豪水が風紀委員の適性試験から帰ってきた。が、何やらひどく興奮してる様子。バッタバッタと足音を鳴らしてこちらに向かってくる。まさか、特殊な性癖に目覚めたわけじゃないだろうな。
「聞いてくれよ魅琴!今日の試験会場ですっげー女の子と友達になったんだぜ!」
…なんでこいつは女の子と仲良くなって興奮しているんだ。というか、それはクラス内ではいまだにぼっちな俺に対する当てつけか?あぁん?こっちは授業中に先生に指名されて席を立った時の目線が集中する感覚でストレスが凄いことになってるんだよ。
「ふーん、そっか」
こういうのは話半分に聞いておこう。こいつはどうでもいいことで話が長くなるからな。
「なんだよ反応薄いな…。まあいいや。聞いて驚くなよ?なんとその子はな、
「ほお、そりゃまた珍しいな」
学園都市内で希少価値が高い能力の一つじゃないか。それに、風紀委員にはピッタリの能力だ。犯罪者の取り押さえはもちろんのこと、人命救助も迅速にすることが可能だし、障害物の除去にも役立つ。まあLEVELが高ければの話になるんだけど、その子は風紀委員に志願するくらいだから正義感が強いのだろう。LEVELが低くても何ら問題はないはずだ。
「それでな、その子は俺達より一つ年が下なんだけどさ、名前もまた斬新でさー」
お前の名前も十分斬新だと思うがな。
「白井黒子って名前なんだぜ?聞いたときは思わずオセロかよって突っ込みそうになっちまった」
へー、白井黒子って名前なんだー。確かに斬新だな。うんうん、確かにオセロって言いたくなるお前の気持ちも分からんわけでもない。だがな、そういうことを考えるのは相手に失礼だ…ぞ…?
え?シライクロコ?
ちょ、えええええええええ!?え、おま、白井黒子って!白井黒子って言ったらあのとある魔術の禁書目録ととある科学の超電磁砲に登場する御坂美琴お姉さまLOVEで変態で百合っ百合なですの口調の空間移動能力者じゃねえか!(偏見が入っております)
あの堂々たる変態っぷりは見ていて思わず敬礼をしてしまったほどだぞ!?そんなやつに会ったのか!?
「…どうしたんだ魅琴?なんでそんなにびっくりした顔をしてるんだ?今は驚く要素が皆無だったと思うんだけどなー」
「あ、いや、何でもない。続けてくれ」
いやはや、実にびっくりした。豪水に一本取られちまったよ。
「でな、あの子すげえ優しいんだよ。初対面なのに俺が落としたシャーペンを拾ってくれたんだぜ?今時いないよな、そういうことする奴なんて」
…ん?どういうことだ?白井黒子は変態なんじゃ…。
あ、そうか。白井黒子が変態と化すのは全て御坂美琴絡みじゃん。常盤台中学に入学する前は御坂美琴のことをどうせ高慢ちきな女だー、って初春飾利に言ってたな。
「でも、ペンを渡す時は空間移動を使ってカッコつけようとして失敗してたからドジっ子でもあるな。顔も可愛いし、こりゃ同級生の男子にモテモテなんじゃねえの?」
確かに。普通に考えたら、モテない方がおかしいんだよな。小学校は女子校か?いや、元から百合の気があったのかもしれないな。
なんかすげえ興味湧いてきた。純粋な頃の白井黒子に会ってみたい。しかも俺としては初の原作キャラになるんだよな。
「あ、そうそう。適性試験の結果は一週間後に部屋に届くらしいぜ。楽しみだなー」
「まあ、俺も祈っといてやるよ」
というか、『御坂美琴』が原作で起きる事件に関わるきっかけは全部黒子からの情報なんだよな。是非とも関係を作っておきたい。が、手段がない。どうすればええんや…。
「豪水、もし適性試験に合格しても油断するなよ。四ヶ月間の研修で振り落とされるかもしれないんだからな」
とりあえず、
「それについては心配ないだろ。特訓のおかげで基礎体力はついてるしな!」
「確かにな」
研修については問題なさそうだ。
こいつちゃんと適性試験を受けてきたのか心配だ。デタラメなことを書いてるんじゃないだろうか。
「あ、白井とメアドと電話番号も交換したんだぜ」
…それを早く言えよ!
「チラッと白井の携帯見たけど、全然登録されてなかったんだよな。友達いないんだなー、白井」
それは言わないであげて!
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
一週間後、豪水が言った通り、適性試験の結果が送られてきた。今はその結果を確認しようとしているところだ。
「じ、じゃあ…開けるぞ…」
豪水は緊張しているのか声が震えている。心なしか封筒を持っている手も震えているようだ。
豪水が手に力を込める。ビリビリッと音を立てて封筒が破れた。ゆっくりと中身を取り出す豪水。その頬には汗が伝っている。
何だか見ている俺も緊張してきた。さて、果たして結果は…!
「………ッ!!」
「ど、どうだった?」
豪水が紙を見た瞬間目を見開いて、じーっと紙を見つめ始めた。おい、俺にも見せろよ。気になるだろ。
「…ッ!……ッ!!」
「おい、言語で表せ。俺は木田先輩じゃねえ」
合格か不合格かを身振り手振りで表そうとするなアホ。全然分かんねえよ。
「ご、ご、ご、ご、ご、ご」
コイツの動揺具合にはイライラするモノがあるな。壊れたラジオみたいになってやがる。電気を流したら直るかな?
「ご、合格したあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ぬおおお!!うるせええええ!!耳元で何て音量を出すんだよ!!鼓膜が破れるわどアホ!!
だが落ち着くんだ俺よ。ここは冷静になって豪水を祝福してやるんだ。取り乱しては俺の器の高が知れる。さあ、言うんだ俺。おめでとうって言うんだ…!
「お、おめ「合格!合格した!ほら見てみろよ魅琴!合格って書いてあるぜ!」……」
…何か、もういっか。豪水喜んでるし。
「…はあ。喜んでるところ悪いけど、研修はいつから始まるんだよ」
つい溜息が出てしまった。いやな、だって目の前で奇妙なダンスを踊り始めたんだぞ?テンション上がりすぎだろ。溜息もつきたくなるわ。
「合格っ!合格っ!ごうか…。え?いつから?え、えっと、今度の土曜日からって書いてあるぜ」
自分でやっといて耳を赤くしてんじゃねえよ気持ち悪い。
しかし、今度の土曜から暇になる時が多くなるな。…え?クラスメイトと遊べばいいだろうって?てめえ喧嘩売ってんのかぼっちの底力嘗めんじゃねえよ。
「魅琴!特訓はいつも通りやるからな!」
「分かってるよ」
五年目になる特訓を止めるのは正直言ってあまり考えることができない。もはや習慣っていうレベルじゃなくなっている。やらないと落ち着かないんだよな。
「よし、絶対に風紀委員になってやるぜ!」
「あー。頑張れ頑張れ」
無駄に熱くなってきているな。もうこいつやる気だけで受かりそうな気がする。
あ、ついでに白井黒子を連れてきたら嬉しいなー。…冗談だよ言わせんな恥ずかしい。
さて、時は過ぎて土曜日になった。豪水が研修に行った後にやたらニコニコしながら帰ってきたかと思えば、「すぐに特訓しに行くぞ!」と言い出した。仕方なく特訓場所に行くとそこには───
「よ、よろしくお願いしますの!」
───なぜか白井黒子がいた。
ど、どういうことだってばよ…。
黒子ヒロイン化計画、始動!(キリッ