常盤台の雷撃王子   作:天駆ける丼

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今日は時間に余裕を持って投稿。
土日で書き溜めしてやるぜ…!


『スキルアウト狩り』

白井はもはや変態になるしか道は残されていないのか、と嘆いて早一日。今日は豪水を追跡、もといストーキングを決行する日だ。白井はワクワクして眠れなかったらしい。なんでストーキングで遠足気分になってるんだよ。俺はお前が心底怖いよ。

 

 

今日も普段通り学校から帰ってきた俺は、豪水が風紀委員の仕事から帰ってくるのを待っていた。既に白井はこちらに向かっていて、もうすぐ到着するとのこと。白井がここに来る前に豪水とばったり会ってしまった、ていうのもありそうだな。

 

 

ピーンポーン、とインターホン音が部屋の中に鳴り響く。どうやら白井が到着したようだ。豪水とチビッ子達はインターホンなんて押さないしな。

 

 

「ちょっと待ってろー」

 

 

そう言って玄関の方に向かい、玄関のドアを開ける。するとそこには、何やら気合の入った格好をした白井がいた。

え?具体的に?帽子にサングラス、マスクに目立たない色のパーカーだよ。こいつどんだけ楽しみにしてたんだ…。

 

 

「ごきげんよう、御坂さん」

 

 

優雅に挨拶をしてくる白井。だがその格好では全然締まらない。むしろアホっぽい。

 

 

「その格好は何だ……」

「林田さんに気付かれにくくするためですわ」

 

 

いや、分かる。確かに分かるけど。せめて部屋の中にいるときは帽子とサングラスとマスクは取ってくれ。帰ってきた豪水に気付かれる原因になりそうだ。

 

 

「……上がる時は首から上のモノは取ってくれよ。豪水に怪しまれる」

「あ、それもそうですわね」

 

 

気付いてなかったんかい。

 

 

今日はなんだかアホな子だな、なんてことを言えるわけもなく、白井を部屋の中に招き入れた。後は豪水の帰りを待つのみだが…。

 

 

「あら、案外普通の部屋ですのね。ちょっと期待外れですの」

 

 

お前はどういう風に期待していたんだ。ただの寮部屋に何を求めていたんだ。

 

 

「何か暇潰しができるものはないんですの?」

「ジャンケンしようぜ」

「ふざけてますの?」

 

 

暇潰しがしたいって言ったからジャンケンを提案したのに、何故か怒られてしまった。解せぬ。

 

 

その後も下らない話をしつつ豪水を待っていると、玄関の方からガチャリと音が聞こえた。

 

 

「お、帰ってきた」

「本当ですの?」

 

 

チビッ子達だと、ドアを開けた音と共にドタバタと大きな足音が聞こえてくるからな。まず間違いないだろう。

 

 

「お帰り、豪水」

「お帰りなさいませ、林田さん」

 

 

俺と白井が豪水にそう言うと、豪水がポカンとした顔を俺達に晒した。おー、最近じゃ見れなかった顔だ。

 

 

「……何で白井がここに?」

 

 

豪水がそう聞いてきたので、俺は「遊びに来たんだよ」とだけ伝える。

 

 

「……そっか。じゃあ、また行ってくる」

 

 

豪水はジャージに着替え、そのまま外に出ようとするので、俺は豪水を引き止め、白井と一緒に遊ぼうぜ、と言う。が、

 

 

「ごめん、俺には遊んでる時間なんてないんだ」

 

 

と、昔なら言いそうにもないような言葉を俺達に伝える。やっぱり追跡は必須か…?

 

 

「じゃ」

 

 

豪水はまた行ってしまった。が、隣で白井が怪しく笑う。言っちゃなんだが、すごく気持ち悪い。

 

 

「……さて、行きましたわね。早く私たちも後を追いましょう」

 

 

白井が先導して部屋から出ていく。速い、速いって。俺を置いてかないでくれ。

 

 

「ふっふっふ…。林田さんがいったい何をしているのかを絶対に暴いてみせますの!」

「落ち着け白井」

 

 

なんだからしくない白井についていきながら、俺は豪水を追跡しに向かったのであった。

 

 

 

 

 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 

 

 

 

さて、豪水の後を周りから怪しまれないように追い始めた俺達だが、豪水がいったいどこに向かおうとしているのかが分からない。予測しようにも、当てもなくフラフラしているように見える。秘密の特訓都は嘘だったのだろうか。

 

 

「林田さんの目的が分かりませんわね…。どこに向かおうとしているんですの?」

 

 

どうやら、白井も同じ考えだったようだ。先程までのテンションが嘘のように落ち着いている。何なんだろうこいつは。

 

 

「まあ今は追跡に専念しようか」

「そうですわね」

 

 

とりあえずは追跡を続行しよう。もしかしたらこの行動にも意味があるのかもしれない。

 

 

…だが、いくら追跡したところで、豪水が秘密の特訓をするであろう場所に行こうとしない。今はコンビニに寄っている。あ、あいつ週刊誌の立ち読みを始めやがった。

 

 

「…林田さんは私達を馬鹿にしてますの?」

 

 

白井が少し低めの怒気を孕んだ声でそう呟く。俺もこれに関しちゃ許せそうにない。秘密の特訓?何かと思えば、ただのサボりじゃねえか。

 

 

だがここでいくら怒っても仕方がない。まだ完全下校時間には至ってないから追跡は続行できる。我慢するんだ。

 

 

コンビニで呑気に漫画を読んでいた豪水だが、時折外を確認するような素振りを見せる。何をしてるんだ、あいつは。人間観察か?

 

 

「…むっ。明らかに未成年なのに煙草を吸っているスキルアウトがいますの。取り締まりたいところですが、今は非番ですし、何より林田さんを追跡してるから無理ですわね…」

 

 

煙草を吸いながらコンビニの前を通り過ぎていくスキルアウト。人数は四人。よくもまあ白昼堂々と煙草が吸えるもんだ。警備ロボがすぐに駆けつけてくるだろうに。

 

 

スキルアウトがコンビニを通り過ぎた直後、豪水が急に獲物を狩るような目つきをしてコンビニから出てきた。そしてそのままスキルアウトの後を追いかけ始める。

 

 

「急に動き始めましたわね…。なるほど。当てもなくフラフラしていたのはこのためだった、と」

 

 

白井は大方予想が付いたようだ。確かに、あそこまで露骨に追いかけたら誰でも分かるだろう。

 

 

「林田さんはスキルアウト狩りをしているんですわ」

 

 

『スキルアウト狩り』。これについては俺も詳しいことは知らないが、高位能力者が優越感に浸るために能力をスキルアウトに向けて行使することらしい。その復讐のためにスキルアウトが『能力者狩り』なるモノを行うこともあるとか。

 

 

もし豪水が自己満足のために力を振るっていたりしたら、俺は力づくでも豪水を止めてやる。

 

 

「スキルアウトが路地裏に入って行きましたわ」

 

 

白井が、スキルアウトが路地裏に入っていくのを確認する。すると、豪水もスキルアウトが入っていった路地裏に入っていく。

 

 

「…白井、行くぞ」

 

 

俺達の推測が的中していた。だがそのことで嘆いている暇はない。今優先すべきは豪水だ。

 

 

すぐに路地裏に駆けつけ、見つからないように路地裏を覗き込む。すると、ちょうどスキルアウトが豪水の存在に気付いたところだった。

 

 

「あん?何だてめえは」

 

 

スキルアウトの一人が豪水に少し威圧するように声を掛ける。だが、豪水は何もしゃべらない。

 

 

「おいおい何だよ。だんまりかあ?」

 

 

一番最初に声を掛けたスキルアウトの隣に立っていたもう一人が、ニヤニヤしながら挑発するように声を掛けるが、それでも豪水はしゃべらない。ただただ彼らの方に視線を向けるだけだ。

 

 

「チッ!何もしゃべらねえ。むかつくガキだぜ。ほら、ガキはさっさとどっかに行きな」

 

 

豪水が反応を示さないのを見ると、途端に興味を失うスキルアウト。言葉は乱暴だが、これは彼らなりの優しさだったのだろう。だが、

 

 

「本当にガキなのかどうか───」

 

 

豪水は───

 

 

「試してみろやァ!!!」

 

 

───スキルアウトを全力でぶん殴った。しかも、能力を行使して身体能力を底上げしているようだ。人が殴られて飛ぶなんて光景は初めて見た。

 

 

「は、林田さ───ムグッ!?」

「白井。まだ行くな」

 

 

俺は急いで豪水の元に駆けつけようとした白井を引きとめる。ついでに大声も出しそうだったので口も塞いだ。

 

 

「いいか、よく聞け白井。あいつは毎日こういうことをしてきたんだろう。だがな、あいつは毎日無傷で、疲労もしていなかった。傷が無かったのはあいつの能力のLEVELが高いおかげだと思うが、疲労をしてなかったっていうのは喧嘩にあまり負けていない証拠だ。いくら細胞を活性化できるっていても限界はあるからな。それに、今出たら俺達まで巻き込まれることになるんだぞ。俺達に自己再生ができるか?」

 

 

俺が白井に先程の行動の浅はかさを言い聞かせる。白井は納得していないようだが、理解はしたようだ。

 

 

豪水、頼むから無茶はしないでくれよ。

 

 

俺は豪水の無事を祈りながら、彼らの喧嘩を見守るのだった。

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