ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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旅行編③ チノくんとシェアルーム

 ボクは今、ココアさん達と都会へ旅行に来ています。青山さん紹介のホテル”ロイヤル・キャッツ”にてしばらく皆さんと共同生活です。

 それはいいのですが、今現在かなり困ったことが起きています。

 それは。

 「・・・・・・」

 スヤスヤ スースー むにゃむにゃ・・・

 「あの、3人とも・・・起きてください・・・いや、起きたら起きたらで困る・・・」

 ボクの周りにメグさん、リゼさん、シャロさんが寝ていることです・・・。

 

 

 

 「どうにかならないものでしょうか・・・?」

 「うーむ、部屋はこれだけしかないからなー・・・」

 「でも・・・・・」

 ボクとココアさんは遅れてホテルに着きました。その間にリゼさんたちがあらかじめクジで部屋割り(日替わりでシャッフル)を決めてくれていたようです。

 それはありがたいのですが・・・。

 「年頃の男女が一緒の部屋なのはさすがに・・・」

 「私もそうは思うんだが・・・・・」

 大半の部屋が二人部屋となっているので、ボクは女性陣の誰かと相部屋になるほかないという問題を抱えていました・・・。一人部屋もあるにはあるのですが高級スイートルームなのでボク一人が独占するわけにもいきません。

 「私、チノくんと一緒でも構わないよー?」

 「もっと構ってください・・・」

 部屋割りの結果、今日はメグさんと一緒の部屋となっていました。メグさんは同性の友達と一緒に泊まるかのようなワクワク感を抱いているようです。仮にも男のボクに警戒心と言うものはないのでしょうか・・・。

 「大丈夫だよ」

 「そうそう。チノくんなら変なことしないだろうし」

 「そういう問題じゃ・・・」

 メグさんと同時にココアさんも同意してきます。

 「私、チノくんと一緒に住んでるけど全然嫌なことされたことないから」

 「まあチノくんだしね」

 「天地がひっくり返ってもないわね」

 女性陣からは信頼されているようです。むしろ、その信頼と期待が重いです・・・。

 「というか、しないよな?」

 「え?」

 「変 な こ と 、しないよな?」

 マヤさんが機械のような抑揚のない音声で問いかけてきます。

 「もちろんです」

 香風智乃、齢15にしてたくさんの殺気を感じ取りました

 神に誓って断言する他ありませんでした・・・。

 

 

 「じゃあチノくん、今日はよろしくね」

 「は、はい・・・。ふつつかものですが、よろしくお願いします・・・」

 というわけでメグさんと共同部屋になりました。普段ココアさんで慣れてるはずなのに、妙な緊張感があります・・・。

 それだけココアさんを実の家族のように思っていたのでしょうか・・・。

 「ねえ見てチノくん!猫がいるよー!」

 「あっ、ホントだ!」

 よく見ると部屋のベッドに黒い猫がいました。口の周りだけ白く、なんだか甘兎庵のあんこみたいです。

 「なっ、なでてもOKでしょうか・・・?」

 「がんばれチノくん!」

 おそるおそる撫でようとします。毎回、街のうさぎを撫でようとしても逃げられることが多いので少し緊張しています。

 「にゃー」

 「「!?」」

 撫でようとした瞬間、黒猫が鳴きました。思っていたよりも人間のような声だったのでビクッとしてしまいました。

 というかこの声、聞き覚えが・・・。

 「ココアさん・・・。何してるんですか・・・」

 「えへへ」

 物陰からココアさんが出てきました。今日のクジでは一人部屋となっていたと思うのですが。

 「一人部屋、寂しくて来ちゃった」

 「全く・・・」

 「ココアちゃんらしいねー」

 ココアさんは枕を抱えてモジモジしていました。いいかげん高校3年生でしょうに、相変わらずボクより子供っぽいです。

 

 「チノくんのせいだからね」

 「はい?」

 「チノくんと一緒に暮らしすぎて、独りじゃ耐えられない体になっちゃったの」

 「人聞きの悪い!」

 「チノくん、罪な男なんだね」

 「違います!」

 「メグちゃんも気を付けてね。チノくんはうさぎみたいに人の心を奪ってくるから」

 「大丈夫ー。3年間一緒だったからもう慣れたよー」

 「あることないことを!というかココアさんには言われたくないです!!」

 

 

 その後、ボクたち3人は部屋で一緒に遊んでいました。

 「もうこんな時間。そろそろシャワーを浴びた方がいいですね」

 「誰から先に入る?」

 「メグさんお先にどうぞ」

 「じゃあお言葉に甘えるね」

 そう言ってメグさんは先に入っていきました。こういう時はレディファーストと聞いているのでボクもそれに従います。

 「次はチノくん入っていいからね」

 「ココアさんは自分の部屋のシャワーを使えばいいですよね」

 「冷たい!!」

 一人部屋なのでゆっくり入れるはずです。というか、今日の部屋割りではココアさんはスイートルームとなっていたのでここの部屋よりも豪勢なシャワーを使えるはずです。

 「でも、チノくんもあんまり遠慮しなくていいんだよ?」

 「遠慮、ですか?」

 「うん、いつも他のみんなのこと優先してるから。もっと自分を出していいんだよ?」

 そんなつもりはありませんでした。昔からお客さん相手が多いので自然とそうなっていたのでしょうか。

 「私と暮らしてるときも、居候の私より気使ってる感じがするし。自分のやりたいこと、みんなに言ってもいいと思うな」

 周りが女の子ばかりだから気を使っちゃうのかもしれないけど、とココアさんは付け加えます。

 自分のやりたいこと・・・。

 皆さん将来自分のやりたいことを見つけています。その夢のために、自分から動いています。

 ボクの夢はラビットハウスを継いでバリスタになることです。年を重ねれば自然とそうなれるものと思っていました。

 そうだと思っていて、今まであまり自分の足で歩こうとしていなかったかもしれません。

 「そうですね・・・」

 ボクと反対に、自分の足で歩いている人が目の前にいる。

 その人とせめて並び立ちたい。そう思いました。

 「ココアさん、ボクは・・・」

 そう言いかけたときでした。

 

 シャアアアアアァァァ

 

 「「・・・・・・・・・・・」」

 部屋の奥からシャワーの水音が流れてきます。

 今、入っているのは一番シャワーを浴びに行ったメグさんです。

 つまり今メグさんは。

 「チノくん」

 「はっ、はいっ」

 「やりたいことも節度を持ってやらなきゃダメだよ?」

 ボクは首をぶんぶん縦に振って肯定します。ついでに自分の頭の中の妄想を振り払うかのように。

 部屋の中に水音とともに、妙な雰囲気が流れていました・・・。

 

 

 ガラッ

 

 「「?」」

 「うわあああん!ここのシャワー室水しか出ないよー!」

 「「!?」」

 メグさんが泣きながら、タオル一枚だけ羽織ってこちらに向かってきました。

 「チノくん見ちゃダメー!!!」

 ムギュウッ

 「ムグッ」

 ココアさんがその光景を遮るよう、ボクの顔を抱きかかえてきました。ボクの顔全体を、柔らかい感触が襲いました・・・。

 

 

 そんなこんなでもう寝る時間です。ある意味、最大の山場がやってきました。

 「じゃあ、ボクはソファで寝ますので」

 「えー、何で?」

 「いや、何でって・・・」

 理由は言うに及ばずです。付き合ってもない男女が、それも中学卒業したての男女が隣り合って寝るなんて、健全な友人関係としてダメでしょう。

 「こっちの方がきっとあったかいよ?」

 おいでおいで、と言うように手招きしてきます。何で皆さん、ボクに対してここまで警戒心がないのでしょう。いや、警戒されても困るんですけど。

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 今、メグさんは寝間着なのでかなりの薄着です。かなりゆるゆるなので首元の鎖骨などいろいろと見えています。

 それにしても、最近服がきつくなってきたと言っていたけど本当に成長してるんだ。角度によっては服の中の凹凸が見えそうな・・・。

 「――――――ッ!! 大丈夫です!!おやすみなさい!!」

 「えっ?チノくん?」

 そのままボクはソファの掛け布団にくるまりました。でも目が冴えていて、すぐには眠れそうにはありませんでした・・・。

 

 

 「う~ん・・・」

 その夜、ボクは催して目が覚めました。暗い夜中なのでかなり寝ぼけ眼です。

 「トイレ・・・・・」

 お手洗いに行き生理現象を解決します。スッキリしたボクは布団に戻ることにしました。

 「ふぅ~・・・。ムニャ・・・」

 ボフッという音とともに布団にダイブしました。

 あれ、なんだろう・・・。いつもより布団がフカフカしているような・・・。

 そんな疑問が浮かびましたが、フカフカの布団の魔力に包み込まれすぐに夢の世界へと落ちていきました・・・。

 

 「えっ、ふぇぇ~!?ち、チノくんっ!?」

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 「寝ぼけてこっちに来ちゃったんだ・・・」

 「すぅ・・・んぅ・・・」

 (・・・こうして見るとホントに女の子みたいな顔だなぁ)

 「すぅ、むにゃ・・・」

 (でも、意外と男の子らしくがっしりしてる気も・・・)

 「―――――――ッ!!ねよっ!」

 「すぅ・・・・・」

 

 

 

 「突撃準備OK。メグちゃん&チノくんの部屋からですね」

 「楽しんでるな」

 今は朝の5時。起きるには早すぎるけど、寂しんぼなリゼ先輩が早く起きちゃってそのままみんなを起こしに行くことにした。全く、もう大学生なのに意外と子供っぽいリゼ先輩だわ。

 「朝だぞー!」

 「勢い良すぎです!」

 先輩は躊躇なくメグちゃんチノくんのいる部屋を開ける。まだ心地よい眠りの中にいるだろうに。

 そう思って部屋の中を見て見ると。

 「くぅ・・・」

 「すや・・・すや・・・」

 

 「「一緒のベッドで寝てるーーーっっっ!!!???」」

 

 一体昨日の言葉は何だったの!!?

 

 

 「おいチノ起きろ!!うら若き男女が一緒に寝るなんてダメだってお前が言ったんだろ!?」

 流石の先輩も動揺している。そういう私も動揺して震えている。だってまさかあのチノくんが・・・。同級生の女の子と一緒に・・・。

 「んぅ・・・ココアさんしつこいです・・・」

 ガッ

 「ぐえっ」

 「リゼせんぱーい!?」

 チノくんが寝ぼけ心地でそのままリゼ先輩の首に組みかかる。ああっ、リゼ先輩とあんなに密着して・・・!

 「寝ぼけるなー!!!」

 「応戦しちゃった!!」

 そんなチノくんをリゼ先輩が勢いよく振り払う。チノくん、無事かしら・・・。

 「うるひゃ~い」

 ドスッ

 「ふぐぅっ」

 「メグちゃん!?」

 半分眠っている状態のメグちゃんがリゼ先輩の脳天に裏拳をお見舞いした。

 「さっきからなんて波状攻撃だ・・・」

 「長旅の疲れが出ちゃったんでしょうか」

 ソファの方にも掛け布団があるということは、たぶん最初はチノくんがソファで寝てたのね。それで夜中寝ぼけてメグちゃんのいるベッドの方に行っちゃったと。

 「でも健全な男女関係を維持するために、このままにしておくわけには・・・」

 「! シャロ危ない!」

 「へっ?」

 寝ぼけたチノくんの腕が私の方に向かってきたと思うと。

 「ティッピーが二匹・・・」

 「うごぉ!?」

 私はメグちゃんとともにチノくんに抱きすくめられていた。

 (私とメグちゃんの髪をうさぎと思ってる!?)

 そのままチノくんにモフモフされる。

 「ここはモフモフ天国ですか~・・・?」

 「もふもふ~・・・むにゃ・・・」

 けっこう力が強くて、私はチノくんになされるがままだった。割とがっしりしてる胸板の感触と、女の子のそれとは違うかぐわしい体の香りも、抱かれている私はダイレクトに感じることになる。

 「ひ、ひのふんっ、おひへ~・・・」

 「おいチノ起きろっ!!シャロを離せおい!!」

 こうして、朝から私たちは健全な男女でくんずほぐれつすることになった・・・。

 

 

 

 ボクは今、原っぱの草原で大の字になって寝っ転がっていた。生暖かい春の風が肌を撫で、草原の少しこそばゆい感触が心地いい。

 そんなボクの周りに3羽のうさぎが集まって来た。いつもボクの方から近づいても逃げられるので珍しいことだ。

 もふもふっ もふっ

 顔や体にうさぎが触れ、そのモフモフした感触を直接伝えてくる。とても気持ちいい。

 

ここはモフモフ天国ですか・・・?

 

 夢なら、まだ覚めないでほしい・・・。

 

 そう思いながらまどろみの中、目を開けると。

 「!!?」

 ボクの周りにメグさん、シャロさん、リゼさんが纏わりついて寝ていた。

 

 

 「なっ、なっ、何でっ・・・?」

 どうしてこうなったか、全く見当がつかない。メグさんだけならともかく、なぜシャロさんとリゼさんまで・・・!?

 「すやすや・・・」「むぅ・・・」「うぅん・・・」

 ボクの右側にメグさんが寝ていた。その反対の左にシャロさん。そしてボクの体の上にリゼさんが。

 全員体に密着していて、その体の至るところの柔らかさをいやというほど伝えてきていた。右側のメグさんがボクの腕に胸部の柔らかさを、左側のシャロさんがその腿のむっちり感を、上に乗っているリゼさんがその大きな胸をはじめとする体全身の感触をといった具合に。

 おまけに全員パジャマで緩い服装なので色んな所が無防備だった。ちょっと頑張って覗き込めばその服の中が見えそうだ。

 「みっ、皆さん起きてくださいっ、いや、起きたら起きたらで困る・・・」

 全員のその体に拘束され、抜け出そうにも身動きが取れない。このまま皆さんが起きたら大変なことになる・・・。その前に何とかしなくては・・・。

 そう思い四苦八苦していると。

 

 ガチャッ

 

 「みんなー起きてー!!もうっ妹たちは寝坊助だな・・・」

 

 考え得る中で最悪の展開となってしまいました・・・。

 

 

 

 「「「何か言うことは?」」」

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 ボクは腕を組んで仁王立ちしているココアさん千夜さんマヤさんに地面に頭をこすりつけて許しを請うていました。表情は笑顔ですが、怒り顔をした仏像のような果てしない威圧感を纏っていました・・・。

 「み、みんな、それくらいにしといてやれ・・・」

 「そ、そうよ。黙って入った私たちも悪いんだし・・・」

 「一人だけソファなんてかわいそうだし」

 被害者の三人方は優しくも弁護をしてくれていました。真っ先に怒っても不思議ではないでしょうに、優しい人たちです。

 「チノくんなら安心だって期待してたんだけど」

 「変なことしないって約束したよな?」

 「やりたいことも節度を持って、ってお姉ちゃん言ったよね?」

 「ごめんなさいぃ・・・」

 打ち首前の下手人ってこんな気持ちだったのでしょうか・・・。せめて自らで切腹する許しをいただきたいです・・・。

 「はぁ・・・。もう、メグたちがいいなら別にいいよ」

 「えっ」

 「まあチノくんのことだし、不可抗力よね」

 「そうですけど・・・」

 威圧感がシュンと消えました。ありがたいのですが逆にそこまであっさり許しても良いものでしょうか・・・?

 「ダメッ、お姉ちゃんは許さないよ!」

 「ココアさん・・・」

 ココアさんはまだ許してくれそうにないそうです。でもそれはそうでしょう。男が女性をベッドに引き込むなんて、間違ってもあってはいけないことですから・・・。

 「おいココア、いい加減許してやれよ。わざとじゃないだからさ」

 「私たち、もう気にしてないし」

 「むー!」

 フグみたいにむくれています。どうしよう、このままずっと許してくれなかったら・・・。

 「チノくんちょっと」

 「・・・はい?」

 千夜さんが何か話があるようです。ボクは千夜さんの話に耳を貸します。

 「あのね、ごにょごにょ・・・」

 「・・・えっ!?」

 耳打ちでとあるアイディアを貰いました。でも実行するにはちょっと・・・。

 「み、みなさんの前で、そんなこと言うんですか・・・!?」

 「チノくんの口から言わないと多分おさまらないと思うわ」

 そう言われたら・・・。みなさんの前で言うには恥ずかしいですが、こうなった原因はボクにもあります。

 もう覚悟を決めよう・・・。

 「あの、ココアさん・・・」

 「何!?ちょっとやそっとじゃ許してあげないんだからね!」

 まさに怒髪冠を衝く、と言った感じです。ここまで怒ったココアさんを見たことがありません。

 ボクは意を決して、ココアさんの手を握る。昨日ホテルまで来た時のように指を絡めて。

 「チノくん・・・?」

 「ごめんなさい。同居人があんなことしたら気持ち悪くてしょうがないですよね」

 ボクはココアさんの瞳から目線をそらさない。目が光をキラキラ反射していてとても綺麗だった。

 「でも、みなさんと一緒に旅行しようと思ったのも、他の人と一緒の部屋に泊まれたのもココアさんのおかげなんです」

 みなさんの前でこんなことを伝えるなんて公開告白みたいで恥ずかしい。体を流れる血が沸騰しそうになる。

 「ココアさんが他人のボクに、本当の家族みたいに接してくれたから」

 これが千夜さんからの提案です。でも自分でも常日頃から本当に思っていることです。

 これで許してほしいなんて思うなんて浅ましいでしょう。でも、伝えなきゃいけないことです。

 「ココアちゃん、この旅は家族も同然なのよね?」

 「千夜ちゃん・・・」

 「家族だったらお互い迷惑もかけ合うだろ?」

 「一緒に暮らすと、お互いのダメなところだって見えるわよ。でもそれでも、一緒に暮らしたいと思うのが家族でしょ?」

 「私も兄貴とたまに喧嘩するけどさ、いつの間にか忘れたみたいに仲直りしちゃうんだ」

 「えーっと、えーっと、家族なら、いつまでも喧嘩しぱなっしじゃダメだと思う!」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 みなさんが助け舟を出してくれます。いいえ、これがみなさんの本心なのでしょう。

 ココアさんをただの友人としてだけじゃなく、本当の家族のように思ってるから。

 「そんなココアさんとずっと仲違いしたままなんて嫌なんです」

 そして、ボクも同じくらいそう思っています。

 「ココアさんは、ボクの大切な人だから」

 まるで告白みたいだ。恥ずかしい台詞を吐いて体がカッカッと熱い。

 でも、不思議と悪い気はしなかった。

 「・・・もうっ、ホントにしょうがないチノくんだなぁ」

 「ココアさん・・・」

 ココアさんの表情がいつも通りに戻りました。

 「私も強情張ってごめんね」

 「いいえ、そんなこと。当然のことですから」

 いつもの調子に戻りホッとしました。

 でも、こういう喧嘩も本当の家族ならよくするのでしょうか。こんなこと思うのは何ですが、少しだけ嬉しかったり。

 「全く、手のかかる弟たちだよ。やっぱりお姉ちゃんがいないとダメだね」

 「弟じゃないです」

 「姉にしては目が離せなさすぎるわ」

 「保護者が必要だな」

 「口をそろえてヒドイ!!」

 静かなホテルだというのに騒がしくなってしまいました。

 でもいいです。

 これが短い間だけの家族です。

 

 

 

 「千夜ちゃん、ありがとね」

 「何を?」

 「だって、チノくんにアドバイスしてくれたの千夜ちゃんでしょ?」

 「私が提案したのは『ココアさんはボクの大切な人だから』のところだけよ」

 「えっ」

 「あとは全部チノくんのオリジナル。チノくんの本心よ♪」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「ココアちゃん、本当にチノくんに大切に思われてるのね。ちょっと妬いちゃう」

 「・・・ち、チノくんは、わ、私の弟だからね!」

 「はいはい♪ わかってるわ♪」

 

 




ココアちゃんって劇中で全然怒らないですよね。だからあまり違和感がないといいんですが・・・
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