「でねー、昨日チノくんがねー」
今日はリゼちゃん、千夜ちゃん、シャロちゃんとお茶する日なんだ。お茶のついでにみんなの赤裸々な話も聞いてるの。
「ふふっ、ココアちゃんさっきからチノくんの話ばっかね」
「えっ」
自分では気づかなかったけどそんなに話してたかな・・・。
「チノのことホントに好きなんだな」
「まあ男女一緒に住んでるから特別な感情も抱くわよね」
「そんなんじゃないからー!!」
たぶん私の顔は今、真赤だと思う。でもホントにそんなんじゃないんだよ。チノくんは私の自慢の弟だからつい話したくなっちゃう、それだけだから!
「・・・ココアちゃん、今のままの関係じゃチノくん他の女の子に取られちゃうわよ」
「えっ」
千夜ちゃんが怖いくらい静かな声色で言う。
「・・・確かにチノと仲のいい女子多いよな。私も含めて」
「優しいし気も効くし、まあ、えっと・・・顔も結構かわいいし・・・割とほっとかないんじゃないかしら」
リゼちゃんとシャロちゃんも続くように言った。でもみんなから出てる雰囲気はいつもと全然違う。まさか・・・。
「私の弟に手は出させないから!」
「なっ!?別にそういう意味で言ったんじゃない!!」
「そうよ!あくまでココアのためなんだからね!!」
リゼちゃんとシャロちゃんが顔を真っ赤にして反論する。千夜ちゃんはいつも通り微笑んでるけど顔はいつもより赤い気がする。
「もう!私の弟を貰うならそれ相応の実力がないと認めないからね!」
「お前はチノの父親か」
「というかチノくん、貰われる側なの」
二人からツッコミが入る。でも私は本気。チノくんと付き合うならお姉ちゃんである私を認めさせるような子じゃないと。
「ん~」
「どうした千夜」
千夜ちゃんが何か考えごとしてたみたい。リゼちゃんがそれを見て聞いてるけど何考えてるんだろ。
「確かにチノくんってお嫁さん貰うイメージ湧かないわよね」
お嫁さんを貰うチノくん。それを聞いて私たちはつい想像した。
『昔は皆さん背が高く見えたのに、今じゃ僕の方が高いですね』
『こんな袋も一人で持てます。少しは力持ちになったでしょう?』
『モフモフですね。昔は僕がモフモフされる側だったのでお返しです』
『僕と、結婚してください』
私たちは黙り込んだ。顔も火みたいに熱い。私以外のみんなも同様みたい。
「ま、まあ確かにチノは嫁を貰うって感じはしないな。今は」
「どちらかって言うと婿に貰われる方かしら」
「チノくんは婿にはあげないよ!」
「だからお前は父親・・・いや、この場合母親なのか?」
「ん~。婿っていうより・・・」
千夜ちゃんが静かに口を開いた。
「チノくんがお嫁さん?」
「「「・・・・・確かに」」」
チノくんは見た目が結構女の子みたいだ。私も最初であったころ女の子だと思ってたもん。他のみんなも大体は勘違いするくらいあどけない顔をしてる。
「そういえば、チノくんお料理もお裁縫も得意だったな・・・」
それは私がラビットハウスに来たばかりの話だ。
「夕飯はシチューでいいですか?」
「野菜切るの任せて!」
「いえ、一人で事足りるので座っててください」
トントントンコトコトコト
(チノくん、お料理も上手なんだ)
スッスッシャッサッ
(・・・なんだろう。私より手際がいいような・・・)
「お待たせしました」
「あっ、ありがとう!いただきます!」
「いただきます」
モグモグ
「!!!」
(私が作ったのよりおいしい・・・!!)
「?」
「みたいなことがあったよ・・・」
「完全に戦力外だな」
「男やもめにうじが湧く時代でもないのね」
父の日にチノくんのお父さんのネクタイを作った時も私より手際よく裁縫してたし、なんというか女の子として負けた気分だったよ・・・。
「そういえば私もこんなことがあったな」
そう言って今度はリゼちゃんが語り出した。
「チノ、4番テーブルオーダー入ったぞ」
「分かりました。すぐ用意します」
ヒソヒソ ヒソヒソ
「?」
(お客さんが何か話してる?)
「ねえ、あのカウンターの店員さん可愛くない?」
「ホント!まさに美少女って感じ!」
「!」
(ああいう客の冷やかしは気にしちゃだめだ・・・。気にしちゃだめだ・・・。)
「頭にうさぎ乗せてるのもキュートだよねー」
(えっ!?チノの方!!?)
「私は男子のチノよりも女子らしくないというのか・・・」
ずーんという音が聞こえてくるくらいリゼちゃんは目に見えて落ち込んでいた。
「そ、そんなことないですよ!!先輩はとても気高くてみんなの憧れなんですから!!」
「でもチノに私の愛銃を見せたときもすごくキョトンとされたし・・・」
「そ、それはただ単に趣味が合わなかっただけでは・・・・・」
「じゃあシャロは私とチノの趣味、どっちが女子らしいと思う・・・?」
「え、えっと・・・・・」
さすがのシャロちゃんも言いよどんでる。確かにチノくんは一般的な男子像とはかけ離れた可愛いもの好きだ。大好きなうさぎが寄ってこなくて落ち込んでるのを私は何度も見たことがある。
「そういえば私も・・・」
今度は千夜ちゃんが語り出した。
「うーん」
「どうしました?千夜さん」
「今度の新作和菓子の名前、いくつか候補があるんだけど決まらなくて・・・」
「そうなんですか。じゃあボクにも少し手伝わせてもらえますか?」
「ホント!?助かるわ!」
「それで、どんなお菓子なんです?」
「この桜餅の名前なんだけど」
「候補のお名前は?」
「『天を舞う紅葉と春の使者』か『茜の鎧を纏いし八重桜』の二つで迷ってるの」
「・・・桜餅とは分かりにくそうですね」
「あっ、じゃあチノくんが名前つけてみる?」
「えっ、ボクがですか?」
「うん!」
「えっ・・・と、じゃあ・・・」
「うんうん!」
「モチモチピンクうさぎ・・・・・」
(かわいい・・・!!)
「あの時は負けたと感じたわ・・・。お菓子の名付け親として・・・」
「女子力で負けたんじゃないの!?」
いつも通りシャロちゃんが千夜ちゃんに突っ込む。ホントにチノくんって可愛いものが好きなんだね。
「チノのうさぎ好きは相変わらずだな」
「日ごろからティッピーを頭に乗せてるくらいだもんね」
野良うさぎが多いこの街で育ったからかもしれないけど、チノくんはみんなが認めるうさぎ好きだ。チノくんのお父さんはうさぎ柄のネクタイなんかが好きらしいけど、きっとチノくんも同じなんだろうなぁ。
「うさぎと言えば私も・・・」
最後に話し出したのはシャロちゃんだ。
(今日も元気にバイト中!なぜかうさぎが寄ってくるけど!!)
「・・・・・・・・・」
ジリッ・・・ジリッ・・・
「チノくん・・・。5分経過したわ・・・」
「間合いを測ってるんです・・・。不用意に近づくと逃げられます・・・・・」
(はやくぅ~・・・)
「えっ、えいっ」
「突撃!?」
ドサッ
「! うさぎが逃げません!シャロさんと一緒だからモフモフでき・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
チーン
「シャロさーん!!」
「タスケテ…」
「ちょっと待っててください」
「あ、ありが・・・・・」
ゴロンッ
「だれかたすけてーっ!!」
「♪」
「あの時のチノくんホントに幸せそうだったわ。私は死にかけてたけど・・・」
「シャロのうさぎ嫌いも相変わらずだな・・・」
「私たちがチラシ配ってた間にそんなことがあったんだ」
ラビットハウスパン祭りのチラシを配ってた時にチノくんとシャロちゃんが公園に寝転んでた時があった。仲が良さそうでなんか悔しかったな・・・。
「ん~。やっぱりチノくんの女子力は高いわね」
「・・・もしかしたら私たちより高いんじゃないか」
「お料理もできる。お裁縫もできる。可愛いものが好き。本人もよく可愛いって言われる・・・・・」
指折り数えていくとホントにかわいい要素しかないよチノくん。さすが私の弟だね!さすがなんだけど・・・・・。
「前途多難だな・・・・・」
「うん・・・・・」
「ええ・・・・・」
「はい・・・・・」
負のオーラが周りに見えるくらい、私たちは黙りこくった。
「んー・・・・・」
ココアさん達は友達付き合いで出かけています。その間ボクは何してるかというと。
「むぅ・・・」
家の鏡で自分の姿を確認しています。でも別にナルシストというわけではないです。
「はぁ・・・・・」
ボクはよく他人からかわいいって言われます。お客さんからもココアさんからもよく言われます。嫌というわけではないのですが・・・。
「ちょっとでもいいから男らしくなりたいな・・・・・」
男としては少し複雑です・・・・・。
女子力高い男の子っていいよね!