれません。
だから使おうと思います」
決意の眼差しだった。
黒歌との再会と絶縁で吹っ切れたか。
「小猫ちゃん、将来的に猫又の力を乗り越え、
いつか必ずヘルキャットになるんだ」
「…ヘルキャット?」
「冥界猫と書いてヘルキャットと読む。
さっき俺が呼んでたこれさ」
俺は先ほど読んでいた。
漫画を小猫ちゃんに見せる。
それは冥界から来た猫が
相棒の少年と協力して
悪い妖怪と戦う作品だった。
「俺も小猫ちゃんに宣言する。
もし、猫又の力で暴走しそう
になっても俺が止めるよ。
この赤龍帝の力は俺だけじゃなくて、
仲間の為に振るいたい。
あおれにあの怖いお姉さんが来ても
俺が小猫ちゃんを必ず助ける。
あんな姉ちゃん、俺がパンチで
吹っ飛ばしてやるから、
怖がる必要なんてないぞ」
「イッセーの言う通りだな
俺も一緒に戦ってあげる。
そして、小猫ちゃんが居たいと思う
この場所を一緒に守ろう。
その場所で、自分が本当に
好きだと思える自分を目指せば
良いんじゃないか!ね!」
俺は小猫ちゃんにサムズアップをする。
これが俺達の精一杯の励ましだ。
まあ、受け売りだけどね。
「…優しい先輩です、やっぱり」
小猫ちゃんは俯きながらそう言っていた。
始まる戦い、
兵士同士で始まる
因縁の戦い!
ライバルは一人では無いぞ!
熱い思いが今ぶつかる
次回、第66話「開戦」
見てくれよな!
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