ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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現在アニメ化してる以降の範囲の話が結構好きで個人的に楽しく書けてます。
もしこの作品を読んで興味を持ってくださった方がいれば是非原作をどうぞ。おすすめです。


旅行編② チノくんとエスコート

 こんにちは。ラビットハウス跡取り息子のチノです。

 ボクは今、卒業旅行を兼ねてココアさんやみなさんと街に旅行に来ています。

 そのはずだったのですが。

 「ココアさんが起きなくて降りそびれたー!」

 「ごめんねチノくん!巻き込んでごめんね!!」

 早速トラブルに見舞われています・・・。

 

 

 「景色がどんどん変わってきます」

 「チノくんは外に夢中だねー」

 列車にもギリギリ間に合い、後は街に着くまで待つのみとなりました。ココアさん特製のサンドイッチをほおばりながら外を眺めています。

 「列車は物心つく前に乗ったきりなので・・・」

 「全部が新鮮なんだねー」

 思えばボクはココアさんが来てから初めての経験が多いです。それだけ自分の世界に閉じこもりきりだったのかもしれません。

 ココアさんのせいで壁がどんどん壊れていってます。

 「・・・もっとみんなでいろんな景色が見れたら」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「家族っぽいかな・・・」

 「・・・・・ぐぅ~」

 「寝てるし!!」

 けっこういい話をしてたと思うのですが。

 リゼさんがチマメ隊と自分は卒業したてで何物にも縛られない自由人と言っていましたが、ココアさんも負けず劣らず自由人です。

 「ちょっとココアさん。寄りかからないでください」

 重力に任せてココアさんの頭がボクの方に傾いてきます。肩にコツンとココアさんの小さな頭が当たりそうです。

 

 ふわりっ

 

 いつも使ってるシャンプーの匂いだろうか。ボクの鼻腔にココアさんの髪の香りが漂った。

 シャンプーなら同じのを使っているはずなのに、全く嗅いだことのない甘い香りだった。

 「・・・・・・・・・」

 瞑想して雑念を振り払います。同居人のココアさんに変な感情を抱いてはいけません。

 「サンドイッチ、早起きして作ったって言ってたっけ」

 ここだけ聞くと姉っぽいです。

旅の最中は共同生活、家族も同然。

だから自分がお姉ちゃんであとは全員妹と弟、と自分で言っていました。

 「リゼさんの言う通り、保護者が必要ですね」

 こんな目の離せない姉がいてたまるもんですか。いつも通りなのでボクは慣れ切っていますが。

 「みんなのために、頑張ってくれたんですね」

 ボクは寝ているココアさんを起こさないように、サラサラした髪を優しく撫でました。

 

 すや すや

 『わぁーお』

 『仲良しさんだー』

 『チノくんが枕にされてる・・・』

 『起こさないようにね』

 『私たちもちょっと寝るかー』

 『家族と言うより、新婚ね』

 『ほほえまー』

 『公然の面前でいちゃつくなよ・・・』

 『じゃあ私たちもイチャつこー』

 『リゼパパー』

 『誰がパパだ!』

 『リゼ先輩静かに』

 

 

 『まもなく到着します。お乗り換えの方は・・・』

 

 

 そういうわけで寝過ごして降りそびれです。春の陽気と電車の揺れとココアさんのコンボは強烈でした。

 「・・・で、どうするつもりですか。おねえちゃん」

 「お・・・お姉ちゃんにまかせんしゃ~い・・・」

 顔を真っ白にして震えながら姉ぶります。さすがのココアさんも堪えているようです。

 「とんだお姉ちゃんがいたものです」

 「今お姉ちゃんって言われても嬉しくなーい!!」

 そう言っている間に列車は無情にも次の駅へと向かいます。

 

 

 ------------------------------

目的の駅で降りそびれたので次の駅で降りることにしました。

 「ごめんねチノくん~」

 「・・・もういいですよ」

 「ぷんぷんしないで~」

 「してないです」

 男児たるもの、人の小さな失敗をいつまでも引っ張るな。そうおじいちゃんに何度も言われました。それに、都会の駅のあまりの景観に圧倒され怒りも忘れてしました。

 「見てください!天井がドームになってますよ!」

 「あはは。見てる見てる」

 こういう景観も木組みの街ではお目にかかれません。降り過ごしたのも悪い事ばかりではないようです。

 「喫茶店もあるよ!ここで次の電車が来るまでお茶しない?」

 「都会の喫茶店は意識と敷居が低いのでマヤさんが警戒しろと・・・」

 「ここまで来といて!?」

 男児なのに情けない話です。

 

 

 リゼさん曰く、トラム(路面電車)を乗り継げば目的のホテルまで行けるそうです。思っていたより近いようで安心しました。

 そういうわけでトラムに乗って、みなさんより一足早く冒険することになりました。

 「ちょっと混んできたね」

 「お互い見失わないようにしないと・・・」

 昼時なので利用者が多いのでしょうか。人の多さも都会ならではです。

 「どこから来たんですか?」

 「木組みの街から」

 ボクを忘れて知らない人と盛り上がっています。フットワークの軽さには感心しますが都会には怖い人も多いと聞きます。少しは警戒心を持ってほしいです。

 そう思っていると。

 ズイッ

 「!」

 ココアさんの近くに男の人が入ってきました。女性が多い木組みの街と違って、都会なので男女比は半々くらいでしょう。珍しくはありません。

 ・・・別に怪しい人と決まったわけではありません。考えすぎでしょう。

 でも。

 「・・・ココアさん」

 「ん?」

 「ちょっとすいません」

 ボクはココアさんの体を他の人たちから遮れるような位置に移動しました。

 別に深い意味はありません。念のためです。

 「・・・ありがと。チノくん」

 「いえ、別に・・・」

 あまり気を利かせすぎてもココアさんを束縛することになります。周りの人にも悪感情を与えるかもしれません。

 でも、一応”男”として勝手に体が動いてしまいました。

 「景色じゃなくてココアさんから目が離せないなんて」

 「あはは」

 でもココアさんはなんとなく嬉しそうでした。

 

 

 「ここから歩いてしばらく行くんだって」

 「ボクから離れないでくださいね」

 「私お姉ちゃんなのに!」

 トラムを降りて人がたくさんいる道を歩きます。さすがは都会、通行人もひしめきあっています。

 ブゥーンッ ブゥーンッ

 (車も多いですね)

 すぐ横に大きな道路があります。都会だけあって色んな車がブンブン走っています。

 そんな様子を見ているとあることに気が付きました。

 「あっ」

 「どうしたの?」

 「ココアさんこっちに」

 よく考えるとココアさんが道路側で歩いていました。確率は低いでしょうけどまさかということもあります。

 「チノくん」

 「はい」

 「ありがとう」

 お礼を言われる事でもないです。男性として当然のマナーです。とおじいちゃんが言っていました。

 「私お姉ちゃんなのに、さっきからチノくんに護られてばっかりだねー」

 「そんなこと・・・。すいません。ボクも早めに気付けばよかったんですけど・・・」

 慣れている男性ならこういうことは早めに自然にできるのでしょう。自分の未熟と経験のなさが恨めしいです。

 「そんなことないよ」

 ココアさんはいつも通り褒めてきてくれます。

 「チノくん、ちょっとカッコイイよ」

 「・・・ありがとうございます」

 顔が熱い。

 普段弟扱いされているので急にそういうことを言われると照れてしまう。

 (もっと、自然に・・・)

 この旅を通して、少しでも成長したいな。

 

 しばらく行くと駅にもあったおしゃれな喫茶店が見えてきました。

 「喉も乾いたしここでテイクアウトを。でもチノくんが怖いなら別のお店で・・・」

 「・・・いえ、行きましょう」

 「チノくん・・・!?」

 いつまでも怖がってはいられません。

 少しでも成長する。そう決めたのですから自分の足で歩かないと。

 「よし!お姉ちゃんも付き合うよ!」

 「ココアさん・・・!」

 「お姉ちゃんと一緒に、都会の喫茶店デビューしよ!」

 「・・・はい!」

 でも今は横に一緒に歩いてくれる人がいます。

 早く独り立ちしないとなと思う反面、まだこのままがいいと甘える自分がいるのも事実です。

 

 「いらっしゃいませ!カップルのお客様でいらっしゃいますね!?」

 「「えっ」」

 「それでしたらこちらのカップル割がお得となっております!」

 「・・・じゃあそれで」

 「チノくん!?」

 

 「ありがとうございましたー!」

 思わずカップル割というのを使ってしまいました・・・。ちゃんと男として見られていて少し嬉しいのですが・・・。

 「すいません、ココアさん・・・」

 ココアさんには嫌な思いをさせてしまったかもしれません。そういう関係じゃないのに勘違いされたら気分も悪いでしょう。

 「ううん、いいよ。安く済んだんだし」

 「すいません」

 「謝らないで。私たち、今は家族同然でしょ?」

 ココアさんはいつも失敗でも優しく包み込んでくれます。

 ココアさんと本当の家族になれる人って、この世で一番幸せだろうな。

 「別に勘違いされても嬉しかったというか・・・」

 「?」

 「あっ、ううん!なんでもない!」

 小さなゴニョゴニョ声と都会の喧騒で良く聞こえませんでした。

 でも、ボクと同じことを思っててくれたらな、なんて都合のいいことを考えてしまいます。

 

 

 「この商店街を抜けたらホテルに近づくはず!」

 「人が多いです・・・」

 都会の商店街だけあって、尋常じゃない数の人が行き交っています。気を抜いたら押し流されそうです。

 「どんどん行くよ!」

 ココアさんは持ち前の行動力でずいずい先に進みます。一切物怖じはありません。

 「まってくださ・・・」

 どんどんココアさんが離れていく。

 「まって」

 このまま遠くへ行ってしまうような。

 

 

 「ココア!」

 

 

 「チノくん・・・」

 「・・・・・?」

 「意外と大胆だね・・・」

 「!! す、すみません!!」

 咄嗟に掴んだのはココアさんのスカートの裾でした・・・。これじゃ下手しなくても痴漢でしょう。なんてことを・・・。

 おまけにココアさんを咄嗟に呼び捨てで呼んでしまいました。さっきから失礼なことしかしていません・・・。

 「チノくん、そんなにしょげないで」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・」

 

 スッ

 

 ボクが沈んでいると、手のひらを急に温かいものが包みました。

 「ココアさん・・・?」

 「最初からこうすればよかったんだ」

 気づくとココアさんがボクの手を握っていました。温かく、優しい感触の手でした。

 「でも、そういう仲でもないのに手を繋ぐなんて・・・」

 女性同士ならともかく、ココアさんとボクは一応異性同士です。異性同士で手を繋ぐ人なんて、大体は恋人や実の姉弟くらいでしょう。でもボクとココアさんはそういう中ではありません。

 「大丈夫だよ。私とチノくんなんだから」

 ココアさんは優しい表情をボクに向けてくれます。

 その姿は、弟を手に取る姉のようでした。

 「それとも、イヤだったかな・・・?」

 そう言うとココアさんは少し不安げな表情を浮かべます。いつも一緒なのに、あまり見たことのない珍しい表情でした。

 「今日はいっぱい不安にさせちゃって、ごめんね」

 「・・・・・」

 不安なのはボクだけじゃない。

 ココアさんだって不安だったはずだ。

 なのにボクは守られてばかりだ。

 「大丈夫です」

 そう言ってボクはココアさんの手を改めて握り返しました。

 「!」

 「なんだか急に、周りがキラキラしてるのに気づく余裕が出てきました」

 ココアさんの手をギュウと握る。ココアさんの体温を感じる。

 ココアさんもそれに応えるように握り返してくる。

 「目的地はこっちですよ」

 「あはは、私の方が引っ張られてる」

 ボクはココアさんの手を引いて、導くように先を歩きました。

 

 「でも新鮮な体験ばかりだね。遠回りになっても悪い事ばかりじゃないって思えるよね」

 「最初から降りそびれなければもっと良かったですが」

 「ばっさり!!」

 

 

 「今日からここが私たちの家かー」

 「どう見てもホラーハウスです」

 目的のホテルのロイヤルキャッツに着きました。とても年季の入った建物で、おどろおどろしい雰囲気を醸し出しています。先ほど道を尋ねられた気品のあるご姉妹からも無事を祈られました・・・。

 「リゼさん達は無事でしょうか・・・」

 そう言ってボクは恐る恐る扉を開けました。

 

 そこには。

 

 

 「「「「「おかえりなさーい!!」」」」」

 

 

 「「働いてるー!?」」

 

 いつも通り、従業員をしている皆さんがいました。

 

 「手持ち無沙汰だったからつい・・・」

 「姿勢がなっていません」

 「何で指導されてるんだ!?」

 支配人のようなキリっとした妙齢の女性がリゼさんを指導しています。

 「私達がいない間に何が?」

 どうやら皆さん、体に染みついている働き癖が出てしまったようです。

 「お待ちしておりました。そちらのお客様は恋人同士でいらっしゃいますね」

 「「えっ?」」

 「目が悪くても分かりますよ。仲がおよろしいことで」

 受付のおばあさんに言われて、未だにお互い手を繋ぎ合っていることに気付きました。よく見ると指と指を絡め合っています・・・。

 「違います!私がお姉ちゃんです!」

 「ボクの方がお兄ちゃんです」

 「どっちも違うだろ!!」

 お互い今の状況を誤魔化し合います。ココアさんは顔が真っ赤でした。ボクも顔が熱いです・・・。

 

 とうとう新しい世界に着いてしました。

 今日から皆さんと共同生活が始まります。

 

 




旅行編は青春ジュブナイルものとしてもかなり好きです。
あとエルちゃん、ナツメちゃん、ごめんね・・・。多分後で出番あるから・・・。
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