「そんな…俺が……こんなクズに……」
デュエルで敗北した篠田は現実を受け入れられずに固まっている。敗北どころかワンキルかまされた相手が自分が今まで見下してた奴なのもあってショックなのだろうがそんな事は俺の知った事じゃない。
「デュエルは俺の勝ちだ。約束通り今までの清算をしてもらう」
「ふ、ふざけんな!なんでお前カード持ってんだよ!全部奪ったはずだぞ!!」
「そんな事、俺が知るか。さあ清算の時間だ。今まで奪ったカード全て返してもらう。当然焼き捨てたり破り捨てたカードも同様だ」
「は、はあ? なんでお前の言う事なんて聞かないといけないんだよ。あんなの冗談だろ?」
「俺は勝者。お前は敗者。更に言えばお前らがやってきたのは少年法で裁かれないだけの犯罪だし行動を起こしたって事は冗談なんてとっくに超えてるんだよ。逆に俺がやり返したって捕まらないんだぞ? やり返されるのが好みだったりするのか?」
少年院に入れられる可能性はあるしこいつと同じような事をカードにやるつもりは無いけど今の状態なら噛みついてくるだろうな。適当こいてるだけで少し考えればそんな事するはずも無いのに。
「う、うるせえ!今のは運が良かっただけだろ!もう一回だ!」
「何度やっても結果は変わらない。それでもというなら、次は放課後だ。なんなら助っ人でも連れて来いよ」
流石に今からだと時間が押すからそれは避けたい。篠田も虎依も俺を睨みつけて走り去っていった。
「強くなったね。勝俊」
「…なんでお前は残ってんだよ」
「そりゃ私は勝俊の幼馴染だし一緒にいるのは当然でしょ」
「よく言うぜ。俺が死にかけた原因のくせに」
「は? 私は悪くないもん。あんなの事故だよ」
「そんな屁理屈通ると思ってるのか? お前は幼馴染とか言ってるが俺からしたらお前は俺を殺そうとした敵だ。そんな奴に近寄られていい気分になると思うのか?」
「…何? 感じ悪いよ?」
「その原因が何にあるのか考えるんだな。まあお前には一生無理だろうがな」
こいつと並んで歩くなんてまっぴらだ。登校遅刻ギリギリになるまでどっかで時間潰すか。
「あ、待ってよ!」
「付いてくんな。お前といると碌なことが無い」
「何それ。勝俊なんか変だよ? 今までそんな事言わなかったのになんか人が変わったみたい」
「それだけの事をしたって自覚するんだな。さっさと消えろ」
後ろで騒いでる陽菜を無視して俺はこの世界での俺の思い出を掘り起こしに行く。向かった先は俺自身にも繋がる思い出の場所。
「懐かしいな。ここも」
俺が来た場所はこの町が出来てから五十周年の時に作られたらしい公園だ。デュエルが浸透しているせいか所々変わってるけど思い出の中の公園だった。
「ここももうすぐ来なくなるんだよな。見納めってやつか」
俺の記憶でもここは強く残ってる。草木の茂る場所だったからカブトムシを採りに父さんと夜に張り込んでたっけ。面積も広いから鬼ごっこにも丁度良かった。
「全ては、俺が幸福を享受する為」
その為には今の枷を捨てなければいけない。俺が紡いだ思い出も、この世界の俺が受けてきた痛みも。
「……行くか」
少し早い気もするけど、俺は学校に行くことにした。
残っている決着をつける為に。
「おい…来たぜ……」
俺が教室に入った瞬間クラスの空気が変わった。多分篠田の話を聞いたんだろう。次は自分なんじゃないかってビクビクしてるんだろうな。だったら最初からあんな事しなきゃいいのにって話は野暮か?
「おい睦月、もうすぐチャイム鳴るぞ。席付け」
入り口前にいる俺をせっつくように担任の『小暮大貴』が教室に入ってくる。こいつもいじめを黙認してたって意味では同罪だ。
「へいへい、どきますよっと」
「なんだ? 随分生意気じゃないか。篠田を倒したから調子乗っちゃってんのか?」
「耳が早いんだな。篠田がチクったか?」
「お前ももうすぐここからいなくなるからなぁ。最後くらい皆に気前よくカードを配ったっていいんじゃないか?」
「ならあんたがそうなった時もそうするのか?」
「は? するわけないだろ。俺のカードはお前見たいなガキには早いんだよ」
あからさまな反応。いじめはこいつ主導だったのか? だとしたらかなりの屑だぞ。遊戯王の大人は色んな形で屑が出るけどこいつも大概だな。
「じゃあ今日のデュエル実習で決着としようぜ。あんたが俺に勝てばデッキごとくれてやるぜ。でもあんたが負けたら」
「俺が負ける訳無いだろう。いいぞ受けてやる。負けたらお前が受けてたいじめの解決にも協力してやるよ」
「そんなもんいらん。あんたのデッキをよこせ」
「な!そんな事「受けてもらうぜ。それとも怖いのか?」…言うじゃねえか。乗ってやるよ。互いのデッキをかけてな!!」
教師としてはどうかと思うが、思惑通り小暮はデュエルに応じた。デッキ内容は篠田から聞いてるだろうけど、俺のデッキは
「さあデュエルの時間だ。皆対戦の相手を見つけてデュエルするように。そして睦月!今朝言った事を覚えているな?」
昼前最後の授業のデュエル実習は生徒達が学校でカードを公に触れられる機会。しかし今日の実習は別のざわつきを見せた。まあその理由は俺なんだけど。
「分かってるってそう騒ぐなよ。それとも空元気か?」
「その減らず口すぐ聞けなくしてやる。行くぞ!」
「「デュエル!!」」
睦月勝俊
VS
小暮大貴
LP4000
「俺が先攻だ!“激昂のミノタウルス”を召喚!」
獣、鳥獣、獣戦士に貫通効果を付与する獣戦士族。教師だし流石に何かあるはずだけど
「更に装備魔法“デーモンの斧”を装備! これで攻撃力2700だ!」
体育館がどよめく。中にはもう俺は勝てないとかのたまってるが、こんなもの問題にすらならない。てか十一期までカードプールがあるのに未だに四期くらいのカードプールしか確認出来て無いんだけど。
「で、他は?」
「生意気なガキが…カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
篠田よりはるかにマシだけどそれにしても酷い。あのクソッタレには悪いけど手早く終わらせよう。
「俺のターン。速攻魔法“ツイン・ツイスター”を発動。手札1枚を墓地に送ってフィールドの魔法・罠カードを2枚まで破壊する。セットカードを破壊」
伏せは“
「ふんっリバースカードを破壊するのに随分手札を使うじゃないか。篠田の評価も期待出来んな」
「“マジシャンズ・ロッド”を召喚。召喚成功時、デッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれた魔法・罠カードを1枚手札に加える」
「ぶ、ブラック・マジシャン!?」
体育館がさっきより大きくどよめいた。こっちでもブラック・マジシャンは有名なんだな。歴史あるカードか希少か、バニラを入れているのかと馬鹿にするか。
「デュエルモンスターズで話題に出ない事は無い伝説のカード。それをなんでお前如きが!」
「さてね。俺は持ってるカードで戦うだけだ。“黒魔術の秘儀”を手札に加える。手札1枚を墓地に送って“幻想の見習い魔導師”の効果を発動。自身を特殊召喚する。見習い魔導師の効果発動。特殊召喚に成功した場合デッキからブラック・マジシャンを手札に加える。“イリュージョン・オブ・カオス”の効果発動。手札のこのカードを見せる事でデッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれたモンスターを手札に加え、手札1枚をデッキトップに戻す。“マジシャンズ・ソウルズ”を手札に加え手札をデッキトップへ。マジシャンズ・ソウルズの効果発動。デッキからレベル7以下の魔法使い族“守護神官マナ”を墓地へ送り、自身を特殊召喚。手札の魔法・罠カードを墓地へ送ってマジシャンズ・ソウルズの効果、デッキから2枚ドロー」
やばい、ここまでデッキが回ると寧ろ怖くなる。二ビル握ってたら笑うしか無いんだけど?
「ライフ1000をコストに“黒魔術のベール”を発動。手札・墓地の魔法使い族“ブラック・マジシャン・ガール”を特殊召喚」
LP4000→3000
「「「ぶぶぶブラック・マジシャン・ガールゥウウウ!!?」」」
今度は全員が全員同じ反応を返した。五月蠅いな。
「おおおおお前なんでブラマジガール持ってんだよ!それ大会参加者と観戦者にしか配られてない超レアカードだろ!?」
「持ってるって事はそういう事だ。うだうだいうな」
この世界の俺の記憶にも大会観戦に行った記憶が存在してる。まあ兄貴に持ってかれたっぽいけど。
「そんな事はいいバトルだ。ブラック・マジシャン・ガールで激昂のミノタウルスを攻撃」
「は? 激昂のミノタウルスは2700だぞ。返り討ちで「幻想の見習い魔導師の効果発動。自身以外の魔法使い族・闇属性モンスターが戦闘を行うダメージ計算時、このカードをリリースして戦闘するモンスターの攻撃力を2000アップさせる。これでBMGは4000だ」何だと!」
小暮大貴
LP4000→2700
「だ、だがその攻撃力もこのターンまで!その攻撃力じゃ俺のライフを削り切れない!次のターンで“ライトニング・ボルテックス”を引けば逆転だ!」
「何勘違いしてるんだ?」
「な、何がだ」
「俺の手札にはまだ4枚もカードが残ってるのに生き残れるってかんがえるのは早いって」
「な、何を言ってるんだ!マジシャンズ・ロッドでもライフは1100残る。効果破壊のカードだって……ま、まさか全部効果破壊のカードなのか!」
「さっき秘儀とブラマジ入れてたじゃねえか。速攻魔法黒魔術の秘儀を発動。手札のブラック・マジシャンと“マジシャン・オブ・カオス”を融合。“超魔導戦士-マスター・オブ・カオス”を融合召喚!」
超魔導戦士-マスター・オブ・カオス
ATK3000/DEF2500
「攻撃力……3000……?」
「速攻魔法で召喚されたマスター・オブ・カオスのバトルは有効。プレイヤーにダイレクトアタック!!」
「う、うわあああああああああああああああ!!」
小暮大貴
LP2700→0
「俺の勝ちだな」
「そんな……俺が……ガキにすら勝てないなんて……」
小暮は項垂れてるけど、約束は約束。デッキはもらわないと「君たち何をやっている!」こうなるから早く渡して欲しかったんだけどなぁ。
「篠田君から聞きましたよ。アンティデュエルをやっているとね。君が持ち掛けたんだね!」
「そもそもこの教師が生徒にカードをばらまけなんて抜かすからです。カードはデュエリストの魂。それをばらまけなんてまずデュエリストとして可笑しいと思うんですが」
「そ、そんな事を言ったんですか!小暮先生!」
「そ、それは……」
「……取り敢えず授業は一度終わりです。小暮先生、後で校長室に来るように。睦月君も、後日来てもらいます。転校の話も含めて」
「はいはい、分かりましたよっと」
それだけ言い残して体育館を後にする。俺に声をかけるやつは当然ながらいなかった。
ブラマジデッキ調整したから使いたかった。