メグです。今日は4月1日、エイプリルフール。嘘をついてもいい日。
世の中はユーモアあふれる嘘でいっぱいだけど、私は騙されないよ!
「いらっしゃいませー!ラビットハウスは今日から歌って踊れる劇場喫茶にリニューアルしまーす!」
「どえぇえーーーーー!!?」
「こちら歌のメニューです。コーヒー一杯につき一曲歌います」
「すごい!!」
これ気になるな。“私は騙されている”。
「それではチノ君どうぞ!」
そうして出てきたのはアイドルみたいな煌びやかな姿をしたチノ君だった。
最近背が伸びてきたって言ってたチノ君、アイドル衣装も似合ってるな・・・。
って、ダメダメ!チノ君はココアちゃんの彼氏なんだから!!
「実は~ティッピーはしゃっべ~れるんです♪」
『お前は騙されている~♪』
「腹話術じゃーな~いんです♪」
『真実と向き合え~♪』
「なんて斬新な歌!これは大繁盛するよ!!」
「エイプリルフールって気づけ!」
「メグは騙されやすいな~」
笑いながら出てきたのは親友のマヤちゃん。テーブルの陰に隠れていたんだ。
「楽しいジョークだったけど、もう引っかからないんだから」
「あーそうそう。私、ここのバータイムで働くことになったんだ」
当のマヤちゃんはぶかぶかのバーテンダーの服を着て決めていた。
「そんなの聞いてないよぉー!!」
「また引っかかってる」
気を付けてたのにたくさん騙されちゃった。もう騙されないんだから。
「でもラビットハウスが音楽劇場になるのが本当だったら面白そう」
「そういう世界もあるかもしれないよ!パラレルワールドってやつ!私もチノ君が魔法少年でシャロちゃんが怪盗してる世界見たことあるもん!」
「ええー!」
「落ち着けメグ。ココアが見た夢の話だ」
ああそうなんだ。またびっくりしちゃった。
でもそんな楽しい夢みれるなんて素敵だな。ココアちゃんはいつも素敵な世界を思い描けるんだね。だからチノ君も好きになったんだろうな。
「今日はもうびっくりしない!絶対!」
「むりむり。メグはどの世界線でも騙されるよ」
「マヤちゃんのバカー!だいきらい!!」
「それを今日言うって天才!?大好きってこと!?」
「メグさん、多分本気です」
勢いでお店出てきちゃった。マヤちゃんのせいなんだからね。
でも私もちょっと言い過ぎたかも・・・。
どうしよう・・・。ホントにマヤちゃんが私のこと大嫌いになっちゃったら・・・・・。
ダメダメ。悪い方ばかりに考えちゃ、ホントに悪いことが起きちゃう。
そう思いながら歩いてると、裏道への入り口の古びた階段が目についた。
こういう時は寄り道しながら楽しいことを考えよう。たとえば・・・パラレルワールドのこと!
でも、もしそんな世界があったとして・・・。私たちは一緒にいられてるのかな・・・・・。
ガクンッ
「ひゃっ」
その瞬間、世界が暗転した。
メグー! 目を開けてー!
メグさーん!
「・・・う?」
ちょっとくらくら感を感じながら目を開ける。
「あ」「気が付いた」
目の前にはマヤちゃんとチノ君が立っていた。
あれ?でもいつもと雰囲気が違うような・・・?
「もーっ!心配させないでよー!どんくさメグ!!」
「でも階段から落ちてとっさに受け身取れるなんてすごいです」
「ふええぇ・・・?」
起きた瞬間に二人にヒッシと抱きしめられた。どうやら階段から落ちちゃったみたい。心配かけてごめんね。
でもマヤちゃんはともかく、チノ君が私にこんなに抱き着いていいのかな・・・。ココアちゃんがいるのに・・・・・。
「・・・?メグさん、大丈夫ですか?何か顔が赤いような・・・?」
「えっ、ぜっ全然平気だよっ。心配かけてごめんねっ」
チノ君が私の頬に優しく手を触れてジッと見つめてくる。流石に恥ずかしいよ~。
「ますます顔が赤く。ティッピー、メグさんが本当に大丈夫か診察してください」
『軽い擦り傷。脳に異常ナシじゃ』
「ん“んーーーーーっ!!?」
チノ君の手のひらにサイバーパンクなティッピーがふよふよ浮いてた。さすがにびっくり・・・・・。
いや、今日はもうびっくりしないって決めたんだ。服や髪形まで変えて手の込んだ嘘を・・・。全力で乗っからなきゃ。
「ティッピーが浮くくらい普通だよネ!」
「? そうだけどどうしたの今更?」
「浮遊自立型コンピューターなんて今時みんな持ってるじゃないですか」
「えぇ!?うん!そうだよネ!!」
「じゃあ行きましょう」
「どこへ!?」
「ココアのラボに集合って言われてるじゃん」
そうして私は二人につられて歩き出した。よく見ると制服を着てたけど、前まで着てた制服とは全然違う・・・。
「最近話題のティッピーのアプリゲームやった?」
「僕はレトロゲームの方が興味があります」
「相変わらず古いもん好きだなー。ティッピーも旧式だもんね」
そんな話をしながら大きな駅の最新式の電車に乗る。
「この前の違法改造されたティッピーの犯人捕まったかな」
「引っ越して来たばかりですが東京は怖いところです」
電車のスピードが上がって、高い高いビルもどんどん流れていく。
見たことない景色と知らない話題・・・。
世界まで私を騙そうとしてる・・・。
「メグちゃん具合悪いの?ワイルドギース、タクシーを呼んで。料金は私が払うわ」
「シャロさん!?今日は奮発するね!?」
「ラボまでの距離なら私に任せておけ」
(リゼさんはいつも通りそう。前髪はぱっつんだけど)
「パトカー呼ぶから乗れ」
「逮捕されるの!?」
「親が警視庁の偉い人だからってめちゃくちゃです」
「みんな集合したわね。準備できてるわよー」
「千夜さん!抹茶の香りだー。ティータイム?」
「あんこに付けたわが社の抹茶アロマよ」
「紛らわしい商品作ってるんじゃないわよ」
嘘情報の洪水で頭がくらくらする・・・。
いくらエイプリルフールだからって手が込みすぎだよぉ。
「メグさん、大丈夫ですか?やっぱりさっきの後遺症が・・・」
「う、ううん。大丈夫・・・。ちょっと春の情報の洗礼にやられてるだけ・・・」
チノ君が道中でベンチに座らせてくれた。気のせいかな。いつも優しいけど今日は特に親切な気がする。
「メグー。大丈夫かー?」
「うん、ちょっと休めば平気・・・」
マヤちゃんは格好以外いつも通りみたいで良かった・・・。さっきのことも気にしてないみたいだし。
「僕ちょっと飲み物買ってきます」
「大丈夫―。平気だよー」
「相変わらず二人とも仲いいな」
「そ、そうかな・・・?」
「まあそりゃそうか。だって・・・・・」
「二人は“恋人”だもんな」
「・・・・・・・・・え?」
今、なんて?
「マヤさん、茶化さないでくださいよ」
「ホントのこと言っただけじゃん」
「ちょっとまだむずがゆくて・・・」
「いい加減慣れろよー。男だろー?」
・・・・・聞き間違いじゃない。
「だっ、だっ、ダメだよ!!二人とも!!流石にそんなウソはーっ!!!」
「メグさん!?」「メグ!?」
いくらエイプリルフールでもついていいウソと悪いウソがあるよ!
「そっ、そんなウソついたらっ、そんなウソついたらっ、ココアちゃんがかわいそうじゃんっ!!」
私だってそんなウソ楽しくないしっ!!
「め、メグさん?なんでココアさんが・・・?」
「だって・・・チノ君とココアちゃんは・・・・・・・」
「確かにココアさんとは仲いいですけど・・・・・」
「チノ。浮気か?」
「ち、違いますよ!」
あれ・・・?おかしい・・・・・。
二人ともそんなウソつくような人じゃない・・・・・。
「今日のメグ、何だか変だぞ?」
「やっぱりティッピーでも感知できない症状があるのかもしれません。早くココアさんのところへ」
そうして私はどこかの研究所みたいなところへ連れてこられた。
「次のティッピーコンテスト・・・これで優勝確実だよ・・・・・」
ココアちゃんは白衣を着て、大量のマシーンティッピーに囲まれてた。
「全員妹サイボーグに改造してやろうかー!!」
「ココアちゃんがマッドサイエンティストにー!?」
「ココアさん、サプライズジョークはいいのでメグさんの検査を」
「そうだった!かわいい弟の彼女さんが大変ならお姉ちゃん見過ごせないよ!」
「弟じゃないです」
みんなあまりにも自然体・・・。むしろ私だけが普通じゃないみたい・・・。
これって・・・もしかして・・・・・。
「パラレルワールドじゃん!」
「何その話面白そう!」
「みんな知ってる?無数の世界線があるという話で那由他の大量の世界には違う自分がいーっぱいいるらしいよ」
「今日はティッピーコンテスト打ち合わせの予定だろ」
そっか。私いつの間にか別の世界に来ちゃったんだ。だから景色やみんなの格好が違ってたんだね。
「木組みの街で暮らしてる夢を見るって話は何回も聞いた」
「ロマンがあると思うわ」
もしかしたら向こうの世界の方が夢だったのかな。
でもこっちの世界でもみんなと一緒に集まれてる。
「どの世界でもこんな風に集まってそうだよね」
「そうです。だから大丈夫ですよ、メグさん」
どんな世界でも、たまに喧嘩しても。
大事な友達とは一緒にいれてるんだ。
「うん・・・!絶対そうだよ!」
「今日はビックリすることばかりだったなー」
「でも何も異常がなくて良かったです」
帰り道、まだ心配だからってチノ君が家まで送ってくれてる。どの世界でもチノ君は優しいね。
「あの、メグさん・・・」
「なーに?」
チノ君がおずおずって言葉が似合う感じで聞いてきた。
「向こうの世界じゃ、僕とメグさん恋人じゃないんですか?」
「ふえ?」
また突然でビックリした。
そうだった。
この世界じゃ私とチノ君が恋人なんだ。
「・・・うん。向こうの世界じゃココアちゃんと恋人だよ」
「そうですか・・・」
ちょっと残念そうな、複雑な顔。
「ココアさんのことはこっちでも好きですけど」
「・・・・・・・・・」
「でもこっちの僕はメグさんが・・・!」
「大丈夫」
私はいつの間にか、チノ君の手をそっと取っていた。
「向こうの世界でも私たちは大切な友達同士だし、それに」
「それに?」
「どこでも私はチノ君のことが大好きだから」
その“好き”がどんな“好き”かは言えないけど。
でも向こうでも好きってことは変わらないって言えるんだ。
「メグさん・・・」
チノ君は私の体を自分の方に寄せてきた。
いいのかな。
いいんだ。
この世界なら。
「起きろメグー!」
その瞬間、顔を誰かにバァァァンとはたかれた。
「ここ・・・どこ・・・?」
「ラビットハウスです」
「びっくりしたよ!飛び出したメグ追いかけたら階段の下で倒れてるし!」
マヤちゃんもチノ君も、心配そうな顔してのぞき込んでた。
・・・・・チノ君。
「んんっ」
「わっ!?」
「なっ!?どうしたメグ!?」
私はさっきの続きと言わんばかりに、チノ君の体を抱きしめていた。
「んぅ・・・。別にいいよね・・・?」
チノ君の体、意外と大きくてあったかい。
「だって私たち恋人だし」
「「えっ?」」
あれ?よく見るとティッピーが浮いてない・・・?
私戻ってきたの?
じゃあ・・・チノ君とは・・・・・。
「おいこらどういうことだこら説明しろこら」
「ぐえぇ何も知らないです・・・。何もしてないです・・・。く、くるし・・・・・」
マヤちゃんはチノ君を締め上げていた。
「パラレルワールドに行ってたー!?」
「たぶん夢だと思うけど」
楽しい夢だったなー。高いビルや見たことないものがたくさんあって。
「私信じるよ!面白そうだもん!」
「ココアちゃん・・・!」
向こうの世界でもこっちの世界でもココアちゃんは変わらないね。
違う世界でも、みんな変わらない。
「じゃあその世界ではさ」
「僕たちは一緒でしたか?」
いつもみんな一緒だよ。
「もちろん!バラバラの制服でもね!」
多分これからも!
「向こうの世界でもジョークに引っかかってたんじゃない?」
「そんなことないもん」
昔から相変わらずだなー。マヤちゃんは。
「あっちのマヤちゃんはからかわなかったのになー。髪も長くて大人っぽかったし」
「なっ!?」
「もう一回会いたいなー。向こうのマヤちゃん」
「ウソだよね!?こっちの私は!?」
たまにはウソも、いいかもね。
「ね、ねえ。メグちゃん?」
「なに?ココアちゃん?」
ココアちゃんがおずおずって感じで聞いてきた。
「む、向こうの世界じゃ、メグちゃんとチノ君が恋人だったの?」
「そ、それ!私も聞きたい!!」
マヤちゃんも身を乗り出して聞いてきた。
やっぱり不安だよね。
そんなに大好きなんだね。
「うふふ~、それはね~」
「「それは?」」
くるっと振り向いて舌をちろっと出してみたり。
「どっちでしょー!?」
ちょっと意地悪したりしてみて。
「わーん!教えてよー!」
「メグの小悪魔―!」
ちょっと悪いことしたかな。
でも今日だけだよ。
エイプリルフールだからね!
チノ君がマヤちゃんに締め上げられるところがずっと書きたかったです。