常盤台の雷撃王子   作:天駆ける丼

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第0章  転生
プロローグ


やあ皆さん、おはようございます。え?今はこんばんはじゃないかって?そんなのこっちの知ったこっちゃないね。俺は今起きたばっかりなんだから。

 

 

さて、自己紹介でもしておこうか。俺の名前は田中利夫(たなかとしお)。地球という星の日本という国のとあるところに住んでいるしがない高校生だ。周りからはよく変人田中と呼ばれている。失礼な。俺は変人だと言われる覚えはないのだが。

 

 

そんな自称凡人、他称変人の俺の人生は本当に平凡だった。大富豪の子供として生まれたわけではなく、かといって借金まみれでアルコール中毒な父親のもとに生まれたわけでもない。普通の企業の一会社員として働く父親を持ち、特別美人なわけでもない母親から難産というわけでもなく普通に生まれ、普通に保育園から中学までを無事に卒業し、それなりに偏差値の高い高校に入学した。そこで無難に一年を過ごし、二度目の高校生活を迎えようとしたのだが…。

 

 

「思い出せない…」

 

 

なぜか春休みの最終日にコンビニに行ってからの記憶が思い出せないのだ。わけが分からないぜ。

 

 

「で、ここはどこ?」

 

 

まあ記憶のことについてはこの際置いておこう。問題は俺が今存在しているこの場所だ。

 

 

───白、白、白白白白白白。

 

 

上。下。右。左。どの方向を向いても白しか視界に映らない。あたり一面真っ白ってどういうことだよ。目に毒じゃないか。

 

 

「しかしまあ、なんとも奇天烈な空間だな」

 

 

この空間にずっといれば精神がおかしくなるかもしれない。どうにかして脱出する術を考え出さなくては。

 

 

…そういえば、こういう空間って二次創作でよくあるやつだよな。だったら、案外簡単に脱出できるかもしれない。

 

 

「おーい。誰かー。具体的には金髪ロングでグラマラスなお姉さーん」

 

 

というわけで、自分の欲望も兼ねて誰かを呼んでみることにした。

 

 

「呼んだ?」

 

 

おおう、本当に来たよ。ていうか、何の前触れもなく突然目の前に現れたよ。でもまあ、

 

 

「チェンジで」

「…えっ」

 

 

いや、確かに金髪ロングでグラマラスだよ。でもな、なんで顔がそんなにブサイクなんだよ!真っ白なこの空間より目に毒だよ!

 

 

「顔を指定しなかったのは君だよ」

 

 

そうだけれど!確かに指定はしなかったさ!だけど、どうしたらそこまでブサイクに仕上げることができるんだよ!もうそれ神の奇跡だよ!…ん?ちょっと待った。

 

 

「もしかしなくても心読んでる?」

「読んでる」

 

 

なんてこった。プライバシーの侵害だ。あんなコトやこんなコトを妄想することができないじゃないか。

 

 

「いや、妄想の前に聞きたいことがあったんじゃないの?」

 

 

おっとそうだった。話が逸れまくってたよ。

 

 

「ここ、どこ?」

「私の部屋だね」

 

 

え?こんな生活感ない空間で生活してるの?やべ、ちょっと尊敬。

 

 

「へー。で、あんたは誰?…初対面の相手に使う言葉遣いじゃないな。あなたはどちら様でしょうか?」

 

 

とりあえず、目の前の金髪さんに尊敬の念を送りながら、その存在について聞いてみることにした。

 

 

「まず人ではないことは確かだね」

 

 

まあそれは分かる。こんなアンバランスな生物いてたまるか。

 

 

「簡単に言えば、ここに流れ着いたモノ達の願いを叶える存在ってところかな」

 

 

願いを叶える存在。なるほど、じゃあさっきのグラマラス云々は願いとしてカウントされたわけか。ならばもう一つ願いを叶えてもらおうか。

 

 

「あ、それは無理。願いは一人につき一つだから」

「…えっ」

 

 

オーマイゴッド。どういうことだってばよ。じゃあ何?俺はこの空間から出られないの?俺発狂しちゃうよ?

 

 

「それについては大丈夫。この空間からはいずれ弾き飛ばされるから」

「弾き飛ばされるっていうのは?」

 

 

消滅していくってことなら分かるけどな。弾き飛ばされるっていうのはよく分からん。俺はとりあえず金髪さんに聞いてみる。

 

 

「この空間には私しか存在を維持できないようになってるからね。原因はよく分からないけど」

「なるほど。じゃあどこに弾き飛ばされるのかは分かります?できればどのようにして弾き飛ばされるのかも教えてくれると助かります」

 

 

場合によっては消滅よりも性質(たち)が悪いかもしれない。意識を保ったままどこかの空間を永遠にふよふよ漂っていくなんてことはごめんだ。どこぞの究極生命体のように考えるのを止めたくはない。

 

 

「そうだね…。一番まともだったのは、もとの世界に別の存在として生まれ変わる、だったかな」

 

 

生まれ変わる(・・・・・・)…か。なら俺はすでに死んでいるってことか。予想はついてたけど、記憶が全然無いんだよな。もしかして即死?鉄骨が上から落ちてきてグシャッと逝っちゃった感じ?

 

 

「さあ?死因についてまでは知らないよ。私はこの空間から出られないから。あ、でも弾き飛ばされた後は少しなら分かるよ。空間に穴が空いて向こうが見えるからね」

 

 

とにかく自分の死因については置いておこう。俺はまともなのを聞きたかったわけじゃない。

 

 

「一番ひどかったのは?」

 

 

これを聞いておかなければ安心できない。まともなのを聞いたところで自分がそうなるわけじゃないからな。まあ何の安心なのかは自分にも分からないけどね!

 

 

「戦争の真っただ中に飛ばされてそのまま蜂の巣になって即死だね。穴が空いている間に起こった出来事だからびっくりしちゃったよ」

 

 

生まれ変わるのは絶対、というわけじゃなさそうだな。そうならないように願っておこう。

 

 

「もう願いは叶えたはずだけど」

 

 

あんたには願ってねえよ。いるかも分からない神様にだよ。

 

 

「そう」

 

 

中々素っ気ない返事ですこと。あ、そうだ。まだ聞いときたいことがあった。

 

 

「何?」

「漫画やアニメ、小説なんかの世界に生まれ変わった人っています?」

 

 

返答次第では弾き飛ばされるのが楽しみになるぜ。

 

 

「うん、あるよ。生まれ変わる以外に、憑依とかまた違った感じで弾き飛ばされたりもあるね」

 

 

一気にテンションが上がってきた。誰だって漫画やアニメの世界に憧れたことはあるはず。その世界にもしかしたら存在することができるかもしれないのだから、テンションを上げずには入られない。

 

 

「そんなに期待しない方がいいよ。中学生が中二病全開で書いたような残念小説の世界に、なんて可能性もあるから」

 

 

それはちょっと嫌だな。テンションがガクッと下がるようなこと言われちまったよ。

 

 

「…あっ」

 

 

え?何?今まで無表情だったブサイク面に表情を取ってつけたような顔をして、急にどうした金髪さんよ。…自分でも何言ってるのか分かんなかったわ、ごめん。

 

 

「君、もう弾き飛ばされるよ」

 

 

そんなに早く弾き飛ばされるのか。ウサイン・ボ○トもびっくりだよ。

 

 

「じゃ、お別れだね。意識がなくなる感覚が合図だから」

 

 

そ、そんな!まだ心の準備が!…まあ嘘だけど。でもこれでようやく驚きの白さな空間から脱出できるわけだ。

 

 

「もう二度と会うことは無いと思うけど、またいつか」

 

 

最後の礼は忘れずに。これはしっかりしないとね。

 

 

 

 

───段々と意識が薄らいでいく中、最後に見た彼女の顔は、儚く、とても美しかった。

 

 

 

 

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