ハイスクールD×D~古代の戦士~   作:ヤマト・ゼロ

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遅れてしまい申し訳ない

できれば日曜日に投稿したかったが

日付を跨いでしまった


第9話「変身」

階段を上りきり、俺はアーシアを抱えたまま、

 

聖堂へと出てきた。

 

「おい!ユウスケ、アーシアの様子がおかしいぞ!」

 

イッセーに言われアーシアを見ると、

 

顔が真っ青だった。俺は近くの長椅子に彼女を横にする。

 

「待ってくれよ!もうすぐアーシアは自由なんだ!

俺達といつでも遊べるようになれるんだ!」

 

俺の言葉にアーシアが小さく微笑む。

 

そして、俺の手を取った。その手から生気は感じられず、

 

体温も失われつつあった。

 

「私、少しの間だけでも…友達ができて…幸せでした…」

 

苦しみながらもアーシアは微笑む。

 

「…もし、生まれ変わったら、また友達になってくれますか…?」

 

「何を言っているんだ!そんな事言うなよ!これからも

楽しい所へ連れていくさ!アーシアが嫌がっても連れていく!

カラオケにゲーセンにボウリングだって!他にも

連れていってやるさ!」

 

涙が止まらなかった。

 

理解できてしまった。

 

この子は、死ぬ。

 

死んでしまうんだ。

 

わかっていてもそれを、否定したかった。

 

こんなこと、嘘に決まっていると。

 

「俺ら、ダチじゃねぇか!ずっとダチだ!ああ、そうさ!

松田や元浜にも紹介するよ!あいつら、

ちょっとスケベだけどさ、すっげぇイイ奴らなんだぜ!

絶対にアーシアの友達になってくれる!絶対だぜ!

みんなでワイワイ騒ぐんだ!バカみたいにさ!」

 

「イッセーの言うとおりだ!木場や小猫ちゃんだって

友達になってくれるさ!二人ともアーシアの為に

ここまで一緒に来てくれたんだ皆で帰ろう!」

 

「…きっと、この国で生まれて…

ユウスケさんと同じ学校に行けたら…」

 

 

「行こう!俺達の学校に」

 

アーシアの手が俺の頬を撫でる。

 

「私の為に泣いてくれる…もう、何も…」

 

頬を触れている手が静かにゆっくりと落ちていく。

 

「…ありがとう…」

 

それが彼女の最後の言葉だった。

 

微笑んだまま、逝った。

 

力が抜ける。俺達はその場で呆然と彼女の死に顔を眺めていた。

 

涙が止まらない。

 

「なんでだ? なんで、この子が死なないといけない?

こんないい子なんだぜ?傷ついた相手なら誰でも治してくれる

優しい子なんだ。どうしてそんな子と今まで誰も友達になって

あげなかったんだ? どうしてこんなタイミングで

俺達は出会ったんだ?」

 

俺はアーシアの死に後悔するばかりだった。

 

「なあ、神様!神様、いるんだろう!?悪魔や天使がいるんだ、

神様だっているんだよな!?見てるんだろう!?

これを見ていたんだろう!?」

 

イッセーは教会の天井に向かって叫ぶ。

 

誰かが答える訳もなく、それでも上に向かって叫び続ける。

 

「この子を連れて行かないでくれよ!頼む!頼みます!

この子は何もしてないんだ!ただ、友達が欲しかっただけだよ!

ずっと俺達が友達でいます!だから、頼むよ!神様!」

 

天へ訴えかけても応じてくれる者はいない。

 

俺はイッセーが叫ぶなか只涙を流すだけだった。

 

「俺達が悪魔になったから、ダメなんすか!?

この子の友達の俺達が悪魔だからナシなんすか!?」

 

今は立ち上がるしかない。後悔を今更しても、

 

彼女は笑顔を見せてくれない。

 

「あら、こんなところで悪魔が懺悔?

それともお願いでもしてたのかしら?」

 

俺達の後方からレイナーレの声が聞こえた。

 

振り返ると、俺達を嘲笑する堕天使の姿があった。

 

「見てごらんなさい。ここへ来る途中、下で、『騎士』

の子にやられてしまった傷よ」

 

レイナーレが自信の傷口へ手を当てる。

 

淡い緑色の光が発せられ、傷を塞いでいく。

 

「見て、素敵でしょう?どんなに傷ついても治ってしまう。

神の加護を失った私達堕天使にとってあの子の神器(セイクリッド・ギア)は素晴らしい贈り物だったわ」

 

木場達は無事なのか?気になるが、

 

今度は怒りに飲まれたりしない。

 

「堕天使を治療できる堕天使として、

私の地位は約束されたようなもの。偉大なるアザゼルさま、

シェムハザさま、お二方の力となれるの!

こんなに素敵なことはないわ!ああ、アザゼルさま…。

私の力を、私の力をあなたさまのために…」

 

「知るかよ」

 

俺はレイナーレを激しく睨み付ける。

 

「そんな事、知らねぇよ。堕天使だとか、神様だとか、

悪魔だとか…。そんなもの、この子には関係無かったんだ」

 

「いえ、関係あったわ。この子は神器(セイクリッド・ギア)

を身に宿した選ばれた人間だった」

 

「…それでも、静かに暮らせた筈だ。普通に暮らせた筈だ!」

 

「出来ないわよ。異質な神器(セイクリッド・ギア)

有した者はどこの組織でも爪弾き者になるわ。強力な力を

持っているが故に。ほら、人間ってそういうの毛嫌いするでしょ?

こんなに素敵な能力なのにね」

 

「…俺が、アーシアの友達として守った。そんなことはさせない」

 

「アハハハハ!無理よ!だって、死んじゃったじゃない!

その子、死んでるのよ?もう守るとか守らないじゃないの。

あなたは守れなかったの!夕刻の時には、そこの彼を、

さっきも!その子を救えなかったのよ!本当におかしな子!

おもしろいわ!」

 

「………。知ってるさ。だから、許せないんだよ。

お前も。そして、俺も」

 

「ユウスケ!入口が!」

 

イッセーの声で入口の方へ振り向くと

 

聖堂の全ての扉が燃やされていた。

 

「証拠隠滅の為に殺すって言ったでしょ?

その子も貴方達もここで燃えてしまいなさい」

 

俺は一度変身を解除し、人間の姿に戻る。

 

「あら?あきらめたのかしら?

なら、槍の一刺しで楽に死なせてあげるわ」

 

「さっきも言ったろお前は許さねぇって

今まで俺には覚悟が足りなかった。

足りなかったからアーシアを救えなかった。

それが、分かったんだ」

 

「何を言ってるのかしら?今更後悔しても

遅いわよ!」

 

「お前らみてぇな奴らの為に!誰かが死ぬのはもう見たくない!

だから!見ててくれアーシア!俺の!『変身』!」

 

その瞬間、俺の覚悟に呼応するように、銀のベルトが現れる。

 

中央の宝玉は今までと違いリアス先輩の髪のように

 

赤よりも濃い、紅である。

 

ベルトに手をかざし、右手を前に突き出す。

 

右腕を右前方へ動かしきったあと、勢いよく左腰の拳を落とす。

 

そして、ベルトの起動スイッチを押し込む。

 

これが、このベルトの本来の使い方だと、理解できた。

 

ダッ!

 

俺はレイナーレに飛び掛かる。

 

「うぉぉぉぉぉッッ!」

 

レイナーレには当たらずよけられていたが、

 

次の瞬間驚くべきことが起こる。

 

拳の速度が徐々に上がっていき、

 

レイナーレが回避ではなく、応戦する。

 

「はっ!」

 

ガッ!

 

「おらぁ!」

 

パシィ!

 

ユウスケの拳はレイナーレにさばかれていたが、

 

驚くべきはそこではない!

 

ユウスケの肉体が戦士の姿に変わっていく。

 

全身が黒い皮膚に覆われて、胴体には鎧が装着される。

 

だがその色は今までの白ではなく、ベルトと同じ紅。

 

顔も黒い装甲が覆い隠す。

 

「なによ!その姿は⁉」

 

レイナーレは驚愕していた。鎧や腕・足首の装甲など、

 

今まで白かった鎧が全て紅に変わっていた。

 

頭の二本の角も倍の長さに伸びていた。

 

これが戦士の完全な姿である。

 

―心清く、身体健やかなるもの、これを身につけよ。

されば戦士『クウガ』とならん。

 

ユウスケ脳裏にその言葉が浮かんできた。

 

以前見た正しき戦士の姿にようやくなれたのである。

 

「姿が変わったからって何なのよ!

今付けた傷だってこうして治せるのよ。

貴方に勝ち目はないわ」

 

先ほどの攻防で傷ついた手を緑の光で治療する。

 

「返せよそれはアーシアの力だ!」

 

傷をいやしたレイナーレを見てイッセーが叫ぶ。

 

「アーシアを返せよォォォォォッッ‼」

 

『Dragon booster!!』

 

イッセーの叫びに応えるように、左腕の神器(セイクリッド・ギア)

 

が動き出す。手の甲の宝玉が眩い輝きを放った。

 

籠手には何かの模様らしきものが浮かんだ。

 

そして、俺達は一気に駆け出す。

 

嘲笑を浮かべる敵へ向けて拳を打ち込む。

 

レイナーレは先ほどとは動きが変わり

 

怒涛の攻撃を華麗に避ける。まるでその場で踊るように。

 

どうやらイッセーの方を脅威とは思っておらず、

 

俺の攻撃は避けているのに、

 

イッセーの攻撃は受け流すだけだ。

 

二人共戦いになれていない為上手く連携が取れていない。

 

お互いが邪魔にならないようにするので精一杯だった。

 

「おバカな貴方にも分かるように説明してあげるわ。単純な戦力差よ。

私が千。あなたは一。この差はどうやっても埋められないわ。

たとえ、その神器(セイクリッド・ギア)が発動しても、倍の二。

どうしようもないのよ!鎧の彼は確かに強くなったけれども、

貴方という足手まといがいて、どうやって私に勝とうというの!

アハハハハ!」

 

『Boost!!』

 

宝玉から音声が再び鳴り響く。

 

甲の宝玉に浮かぶ文字が『Ⅰ』から『Ⅱ』へ変わる。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

音声のあとイッセーが一気に詰め寄る。

 

「へぇ!少し力が増したの?でもまだね!」

 

イッセーの攻撃は再び避けられる。

 

回避する瞬間、レイナーレは両手に光が集まりだし、

 

槍の形に形成していく。

 

まずい!

 

「下がれ!イッセー!」

 

「おそいわ、食らいなさい!」

 

ズドンッ!

 

イッセーの両足を光の槍が貫く。両足の太ももへ

 

鋭く深く撃ち込まれた。

 

「ぐぁあああああぁぁあぁっ!」

 

イッセーは絶叫を張り上げた。

 

「てめぇ、よくも!イッセーは殺させないぞ!」

 

俺はイッセーを庇うように前に立ち。レイナーレと応戦する

 

イッセーはすぐさま光の槍に手をかけた。

 

ジュゥゥゥゥゥゥ。

 

「ぐぅぅぅぅぅあああああああ!」

 

肉が焼ける音だ。槍を掴むイッセーの手を容赦なく焦がしている。

 

イッセーの手と足からは煙が上がっていた。

 

必死に槍を抜こうとする様子を見て、レイナーレは嘲笑する。

 

「アハハハハ!その槍に悪魔が触れるなんて愚の骨頂よ!

光は悪魔にとって猛毒に等しいわ。触れるだけで

たちまち身を焦がす。その激痛は悪魔にとって最大級!

貴方の様な下級悪魔では」

 

「ぬがぁぁっぁぁぁ!」

 

イッセーは声にならない声を張り上げて、

 

光の槍をいっそう強く握りしめて足から少しずつ

 

引き抜いていく。

 

「こんなもの!アーシアが受けた苦しみに

比べたらなんだってんだよ!!」

 

涙とよだれを垂らしながら、

 

イッセーは槍を少しずつ引き抜いていく。

 

ずりゅずりゅ。

 

嫌な音を立てながら、槍は両足から抜かれていく。

 

両足から引き離し、手から落したとき、

 

光の槍は音もたてず床に触れず宙へ消えた。

 

どばっ。

 

塞いでいたものがなくなったせいか、

 

両足に空いた穴から鮮血が溢れ出す。

 

『Boost!!』

 

闘っていない状況でも籠手による強化は止まらない。

 

「イッセーここは俺に任せて下がっていろ!

アーシアの仇は俺が取る!」

 

イッセーを庇いながらでは戦えない。

 

ここはどうにかこの堕天使を外まで連れ出して倒すしかない。

 

「いいや、下がらねぇ!俺はまだ戦えるさ!」

 

イッセーは立ち上がろうとしているが、

 

足に力が入らないようで、立ち上がれない。

 

「その足では、戦うなんて出来ないだろ!」

 

「いいや…。戦える!今までずっと、

ピンチの時にユウスケに庇ってもらって

自分は動けないでいた!そんな自分が嫌だった!

ダチを殺された!その仇も取れずにまた庇ってもらうなんて

そしたら俺は自分を許せねぇ!男の選択は出来る、出来ないじゃなく!

やるか。やらないかだろ!」

 

全身をガクガク震わせながら、それでも少しずつ上へ立ち上がる。

 

「ッ! 嘘よ!立ち上がれる体じゃないのよ⁉

光のダメージで」

 

驚愕しているレイナーレ。

 

「よー、俺の元カノさん。色々と今までお世話になりました」

 

「…立ち上がれるわけがない!か、下級悪魔ごときがあの傷で

動けるはずがない!全身を内側から光が焦がしているのよ⁉

光を緩和する魔力を持たない下級悪魔が耐えられる

はずがないわ!」

 

「お前はイッセーを馬鹿にしすぎだ!こいつはやる時は

やる男さ!」」

 

 

「確かに痛ぇよ。チョー痛ぇ。意識も飛びそうだ。

でもよ、ユウスケだって戦ってんだ。俺だけ寝てるわけには

いかないだろう」

 

イッセーは立ち上がる。そして、俺はイッセーを庇うのではなく

 

横に並ぶ。

 

「さぁ、やろうぜ!俺とお前でこの堕天使をぶん殴るぞ!!」

 

「ああ、やろうぜ!なあ、俺の神器(セイクリッド・ギア)さん。

目の前のこいつを殴り飛ばすだけの力はあるんだろうな?

ユウスケと二人でトドメとしゃれ込もうぜ」

 

EXPLOSION(エクスプロージョン)!!』

 

その機械的な声はその時だけ、とても力強かった。

 

何やら宝玉が一層光り輝く。すごい光だ。

 

だが堕天使の光と違って、この光には安らぎすら感じる。

 

それはアーシアの癒しの光に似ている。

 

イッセーは足を前に動かす。足の傷口からドバっと血が出て、

 

床に落ちた。口からも血を吐いている。その姿は瀕死の重傷だ。

 

なのにその体から力強い波動を感じる。

 

「…ありえない。何よ、これ。どうして、こんなことが…。

その神器(セイクリッド・ギア)は持ち主の力を倍にする

龍の手(トゥワイス・クリティカル)』でしょ?なんで。

あ、ありえないわ。どうして、あなたの力が私を超えているの…?

この肌に伝わる魔力の波…魔の波動は中級…いえ、

上級クラスの悪魔のそれ…」

 

イッセーの力が上級悪魔?原因は神器(セイクリッド・ギア)か?

 

「噓よ!こんなの嘘だわ!わ、私は究極の治癒を手に入れた堕天使よ!

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を手に入れ、

この身に宿した私は至高の存在と化しているの!

シェムハザさまとアザゼルさまに愛される資格を得たのよ!

あ、貴方達のような下賤な輩に私は!」

 

レイナーレが両手に光の槍を再び作り出す。

 

それを勢いよく俺達に投げてきた。

 

俺達はそれを横殴りに拳で薙ぎ払った。光の槍はなんなく消し飛んだ。

 

今まで、俺達を苦しめてきた光の槍をなんなく薙ぎ払ったのを見て、

 

レイナーレの表情はさらに青ざめる。

 

「い、いや!」

 

バッ!

 

黒い翼を羽ばたかせ、レイナーレは今にも飛び立とうとしていた。

 

逃げる気か。おいおいさっきまでの余裕はどこいったんだよ。

 

だが逃がすわけないだろ!

 

ダッ!

 

俺達は相手が飛び立とうとした瞬間に駆け出した。

 

だがイッセーが俺よりも早くレイナーレにたどり着くと、その手を引く。

 

堕天使が反応できない程のスピードが出ていた。

 

「逃がすか、バカ」

 

「押さえとけよイッセー!」

 

「私は、私は至高の!」

 

「「吹っ飛べ!クソ天使ッ!」」

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!下級悪魔がぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

 

イッセーは左腕の籠手で、俺は右腕に力を集結させる。

 

右腕が燃えるように熱くなっているのを感じる。

 

それを憎むべき相手の顔面へ鋭く、正確に真っ直ぐ打ち込んでやった。

 

ゴッ‼︎

 

派手な音が鳴り響く。俺達は拳を顔面に食い込ませたまま、

 

力強く押し出す!

 

レイナーレが拳の一撃で後方へ吹っ飛ぶ。

 

ガッシャァァァァァン‼︎

 

大きな破砕音を立てて、堕天使は壁に叩きつけられた。

 

壁は見事に壊れ、デカイ穴が生まれている。

 

宙を舞う埃が落ち着いてきた時、

 

レイナーレが吹っ飛んだ先が鮮明になってくる。

 

穴は外まで達しており、堕天使は地面に転がっていた。

 

動く気配は無い。死んだかどうかまではわからないが、

 

そうそう立ち上がってはこないだろう。

 

一矢報いた。

 

「ざまーみろ」

 

「やったんだなユウスケ…」

 

「ああ」

 

思わず笑みがこぼれた。本心さ。

 

本当に気持ちのいい一撃だった。

 

けどすぐに涙もこぼれた。

 

「…アーシア」

 

もう二度と彼女の笑顔は見れないのか。

 

ー○●○ー

 

堕天使を殴り飛ばし、完全に力を使い果たしたイッセーは

 

その場に倒れ込んだ。

 

とん。

 

すぐに支えようとしたが俺より先にイッセーの肩を抱いた者がいた。

 

それは俺たちの為に下に残った木場だった。

 

「お疲れ。堕天使を倒しちゃうなんてね」

 

笑顔でイッセーの肩を持ち、体を支えている。

 

よく見れば木場もボロボロだった。

 

「無事だっんだな」

 

「よー、遅ぇよ、色男」

 

「ふふふ、邪魔するなって部長に言われていたんだ」

 

リアス先輩に?

 

「その通りよ。あなたたちなら、堕天使レイナーレを

倒せると信じていたもの」

 

声のする方へ振り向けば、紅の髪を揺らしながらリアス先輩が

 

笑顔で歩いてくる。

 

「リアス先輩、どこから?」

 

「地下よ。用事が済んだから、魔方陣でここへ転移してきたの。

教会に転移なんて初めてだから緊張したわ」

 

リアス先輩はそう言いながら息をつく。

 

なるほど、それで木場たちと共に上へあがってきたのか。

 

ってことは、下の神父は全滅だな。リアス先輩相手じゃ、

 

無事に済まないだろうし。

 

と俺達の横をスタスタと小猫ちゃんが横切っていく。

 

どこに行くんだ。

 

俺達の前にリアス先輩が来る。

 

「それで無事に勝ったようね」

 

「ぶ、部長…。ハハハ、なんとか勝ちました」

 

「イッセーはボロボロだけどな」

 

「フフフ、偉いわ。流石私の下僕くん」

 

そう言うと、リアス先輩はイッセーの鼻先を小突く。

 

「ユウスケもようやく本来の姿になれたようね」

 

俺はリアス先輩の言葉に驚く。

 

「先輩は知ってたんですか⁉︎」

 

「ええ、奈美にも相談されたしね

気落ちしてるから気にかけてと」

 

「部長がそんな事を…」

 

「あらあら。教会がボロボロですわ。部長、よろしいのですか?」

 

何やら困り顔の朱乃さん。

 

「…なんか、ヤバイんすか?」

 

イッセーが恐る恐るリアス先輩に聞く。

 

「教会は神もしくはそれに属する宗教のものだし、今回みたいに

堕天使が所有している場合があるでしょ?そのケースだと、

私達悪魔が教会をボロボロにすると、あとで他の刺客から

付け狙われることがあるの。恨みと報復よ」

 

っ。

 

それはマズイ事になるな。

 

「でも今回それは無いでしょうね」

 

「どうしてですか?」

 

「ここは元々捨てられた教会だったわ。そこをとある堕天使達が

自分の私利私欲のために活用したわけで、私達はそこで

ちょっとした喧嘩をしていただけよ。

相手の公式な陣地へ戦争を吹っかけたわけではないの。

あくまで、いち悪魔といち堕天使の野良試合の小競り合い。

そんなのどこでも年中起こっているわ。ただそれだけのことよ」

 

なるほどね、ものは言いようだな。

 

「部長。持ってきました」

 

ズルズルと何かを引きずる音と共に現れたのは小猫ちゃんだ。

 

壊れた壁から姿を現したが、引きずっているのは黒い羽

 

堕天使レイナーレ。

 

子猫ちゃんは俺達が殴り飛ばし、

 

気絶したレイナーレを引きずってきたのか。

 

相変わらず小さい体に似合わず行動が豪快だな。

 

「ありがとう小猫。さて、起きてもらいましょうか。朱乃」

 

「はい」

 

朱乃さんが手を上へかざす。すると、宙に水らしきものが生まれてくる。

 

これが悪魔の魔力か。

 

宙に生まれた水の塊を朱乃さんは

 

倒れているレイナーレへ被せる。

 

バシャッ!

 

水音のあと、「ゴホッゴホッ!」と咳き込むレイナーレ。

 

気がついたのか、ゆっくりと目を開ける堕天使。

 

それをリアス先輩が見下ろす。

 

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

 

「…グレモリー一族の娘か…」

 

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。

グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、

お見知りおきを」

 

笑顔で言い渡すリアス先輩だが、

 

レイナーレはリアス先輩をにらみつけている。

 

と、途端にあざ笑う。

 

「…してやったりと思っているんでしょうけど、

残念。今回の計画は上に内緒であるけれど、私に同調し、

協力をしてくれている堕天使もいるわ。

私が危うくなったとき、彼らは私を」

 

「彼らは助けに来ないわ」

 

レイナーレの言葉を遮り、リアス先輩ははっきりとそう言った。

 

「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト

彼らは私が消し飛ばしたから」

 

「嘘よ!」

 

レイナーレは上半身だけ起こし、リアス先輩の言葉を強く否定する。

 

リアス先輩は懐から三枚の黒い羽根を取り出した。

 

「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけでわかるわね?」

 

羽を見て、レイナーレの表情が一気に曇る。

 

どうやら、リアス先輩の言った事は真実だったようだ。

 

「以前、イッセーを襲った堕天使ドーナシークと出会った時から、

この街で複数の堕天使が何かの計画を立てているのは察していたわ。

けれど、それは堕天使全体の計画だと思って、

私は無視していた。いくら私でも堕天使全体を敵に回すなんて

愚は冒さないわ。でも、何やら突然こそこそと動き出したと

耳にしたから、私は朱乃を連れて少しだけお話をしに行ったの。

彼らに実際会ってみたらすんなり独自の計画だと吐いてくれたわ。

あなたに協力すると、地位を約束してくれるとか言っていたかしら。

裏でコソコソくだらない計画をしている下賎なものほど、

自分たちのやっていることを喋りたくなるものよね」

 

リアス先輩が嘲笑する。

 

レイナーレは悔しそうに歯噛みしていた。

 

「女2人が近づいてきただけだから、甘く見ていたのでしょうね。

冥土の土産に教えてもらったの。フフフ、どちらが冥土に

近いかもわからないお馬鹿な堕天使さんだったわ。

あなたのくだらない計画に同調する位だから、

程度は低かったのでしょうね」

 

そうか。リアス先輩の用事はそれだったのか。

 

裏で他の堕天使を始末していた…

 

リアス先輩はちゃんと考えてくれていたんだ…。

 

それなのに俺は、ひどいことを言ってしまった。

 

後で謝らなければな。

 

「その一撃を喰らえばどんなものでも消し飛ばされる。

滅亡の力を有した公爵家のご令嬢。

部長は若い悪魔の中でも天才と呼ばれるほどの実力の

持ち主ですからね」

 

と、主をほめたたえるように木場は言う。

 

「別名『紅髪(ベニガミ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)

と呼ばれるほどの方なのですよ?」

 

うふふと笑う朱乃さん。

 

なんと物騒な二つ名だな。

 

俺はそんな人の眷属ってことになるのか。恐ろしい…。

 

リアス先輩がイッセーの左腕に視線を向ける。

 

「…赤い龍。この間までこんな紋章はなかったはず…。

そう、そういうことなのね」

 

少しだけリアス先輩の目元が驚いているように

 

見えるのは気のせいだろうか。

 

「イッセーが堕天使に勝てた最大の理由が分かったわ」

 

リアス先輩は静かに述べる。

 

「堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器(セイクリッド・ギア)

はただの神器(セイクリッド・ギア)じゃないわ。

それがあなたの敗因よ」

 

リアス先輩の言葉には怪訝そうに片方の眉を吊り上げる。

 

「『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』.神器(セイクリッド・ギア)の中でもレア中のレア。籠手に浮かんでいる赤い龍の紋章がその証拠。あなたでも名前ぐらいは知っているでしょ?」

 

リアス先輩の言葉を聞いて、レイナーレは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ブ、ブーステッド・ギア…。『神滅具(ロンギヌス)』のひとつ…。

一時的にとは言え、魔王や神すらも超える力が得られると言う…あの忌まわしき神器(セイクリッド・ギア)がこんな子供の手に宿っていたと言うの⁉︎」

 

「言い伝えの通りなら、人間界の時間で10秒ごとに持ち主の力を倍にしてくれるのが『赤龍帝の籠手』の能力。最初が一で10秒ごとに力が倍になっていけば、いずれ上級悪魔や堕天使の幹部クラスの力になるわ。そして、極めれば神すらも屠れる」

 

…それがイッセーの力か。とんでもない代物だな。

 

「まぁ、どんなに強力でも時間を要する神器(セイクリッド・ギア)

はリスクも大きいわね。そうそう増大するのを待ってくれる相手なんていないわ。今回は相手が調子に乗ったのが勝敗を決めたようなものね」

 

リアス先輩は釘を打っている。

 

イッセーに近づくリアス先輩。

 

なでなで。

 

リアス先輩はイッセーの頭をなでている。

 

「でも面白いわ。さすがは私の下僕君。やっぱり、イッセーは

面白い子ねもっともっと可愛がってあげるから」

 

フフフと微笑むリアス先輩。いい笑顔なんだけど、ある意味怖いな。

 

リアス先輩は次に俺のベルトに視線を向ける。

 

「ユウスケのベルトも特殊なものよ。過去の対戦で戦いを止めた。

『究極の闇』と呼ばれた戦士の力よ」

 

「馬鹿な、なぜそんなものがこんな所に」

 

「私も驚いたけれど、以前発掘された

とある民族の装飾品の中にベルトが紛れていたようね」

 

究極の闇?物騒な呼び名だな。

 

戦争を止めた?そんなすごい力なのか。

 

「今はまだそれほどの力は無いようだけれど、

いずれ同等の力を手に入れるはずよ」

 

「リアス先輩」

 

「何?」

 

笑顔のリアス先輩。俺は申し訳なくなって、頭を下げた。

 

「すみません。あの時、俺がアーシアを助けに行くって言った時に

リアス先輩が手を貸してくれないからって、すごく失礼なことばかり言って…。でも、リアス先輩は裏で動いてくれていたのに」

 

心底謝りたかった。

 

俺はリアス先輩のことを本当に冷たい悪魔だと思っていた。

 

だから、失礼千万なことを言いまくってしまった。

 

それを心から謝りたかった。そんな俺の頭を先輩は撫でてくれる。

 

いつの間にか、俺は泣いていた。そう、目的を果たせなかったから。

 

「リアス先輩…俺、アーシアを…守ってやれなかった…」

 

「泣くことはないわ。今の貴方達の姿を見て、

誰があなたたちを咎められると言うの?」

 

「ですが、俺は…」

 

先輩が俺の涙を指で救ってくれる。

 

「いいのよ。貴方達はまだ悪魔としての勉強が足りなかっただけ。

ただ、それだけよ。強くなりなさい。これからもこき使うから

覚悟しなさい。私の兵士、ユウスケ、イッセー」

 

「「はい」」

 

俺、これから頑張ってさらに強くなります。

 

みんなの笑顔を守れるようにがんばります。

 

俺は心の中で強く誓った。

 

「じゃぁ、最後のお勤めしようかしらね」

 

途端にリアス先輩の目が鋭くなり、冷酷さを帯びる。

 

リアス先輩はレイナーレに近づく。怯える堕天使。

 

「消えてもらうわ、堕天使さん」

 

冷たい口調だ、殺意がこもってる。

 

「もちろん、その神器(セイクリッド・ギア)もう回収させてもらうけれど」

 

「じょ、冗談じゃないわ!こ、この癒しの力はアザゼル様と

シェムハザ様に」

 

「愛のために生きるのもいいわね。でも、あなたはあまりに

薄汚れている。とてもエレガントではないわ。

そういうの私は許せない」

 

リアス先輩の手がレイナーレへ向けられる。

 

一気に殺す気か。

 

「俺、参上」

 

その時、穴の開いた壁から人影が現れる。

 

神父 フリード・セルゼン。

 

あいつ! いちど逃げたのに帰ってきたのか!

 

「わーお!俺の上司がチョーピンチくせぇ!どうしたものか!」

 

神父の登場にレイナーレが叫ぶ。

 

「助けなさい!私を助ければ褒美でも何でもあげるわ!」

 

「んーんー。天使様から素敵な命令をいただきました。え?

それって、エッチなこともOKなんですか?」

 

「くっ…ふ、ふざけてないで、私を助けるのよ!」

 

怒りに顔を歪ませる堕天使。あせっているように感じられる。

 

いや、焦っている。「人間ごときが私を裏切るなんて事はあってはならない!」なんて思っているのだろう。

 

「あらららららら、俺的には本気だったわけですが…。

つーか、それぐらい、いいじゃないですか、天使様。

だめですか、そうですか。なら、俺は消えますよ。

どう見ても戦況不利マキシマムシュートじゃないですか」

 

フリードは体をクネクネさせながら、ふざけた口調だ。

 

「あ、あなたは神父でしょう⁉︎私を救うべきなのよ!

私は誇り高き堕天使!お前らを」

 

「クズの悪魔に圧倒されている上司なんて願い下げさぁ。

あんた、美人だけど、詰めが甘いっていうか、

頭も弱いよね。逝ってくだせぇ。まぁ、

神様に見放された堕天使様じゃぁ天国にも地獄にも

行けずに無に帰るだけでしょうが。その際はぜひとも

『無の体験』レポートを提出していただけると嬉しいかもしれませんぞ?

あ、無理か。無だもんね。無理だねぇ。無が3つで南無三!

なんてね!あっ、俺は元クリスチャンでした!俺って悪い子ね!」

 

それだけ言うと、興味がなさそうにレイナーレから視線を外した。

 

その行為にレイナーレは絶望的な表情を浮かべる。

 

哀れだ。これが力を求め、暴れ回った堕天使の成れの果てか。

 

フリードは満面の笑みを俺たちに向けてきた。

 

「ユウスケくん、イッセーくん。君達、素敵な能力もってたのね。

さらに興味津々なり。殺しがいがあるよねッッ!

君たち、俺的に殺したい悪魔ランキングトップ5入りだからよろしく。

次に出会ったら、ロマンチックな殺し合いをしようぜ?」

 

ぞくり。

 

冷たいものが俺の背中を伝う。

 

やつは笑顔だが、とんでもない殺意をにじませている。

 

俺たちへの明確な挑戦状。いや、殺害予告だ。

 

「じゃあね!バイバーイ!みんな、歯磨けよ!」

 

手を振ったあと、フリードはその場から素早く姿を消した。

 

なんとなくだが、これからもやつと会いそうな気がする。

 

「さて、げぼくにも捨てられた堕天使レイナーレ。哀れね」

 

リアス先輩のその口調には少しの同情も感じられない。

 

ガクガクと震えるレイナーレ。

 

レイナーレの視線がイッセーに移る。

 

「イッセーくん!私を助けて!」

 

その声は今までの声と違く、

 

恐らく夕麻に扮していたころの声だろう。

 

「この悪魔が私を殺そうとしているの!私、あなたのことが大好きよ!

愛している!だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 

何言ってるんだ。この堕天使は?

 

レイナーレは夕麻を再び演じ、

 

涙を浮かべながらイッセーへ懇願している。

 

「グッバイ。俺の恋。部長、もう限界っす…。頼みます…」

 

それを聞いた途端、堕天使は表情凍らせていた。

 

「…私のかわいい下僕に言い寄るな。消し飛べ」

 

ドンッ!

 

リアス先輩の手から放たれた魔力の一撃は、

 

堕天使を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。

 

 




虚しくも、死んでしまったアーシア

だが、リアスの口から

アーシアを救う方法を知らされる。

そして取り戻される日常

次回第10話「復活」

お楽しみに

感想、評価待ってます!

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  • 仮面ライダーディケイド
  • 忍者戦隊、忍風戦隊、手裏剣戦隊揃い踏み
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