申し訳ないです。
豪水がナイーブになるという凄まじく珍しい出来事が起こってからまた年月が経ち、俺達はついに最上級生、つまり小学六年生になった。ルームメイトも小さい一年生になり、少しだけ責任感が芽生えてきた。あの時に木田先輩や森田先輩が俺を助けてくれたのも、この小さな責任感からだろうか。
白井も小学五年生に進級し、すぐにまた風紀委員の試験を受けたそうだ。白井曰く、一度適性試験に合格していれば、もう一度適性試験を受ける必要はないらしい。「研修で必ず先輩に認められてみせますの!」って意気込んでたなあ。
風紀委員の試験は一年に四回あるから、年内にもう一度受けに行けばいいじゃないか、と提案してみたが、白井はもっと成長してから挑戦する、と言っていた。成長するって年齢のことを言ってたのかよ。肉体と精神のことだと思ってたよ。
さて、現在俺達は何をしているのか、いや、正確には何をしていたのかというと───
「ぬあああああ!!LEVELが上がってなかったー!!」
───能力測定である。
豪水がLEVEL4のままだったことに対して滅茶苦茶悔しがっている。まあ、そんなに簡単にLEVEL5になれるわけがないんだよな。今も学園都市にLEVEL5は六人しかいないし。
突然だが、LEVEL4という強大な力をどのようにして測定したのかと疑問に思う人は少なくないだろう。なので電撃使いを例にして説明しようと思う。
電撃使いの特徴はなんといっても電気を放出することだ。LEVELが低ければ特に周囲に被害はないのだが、俺のようにLEVEL4になるとそうもいかない。周囲に被害を及ぼすどころか、死人が出てしまう。
能力測定は全力で挑むモノだ。かといってそのせいで死人が出てしまっては元も子もない。そこで統括理事会は、学校が存在している学区や能力研究をしている研究所、さらに能力を利用して初めて研究が成り立つような研究をしている研究所がある学区に、広範囲に被害を及ぼす可能性がある高位能力者を対象とした特別な施設を建てることにした。俺もLEVEL3に到達してからは、その第十三学区の施設に行って能力測定を受けている。ちなみに、第十三学区は主に小学校が集中している学区だ。俺達六年生は、大半が来年から中学校・高校が集中している第七学区に移ることになるが。
「くっそー…。一体何が足りなかったっていうんだ?努力か?うん、きっと努力だろう!そうとなったら早速…!」
「アホ。お前は今日風紀委員の仕事があるんだろ。それに宿題も残ってるし」
いつの間にか豪水が反省点を自問自答して勝手に解決していた。おいおい、今以上に努力してたら宿題をする時間が無くなるだろ。ただでさえお前は風紀委員になってから時間がないってのに。確かに努力は大事だが、宿題を疎かにして先生に怒られたばかりだろうが。「どうして宿題をちゃんとするよう言わないの!?」といった具合でルームメイトの俺まで怒られなくちゃいけないんだぞ。
「あー…そうだった…。くそう」
「俺が先にLEVEL5になってやるから安心しろよ」
俺はニヤリと口角を上げて豪水にそう言う。ちなみに俺もLEVEL4のままです。
すると豪水はムッとした顔でこちらを睨んできた。そんな顔で睨んでも俺の防御力は下がらんぞ。
「ずるいぞ魅琴!」
「風紀委員になったからだアホめ。こっちには時間だけが無駄にあるんだよ」
友達がただの一人もいないからな!…そうだよ六年間ぼっちのままだよ何か文句あるかあぁん!?バトルジャンキー呼ばわりは健在だよチクショー!!
「ぐぬぬぬ…!…あ、そうだ。今日は部屋に戻ってから話があるんだった」
「話?」
決めポーズに続いて何か決める気だろうか。あ、結局決めポーズは廃止になりました。俺や下級生の意見を全く聞かなかったからな!
「能力についてなんだけど」
そりゃまたどうしてだろうか。…ん?今一瞬苦しんでいるような表情をしてたが、気のせいか?まあいいか。
「あっ!と、とりあえず、もう時間だから俺は支部に行くぜ!じゃあな!」
あ、あの野郎!またもったいぶって俺の心に疑問を残しやがった!ああモヤモヤする!
「ったく、あいつは…!」
俺は無駄にもったいぶることが好きな豪水にイライラしながら、豪水が帰ってくるまでの時間をどう潰そうかを考えることにした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
さて、あれから結構長い時間を掛けて考え抜いた結論なのだが…。
「そうだ、白井に電話しよう」
これである。いやー、我ながらひどい結論を出したもんだ。向こうだって研修とかその他もろもろで忙しいのに、俺はそれをガン無視するんだから。
で、実際に電話をしてみたのだが…。
『今は忙しいので後にしてくださいまし』
とだけ言われ、素早く着信を切られてしまった。た、頼みの綱が…ッ!あ、そういえば風紀委員の野外実習の場所って第七学区なんだよな。今、会いに行こうかなとか考えたがそれもできやしないぜ…!
結局何もすることが無くなったので、部屋で一年生のチビッ子達と遊んでやろうかと思って戻ったが、そこにはチビッ子がいなかった。
…あっ。あいつらも友達がいるんだった。
はっはっは。もう笑えてくるぜ。え?涙?そんなモノ流れてないヨ?ほんとだよ?
仕方ないので、スマホを弄りながら豪水の帰りを待つことにした。
「ただいまー!」
豪水が帰ってきた。ふう、やっと帰ってきたか。
「豪水、話しって何だよ」
もう待つのは懲り懲りなので、さっそく豪水に聞いてみる。
「お、そうだったな。えっとな…。能力に関することを話すのは伝えたよな?」
「ああ」
バッチリ伝えてるから。早く言うんだ豪水。今更だが俺は待つのが嫌いみたいだからな。
「俺達はLEVEL5になるために特訓をしてるだろ?けどさ、特訓だけじゃLEVEL5にはなれないような気がするんだ。もっと、こう、何ていうか……LEVEL5として認められるような何かがいると思う」
ふむふむ、なるほど。こいつが何を言いたいのか分かったぞ。つまりだ。特訓し続けていくら地力を上げてもLEVEL5になれる気がしないから、能力を使った強力な技が必要だってことだな。さしずめ…。
「…必殺技か?」
必殺技。原作でいえば『御坂美琴』の『
「…!そ、そう!それだ!必殺技だ!LEVEL5の定義は軍隊を一人で相手にできることだろ!?だから軍隊を一人で壊滅状態に追い込むことができるような、とびきり強力な技を実現することができたら、きっと…!」
うーん、そうは言ってもな。俺は別に問題ないんだが…。
「お前の能力じゃそれは無理なんじゃないか?」
そう、豪水の能力は肉体再生の派生能力、『
「う…。そ、そうだよな…」
冷たく言い放った俺の言葉を受け、どんどん元気を無くしていく。あちゃあ、失敗したかな…。
「おい豪水。お前、LEVEL5になる気、あるのかよ」
俺はここで敢えて厳しく当たる。こいつの努力がこんなところで散るのは見たくない。
「あ、あるに決まってるだろ!」
豪水は悲鳴にも似たような声で叫ぶ。
「だったらもっと努力してみろよ。心臓が再生できるようになるまでだ。お前の努力はそんなに軽いモノだったのかよ」
かなり無茶苦茶なことを言っていると思った。が、豪水の努力の量もかなり無茶苦茶だ。こいつなら心臓の再生だっていつかできるはずだ。
「分かってる、分かってるんだよ…!けど、心臓の再生なんて試す機会がないし、どうしようもないんだよ…!」
…こいつが能力に関することでここまで悩んでいるとは、正直全く思っていなかった。これは一旦落ち着かせて、また冷静に考えた方がいいかもしれない。
「…この話は一旦終わりにしようか。このままじゃ埒があかない」
俺がそう言うと、豪水は小さな声で「ああ…」とだけ呟いた。
───さてさて、一体ここからどうやって立ち直そうか。悩みどころだな。