小暮大貴が校長室に連行された事以外は何事もなく放課後を迎えた。鞄を背負ったと同時に教室の扉が開く。
「睦月!てめえさっきはよくもやってくれたな!今度はぶっ潰してやる!」
予想通りの篠田登場は正に三下そのものだ。笑えないけど。
「よお篠田、ちゃんと来たな。ワンキルにビビッて来ないかと心配しちまったよ」
「その生意気な口ももう開けないぞ。助っ人を呼べって言ったのはお前だ。お望み通り小学生最強の剛力先輩を連れてきたぜ!!」
そんな篠田の後ろに立ってるのは篠田より頭一つデカい小学生。多分六年生だと思うけど170はありそう。そんな名も知らぬ上級生が教室に入り俺の前に立つ。
「お前が剛を泣かしたってヤツか」
「泣かしたかどうかは知らないけど負かしたのは事実だな」
「剛から話は聞いた。お前みたいなのがデュエリストなんて許さねえ。お前が負けたら全てのカードを捨てろ」
予想通りの展開だ。更に言えば二対一とか言うんだろうな。
「お前は助っ人って言ったんだ。タッグデュエルでやるぞ!お前にタッグ相手がいればだけどな!」
「タッグ相手はいらん。ライフはそれぞれっていうのも面倒だしタッグフォースルールでどうだ?フィールド墓地の共有はメリットになると思うが」
「ライフは俺達二人分でやらせてもらう。お前は一人だから一人分だ」
「構わんさ。結果は同じだ」
「お前の負けは変わらないからな!」
虎の威を借る狐と言わんばかりに篠田の威勢は良い。けど虎依の方がそれっぽかったのに腰巾着ポジはお前でいいのか?
グラウンドに出た俺達を待つのは大勢のギャラリーだった。それが俺が負けるのをみて嗤おうとする奴か、ブラマジを見たいミーハーか、いじめっ子が負けるザマを見たいろくでなしか、まあどれでもいいな。
「ライフはどうとでもなるがデッキの枚数は覆しようがない。俺が先攻をもらう」
「そんなの理由にはならない。先攻は俺だ」
タッグフォースルールを理解してるんだろうか。別にいいっちゃいいけど品性を疑うな。
「あっそ。分かったよ」
「「「デュエル!!」」」
睦月勝俊
LP4000
VS
篠田剛
剛力謙介
LP8000
「俺のターン!“閃光の結界像”を召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
初っ端から何が来たかと思えば属性毎に特殊召喚を制限する結界像シリーズだ。篠田から使ってた属性を聞き出して使ってない属性かつ自分が使う属性のモンスターを出したんだろう。このデッキは確かにブラマジだしメインは闇だ。でも
「光が無いなんて言ってないよなぁ。俺のターン、“マジシャンズ・ロッド”を召喚。召喚時効果によりデッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれた魔法・罠カードを手札に加える。手札の“イリュージョン・オブ・カオス”の効果を発動。相手に見せる事でデッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれたモンスターを手札に加え、手札1枚をデッキトップに置く。マジシャンズ・ロッドを墓地へ送り、“合体竜ティマイオス”を特殊召喚」
「待てよ、闇属性は特殊召喚出来ないんだぞ」
「ティマイオスは光属性だ安心しろ。まあ何かしらの罠は仕掛けてるんだろうけどそういうのは踏み抜くと楽しいんでね。バトルだ、ティマイオスで閃光の結界像を攻撃」
「そういうならお望み通りやってやるよ。
「まあこんなもんか。速攻魔法“魂のしもべ”発動。デッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれたカードを1枚デッキトップに置く。カードを1枚伏せてターンエンド」
バーンか次元幽閉とも思ったけどここにいる奴等にそれを期待した俺が間違ってたのかもしれない。それすら高等テクなんだこの世界は。
「俺のターン!俺は“X ヘッド-キャノン”を召喚!バトルだ!X ヘッド-キャノンでダイレクトアタック!」
「
「そ、そんなカードまで……」
「お前!折角の俺のカードを!」
「す、すいません」
タッグフォースルールでも向こうの調子は変わらないらしい。あの様子を見るに上級生の方と篠田の関係はお察しだけどそれがマズいって分からないのかなって。
「早くターンを回せ。それともサレンダーか?」
「お、俺はこれでターンエンド」
「おい!なんで伏せカードのひとつも無いんだよ!」
「だ、だって……」
「っち!使えないやつ!これなら俺一人の方がマシだ」
「まあこのターンで終わるんだけどね初見さん。俺のターン。ドローしたカードは“守護神官マハード”だ。こいつはドローした時、相手に見せる事で特殊召喚出来る」
「いきなり攻撃力2500だと? お前どれだけズルすれば気が済むんだよ!」
唐突に何を言い出すかと思えば見当違いも甚だしい言いがかりだった。こういうのは正論ブチ当てたくなる。
「因みに聞くけどどこがズルだって?」
「だってそうだろ。いきなり出てくる攻撃力の高いモンスター、ミラーフォースなんていう高額カード、さっきのマハードってやつだって何かズルして仕込んだんだろ!」
本当に見当違いだった。しかも質が悪い事にカード宣言を何一つとして聞いて無い。
「ティマイオスは自分フィールドの魔法使い族モンスター、“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれた魔法・罠カードを墓地へ送って特殊召喚出来る。魂のしもべは自分のデッキから“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれたモンスターをデッキトップに置ける。マハードは今言った効果と破壊された場合にブラック・マジシャンを手札・デッキ・墓地から特殊召喚出来る。何一つとしてルールに反したカードは使ってない。オーケー?」
「ふざけんな!だったらそのカードをよこせ!」
「どこをどう聞いたらそうなるんだ?」
「お前みたいなのが持ってたって意味ないんだよ!俺が持ってこそ輝くんだ。カードもそうだって言ってるぞ!」
こいつ話を聞かないどころか俺のカードが俺から離れたいって擬人法持ち出して来やがった。正論言っても無駄なタイプだったけどまあそれを証明するのがこのデュエルなわけで。
「だったらデュエルに勝て。ターンを続けるぞ。永続魔法“黒の魔法陣”を発動。発動処理としてデッキトップ3枚を確認して“ブラック・マジシャン”がテキストに書かれた魔法・罠カードを1枚手札に加え、残りを好きな順番でデッキトップに戻す。イリュージョン・オブ・カオスの効果発動。デッキから“マジシャンズ・ソウルズ”を手札に加え、手札をデッキトップに。“守護神官マナ”をデッキから墓地へ送ってマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚。速攻魔法“黒魔術の秘儀”発動。手札のブラック・マジシャンとイリュージョン・オブ・カオスを融合。“超魔導戦士-マスター・オブ・カオス”を融合召喚。マスター・オブ・カオスの効果発動。墓地の闇属性モンスターであるブラック・マジシャンを特殊召喚。魂のしもべの2つ目の効果、墓地のこのカードを除外してフィールド、墓地に存在する“ブラック・マジシャン”、“ブラック・マジシャン・ガール”、“守護神官マハード”、“守護神官マナ”の種類だけドローする。3種類いるから3枚ドロー。“チョコ・マジシャン・ガール”を召喚。効果で手札の魔法使い族を捨てて1枚ドロー。これだけやればいいか」
「嘘だろ……こんなにまでなるのか……?」
「バトルだ。ブラック・マジシャン、マハード、マスター・オブ・カオスの総攻撃。8000ジャストで終わりだ」
二人の魔術師の魔力弾がいじめっ子コンビに襲い掛かり、それに追い打ちをかけるように魔導戦士の一撃がグラウンドに響き渡る。二人は叫び声をあげるよりも早く吹き飛ばされた。ソリットビジョンだよな?
篠田・剛力
LP8000→5500→3000→0
「俺の勝ちだな。ではお前からも全てのカードを貰おう」
「ふ、ふざけんな!そんな約束してないだろうが!」
「話を聞かなかったのが悪い。第一お前が一方的に言ったんだから俺が勝った時にも同じ事が生じるに決まってるだろ。それとも三本先取にするか?結果は同じだが」
篠田に至っては最早抜け殻同然だ。放っておいても勝手に差し出してくれるだろう。次はこいつの心を折らないとな。なんかムカつくし。
「言っておくがお前が勝ったのだってまぐれだ。ブラック・マジシャンを使ったとしても次は俺が「ああそういうのいいから」はぁ?」
「篠田も同じ事言ってたよ。次は勝つって。その結果がこれだ。ライフを削れないまま負けるのがデフォになる前に諦めとけって」
「てめえ……」
「それでも挑戦するって言うなら次はそのデッキを挑戦料として差し出せ。正直俺より弱いヤツを一方的に嬲るのは趣味じゃないんだ」
「弱い……だと!」
「弱いだろ? モンスター1体、伏せ1枚で終わって何がしたかったんだか。バック破壊カードがあったらどうするつもりだったんだ? 結界像を破壊するカードがあったら? もう少しコンボの一つも考えろ。その程度じゃすぐ潰されるぞ」
「は……ぁ……」
デカい図体がみるみる小さくなっていく。まあコンボ一つ考えられないんじゃプロどころかデュエルアカデミアにすら入学出来ない。中等部からあるけど高等部編入で十分だな。
「それじゃ、日を改めてカードはいただく。逃げんなよ?」
剛力とかいう先輩は何もしてないけど味方した相手が悪かったと諦めてもらう。どうせあと一週間も無いんだ。今までの分代わりに暴れさせてもらおう。
化石調査が無い。