ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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本当にお久しぶりです。相も変わらず構想を練るのに時間がかかってしまいました。
お待たせしました。


チノ君と春のデート

 「見てみてー、チノ君!ティッピーのイースターバニーバージョン!」

 「ティッピーは元からうさぎです」

 ココアさんの手によってウサギのティッピーにうさぎの耳がつけられている。当のおじいちゃんは満足そうだ。

 「外でうさぎ祭りやってたの!ふさわしい格好にしようと思って!」

 そういえばもうそんな時期だった。うさぎの多いこの町では本場並みにイースターを祝うのが風習だ。

 「私たちも外に行って祝おう!レッツ☆イースターフェスティバル!!」

 「ココアさんもうさ耳つける必要あるんですか!?」

 でもかわいい・・・。

 

 

 

 「何でイースターといったらうさぎと卵なのかな?」

 「繁栄の象徴のうさぎが誕生の象徴の卵を連れてきて春の訪れを祝うんです」

 外に出てみると飾りつけをしている家がたくさんある。今年は例年以上に豪華に見える。

 「あと春の女神様はうさぎを従えた姿で現れるらしいです」

 「素敵な言い伝え~」

 春の女神様・・・。

 僕にとっての女神さまは・・・・・。

 「ココアとチノ君じゃない」

 そんな変なことを考えていると後ろから声をかけられた。

 「卵、おひとついかが?」

 「春の女神シャロちゃんだー!」

 フルールイースターモードのシャロさんがうさぎに囲まれていた。

 

 「この卵の模様、自分で描いたの!?」

 「ちょっとこだわってみたの」

 手描きの模様の入った卵の中にはお菓子とチラシがあった。フルールは商売上手です。

 「このワイルドギースの似顔絵、かわいいね」

 「バリエーション増やしたから適当な柄にしただけよ」

 「あ、本物も気になって見に来たみたい」

 「適当言って悪かったわよぉー!!」

 二人の仲は相変わらずみたいだ。

 

 そんなワイルドギースですが口に四つ葉のクローバーを咥えていた。どうやらシャロさんに幸せを届けに来たみたいだ。

 「なに幸せ届に来てるのよ!嬉しくないんだからね!!」

 「シャロちゃん握りしめてる」

 ココアさんの言う通り、シャロさんはワイルドギースから貰った四葉のクローバーをぎゅっと握りしめている。なんだかんだで嬉しいんですね。

 「もうっ!お仕事頑張ってやりゅから!!」

 「良かったですね、ワイルドギース」

 どうやら噛むほどに嬉しいらしい。口ではあんなこと言ってるけど、態度でお互いが好き合っているのが見え見えです。

 「シャロちゃんお仕事頑張ってね」

 「ココアも。チノ君とのデート、楽しんで」

 「「えっ」」

 で、デート・・・・・?

 「えっ、違ったの?二人揃って出歩いてるからてっきり・・・」

 言われてみれば、恋人同士の二人がそろって出かけてたらそれはデートと言ってもいいだろう。

 普段から一緒に出掛けすぎてて、いつも通りのことだと思っていた。

 「いや・・・えっと・・・・・・。う、うん、そんなつもりじゃ・・・・・・」

 ココアさんは寒さで震えるうさぎみたいに縮こまっている。

 いざデートと認識したら恥ずかしくなったみたいだ。

 「・・・・・・・・」

 僕はココアさんの手を握った。

 「!」

 「はい、デートです。初めての」

 想えばココアさんと恋人になって出かけるのはこれが初めてだ。

 初デート、うんと楽しもう。

 「あーもうっ。二人ともお熱いわねー。見てるこっちが恥ずかしいわ」

 「しゃっ!シャロちゃんっ!!」

 「邪魔して悪かったわね。二人ともたっぷり楽しんでね」

 そう言ってシャロさんは駆けていった。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「ココアさん・・・」

 気を悪くしただろうか。未だに顔が真っ赤だ。

 「何だろね・・・。いざデートって思うと」

 ココアさんは若干ぎこちない笑顔でこっちを見てくる。

 「何だか恥ずかしいねっ」

 「・・・・・・・・・」

 ヤバい。

 僕のココアさんが可愛すぎる。

 

 

 (こやつらわしがおることを忘れてるんじゃろうか)

 チノの頭の上に乗っているティッピーは若干居心地が悪かった。

 

 

 「特製たまご饅頭“空と大地に祝福されし金卵”いかがですか~」

 「千夜ちゃんだ」

 どうやら甘兎庵もイースターモードらしい。黒うさぎのあんこもお手伝いしてるみたいだ。

 「はいサービス♪二人とも甘いもの食べて幸せになって♪」

 「ありがとうございます」

 「まさしく春の女神様だね!」

 そんな千夜さんがお団子をくれた。宣伝のためというより友達である僕たちのことを思ってのことなんだろう。本当に優しい人だ。

 「うふふ、デートにはスイーツが付き物だから」

 「「っ!!」」

 自覚はしたつもりだったけど、急に言われるとうろたえてしまう。まだ恋人としての練度が足りないのだろうか。

 「千夜ちゃん・・・私たちちゃんと恋人に見えてる・・・・・?」

 「・・・ええ。とっても仲のいいカップルに見えるわよ」

 「・・・えへへ♪だって、チノ君♪」

 そう言うとココアさんは僕の腕にぎゅうと絡みついてきた。あったかい体温とどことは言わないけど柔らかな感触が神経を通して脳に伝わる。

 春の日差しもあって頬がカァと熱くなるのを感じる。

 「ふふ、ココアちゃんってチノ君にとっての・・・・・」

 「え、何?」

 「いいえ、不躾だから言わないでおくわ」

 千夜さんが何を言いたいか。何となくだけど分かった気がする。

 「チノ君もこれから頑張るのよ」

 「・・・・・はい」

 友達から大切なココアさんを任されてる。

 ずっと、ずっと大事にしないと。

 

 

 「そうだ、ならツッコミの練習もしとかないとね」

 「先行き不安です・・・・・」

 

 

 「子供たちのイースターイベントに協力していて、いわゆる鬼ごっこで・・・。私が卵役だぁー!」

 「今日見た衣装で一番満喫してそう!」

 デートの最中、卵姿のコスプレをしたリゼさんと出会った。どうやら子供たちが卵のリゼさんを追いかけるイベントに参加していたみたいだ。相変わらず子供の扱いがうまいリゼさん。いい先生になりそうです。

 「いいなー!私もその役やりたかったー!」

 「卵になりたいのか!?」

 「リゼちゃんは子供たちにとって楽しいを与える女神様じゃん!」

 「おっ、おおげさだ」

 卵姿のココアさん・・・・・。

 想像してみたら・・・・・。

 「ぷっ」

 「あーっ!もうっ、チノ君!私真剣なんだからね!!」

 「すっすいません、ぷぷっ」

 「また笑ってるー!!」

 ココアさんがポカポカと僕のことをたたいてくる。あまり痛くはないけど。

 「恋人になってもお前らは相変わらずだな」

 確かに、こんな風に仲良く出かけるなんて恋人になる前でもしていたことだ。

 「うん!私とチノ君の愛は永遠だからね!!」

 「いつもと変わらない調子です」

 「ココアらしくていいじゃないか」

 「そうですね」

 恋人になっても変わらないココアさん。とっても安心できる。

 でも・・・ちょっとくらい・・・・・。

 「むー!二人してー!!」

 「すまんすまん。お詫びと言っちゃなんだが、大広場で大人向けのエッグハントのイベントをやってるぞ」

 「ほんと!?行ってみよ、チノ君!」

 「はい、是非」

 リゼさんも相変わらず、友達想いの優しい人みたいです。

 「チノ、しっかりココアをガードするんだぞ」

 「はい、リゼ教官」

 「私は引き続き、追尾兵からの逃走を開始する!」

 そう言ってリゼさんは子供たちを連れて走っていった。

 「リゼちゃん、いい先生になるだろうね」

 「はい、きっと」

 微笑ましい気分になりながら、僕たちは大広場に向かった。

 

 

 

 「街全体に隠されたイースターエッグを見つけるんだね」

 「多く貰えると景品が貰えるらしいですね」

 大広場にやってきた僕とココアさんは早速エッグハントのイベントに参加することにした。

 「どっちがたくさん集められるか勝負しない?」

 「望むところです」

 『位置について、よーい・・・』

 「勝った方がティッピーの一日もふもふ権独占~」

 「ココアさんしか得しないじゃないですかー!」

 

 

 「こうなったらティッピーのためにも頑張りますね」

 あえて普段通らない道を探してみる。木陰の下辺りに・・・。

 「ありました」

 珍しく読み通りだった。旅行先で寄り道の楽しさを学んだせいかもしれない。

 「ココアさんよりたくさん見つけないと」

 なんせ恋人としての威厳があります。それにティッピーをモフモフするなんて・・・・・。

 おじいちゃんをモフモフするなんて・・・・・。

 「おじいちゃんにココアさんのモフモフは渡しませんから」

 「わしのためじゃないのかー!!」

 

 

 「おじいちゃんの声、久しぶりです」

 「エッグハントに集中せい」

 旅行から帰ってきて初めて聞いた気がする。何か新鮮だった。

 「じゃあ行きましょう、ほらまた発見」

 またまた卵を見つけた。この調子ならすぐ集まりそうです。

 「・・・以前よりお前の視野が広がった気がするのう」

 「そうでしょうか?」

 「旅行前よりお前の頭も高くなっておる」

 そうかな。ココアさんも言っていたけど。

自分の目線が高くなったなんて気づかなかった。

 「男子三日合わざれば、か・・・」

 「なんですか急に。おじいさんみたいですよ」

 「わしゃ年寄りじゃ」

 なんだか切なそうな声だった。あ、また卵見っけ。

 「前の低い景色も好きじゃった。なんか寂しい」

 「急に歳食ったみたいな物言いですね」

 「・・・お前、言動がタカヒロに似てきたな」

 そうだろうか。あ、また卵が。

 

 

 「すやすや・・・」

 「ねてる・・・・・」

 勝負を持ち掛けた当の本人は、エッグハントを放棄してたくさんのウサギに囲まれて春の日差し降りしきる公園のベンチですやすや眠っていた。

 「春の女神はうさぎを使えた姿で現れる・・・じゃったかの」

 「こんなぱやぽや女神いてたまりますか」

 

 

 「う・・・さぎ~・・・うっさぎ~・・・・・」

 寝言みたいだ。どんな夢を見ているのか。

 ? 今のフレーズ。どこかで・・・?

 「あっ、初めてお店に来た時の!」

 「女神というより、迷い込んだうさぎじゃな」

 あのころからココアさんはぱやぽやしていた。

 「春・・・暖かさと夜明けを運べる人・・・・・」

 とってもあったかい、春みたいな人だった。

 「僕でもいつか誰かのそんな存在になれるかな」

 「そうなれる日まで見守っておるよ」

 「なった途端いなくなっちゃ嫌ですよ」

 「祖父離れせい」

 どうやら、大人になるのはまだまだ先みたいだ。

 

 

 

 「爆睡しててごめんね!花冠作ってたらぽかぽかと・・・」

 「いつものことなので気にしてないです」

 それに、寝顔がすっごく可愛かったし。

 「この街に来てたくさんの女神様に助けられたのを夢の中で思い返してたよ」

 きっとリゼさん達のことだろう。

 僕もココアさんも、たくさんの人たちに助けられている。

 僕もその人たちを助けられているといいけれど・・・・・。

 「でも一番最初に出会ったのって・・・」

 何かがふんわりと頭に被る感触がしてくる。

 「チノ君だよね。私のうさぎを乗せた春の弟女神」

 ・・・・・どうやら、花冠を乗せられたみたいだ。

 女神って・・・・・僕は男なのに・・・・・。

 でも口角が上がるのを隠し切れない。とっても嬉しかった。

 恥かしくなって駆けだしたくなった。思わず逃げようとしたとき。

 「私の春、逃がさないよっ」

 「ぐえっ」

 いつもの通りに、ココアさんに抱きすくめられた。

 「あ~、このあったかさ久しぶり~。私の春だよ~、モフモフ~♪」

 「ちょっ!ココアさん!公衆の面前です!!」

 あったかくていい匂いでやわらかくて。

 まるで春みたいだった。

 

 

 




ココアちゃんが成長したチノ君の制服仕立て直すエピソードも入れようと思いましたが、キリが悪いのでやめました。いつかどこかで入れたいです。



余談なんですが、ちょっとエッチ多めのオリジナルエピソードってみなさん見たいですか?見たい方はコメント欄などでご意見いただけると嬉しいです。

1/28追記 文章を一部変更させていただきました
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