ここは喫茶店ラビットハウス。美味しいコーヒーが飲める隠れた名店です。
だけど、今このラビットハウスで少し困ったことが起きています。
それは。
「あっ、リゼさん。おはようございます・・・」
「あっ、ああ・・・。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
この間、新しく入ってきたバイトのリゼさんについてのことです。
リゼさんとの出会いは突然でした。
(さて、コーヒー豆の在庫を確認しておきましょう)
その日、ボクはいつも通り開店前の準備をしていました。
そしてふと、更衣室の前を通りがかると誰か人のいる気配がします。
(おかしいですね、今はボクとおじいちゃん以外いないはずですが)
お父さんは朝から出払っています。おじいちゃんはうさぎなので人の気配がするはずがありません。
(も、もしかしてドロボウ!?)
ボクはビクビクしながら更衣室の扉を開けました。
するとそこには。
「・・・・・えっ?」
「あっ」
ストライプの下着を身に付けた女の人がいました。
「そうか、お前がここの喫茶店の跡取りのチノだったんだな」
「・・・・・・・・」
「今日からバイトとして働かせてもらうことになったリゼだ。よろしく頼む」
気まずい。
さっきの更衣室でリゼさんの下着姿をバッチリ見てしまった。
胸も大きくて、女の人らしいくびれもあった。お尻は大きすぎず、腿も綺麗だった。全体的に引き締まっているけど、出るところはちゃんと出ていた。ようは凄くスタイルが良かった。
頭の中がリゼさんの下着姿に支配されてなかなか目を合わせることができない。
初めてのバイトさんなので印象を良くしておきたいのですが・・・
「・・・・・・?」
ちょっと怪訝な顔でリゼさんがボクの顔を覗き込んできます。リゼさんは仮にも男のボクに半裸を見られて平気なのでしょうか・・・。
「・・・挨拶するときには人の目を見ろ!」
「ひぃっ!?」
リゼさんが突然大きな声を張り裂けました。ボクはビックリして情けない声を出してしまいます。
「よく目線を合わせて!そして大きな声で!おはようございます!」
「えっ、えっ」
「私の後に繰り返せ!おはようございます!!」
「おっ、おはようございますっ!」
綺麗な女の人とばかり思ってましたが。
なんとなくリゼさんの性格が分かりかけてきた気がします。
リゼさんは、なんというかとても覇気がありました。
「か、カフェラテ、カフェモカ、カプチーノ・・・」
「声が小さい!!」
とても力強くて、どちらが先輩か分かりませんでした。
「サー・チノ!!メニュー暗記完了!!!」
「早いです・・・・・」
能力も高くて、とても頼りにはなるんですが・・・
「チノ、この袋ここにおいておけばいいのか?」
「あっ、はい。お願いします(あの重さの袋を一人で!?)」
頼りがいが凄くあって、ボクより男らしいんじゃないかと思うくらいです。
どうやらボクのお父さんの昔の友達の娘さんらしいです。ボク一人じゃ大変だからお父さん経由で紹介してくれたのでしょうか。そう考えると少しうれしくなります。
でも、ただ、今朝目撃したリゼさんの肢体がどうしても頭から離れないのが悩みの種ですが・・・・・・。
そして事件は起こりました。
「リゼさん、お疲れ様です。今日はもうあがってください」
「ああ、明日もまたよろしく頼む」
そう言ってリゼさんが更衣室へ向かおうとした時です。
「・・・・・?チノ、お前は着替えないのか?」
「・・・・・えっ?」
「いや、もう閉店の時間だろう?」
なんだろう。あまり話がかみ合ってない気が・・・・・。
もしや、とふと嫌な予感がよぎります。
「あの、リゼさん・・・」
「どうした?」
「ボクのこと、もしかして女の子だと思ってます・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
嫌な予感が的中しました・・・・・・・・。
「ボク、こう見えても男です・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
静けさがラビットハウス内を支配しました。
「・・・ということは・・・私は、男子に・・・・・下着姿を見られたということに・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・すいませんでした」
ラビットハウスの外まで、リゼさんの絶叫が響き渡りました。
それ以降、ボクとリゼさんはお互い、あまり目を合わせることができなくなりました。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
リゼさんも初日の気迫はどこへやら。頬を赤く染めて目をそらしています。
男顔負けの気迫だと思ってましたが、やっぱり女の子なんだな、と思ったりして。
「あ、リゼさん・・・。今日はもう閉店の時間なので・・・・・」
「あ、ああ・・・・・。また明日からよろしくな・・・・・・・」
リゼさんは着替えに向かいました。もちろんボクとは別で。
「はぁ・・・・・・・・・・・・」
思わずため息が漏れる。
「やっぱり、仲良くできないのかな・・・・・」
ボクは人と接するのが苦手です。だからあまり友達もできたことがありません。
(一人じゃなくなると思ったんだけどな・・・・・)
人数は増えたはずなのに、なぜか寂しさも増えた気がします。
「チノ、これ」
「えっ」
「お、親父がプレゼントしろって」
その次の日、リゼさんが眼帯をしたうさぎのぬいぐるみを持ってきました。
(かわいい・・・)
ボクはお父さんに似てかわいいものが好きなので素直にうれしかったです。
「や、やっぱり、気に入らないか・・・?」
「え?」
「ち、チノは、男子だからな。私も男子にぬいぐるみはどうかと思ったんだが・・・」
「・・・・・・いえ。そんなことないです」
「・・・・・!!」
「とてもかわいくて、うれしいです」
他の男子はよく分からないけど、ボクはかわいいものもうさぎも好きなんです。
なにより、友達からプレゼントをもらったことが、とても嬉しかったんです。
「ありがとうございます。大切にしますね」
ボクはリゼさんに精一杯微笑みかけました。
「そ、そうか。喜んでくれたのなら何よりだ」
リゼさんは顔を赤らめて、後ろを向いてしまいました。
「男子へのプレゼント、あれでよかったんだな・・・・・」
「え?」
「あ、い、いいや。なんでもない!」
何事もなかったかのようにこちらを振り向きました。
男らしいと思っていたリゼさんだけど。
女の子らしくかわいいところもあるんだ。
「さあ、仕事だ。ビシビシ行くぞ!」
「はい!」
ここは喫茶店ラビットハウス。美味しいコーヒーが飲める隠れた名店です。
今、ラビットハウスには、二人の店員がいます。
ボクはそれ以降、リゼさんからもらったぬいぐるみと一緒にベッドで寝ています。
今日もぬいぐるみを連れてベッドに潜ろうとしたのですが、その瞬間気付きました。
(あれ、このぬいぐるみ。縫い目が既製品じゃなさそう・・・?)
そういえば、リゼさんがぬいぐるみを持ってきてくれた日、リゼさんの指に絆創膏が巻いてあった記憶があります。
と、いうことは。
「・・・・・・・フフッ」
リゼさん、すごくかわいいところがあるんだ・・・!
「チノ。ぬいぐるみ、大事にしてくれてるんだな」
「はい、いつもベッドで一緒に寝てますよ」
「そ、そうか・・・」
顔を赤らめてる。かわいい。
「リゼさんのお手製ですからね」
「そ、そうだな・・・・・。えっ!?」
あ、さらに顔が赤くなった。
「いっ、いつ気付いてっ!!!」
「当たってたんですね」
顔が真っ赤で、トマトみたいです。
「大丈夫です。リゼさん、とってもかわいいですよ」
「ううぅ・・・そ、そんなこと言われて喜ぶと・・・・・」
勘違いかもしれませんが、とっても嬉しそうです。
「今日もよろしくお願いします。リゼ教官」
「あーーーっ、もうっ!!!誰でもいいから新人入ってきてくれーーーーーっ!!!!!」
ラビットハウスの外まで、リゼさんの声が響き渡りました。
男の子がいたら乙女なリゼちゃんもっと見れるのかな、見たい、で、こんな感じに