多分これからもちょくちょく出ますが、基本的に純愛おねショタハーレムの体裁は守るのでご安心を。
高校に入学した僕。新しい友達も増えそうな予感もしてワクワクしている。
さて、そんな僕は今。
「チノ君入学おめでとう~」
「相変わらずめんこいね~」
「ちょっと背伸びたんじゃない?」
「カッコよくなったなー」
「あぅぅ・・・」
「あ、あの、私の弟だから・・・・・」
女子の先輩たちに囲まれていた。
今囲まれている先輩たちはココアさんと千夜さんの同級生、僕の先輩にあたる人たち。この高校の文化祭の時に知り合った。
僕が男子ということも気にせずにどんどん触ってくる。男子に対する忌避感がないのは良いのですが。
(な、なんか恥ずかしい・・・・・)
流石に僕も男なので、こんなに女子の皆さんに囲まれて愛でられると照れてしまう。道行く生徒たちも(特に男子は)どこか恨めしそうに僕を見てくる。
でも当の本人は恥ずかしさと居心地の悪さでそんなこと堪能する暇もなかった。
それに僕には恋人のココアさんが・・・。
(ああ、ココアさん・・・。だんだん目つきが鋭く・・・・・)
そりゃあ恋人の僕が他の女の子にデレデレしてたら彼女のココアさんは面白くないだろう。
「あの・・・チノ君は私の・・・・・」
同級生たちに遠慮しているのか、おずおずと話しかけてる。
「チノ君は・・・私の彼氏だから!!」
「!!」
ココアさんは意を決したように大声で叫んでいた。
先輩たちも驚いたようにココアさんの方を振り向く。
やっぱりココアさんにも独占欲というものがあったみたいです。
・・・僕だけを見てくれているような気がして嬉しい。
「そうかそうか~。ココアとうとうチノ君と付き合ったか~」
「よかったよかった。よかったね~」
「妹の成長を目の当たりにしたようで嬉しいよー」
「うわーん!チノ君の前で妹扱いしないでー!!!」
どうやら(薄々気づいてはいたけど)ココアさんはクラスのみんなの妹みたいです。
「良き友人たちを持てて良かったですね」
「わぁーん!!チノ君もそんな生暖かい目で見てこないで―!!!」
先輩たちの猛攻に気を取られて新しい友達の紹介がまだだった。
「紹介します。風衣葉冬優さんです」
そう言って振り向いてみると。
フユさんは忽然と姿を消していました。
「いない!?」
「チノ君、面白い子だなぁ」
「幽霊の連れ込みは校則違反だぞ♪」
「落ち着けよ。ただの幻覚だろ?」
「学校へ導く少女の幻覚、七不思議の一つよ・・・」
「チノ君を信じてあげて!」
「みんな違うってー」
「幻覚だったのかもしれない・・・」
「「チノ君!?」」
「何かあったらお姉ちゃん兼彼女の私に相談するんだよ?」
「高校デビュー頑張ってね」
「はいっ」
ココアさん千夜さんの二人に励まされ、僕は教室に向かう。
あの二人の応援に答えなくちゃ。
「ココアちゃんのいないクラス・・・」
「二度目の奇跡はなかったね・・・」
(あの二人の方が大丈夫かな・・・)
どうやらクラスが分かれてしまったみたいです。
僕以上に不安を抱えて去っていきました・・・。
(マヤさんもメグさんもいない一人きりのスタート・・・)
やはり新しいことを始めるとどうしても不安になる。
でもここは気を引き締めて。二人からパワーも貰ったんだから。
(フユさんは一体どこへ・・・)
忽然と姿を消したフユさん。
やはり幻覚だったのだろうか・・・。
漠然とした不安を抱えながらガラッと教室のドアを開けた。
(いた!フユさん!!)
教室の椅子にちょこんと座っていた。
どうやら幻覚では無かったみたいです。
フユさんに声をかけようとしたその時。
「ねえ君、さっき上級生に囲まれてたよね!?」
他の新入生の質問にあってしまいました。
「もう馴染んでるってすごいねー」
「私転入だから心細くてー」
「というかお前、二人のお姉さんに胸押しあてられてたよな?」
「それに上級生相手にハーレム作りやがって!」
「どんな手段使ったの!?教えて!?」
他のみんなも高校デビューでワクワクしているのかテンションが高い。ウキウキで僕に話しかけてくる。
「地元の子?」
「はい、ラビットハウスっていう喫茶店やってます」
「へー、私たちと同じ年ですごいねー」
「高校生で喫茶店とか漫画の主人公じゃん!」
「男子ってそういうの好きだよねー」
「何だよー、悪いかよー」
教室がざわめき始めた。
人気なのは嬉しいけど、これじゃフユさんのところにいけない・・・。
高校入学のために木組みの街に来た途端、故郷の街で出会えた友達に再会できた。
あまりのことに驚きとか嬉しさとか、色々入り混じって逃げるように教室まで来てしまった。
教室にチノが入ってきたときは謝ろう、そして改めて挨拶しようと席を立ったけど、チノがクラスのみんなに囲まれているのを見てやめた。
一対一じゃない会話はまだ少し怖かった。
それにみんなと楽しそうに話しているチノを見ると邪魔するのも悪いな、と思ってしまったからだ。
こうやって遠慮しているうちにどんどん話す機会が失われるのだろうけど、チノの気を悪くするよりはずっといい。
そう自分を納得はさせるけど、どうしても胸にモヤモヤが残ってしまって。
講堂で入学式が始まった時も、どうも気になってチノの方をチラチラと見てしまう。
入学式も終わってひと段落。なんだか疲れてしまった。
手持ち無沙汰で何となく地図を広げてみると。
「それ、シストの地図!見つけたんですか!?」
その子は壁をぶち破るように私の世界に入ってきてくれた。
「しすと・・・?」
「この街で有名な宝探しゲームです」
ようやくフユさんと話せました。朝からずっと気になっていたので。
「ううん。これ、家までの地図」
「え?」
「まだ道覚えられてないから」
「恥ずかしい!」
ようやく話せたと思ったら失敗してしまった。無遠慮だったでしょうか・・・。
「・・・チノと」
「え?」
「チノと・・・やっと話せた」
絞り出すような声。フユさんも同じくらい僕のことを気にしていたみたいだ。
不安なのは、僕だけじゃない。
「朝はビックリしました。急に子猫みたいにいなくなるので」
「チノこそ、ウサギみたいにぴょこぴょこいなくなる」
「そうでした?」
「そう」
何となく、じっとお互いを見つめる。
「ぷっ」
「クスッ」
そうすると、気を張っていた自分たちがおかしくなってしまってつい吹き出した。
「朝はごめんね」
「僕の方こそ、突然無遠慮でした」
お互い軽く微笑みながら謝罪する。
もしかすると、僕たちは似た者同士なのかもしれない。
「お詫びと言っては何ですが、放課後よろしければ送っていきます」
「え、でも・・・」
「僕も、フユさんにこの街をもっと知ってもらいたいので」
「・・・ありがとう。じゃあ、お願い」
「はい」
新しい場所で、新しい友達と再会できた。
これからもっと仲良くなっていきたい。
多分向こうもそう思ってくれてる。
「なぁ、あの喫茶店の奴。もう美少女とデートこぎつけてるぞ」
「見た目大人しそうなのにね」
「やっぱ高校デビューしたらグイグイ行った方がいいんだな!」
「無理だよ。僕らモブ男子だから」
「え?」
高校からの帰り道、フユさんに街を紹介しながらフユさんの下宿先に向かう。
「私・・・」
「どうしました?」
「この街でうまくやっていけるかな・・・」
フユさんが不安を口に出す。
そうですよね。一人で新しい世界に出てきたら誰だって不安だろう。
「そういう時は、ええと・・・」
友達の不安を取り除いてあげたいけど、どんな言葉をかければ・・・。
・・・・・ココアさんみたいに。
「不安をワクワクだと解釈するんです!」
「ワクワク・・・?」
「・・・ってうちの姉が言ってました」
「チノ、お姉さんいるの?」
「・・・あっ、自称姉です!」
“恋人”じゃなく“姉”と紹介してしまっていた。
今朝貰った姉力のせいだろうか。
「私も、通りすがりのお姉さんに自信持ってって励まされたことある」
「素敵なお姉さんですね」
「うん」
ココアさんとどっちが素敵だろう。
・・・きっとココアさんだろうな。
「へぶちっ」
「誰かがココアの噂してる」
「それ迷信でしょ?」
「でも不安なこと、もう一つあって」
「何ですか?」
「・・・変な話なんだけど」
「え、ええ」
「この街には、“うさぎの皮を被った狼”がいるって話聞いて」
「うさぎの皮を被った狼!?」
そんな話、長年この街で生きてきて初めて聞くんですが!?
「うん。その人はうさぎみたいにかわいい顔してるけど、実態は女の子を食べまくる狼で。その人が通った後にはぺんぺん草の雌しべも残らないという噂・・・」
「そんな恐ろしい人がこの街に・・・」
生まれ故郷のこの街にそんな怖い人がいるとは知りませんでした。何だか悲しいです・・・。
「・・・ごめん」
「どうしました?」
「チノのふるさと、悪く言っちゃって」
「そんなこと。初めての場所が怖いのは誰でもですよ」
フユさんはとても真面目な人なんだ。
だから色んなことを真剣に考えすぎて、怖くなってしまうんだろう。
「・・・フユさん。この後、時間ありますか?」
「え?」
「見てほしいものがあるんです」
「・・・!この眺め、綺麗・・・」
「都会で一緒にぬいぐるみを探してくれたお礼です」
僕はフユさんを、木組みの街が一望できる展望台に連れてきた。丁度夕暮れ時で、街中に紅い装飾がかかったように見える。
「転入してくる前に写真で見た以上の景色・・・」
フユさんも気に入ってくれたみたいだ。
この街には綺麗なものがたくさんある。
「これからもガンガンドコドコ、この街の良いところを見てもらいたいです」
「ガンガンドコドコ・・・・・」
いけない。誰かさんの口調が移ってしまっていた。
でも悪い気はしなかった。
「・・・ありがと、チノ。これからたくさん、楽しい事・・・あるといいな」
「きっとありますよ」
新しい世界に行くって、そういうことだと思うから。
「着いた。ここが私の居候先」
え。
「一年前にね、たまたまこの街の特集記事読んだの。みんな暖かそうで楽しそうだった」
あの。
「それで気づいたら都会から飛び出してた。私の初めての思い切った決断」
ここって。
「ブライトバニー。学校の紹介で老夫婦が住み込み募集してるって聞いたの」
「チノはラビットハウスって喫茶店で働いてるんだっけ。ライバル・・・だね」
・・・・・・・。
「チェスも腹話術もまた対戦してみたいのじゃ。店が開店したらお手柔らかに・・・なのじゃ」
気が付くとフユさんは、ブライトバニーの中に入っていってしまった。
「なぁぁぁぁぁぁ」
「都会で出会った子と再会したの!?」
「しかもブライトバニーだと!?」
弟に新しい友達ができたと思ったら、運命の再開だったんだね!
「こことしては向こうにお客さんが流れるのが心配だな」
「だいじょーぶ!たいして変わらないよ!」
きっとラビットハウスは今まで通りの喫茶店だよ。ティッピーは不機嫌そうな顔してるけど。
「チノは複雑だと思うけど・・・」
「・・・です」
「チノ?」「チノ君?」
「フユさんからもブラバからも新鮮なアイディアを学べます!これは素敵なチャンスです!!」
「「たくましい!!」」
いつの間にか弟が一回りも二回りも大きくなってた!
そうだよ!甘兎庵とラビットハウスが対立してても今は仲良しだもん!!
千夜ちゃんともクラスが分かれちゃっけど、その分色んな楽しみもあると思うんだ。
「この精神はリゼさんに鍛えられたのかもしれません」
「そうかな」
「私の姉力パワーは?どうだった!?」
私の分も。朝注入してあげたのが効いてたら嬉しいな。
「それは・・・ヒミツです」
「えー!?教えてよー!!」
答えてくれなかったけど、何となく答えは分かっていた。
チノ君もこの街もどんどん変わっていく。
でもそれって、楽しいことでもあるよね!
(チノ君に新しい友達ができて良かった)
春になり立ての外のじんわり冷たい風を受けながらしみじみ思う。
(チノ君は人気者だから)
委員長たちにも人気だったし、いろんな人がチノ君を好きになってくれてる。
姉としては誇りだね。自慢の弟だよ。
姉としては・・・。
「私がチノ君のこと、一番大好きでいたいなぁ」
チノ君を好きな人が増えるってことは、それだけチノ君もたくさん“好き”を貰って、あげるということ。
その中で私の“好き”が埋もれちゃったら・・・。
「お姉ちゃん失格かな」
そんなこと考えちゃダメ。
チノ君にはもっと広くて新しい世界を知ってほしいから。
私だけの世界、なんて狭い世界に押しとどめるなんていけないことだ。
でも少しだけ、少しだけだけど不安になってしまう。
私だけのチノ君でいてほしい・・・なんて。
「ココアさん、お風呂あがりました。どうぞ」
「うん、ありがと。チノ君」
お風呂から上がったチノ君は身体が火照っているのか、少しほっぺたが赤かった。
他にも汗を反射して少し肌がテラリとしていた。
(ダメダメそんなこと考えちゃ!)
心の中でエッチになってる自分を振り払う。私ってそういう子だったのかな・・・。
「・・・ココアさん?元気ないですか?」
「そんなことないよ!この通りハッスル満開だよ!」
この通り、チノ君はいつも優しい。私の自慢の弟。
誰にでも優しいのがチノ君だから、いつまでもそんなチノ君であってほしい。
だから他の娘に好かれるのだって・・・・・。
「・・・・・ココアさん」
「ん、ごめんごめん。すぐ入るよ」
そう言ってお風呂に行こうとした途端。
「ちょっと、待ってくれますか?」
チノ君に呼び止められた。
「すぐ済みます」
何だろう。でもチノ君の目は真剣で・・・。
チュッ
「!!」
「・・・・・すみません。いきなり」
唇に優しく・・・キスされた・・・・・!
いきなりで・・・ビックリした。
「朝のお返しです」
「・・・え」
「ココアさん、元気なかったみたいなので。弟力パワーと恋人パワーの注入です」
そう言っているチノ君は顔が真っ赤だった。
多分お風呂のせいじゃない。
「いきなりで迷惑だったのなら・・・・・」
「・・・ううん!そんなことない!」
体の奥がじんわりと熱くなって、幸せがこみあげてくる。
「ありがとう!チノ君!!」
「わっ、ちょっ」
「私が一番チノ君のこと大好き!!」
勢いに任せて、私はチノ君をギュウッてする。
良かった。
私がチノ君のこと、大好きでいてもいいんだ!
「さらに元気になったよー!今日も一日頑張れそう!!」
「もう一日も終わりです」
「えへへ」
笑顔が素敵でコーヒーを淹れるのがとっても上手。
この子が私の自慢の弟で大好きな恋人です。
「早くお風呂入ってください」
「ごめんごめん。じゃあ行ってきます」
その途端、ちょっといけない考えが頭を巡った。
言っちゃいけないんだろうけど、その時の私はテンションが上がっていた。
「チノ君」
「はい?」
「一緒に入る~?」
「えっ」
一瞬でチノ君は真顔になる。
・・・流石にお下品だった。言った後に後悔が襲ってきた。
「な、なーんて。冗談冗談」
作り笑いで誤魔化すけど誤魔化しきれてない。
品性がないってドン引きされたかな・・・。
「・・・もっと」
「え」
「もっと・・・大人になったら・・・・・いずれ」
しばらく、頭が情報を処理しきれなくてパンクしていた。
脳みそが茹で上がりそうだった。
「お、お風呂冷めちゃうんで・・・」
「あ、うん・・・ごめん・・・・・」
いそいそと早足でお風呂へ向かう。
でもお風呂に入る前から体は熱かった。
ごちうさ新刊読みました。
ティッピー、清川さん、ありがとう