ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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旅行編⑦ チノくんとゲームセンター

 「狙い撃つよ!覚悟!」

 私は今、メグとチノと一緒に都会のゲームセンターのVRゲームをやってる。

 「吹っ飛ばせー!メグー!」

 「がおぉぉー!!」

 メグも戦士衣装でノリノリみたいだ。

 「頼んだぞ!チノ!」

 「はぁぁーっ!!」

 最後にチノが黒い刀で敵を斬り裂いた。

 「焙煎、完了」

 

 「「「我ら最強!チマメ隊!!」」」

 

 

 「チノの衣装、すっげー中二だなー」

 「男の子だもんね。そういう格好したくなる時あるよね」

 「ゲームの!仕様の問題です!!」

 

 

 「でもめっちゃカッコつけてたじゃん」

 「決め台詞カッコよかったよ」

 「うぅ・・・」

 チノが選んだアバターは全身黒ずくめの衣装にボロボロのマントを付けてる、まさにそれっぽい闇戦士みたいなアバターだ。

 「ラビットハウスでもその格好でいれば?」

 「カッコよくて人気出るかもねー」

 「勘弁してください・・・」

 私とメグが恥ずかしがってるチノを茶化す。こういう光景ももう恒例になってるな。

 ・・・・・でも別々の高校入って友達が出来たら、こういうやり取りも少なくなるのかな。

 

 

 「このクエストやりたい!」

 「でも4人以上のパーティーでないと参加できないみたいです」

 クエストの掲示板を見るけど条件を満たしてない。ココアたちは3D酔いした千夜の看病とかでログアウトしちゃったし。

 「ココアたちが戻ってくるの待つか―」

 そんな風に手持ち無沙汰になってると。

 

 シュンッ

 

 屈強な鎧を付けた黒騎士二人がログインしてきた。

 「クエスト一緒にやろう?」

 そう私が聞くとジェスチャーでノリノリで応対してくれた。

 「中身はかわいい人だ」

 

 

 そして私たちは最終ステージにたどり着いた。

 「マヤさん危ない!」

 「そっちに攻撃が・・・!」

 「うわっ」

 ラスボスの攻撃が当たる!もうダメかも・・・。

 

 ゴォッ!!

 

 と思ったら黒騎士の一人が盾になってくれた。

 かっこいい・・・。

 「早く応戦してくださーい!」

 「こんな乙女マヤちゃん初めてだよ!」

 

 「弱点は頭部みたいです。僕が敵の攻撃を牽制するのでメグさんが・・・」

 「でも、私の斧じゃ届かない・・・」

 そう思ってると、黒騎士さん達がかがんでスクラムを組んでくれた。踏み台にしてジャンプしろってこと?

 むっ、無理無理!そんな大胆なこと・・・!

 「私に出来っこないよ!」

バッ

 「飛んでんじゃん!」

 

 

 こうして私たちはラスボスを倒した。

 「ありがとー、黒騎士さん達」

 「ナイスチームワーク!」

 ログアウトして改めてお礼を言おう。

 

 「それほどでも・・・」

 「また会ったね」

 

 「「・・・・・・・・・・・・・」」

  

 「「あーーーーーっっっ!!!」」

 この間のサウナの二人じゃん!!

 

 

 

 「前から何なの?ストーカーなの?」

 「それこっちのセリフ!偶然だから!」

 私はショートと喋りながらクレーンゲームをやってる。あ、いい感じに取れた。

 「はい、取れたから上げる。さっきかばってくれたお礼」

 「何で私の方だって分かったの?」

 なぜかは知らないけど、私はこのショートの方と気が合うみたい。

 「私に執着してるっぽいから」

 「だからそれはそっちじゃん!」

 でもあまり気が合いすぎても、すぐお別れなんだよな・・・。

 せめてホテルが同じだったらよかったんだけど。

 

 「でもさ、このストラップさっきの男の子にあげた方がいいんじゃないの?」

 「え、なんで?」

 男の子というとチノのことだろう。なんでここでチノのことが出てくるんだ?

 「だって恋人同士ってプレゼントあげたりするものだって・・・」

 「だから恋人じゃないってば!!!」

 プールの時から誤解が解けてない!!!

 「でも男女同士で異様に仲も良かったし・・・」

 「ただの友達だって!!そもそも仲がいいのはメグもだろ!?」

 「いやでも、世界は広いから・・・。複数人で付き合ってる人もいるのかなって・・・」

 「私たちそんな不健全な関係じゃないし!!!!!」

 「でも顔真っ赤じゃん」

 「誰のせいだよ!!!」

 

 

 「同じダンス好きだったんだね~」

 「バレエ鑑賞の時からフィーリング感じてたの」

 私は長い髪の子と一緒にダンスゲームで対戦してた。むこうもすごく上手くて引き分けだったけどすごく楽しかったな。

 「あっ、そうだ」

 さっきのクエストで一番スコア出した景品でバッジ貰ってたことを思い出した。

 「あなたたちに貰ってほしいな。今日すごく楽しかったから」

 それに会うのは今日限りかもしれないし、思い出として残したいんだ。

 「ありがと・・・。私もお礼がしたいから、ここに好きな数字書いて?」

 「小切手!?」

 

 「私がもらっていいの?さっきの男の子に上げた方が・・・」

 「? なんで?」

 チノくんのことかな?なんでチノくんのことが出てくるんだろ?

 「恋人同士ってプレゼントあげたりするものって聞くから・・・」

 「恋人じゃないよ!?」

 プールの時からまだ誤解が解けてなかった!!

 「え?恋人じゃないの?あんなに仲いいのに?」

 「ただの友達だよ!?そういう関係じゃないよ!?」

 「じゃ好きじゃないの?」

 「う、うん・・・。好きじゃないってわけじゃないけど・・・・・」

 「好きだったらどんな手段を使おうと物にすべきだよ!本で読んだ!!」

 「その本捨てた方がいいよ!?」

 

 

 

 「この占いゲーム適当です・・・」

 ボクのカフェ・ド・マンシーの方がよっぽど当たります。

 「チノは占いやってたんだ」

 「? マヤさん少し顔赤くないですか?」

 「うぇっ?き、気のせいだろ!」

 気のせいでしょうか?明らかに顔が赤いような・・・。

 「その占い・・・。気になる・・・!」

 先ほどマヤさんメグさんと遊んでいた、気品のある姉妹お二人が興味を持ったようです。

 「ではまず名前を入力して・・・」

 「「神沙 夏明(映月)!」

 「一人ずつお願いします!」

 「豆(マメ)に苗(ナエ)の友達ができたのか。トウミョウ隊だな」

 「美味しいわよね、豆苗」

 「「また変なあだ名付けてる!!」」

 ボクを差し置いて新しい部隊ができてしまいました。

 やはりそろそろ男女のチームは解散なのでしょうか・・・。

 

 「あ、あのさっ。君、二人のそばにいてあげなくていいの?」

 「? マヤさんとメグさんのことですか?」

 短髪の女の子から切羽詰まったように尋ねられました。マヤさんメグさんがどうかしたのでしょうか?

 「だって、3人は恋人同士なんでしょ?」

 「違いますが!?」

 何かとんでもない誤解をされている気が!?

 「あ、あのねっ。私、恋とかまだよくわかんないけど、どっちか一人に決めた方がいいと思う!」

 「決めるとか以前にそういう関係じゃないです!」

 短髪の子が目をグルグルさせて顔を真っ赤にして諭してきますが、断じてそういう関係ではないです!

 「そうだよ!このままだと君、体を真っ二つにされて二人にお持ち帰りされちゃうよ!?」

 「どこ由来の情報ですか!?」

 長髪の子は何かすごい怖いことを行ってきますが、そんなことはされないです!

 多分・・・。

 

 

 「お二人はロイヤルキャッツのお隣の高級ホテルに宿泊中でしたよね」

 「ゴーストホテルだって!?」

 聞き捨てならないな!

 「ばかにするなよ!?うちのホテル想像以上にヤバいんだからな!泊まってみろよナツメ!!」

 「エルちゃんもおいでよ~」

 「いいよマヤ!私達とゲーム勝負で勝ったら遊びに行ってあげる!!」

 「じゃあメグさんにわざと負けなきゃ」

 

 「勝っちゃったよ・・・」

 「せっかく遊びに行けるチャンスだったのに・・・」

 「つい熱くなって・・・」

 「あれ?ナツメちゃんそのキーホルダーどうしたの?」

 「ひみつ」

 「私に隠し事するんだ!じゃあこのバッジのこともひみつ」

 「エルはいじわるだ」

 「また会えるかな・・・あの人たちに」

 「・・・楽しいかもね、この旅行」

 

 「あれ?そういえばあの子たち、あの男の子と同じホテルに泊まってるの?」

「や、やっぱり三角関係なんだよ!将来あの男の子を巡って色と欲にまみれた戦いに・・・」

 「・・・・・エルはちょっと見るテレビの内容を考え直そうか」

 

 

 

 「二人とも素敵な出会いでしたね」

 「チノこそ」

 「一人旅で仲良くなった子がいるって言ってたもんね」

 予定外こそ旅の醍醐味、とココアさんも言っていましたが一期一会の出会いも旅の醍醐味なんでしょう。

 生きていればいろいろな出会いがあります。

 そして別れも・・・。

 「マヤさん、メグさん」

 「ん?」「何?」

 「マヤさんメグさんとの出会いは、一生ボクにとって特別です」

 「えっ、どうしたの突然?」

 「・・・・・・・・・・・」

 ちょっと恥ずかしい台詞ですけど、心からの本音です。

 いつか別れなきゃいけない時になっても、ずっと特別でありますよう。

 「・・・あ、あーっ、写真をプリントする機会発見!」

 「マヤちゃん照れてる~」

 「メグもだろーっ!」

 「二人とも落ち着いて」

 「チノくんも顔真っ赤だよ~」

 「えっ」

 「ほらっ、決めポーズ考えてっ」

 いつかは来るだろうけど、今は考えなくていい。

 「「「我ら永遠!チマメ隊!」」」

 

 

 

 「チーノっ」「チノくんっ」

 「はい、何でしょう?」

 「「ウソつきっ」」

 「えっ?」

 「ほらっ、早くホテル帰らないと!」

 「夕ご飯の時間に間に合わなくなっちゃうよ~」

 「あの二人とも!?さっきの言葉の意味は!?」

 そうやって二人を追いかけていた時の空の色は、怖くなるくらい綺麗だった。

 

 




ナエちゃんたちもかわいらしくていいですよね。

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