常盤台の雷撃王子   作:天駆ける丼

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森田のアニキ、爆☆誕!




『熱い漢、森田』

俺は、能力測定を担当したあのショタコン野郎とは別の研究員に送られて、小学校の寮に戻っていた。

 

 

これで俺も、間接的とはいえ未来の殺人者になるのかな…。10031人だ。外部とか前世だったら世紀の大犯罪だな。ははは…。何だか笑えてくるぜ…。

 

 

「あ、お帰り御坂君」

 

 

上級生のルームメイトの内の一人、木田先輩が俺を出迎えてくれた。

 

 

「………」

 

 

俺は黙ったまま彼の横を通り過ぎようとする。

 

 

「はいちょっと待ったー」

 

 

そう言って彼は俺の腕を引いて引き止めた。今は一人になりたいから、離してくれよ。

 

 

「離して、ください」

「だが断る」

 

 

ネタぶっこんできてんじゃねえよ。返す気力なんて今はないんだよ。

 

 

「ただいまの挨拶ぐらい、ちゃんと言おうね?基本だよ、基本」

「………」

 

 

俺は黙り込んだままだ。木田先輩と話す気になれない。

 

 

 

木田先輩は溜息をつくと、肩を掴んで無理矢理体を反転させて、顔が向かい合うようにした。

 

 

「何があったのか知らないけど、そんなにどんよりされたままじゃこっちも困るんだよね」

 

 

言葉に棘が含まれていた。そりゃそうだ。入寮したばっかりの新人が部屋の空気を乱しているんだ。怒るに決まってる。

 

 

「…すいません」

 

 

木田先輩はまたも溜息をつく。先程よりも大きい。

 

 

「全く…」

 

 

そう言った彼はおもむろに俺の顔に手を伸ばすと、まだ柔らかい小学一年生の頬を鷲掴みし、引っ張り出した。

 

 

「ほーれ、みょーんみょーん」

「あいふふんへふは(何するんですか)」

 

 

俺が抗議するも、先輩は手を離さない。顔が緩み切るからやめてくれ。ブルドッグにはなりたくない。

 

 

「初めて会った時から君は大人びているけど、まだ子供なんだよ?もっと笑って、ほらほら」

 

 

ぐにゃぐにゃにされる俺の頬。笑おうにも笑えない。ていうかあんたも子供だろ。何を年上ぶってやがる。精神年齢ならこっちが上なんだぞ。もっと敬え。

 

 

俺の願いが通じたのか、先輩は鷲掴みしていた頬を離す。あー痛かった。

 

 

「…何か大きな、それも人には言えないようなことを抱え込んでるね」

 

 

俺は思わず目を見開いた。その反応を見ている先輩がとても楽しそうだ。ニッコニッコしている。思わず殴りたくなるほどのイイ笑顔である。

 

 

「驚いた?僕の能力なんだ」

読心能力(サイコメトリー)っていうんだぜ、こいつの能力は」

 

 

木田先輩の背後から、もう一人の上級生である森田先輩がぬっと現れた。読心能力か。どおりで見透かされてるような気がしたんだよな。

 

 

「まあ、心を読みたい物や相手に触れないと発動できないし、読み取れることもアバウトなことばかりだからあまり役には立たないけどね」

 

 

木田先輩は苦笑いしながらそう言う。頬を鷲掴みにしたのはそのためか。こやつ、できる…!

 

 

「ふふっ。最初と比べたらかなり調子が戻ってきてるね」

 

 

そう言われて初めて気付いた。さっきまで落ち込んでいたのが嘘のようだ。

 

 

「君の抱えているモノが凄まじいモノなのはよく分かる。能力を発動した瞬間なんて、思わず声を出しちゃうところだったよ。何ていうか───」

 

 

木田先輩は一息置くと、

 

 

「───まるで、闇みたいだった」

 

 

そう呟いた。その顔はどこか苦々しい。

 

 

「どうして六歳の君がここまで暗いモノを抱え込めるかが分からないほどだ。最初に会った時はこんなモノを抱え込んではいなかった。…研究所で、何があったんだい?」

 

 

木田先輩にそう問われた瞬間、顔を悲痛に歪ませ、声を震わせながらDNAマップの提供を促す田中主任の顔を思い出してしまった。

 

 

自分の顔が歪んでいくのが分かる。どうしてあの時、きっぱりと断らなかったのか。後悔の念が次々と浮かび上がっていく。

 

 

「あー…。思い出させちゃったみたいだね」

 

 

木田先輩が申し訳なさそうに言ってくる。別に木田先輩が悪いわけじゃないのに。そんなに申し訳なさそうにしないでくれよ。

 

 

「ったく、この馬鹿が!またどんよりしちゃったじゃねえか!」

 

 

森田先輩が木田先輩を怒鳴っている。違う、木田先輩は悪くないんだ。俺が全部悪いんだ。責めるなら俺を責めてくれ。

 

 

「ああもう!まどろっこしい!」

 

 

そう叫んだ森田先輩は、腕を高く上げ、握り拳を作る。え、ちょっと、まさか…。

 

 

「ダアラッシャアァッ!!」

「イィッ…!?」

 

 

ゴツン!!という豪快な音が俺の頭から鳴り響く。うおおおお!超絶痛い!この野郎!いたいけな小学一年生になんてことしやがる!

 

 

ぐおおおお…!と唸っている俺を見下ろしながら、森田先輩は口を開く。

 

 

「いいか!お前がどんなモン抱えてんのかなんて知らねえし、知りたくもねえ!大方研究所に汚い大人がいたんだろうよ!だがな、ただ抱え込むだけでウジウジしたって何も始まらねえんだよ!今考えるべきなのは!ただひたすら前に進むことだろうが!!」

「前に進む…こと…?」

 

 

俺は熱く語る森田先輩の発した言葉を口ずさむ。

 

 

「そうだ!俺達はまだガキだ!だから何も考えずに愚直に進んでいくくらいの方がいいんだよ!他のことは大人に任せとけ!」

 

 

そんなのは詭弁だ。俺は心の中でつい悪態をつく。他のことなんて任せられないくらいに大人が屑だったらどうすればいいんだ。

 

 

そんな俺の不満げな顔を見て察したのか、森田先輩は意地が悪そうな笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあ聞くが、お前は今、大人の手を一切借りずに進むことができんのか?」

「う…。そ、それは…」

 

 

痛いところを突かれた。そう、いくら頭が回ろうと、結局俺は子供だ。今の状態で一人何かをやりきることなどほぼ不可能だろう。それほど子供という存在は無力なのだ。

 

 

反論の出来ない俺を見て、森田先輩は言葉を投げかける。

 

 

「まあ、まだ俺達はガキだ。だが、学園都市(ここ)ではガキだけの特権ってモンがあるだろ?」

「特権…?」

 

 

大人が持っていなくて、子供だけが持っているモノ。…そうか、なるほど!確かに、俺達だけの特権は存在する。

 

 

俺が気が付いたのを確認すると、森田先輩は手のひらを上に向け、

 

 

「───そう、超能力だ」

 

 

言葉を発すると同時に能力を発動させる。手のひらからは、発火能力者(パイロキネシスト)特有の炎がメラメラと燃え上がっている。今の森田先輩を体現するかの如き劫火だ。

 

 

「何だかんだ言っても、最後には力が必要だ。大人だって大きな力を振りまわしているだろ?」

「権力、ですね」

「そうだ。大人は俺たちに容赦なく振りまわしてる」

 

 

いつの間にか、俺は森田先輩の言葉をしっかりと聞いていた。案外、彼にはそういう才能があるのかもしれない。

 

 

「だが、子供でも、超能力を鍛えれば大人よりも上の立場に立てる可能性がある。それが…」

「能力者の頂点、LEVEL5…」

「そう、LEVEL5だ」

 

 

森田先輩は不敵な笑みをこぼす。なんだか様になってるなあ。

 

 

「俺はいずれ!LEVEL5になって!発火能力者の頂点に立つ!」

 

 

ドドンッ!!と効果音が付きそうなくらい迫力がある。そのまま勢いでLEVEL5になっちまうんじゃねえかな、この人。

 

 

俺が若干ついていけなくなっていると、森田先輩は不敵な笑みを貼り付けた顔から、真剣さを纏った顔つきになった。その眼には力がこもっている。

 

 

「なあ御坂。俺と一緒にLEVEL5、目指さねえか。そして、大人たちを見返してやろうぜ」

 

 

その真剣な目つきを吸い込まれるように見て思った。学園都市の闇は大きい。だけど、この人の炎なら、それすらも燃やしてしまうかもしれない、と。

 

 

俺は差し出された手を取り、これからを共に歩んでいくことになるであろう先輩と握手を交わした。

 

 

 

 

「…単純だなあ、御坂君」

 

 

 

 

「よぉーし御坂!今から特訓だ!」

 

「え!?今から!?も、もう給食の時間なんじゃ…というかまだ学園都市には来たばっかだから超能力について曖昧なんですけど!ま、まずは座学から!」

 

「バカヤロー!そんなことじゃいつまで経ってもLEVEL5になれやしないぞ!さあくるんだ!」

 

「え、いや、ちょっと!?服引っ張らないでのびるから!ちょ、木田センパーイ!た、助けてー!」

 

 

 

 

「まあ、面白いからいっか」

 

 

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