小暮と剛力篠田ペアとのデュエルから四日が経った。その間もデュエルを挑まれては返り討ちにしたりこの世界の俺をいじめていた奴等をデュエルで倒していた。パーフェクトゲームをかましてるのに挑んでくる奴は大抵アンティルールでブラック・マジシャンデッキを狙ってきた。まあ返り討ちにしてデッキを頂いてるんだが。
小暮と剛力、篠田に関しては過去に起こしたいじめやカード強奪が発覚。小暮は懲戒免職処分が下り俺にデッキを渡して学校を去り、剛力もアンティルールで賭けたデッキを俺に渡した。篠田はデッキと俺から奪ったカード、燃やし破り捨てたカードの補填含めて全てを俺に差し出した。もうデュエリストとしてはやっていけないだろう。しかし校長はこれらを条件にいじめを刑事事件としては立件しないで欲しいと頼んできた。面倒事を回避したい校長の気持ちも分かるが、篠田からの補填ではカードの損失分は賄えない。こっちの俺もかなりカードを集めてたようで紛失した中にはレアカードも含まれていた。1枚でもかなりの値段がするのに少なくとも10枚以上は紛失してるから数万は最低でもかかる。失ったカードは再び集めるつもりだからここはがめつく行かせてもらった。
補填分はいじめていた奴等からカードとして回収。足りない分は保護者と話どうするかを決める手筈となった。最初は保護者も難色を示すわ認めないだのうちの子はそんな事しないだの言ってきたが、本人が認めてしまえば第三者の言葉なぞ意味を持たない。何よりいじめていた奴等は同時にブラック・マジシャンデッキを狙っていた奴等が大半。アンティルールで既に敗北して自分のデッキなぞ当に摩ったボンクラだ。アンティルールは法で定められた決闘だしいじめていた奴等は立派に殺人未遂と器物損壊罪の犯罪者。それを表沙汰にしない措置として提示したのが奪ったしたカードの補填分なのでその内訳をどうするかは保護者が顔を突き合わせて考える問題だ。まあ多くは子供のお年玉を崩して補填に充てるだろうが、間違いなく子供の先行きは暗いだろうな。自業自得だから何の罪悪感も無いけど。
そして今俺が何をしているか、気になる兄貴もいるだろう。
「……」
「お前は本当にどうしようもない屑だな。お前が弟という事実が俺を苛立たせる」
はい、
「屑と言われる理由が無いな。参考までにあんたをそこまで憤らせる訳を聞いても?」
「白を切るな。俺の後輩の弟がお前にデッキを奪われたと聞いた。それ以外にもその保護者にもカードの補填を称して金を巻き上げているともな。俺に成敗してくれといった頼みが後を絶たないんだぞ」
兄貴は人望というか問題解決の時に駆り出される。対立した意見をまとめる為にデュエルで決着する時、給食袋が盗まれた際に犯人と思われる人とデュエルして犯人か確かめたりと事欠かない。……犯人をデュエルで決めていいのか?
「あれは元々俺のカードを奪った奴等からカードを返してもらっただけだし、その時に燃やされたり破り捨てられたカードは他のカードだったり無理なら金で補填してもらっただけだ。俺は自分の権利を行使してるだけだっての」
「黙れ、奪ったカードと巻き上げた金を渡せ。母さんを通して全員に帰す」
「正義の味方気どりの兄上に良い事教えてやるよ。人の権利を蔑ろにして他に媚びるような奴は周囲から一番疎まれるんだぜ?」
「お前は他の人が恵まれているから妬んでいるだけだ。そんな事をしたってお前に待ってるのは罪悪感だけだぞ」
「お前の為を思って言ってるんだぞって大概そんな事なくて自分が気持ちよくなりたいから大義名分が得られそうなやつを片っ端から攻撃してるだけなんだよな。ブラック企業の上司が部下を思って行動すると思うか?」
「どこまでも自分の非を認めないんだな。ならデュエルだ。お前が勝てばお前の事はもう何も言わない。だが俺が勝ったら」
「今まで取り返したカードをまた奪われろってんだろ? お前さんってヤツはもう少し人道ってのを学んだ方が良いと思うけどな。だが、あんたには自分のものも賭けてもらう。だってあんたは何も損してないしな」
「ふざけるな!なんで俺が二つも賭けないといけない!」
「よく考えてみ? あんた実は何も賭けてないんだぜ? 何も言わないってのはあんたが明言してるだけで俺以外誰も聞いて無い。あんたがそれを反故にしたって俺がわめくだけで他の人は知らんで通せる。ならやはり物的証拠が欲しい所だよな」
「お前は本当にそれでいいのか?そんな事をやってもまた取り返そうとデュエルし続けるだけなんだぞ」
「奪われた物は取り戻す。立ちふさがるなら叩きのめす。両方やらなくっちゃいけないのが辛い所だよな。だが、俺は既に覚悟を決めている。あんたも俺とデュエルするってなら覚悟を決めろ。生半可な奴等とのデュエルはもう飽きた。賭けるんなら真剣にやれ」
遊びでデュエルするならまず賭けない。俺は遊びでデュエルするならそれはいい事だと思うし、ガチでやるならデッキ構築からガチる。この世界ではその境界がかなり曖昧だ。アンティなんて本来やるもんじゃないし。
「で、どうするんだ? 賭けるってなら今まで俺から奪ったカード全部賭けてもらうぞ。ブラマジガールも当然賭けてもらう」
「……お、俺は」
「はぁ……もういいよ。子供に変な期待した俺が間違ってた。あんたは一生上辺だけのヒーローやってろ」
皆から頼られるとはいえ中学生。義務教育も終わっていない子供に本気なんて無理な話だったんだ。元の世界でも兄貴とは仲が悪かったからかこの兄貴に対しても風当たりが強くなるのはいかんな。
まあ、これでもう変な横槍を入れられる事は「分かった。そのデュエル受けよう」……ほんとかなぁ?
「無理しなくていいぞ。あんたからは本気の覚悟が感じられない。そんなのデュエルした後に反故にするだけだ。無駄なデュエルは遊びでやるから良いんだ。真剣な場で遊び感覚を持ってこられても困る」
「真剣だ。俺が負けたらお前が持ってたカードを返す。それで文句無いんだろ?」
「そうだな。しかし、その後に家族だからって理由でカードを毟るような事は許さない。それも条件だ」
こいつは元の世界でも家族だからって理由で買ってきたジャンプ勝手に読んで変な折り目つけてたからな。今思い出すと腹立ってきた。
証人が必要という結論になった俺達は総合体育館のデュエルスペースに来た。本当にこの世界ってデュエルに関しては事欠かないな。
「これだけいれば証人には困らないだろう。言っておくが今回のデュエルは中学生以上のルール採用でライフポイントは8000だ。始めるぞ」
「ご随意に」
「「デュエル」」
睦月勝俊
VS
睦月大和
LP8000
兄弟喧嘩という名の制裁デュエルが始まった。ギャラリーは兄貴の友人や後輩といった面々と俺とのデュエルで負けてデッキが無くなった馬の骨である。先攻は兄貴になった。
「俺の先攻だ。俺は“魔道化リジョン”を召喚。リジョンの効果で魔法使い族モンスターをアドバンス召喚出来る。魔道化リジョンをリリースして“
闇紅の魔導師 ☆6 闇
ATK1700/2000
兄貴の初動では理想の動き。ギャラリーも盛り上がりヒーローショーみたいだ。さしずめ俺は悪役だな。
「魔道化リジョンはフィールドから離れた場合デッキから魔法使い族通常モンスターを手札に加える。闇紅の魔導師の効果で召喚時に魔力カウンターを2つ置く。そしてこのカードがフィールド上に存在する限り、俺達が魔法カードを発動する度に魔力カウンターが1つ置かれる。そして魔力カウンター1つにつき攻撃力は300アップする」
「つまり今は2300、と」
「それだけなはず無いだろう。“強欲で謙虚な壺”を発動。デッキの上から3枚をめくり、その中から1枚を選んで手札に加え残りのカードはデッキに戻す。“終焉のカウントダウン”を手札に加え、発動!」
OCG次元の人間からすればかなり懐かしいカードがエフェクトを伴って光る。俺達を囲うように円を描く玉はゆらゆらと怪しく揺れていた。
「2000ライフポイントを払い、これより20ターン後、俺はデュエルに勝利する。闇紅の魔導師の効果で合計の魔力カウンターは4つ。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
大和
LP8000→6000
闇紅の魔導師は自身の効果で攻撃力2900となった。なんか涙ぐましい努力ってみると微笑ましいな。これだけやっても妨害札があのセットカードくらいしか無いのが確定してるんだ。手札誘発なんてこの兄貴は持っていない。この世界の俺も持ってなかった。
「俺のターン。まずは永続魔法“憑依覚醒”を発動」
「憑依覚醒? そんなカードお前は持っていなかったはずだ」
「いいや。ちゃんと持ってたさ。このデッキは俺個人としてはかなり気に入ってるんでね。続けるぞ。“
終焉のカウントダウンの二つ目の玉が燃える。静かなスタートとなったこのデュエルは観客には些かつまらないと感じているようだが、俺には関係無い。
「俺のターン。魔法族の里はお前のフィールドに魔法使い族がいれば俺の魔法カードの発動を封じ、逆に魔法使い族がいなければお前は魔法カードが使えなくなるカード。そんなピーキーなカードを使って俺を舐めてるのか?」
「そう言うなら動けばいい。今俺のフィールドには攻撃力1850のカグヤしかいない。まあ憑依覚醒の効果で攻撃力は300上がってるけどね」
「つまり2150というわけか。しかし闇紅の魔導師には敵わない。そしてお前は自分のカードによって首を絞める事になるんだ。魔導戦士ブレイカーの効果発動。魔力カウンターを取り除き、魔法・罠カードを1枚破壊する。伏せカードを破壊」
「バックを破壊して戦闘を確実に通したいんだろうけどそう上手くはいかない。チェーンして
「何だと!?」
これでフィールド支配率は逆転した。まああの程度で優勢もへったくれも無いが、闇紅の魔導師が破壊された事によって兄貴のモンスターはブレイカーだけとなり、憑依覚醒によって1枚ドローして手札も回復出来た。そして相手はまだ魔法を発動出来ない。
「少し悠長だぜ。攻撃反応系と読んだんだろうけどそれじゃあ俺は狩れない。もっと慎重に、もっと苛烈にいかないと」
「くっ……ターンエンドだ」
カウントダウンが進む。まあ17ターンも待つ気なんて無いし、なんならこのターンで決める腹積もりだ。できたらいいな。
「俺のターン。“デーモン・イーター”を特殊召喚。こいつは自分フィールドに魔法使い族がいれば特殊召喚出来る。デーモン・イーターとカグヤを墓地へ送り、デッキから“憑依覚醒-デーモン・リーパー”を特殊召喚」
「デッキから特殊召喚だと!」
「まあある話だろ。デーモン・リーパーにはまだ効果がある。こいつ自身の効果で特殊召喚に成功した時、墓地のレベル4以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚出来る。カグヤを特殊召喚。そして憑依覚醒で1枚ドロー。“憑依装着-アウス”を召喚。2枚目の憑依覚醒を発動。これにより更に攻撃力アップだ」
憑依装着-アウス
ATK1850→3650
憑依装着-ウィン
ATK1850→3650
憑依覚醒-デーモン・リーパー
ATK2000→3800
妖精伝姫-カグヤ
ATK1850→3650
「そんな……全モンスターが3000以上の攻撃力だと……」
「伏せていた速攻魔法“精霊術の使い手”発動。手札1枚を捨ててデッキから“霊使い”、“憑依装着”モンスター、“憑依”魔法・罠カードの内、同名1枚までで2枚を選び1枚を手札に加え、1枚を自分フィールドにセットする。1枚を魔法・罠ゾーンにセットして1枚を手札に。さあお膳立てはこれくらいかな。バトルだ!」
「
「カウンター罠“神の摂理”。相手の発動したカードと同じ種類のカードを手札から捨てて発動。その発動を無効にして破壊する」
「そんな……俺が……負ける……」
「まあそう言う事だ。バトルフェイズ!アウスとウィンでダイレクトアタック!!」
大和
LP6000→2350→0
「うぉおおおおおああああああああああ!!」
「これも真剣勝負なんでね。悪く思うなよ」
これでまた一つ決着が付いた。後一人、あいつを倒す事で俺は解放される。
最近眠りが浅いから思考が死んでる。